キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

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典型的な役所批判の一つに、具体的な成果指標が無い」というものがあります。

実際のところ、成果指標が無いことは少ないです。対外的に公表していないだけです。
具体的な指標がないとそもそも事業の進捗管理ができません。

公表しない(というよりもできない)理由は様々ですが、現状の役所の立ち位置を考えるに、役所が成果指標を設定すること、特に対外的に公表して住民とも共通して抱けるような指標を設定するのは大変困難だと思っています。

役所が成果指標を決めるなんて傲慢すぎる

まず、そもそも役所が施策の成果指標を決めてもいいのかという疑問があります。

成果指標は、施策の結果、つまるところ自治体の将来像に直結します。
民主主義という仕組みをとっている以上、自治体の将来像を決めるのは、住民なのではないでしょうか?

教科書的な考え方だと
  • 大局的な成果指標は住民が決める
  • 細分化された小目標は実務を担う役所が決める
という区分けになるのでしょうが、どこまでを大局的(住民が決める部分)とするか、という議論の前提を整えるのがまず困難です。

住民の中には、細かい成果指標まで参画していきたい人と、大局的な成果指標すらどうでもいい人がいます。
さらに、何を大局的とみなすかも、人によって大きく異なります。
もし役所主導で「大局的な成果指標」にあたるものを設定しようものなら、前者のタイプの方から猛攻撃を受けるでしょう。

実際、どんな細かい成果指標であっても、役所主導で決めると「いまだに『お上意識』が残っている」「民主主義をないがしろにしている」「お前らは公僕であり為政者ではないだろう」というお叱りが飛んできます。
そのまま住民運動につながることも多々ありますし、訴訟まで発展することもあります。

「首長がリーダーシップを発揮して成果指標を決めるべき」という意見がマスコミ報道なんかで流れることもありますが、一方で役所の現場では、「成果指標は住民が決めるべきであって、役所が勝手に設定するのは許されざる蛮行だ」という意見も強く受けています。

つまるところ、「成果指標の決め方」を決めるプロセス、本題に入るための準備段階で大いに揉めるのです。

成果指標のせいで分断が広がる

もし具体的な成果指標を設定したとしても、それが住民に広く受け入れられることはあり得ません。
成果指標が具体的であればあるほど、住民としては、自分に利益があるのか、反対に害があるのか、はっきり理解できます。

はっきりと示されるほど、感情的な反応を招きやすいものです。
利益を受けられる人は賛同し、一方で負担や害を被る人は反発します。
特にマイナス影響のある方の反応が激しく、役所には批判が殺到しますし、マスコミもネタにしやすいのでガンガン煽ります。
「官製格差」と言ってみたり、施策の背後に癒着関係があると推測してみたり……

こうして施策はスタート前から躓き、後に残るのは役所への不信感だけです。
本来得をするはずだった人も、周囲からの強烈な監視のために施策に乗りづらくなります。
こうして施策は失敗に終わります。

さらには、得する側と損する側で、住民間に分断が生じます。
目標が具体的であればあるほど、得する人と損する人が、客観的にも明らかになります。
こうなると妬みが生じ、住民間のトラブルに発展してきます。

こうしたトラブルが予見されるために、たとえ成果指標を決めていたとしても、積極的な提示は躊躇してしまいます。

検証させてもらえない

成果指標を策定して、なんとか施策を終えたとしても、さらなる関門が存在します。
本当に成果指標を達成したのかどうかの検証・効果測定が難しいのです。

成果指標を達成したのか否かの検証をやったところで、住民には直接の利得はありません。
「役所にしっかり説明責任を果たさせた」という達成感があるだけで、懐も温まらないし、お腹も膨れません。実利が無いのです。
そのため、役所が検証に予算や人員を投じようとすると、大概「無駄だ」という批判に遭います。

「イベントの来場者数」のような単純な成果指標なら特段の予算も労力も不要であり検証可能ですが、調査や分析が必要な指標の場合は、兵糧不足で検証ができません。
このような前提、つまり具体的な成果指標を設定しても検証できない可能性が高いという制約条件があることも、役所が具体的成果目標の設定に後ろ向きな理由だと思われます。



役所主導で具体的な成果目標を設定すること自体は、不可能ではありません。
ただし、実際にやってしまうと、「独裁」「民主主義の崩壊」などの批判が相次ぎます。
さらには住民間のトラブルも招きます。

成果目標の設定に対して、従来はとにかく住民参加を求める声が強かったところですが、最近は「住民に決定責任を丸投げするな、役所が責任を持って決めろ」という声も多数聞こえてきます。

結局のところどんな方法を取ってもトラブルに発展するので、覚悟を決めて色々試してみる時期なんでしょうか……

来年度の公務員試験に向けて動き出している方も、そろそろ増えてきている頃だと思います。

今年は新型コロナウイルス感染症のせいで人と人との接触を控える風潮が強いため、役所主催の説明会に参加したり、OB訪問したり、予備校仲間と歓談したり……という従来通りの情報収集方法が使えず、情報収集に苦労していることと思います。

