当ブログの一番人気記事は相変わらず学歴ネタなのですが、ついで人気なのが資格関連の記事です。

勉強結果が形に残るという意味で、資格勉強はやりがいに満ちています。
しかし、地方公務員の実務には、なかなか役立ちません。

一方の実務知識は、どれだけ蓄えても異動のたびにリセットされてしまうため、自発的に勉強するほどのモチベーションが湧かないものです。

「地方公務員として働く中でライフワーク化できるくらい、どの部署でも役に立つ知識はないものか」と常々考えてきたのですが、ついに1つ思い当たりました。郷土史です。

攻める業務での郷土史

観光系・産業系の部署では、既に確立した地域の強みや魅力をさらに磨き上げるだけでなく、新たな素材の発掘も行っています。

郷土史は素材の宝庫です。
「当時は日本一」「日本初」といった文言がたくさん見つかります。
これらは全て、何も手を加えなくとも、最初からオンリーワン。
素材として非常に有望です。うまく調理できるかは別問題ですが……

地域住民とコミュニケーションをとる際にも、郷土史知識は役立ちます。
ボランティア団体の方々など、一緒に仕事をしていく住民からは、相手方の郷土史的事情を知っているだけで、ある程度は信頼を得られます。
友好的な関係を築くための第一歩です。


守る業務での郷土史

受け身・後ろ向きな業務でも、郷土史は役立ちます。
自治体が現在抱えている問題の発端は、地域特有の歴史事情にあることも多いです。
一般的な日本史(政治史)の知識だけしか備えていないと、本質を見落とすおそれがあります。

例えば、国有地の不法占拠。
河川敷の中に勝手に畑が作られている場面を考えます。
 
この場合、趣味の園芸で畑を作っているのか、明治維新や戦争中のどさくさの中で行政側が勝手に土地境界を定めたのかで、対応方針が変わってきます。
前者であればすぐに行政指導ですし、後者であれば登記を調べ尽くしてから低姿勢で事情説明です。
 
一般的な日本史政治史の知識しか無ければ、「どさくさ」という可能性にたどり着きません。
後者のようなソフトな対応は、思いつきもしないでしょう。

この例は非常に単純ですが、具体的に書くのが憚られるくらい生々しい郷土史由来の問題が現場には転がっています。
一般的な常識だけで判断すると、手痛いカウンターを食らってしまいます。

戦いでの郷土史

最も郷土史知識が必要となるのは、アンチ行政な方々との折衝業務です。
彼らはたいてい郷土史に精通しており、郷土史の中から行政批判のネタを拾ってきます

明治期に様々な規制法令が施行された結果、藩政期までは住民の自由に委ねられていた日常的行為の多くが、行政の規制下に置かれることになりました。
 
もちろん、完全に規制できるわけがなく、施行直後に揉めたまま現代まで法適用できていないケースが存在します。

郷土史を紐解くと、 こういった例外的なケースに第三者が気づいてしまいます。
例外を許している行政に対し、「怠慢では?」「特権的な取り扱いをしている」と攻撃するのです。

他にも、このあたりはありそうです。
  • 史跡の復元工事をしている自治体に対し、「行政の史料解釈は間違っている、このままだと間違った形に仕上がる」と工事差し止め
  • 災害発生時に、「『経験したことがない災害』と説明しているが、過去の災異史には同様の事例が載っている」と損害賠償請求

彼らの主張を理解し、対策を考えるには、郷土史の知識が欠かせません。
郷土史を知らないままに対応すると、相手のペースに飲まれます。
気づかぬうち不利な言質を取られてしまうでしょう。

郷土史を勉強するには?

どうやって勉強すればいいんでしょう?僕も知りたいです。

とりあえず、山川出版社から出ている『〇〇県の歴史』『〇〇県の歴史散歩』シリーズは、必読かと思います。

まずはこれらシリーズの、お住まいの地域の巻を読んで、通史を把握してはどうでしょうか?


埼玉県の歴史 (県史)
田代 脩
山川出版社
2010-11-01





埼玉県の歴史散歩
山川出版社
2005-03-01