キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

外部からのアポイント要望を断ったり、仕事の締め切りに間に合わないとき、よく「議会用務」「予算用務」を理由に使ってしまいます。
これは自分に限った話ではなく、自分だけでなく地方公務員、とくに県庁職員であれば身に覚えがあるかと思いますが、外部の方からは「嘘くさいな」と思われているようで、たまに嫌味を言われます。

実際のところ、あまり忙しいわけではないのですが、急に絶対優先の仕事が飛び込んでくる可能性が高く、別の予定を入れるとドタキャンせざるをえない場面が多々発生します。そのため、極力フリーなままでいたいのです。

今回は「予算要求用務」について、大まかな流れを書いてみたいと思います。


第一段階 課内・部局内調整

だいたい10月頃から、「来年度どれくらいの予算をかけて、何をするか」を各担当が考え始めます。
11月に入ると、課内の調整がはじまります。まずは各担当アイデアを課長がヒアリングし、課長が課としての方針を決めます。
課としてまとまったら、次は部局レベルでの調整です。部長が各課の方針をヒアリングし、部としての方針をまとめます。
ここまでは純粋に「どうすれば最大の効果が出るか」を念頭に事業を考えます。

【イメージ】
(担当)
来年度は「声優ラジオ番組とのタイアップ」を強化したいと思います。リスナーだけでなく、内容がネットニュースに取り上げられるなど、副次的な効果も見込まれます。声優事務所に問い合わせたところ、300万円で通年プロモーションが可能です。
(課長) 
安定した成果が望めるが、声優ラジオは成熟したメディア。再来年度に遅らせても支障ない。今やるべきはバーチャルユーチューバーの波に乗ること。こちらに予算を割きたい。声優事業は200万円以内に抑えたいから、通年でなくスポット的に実施することにして、いつやるか検討して、再度見積もりを貰ってくれ。


第二段階 財政部局調整

部局での方針がまとまったら、次は財政部局との調整です。
財政部局は、「一般論としてロジックが通っているか」「組織として一貫性があるか」「政治的に問題ないか」という観点から、事業案を検査します。
まずは各課の担当が財政部局担当に事業案を説明し、財政部局担当から財政部局内の上司へ諮っていきます。
ここからはマジレス・クソリプの応酬です。これらをうまくこなすことが必要になってきます。
こなせなかったら「効果が薄い」「実現可能性が無い」とみなされ、どんどん予算額がカットされていきます。そのため、財政部局からの指摘への対応は、優先順位を高くせざるをえません。
ここで上手なマジレスを繰り出せる財政部局担当は、例外なく出世しています。

【イメージ】
(担当)
ウェブメディア活用事業は、これまではニコニコ超会議とのコラボなどコンテンツ提供プラットフォームとの連携が中心でしたが、プレミアム会員数の減少など、ユーザーのプラットフォームへの忠誠心が薄れています。
そこで来年度は、提供プラットフォームではなく、コンテンツの作り手との連携を強化します。具体的には、現在大人気で高い効果が望める「バーチャルユーチューバーとのタイアップ」に300万円、成熟したメディアであり安定した効果が望める「声優ラジオ番組とのタイアップ」に200万円を計上しています。それぞれの具体的内容は……(以下、タイアップ内容の詳細)
(財政部局担当)
本当にプラットフォームの力が弱まってるの?ネットフリックスとかアマゾンプライムビデオ、Spotifyなんかは絶好調じゃなかったっけ?単にニコニコが弱ってるだけじゃないの?
これまでずっと「プラットフォームとの連携」を続けてきたんだから、まずはコラボ先のプラットフォームを乗り換えるほうが自然じゃない?どうしてこれをしないで、いきなりプラットフォームを見捨てるの?
バーチャルユーチューバーのファンって本当に若者?統計資料あるの?こっちが用意した原稿通りに読んでくれる保証はあるの?そもそもバーチャルユーチューバーってアウトローさが売りだから自治体とタイアップした時点で魅力無くならない?もしこの事業のせいで人気落ちた場合の補填は?
声優ラジオは誰とタイアップするの?うちの自治体関係者のアニメ監督〇〇さんの意見は聞いた?〇〇さんの了解貰わずに進めても大丈夫なの?そもそも〇〇さん監督のアニメってラジオやってないけど、これって〇〇さんラジオ嫌いってことじゃないの?〇〇さんがうちにふるさと納税してくれてるって知ってるよね?機嫌損ねない?大丈夫?
(担当)
……確認します。
(財政部局担当)
明日の朝8時までにお願い。


第三段階 首長の一声

財政部局が認めてくれたら、首長に諮ります。
首長に対しては、財政部局から全部局分まとめて説明し、反応を伺います。
すんなり了承してくれれば問題ないのですが、首長が私論を語りだしたら一大事。その私論が実現可能か、大至急確認が必要になります。