代替手段として、インターネット経由の情報収集が重要になってきます。
役所の公式サイトは勿論、ブログやSNS、掲示板のような個人発の情報を参照する方もいるでしょう。

ただ、こういった個人発の情報は、鵜呑みにはできません。
発信元の偏りを認識し、解釈する必要があります。

インターネット上にいる公務員はマイノリティ

インターネット上で情報発信している公務員は、公務員の中でもレアな存在です。
 
総務省によると、地方公務員(一般行政職)は、全国で約92万人います。

一方、地方公務員を名乗るTwitterアカウント、しかも鍵垢ではなくオープンにツイートを発信しているアカウントは、地方公務員総数に対してどれくらいでしょうか?
多くて0.5%くらいでは?圧倒的少数です。

インターネット上で情報発信している公務員(元職含め)を、典型的な公務員だと思ってはいけません。
彼ら彼女らは少数派であり、こういう人間が職場にたくさんいるわけではありません。

加えて、インターネット上の公務員情報は「少数派職員フィルターを経由した情報」であり、必ずしも公務員の総意ではないことを認識したほうが安全です。

たとえば、公務員が書いたブログやSNS投稿を真に受けて
  • 公務員って陰気で愚痴っぽい人間ばかりだな
  • 組織に対する不満が常に充満しているんだな
などと理解するのは早計です。

大多数の公務員は、余暇時間までわざわざ仕事のことを考えません。
仕事はあくまでも生活要素の一部であり、家庭のような、より重要な生活要素を持っています。
たとえ職場で嫌なことがあっても、業務終了後にTwitterで愚痴ツイートを作文したりはしません。
むしろそんなこと(広義の仕事)に時間と労力を割くことのほうが勿体無く感じられます。


インターネット上で情報発信しているのは公務員の中でも圧倒的少数派であり、概して「余暇時間まで仕事のことを考えている真面目な人」、あるいは「暇人」なのだと思われます。

一般論は書きようがない

書き手の層の偏りという要素を除いても、そもそも一個人に普遍的真理を書くだけの知見はありません。
公務員の仕事は法令で定められている要素が大きく、他の職業よりも普遍的な部分が多いとは思います。
しかしそれでも、地域ごと・自治体ごとに、仕事内容も待遇も異なります。

インターネット上にある個人の投稿は、あくまでも書き手が経験した範囲での結論であり、局地的・部分的真理であることを認識する必要があります。

ブログにしてもSNSにしても、公務員関係の文章は「公務員は〜」「役所は〜」のように主語が大きくなりがちです。

主語の巨大化は、そもそもインターネット上の言論にありがちな傾向です。
公務員界隈の場合は更に、書き手側に「勤務先自治体の特定を避けたい」という心理があり、こういう「ぼかし表記」を使いたがるという特殊事情も加わります。
弊ブログもまさにこの呪縛に囚われています。

体感的に、一般論として書かれたインターネット上の言説のうち、僕も同じく一般論だと肯けるのは3割程度です。
5割は部分的真理としては賛同できるもの(自分の経験からもそう思うが一般論とまではいえない)、残り2割は賛同できません。

経験業務によっても変わってくる

さらに公務員は、たとえ同じ役所に同じ年次で入庁したとしても、配属先・異動ルート次第で経験する業務が全く異なります。
インプットが異なれば、醸成される価値観や思考回路も異なります。
つまり、同じ年次に採用された同じ自治体の職員であっても、過去に経験した業務次第で、考え方が大きく異なるのです。

弊ブログの過去記事を読んでいただいている方なら、住民との協力関係に対して僕が相当悲観的であることをご存知だと思います。
この思想はあくまでも、僕が住民と対立しがちな部署ばかり経験してきたから形成されたものであって、住民協働に前向きな職員はたくさんいます。

役所といえど徐々に変化している

インターネット上には古い情報も残っています。
時代遅れと揶揄されがちな役所ではありますが、それでも少しずつ変化しています。
 僕が入庁してからの約7年間でも随分変わりました。

たとえ自分の疑問に対してドンピシャで書かれている内容であっても、書かれた時点が古い情報は、鵜呑みしてはいけません。
特に更新が止まっているブログの場合、追記やリライトされている可能性がほぼゼロのため、一層注意が必要です。

「※個人の見解です」を脳内で補完する

個人発の公務員情報は、先述のとおり、普遍的真理ではなく局地的・部分的真理です。

  • どういう経歴・性質の人間が発している情報なのか
  • 書き手の属性からして、どういうバイアスがかかりうるのか
を意識して読み解いていくのが、無難な使い方だと思います。