【イメージ】
(財政部局)
オタク振興部ウェブメディア活用課においては、従来のプラットフォーム活用の効果をさらに高めるため、プラットフォームと連携を保ちながら、コンテンツの作り手とも連携を強化していきます。具体的にはバーチャルユーチューバー及び声優ラジオとのタイアップを実施します。予算規模は500万円です。実施に当たっては、〇〇監督の意見を適宜聞きながら進めていきます。
(首長) 
先日〇〇監督と会食したとき、彼が□□という新人の女性声優を推していた。来年秋に彼女を主役に起用して新たなシリーズものを始めるらしい。バーチャルユーチューバーは今年半ばには下火になる。□□を使って話題性をつくる側に回れ。500万円で足りるのか?成果を必ず出せ。
(財政部局担当)
□□という声優を知っているか?〇〇監督の次回作に起用されると首長が聞いたらしい。彼女を使ったタイアップ事業を作れ。声優ラジオに限らない。予算規模は最大2000万円まで認めるから、確実に成果が出る手堅いものを考えろ。明日6時までに必ず。
(課長)
マジかよ……(大至急〇〇監督に連絡して事実関係を確認、監督から□□に声掛けしてもらう確約をとり、2000万円の積算をでっちあげ、首長に「できます」と回答、)


第四段階 議会の承認

首長に了承されたら、最後は議会での審議です。
よほど政治的にグレーな問題でない限り、承認されます。


だいたいこんな感じですが、第三段階でのどんでん返しはほとんどありません。財政部局が首長の意向をだいたい把握しているので、第二段階を通り抜けるまでに、首長好みの内容に仕上がっています。

予算用務全般、とにかく期限がシビアで、時にはクソリプに付き合わなければならず、時間も精神力も奪われてしまうのです……

sns01_02


これは僕の独断なのですが、2016年は「
自治体フェイスブック元年」、2017年は「自治体インスタグラム元年」だったと思います。
新しいもの好きな自治体は従来から活用してきたのだろうと思いますが、全国各地で一斉に利用が始まったのが、2016年ないし2017年でした。

この時期に開設されたのは、主に「観光情報」「特定の農産品」「特定のイベント」など特定ジャンルに特化したアカウントです。
県庁・市役所としてアカウントを開設し、いろいろな行政情報をまとめて発信するわけではありません。

ちなみに、ツイッターは東日本大震災で「防災情報の共有に役立った」と大々的に報道され、これが印象強かったのか、気象情報や防災情報の発信目的で運用されていることが多いようです。

今年は動画コンテンツの活用が進んでいくと思います。ユーチューブでの公式チャンネル開設に始まり、先進的な自治体ではライブ配信も始まるのではないかと思います。


自治体にとってのSNSのメリット

特化型のアカウントが多いのは、自治体の広報系の部署がアカウントを管理しているのではなく、観光課や農政課などの情報発信したい部署がそれぞれ別個にアカウントを開設しているからです。
個別にアカウントを開設するメリットは、小回りが利くことです。関係者が少なければ少ないほど、内容確認に要する時間が短縮され、タイムリーな投稿が可能になります。
この「小回りが利く」「手軽である」という点が、自治体が考えるSNSの大きなメリットです。

加えて、基本的に費用がかからないことも、大きなメリットです。
新聞に公告を出すと、軽く100万円飛びます。チラシを印刷するのも、デザイン料含め20万円くらいは欲しいところ。
一方、SNSでの投稿は無料です。無料ですが、一定数の人間の目に触れます。
コストパフォーマンスは∞です。分母がゼロなので。

つまり、大半の自治体は、SNSを「無料で使える、手軽な情報発信ツール」として認識しています。


双方向メディアとして使っているわけではない

一方で、自治体には、SNSが双方向のメディアであること、つまり受け手から反応を得られるメディアであるという認識が薄いです。
炎上回避のため受け手からの反応を意図的・戦略的に無視するわけではなく、そもそも反応があるという前提が欠けていて、反応があることのメリット・デメリットを考えてすらいないのです。

自治体の総合アカウントよりも、特定のトピックだけを扱うアカウントのほうが、受け手にとってもコミュニケーションをとりやすく、発信側としてもコミュニケーションをとることで目的をより達成できるように思うのですが、自治体はまだその域に達していません。


管理職はSNSリテラシーが弱く、若手職員は節度に欠ける

僕は流行に無関心なオタクなので、同期職員との会話についていけないことはあっても、上司に対してジェネレーションギャップを感じることはほとんどありません。
しかし、SNSをはじめとしたインターネット文化への認識に関しては、すさまじいジェネレーションギャップを感じてしまいます。

個人サイト・サーチエンジン全盛期からインターネットに浸っているオタクなので、僕の感覚のほうは相当世間から乖離しているのも事実でしょう。それでも「えっ……」と言いたくなる場面がちらほらあります。

僕の部署の場合、観光系ということもあって「ツイッターは炎上リスクが比較的高い」等の知識は浸透しているのですが、「匿名性が高いから」「評論家的なユーザーが多いから」という周辺情報や、炎上しやすいツイートの特徴(主語が大きい、断定口調、言葉足らず)は、説明してもなかなか理解してくれません。
僕に比べて圧倒的にSNSを見ている時間が少なく、経験値(ケーススタディ)が足りないのでしょう。

一方若手の職員であれば、SNSの文化に即した運用ができるのでしょうが、今度は自治体の公式アカウントとしての「節度」が欠けてしまいます。SNSの運用も、全体の奉仕者としての仕事の一環です。受け手と双方向のコミュニケーションをとるにしても、適切な距離感や言葉遣いをしなければいけません。若手にはこのあたりの感覚がまだ育っていません。

つまるところ、自治体は、まだまだSNSを活用するには未熟な組織なんだと思います。


若手職員の役割

将来的には、管理職も含めて全職員がインターネットの流儀を身に着けることが望ましいのでしょうが、当面は若手職員がインターネットの流儀に外れないよう、上司を誘導しなければいけないと思われます。

ここまで長々と書いてきましたが、単純にSNS関連業務は若手職員が担当することが多いので、慣れておいたほうが無難です。僕も観光系部署に異動して、いきなり「インスタ映えを意識した仕事をしろ」と指示されました。

たいていの自治体は、SNSの運用を軽く見ており、若手職員に丸投げすることもあるようです。そうなったときに慌てないためにも、少しでも外に攻めていく仕事に関心があるのなら、SNS運用に慣れておいたほうがいいかなと思います。

「公務員 名刺」で検索すると、公務員は自腹で名刺を作らなきゃいけないから出し惜しみする」という記述がたくさんヒットします。

たいていの自治体において、これは事実です。
国の場合も、かなり当てはまります。

もちろん、例外もあります。
僕のような観光系の部署であったり、産業振興系のような民間企業と共同で仕事を進める部署では、名刺は重要な仕事のツールです。バンバン配ります。

それでもやはり自腹です。

僕の場合、
今年に入って既に名刺印刷代だけで1万円以上使っています。
(過去の部署では、名刺はカラープリンターで自作していました)


地方公務員に名刺は不要?

地方公務員の多くは、
制度や法令を執行するための仕組みの一部として仕事をしています。そのため、名刺を差し出して職員個人のPRをする必要は薄いです。

たとえば、僕が建設業許可の窓口担当だとしましょう。
申請者にとって重要なのは、僕という個人ではありません。窓口という機能が重要です。
つまり、僕の役職がどうであろうと、名前がどうであろうと関係ないのです。いっそ機械であっても構いません。
単に連絡先が知りたいだけなら、電話番号表を配布しているので、それをお渡しすれば済みます。

……という説明を入庁当時に受けたのですが、いまいち共感できずにいます。
確かに窓口業務の担当者が名刺を渡す必要は無い(銀行の窓口担当がお客さんに名刺を渡さないのと同じ)とは思いますが、相手も名刺を出してくるのであれば、交換するのがマナーかなと思ってしまいます。

先に例外として挙げた観光や産業振興の仕事は、仕組みというよりも人間味が強いです。こういった業務では、担当者どうしの個人の付き合いが重要になるので、公務員もしっかりと自分をPRしなければいけません。


なぜ自腹なのか?

僕が勤める県庁では、過去の監査で「公務員は自分個人をPRする必要が無いので、名刺は不要。よって、公費で名刺を作るのは不適切」という指摘がなされて以来、名刺は自腹で作ることになりました。
外部有識者から断じられてしまうと、とことん弱いんですよね……
いつの監査なのかはわかりませんが、ここ10年くらいは自腹で作り続けているようです。

このあたり、他の自治体の事情も気になるところです。

最近は名刺という媒体が広告宣伝に使えるのでは?という可能性が注目されていて、広告宣伝ツールとして職員の名刺を作成してくれる自治体も出てきているようなので、うちも早くそうなってくれることを祈っています。

【2019.9追記】
名刺をもらう機会は結構多いんですよね。
ただ、もらって名刺は職場の共有物扱いになるので、僕は別途名刺管理アプリで保管しています。
収集癖持ちオタク地方公務員の名刺アプリ利用状況とは? 

このページのトップヘ