弊ブログも同じです。本記事の内容全てがブーメランと化して脳天に突き刺さります。

極力バイアスを排しようと頑張っているつもりですが、一人きりで書いている以上、バイアスまみれになっていると思います。
独身アラサーオタク(出世コース脱落)という書き手像、役所内ヒエラルキー下位の人間が書いているという前提をお忘れなきよう……

自治体広報には「全員にもれなく理解させなければならない」という原則があります。
これを達成するためにはアナログな手法をベースにせざるを得ません。
デジタルな方法だと、ツールをうまく使えない人に対して、情報を伝達できないためです。

とはいえSNSアカウントの運用のような、今時のデジタルな広報も、間違いなく重要です。
手間もコストも、発信に至るまでの時間も大幅に削減できます。
使える手段も増えて、内容も充実させられます。

デジタルな広報業務を担う職員は、地方公務員の中でも圧倒的少数です。
多分、1000人に1人くらいでは?
担当者は一から独力で勉強し、誰にも相談できず、孤軍奮闘する羽目に陥りがちです。

僕も観光の仕事をしていたとき、公式SNSを運用していた時期がありました。
幸いにも僕の場合、2ちゃんねるに始まり、ふたば、爆サイ、mixi、facebook、twitter、instagram、マストドンなどなど、それなりにインターネットでのコミュニケーションに触れてきた経験があったおかげで、ネット上の作法には自信がありましたし、すぐに「それっぽい」運用ができました。
最近のギスギス具合を見ていると、「リナカフェなう、誰か氏〜」とか言ってた頃のTwitterが本当に懐かしくなります。

しかし、こういう予備知識がない人間がいきなりSNSを任されたら、かなり大変だと思います。
前述のとおり圧倒的少数派であり、庁内にも仲間がいないので、疑問があっても誰にも相談できないのです。
自分の力でなんとかするか、自治体をまたいだ横のつながりを作るしかありません。

そんな悩める広報担当職員にぜひお勧めしたいのが、先月発刊された『まちのファンをつくる 自治体ウェブ発信テキスト』です。


今年読んだ役所本の中でも暫定ナンバーワンです。
若手よりも、ある程度役所の常識が染み付いてきた職員のほうが、心に響くと思います。

ひたすら具体的でわかりやすい

よくあるビジネス書だと、抽象的な概念図や数式を用いて、広報のコツを紹介しています。
民間企業のサラリーマンであれば、普段から身近にマーケティングのことを考えているために、概念を説明されるだけで自らの経験とリンクできて腹落ちするのかもしれません。
 
しかし公務員の場合、そんな素地がありません。
抽象的な一般論を説明されても、字面を追うのに必死で、理解できるとは限りません。

本書はひたすら事例ベースで具体的です。抽象概念や専門用語が無く、すっと理解できます。
読んだらすぐに実践できる事柄も多数取り上げています。

これからの予算要求にぴったり

本書で取り上げているのは、全国の自治体が実施している先進事例・成功事例です。
まさにこれからの来年度予算要求にも大いに役立つと思います。
新規施策のヒントにしたり、予算折衝の材料に使ったり……全部で100事例も掲載されているので、きっと参考になるものが見つかるでしょう。
発刊のタイミングが絶妙です。


職員が疑問に思うポイントを的確に押さえている

僕がSNS運用に関わったのは半年弱でした。
2ちゃんねる(大学受験サロン)でコテハンやっていた頃と同じ感覚で、何より炎上しないように節度を保ちつつ、応援したくなるような誠実さ・好感度を演出するように投稿していたのですが、本当にこれでいいのか迷う場面も多数ありました。

本書を読んで僕が何より感激したのは、当時疑問に思っていたポイントの多くが、本書で触れられていたことです。
著者の方は本当に自治体のことをよく見ていると思います。
自治体職員が悩みそうなポイントを把握していて、答えを提示しているのです。


例えば、SNSアカウントに寄せられたリプライへの反応。
僕の場合、炎上回避のため、以下のルールで運用していました。
  • 基本的に反応しない(プロフィールにあらかじめ明記しておく)
  • 投稿内容のミスを指摘するリプライのみ、感謝の意を返信する(「黙って修正した」と後から叩かれないように)

当時この本があったら、このような対応には止まらなかったと思います。


攻めに転じる手がかりとして

インターネット上には意図的に炎上案件を発生させて楽しむ悪い人がたくさんいます。
そんな方にとって、自治体は格好のターゲットです。
幸い、自治体には炎上を回避するノウハウが豊富に蓄積されています。
公平性と網羅性の徹底なんかは、その最たるものでしょう。

まずは行政ならではの守備優先の運用方法を習得してから、本書にあるような「攻めの運用」を考えていけばいいのではないかと思います。

広報のレベルは、自治体ごとに相当格差があります。
あえて力を入れていない(広報より内実に注力する)という考え方の自治体もあるのでしょうが、そうであったとしても、全国的な成功事例・先進事例を知っておくことは重要だと思います。
手軽に全国の事例を総ざらいできるという意味でも、本書は大変有用です。

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