先日、仕事で都内の自治体アンテナショップを回ってきました。
山形のショップで大判焼きを食べたり、石川のショップで金箔ソフトクリームを食べたり、群馬のショップに内田彩さんのCDが置いてあるのを見つけてオタクスマイルをこぼしたり……楽しい出張でした。

Googleアナリティクスによると、本ブログ読者の約3割が東京都民らしいです。
都民読者向けの記事も書いてみたいなと思いつつ、田舎地方公務員という立場上どうしても田舎臭いネタばかりなのを申し訳なく思っていたのですが、アンテナショップネタなら都民の皆様に還元できるのでは?とようやく気がつきました。

アンテナショップは概して原価率が高い

原価厨という生き方。
僕には到底真似できませんが、こういう筋の通った生き方には憧れます。
 
意外かもしれませんが、アンテナショップは原価厨にぴったりです。
アンテナショップで提供している商品もサービスも、(広い意味で)原価率が高いからです。

原価の説明の前に、まずは一般的なアンテナショップの費用負担構造を紹介します。

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だいたいのアンテナショップは、家賃は100%自治体が負担、実際の運営は別の事業体(民間企業や第三セクター)に任せています。
 
家賃負担と店舗運営が別であることがポイントです。

通常の小売店は、店舗運営を通して獲得して粗利益の中で、家賃も賄わなければいけません。
一方アンテナショップは、家賃は自治体が負担してくれます。
家賃に加えて、販促費を補助している自治体も多いようです。
(ソースは各道府県の予算資料です。各自治体のホームページで公表されています)

とはいえ、家賃・販促費の分だけ粗利幅が増えるわけではありません。 
家賃・販促費支出が削減される分、仕入高が膨張しています。

小売における「原価」とは、まさに仕入高です。
アンテナショップで販売している商品は、販売価格に占める仕入高(=広義の原価)の割合が高い、つまり原価厨的にお得なのです。

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仕入高膨張の原因は、主に流通コストの肩代わりそもそもの商品原価高です。
以下、それぞれについて紹介していきます。

通常なら消費者が負担する流通コストを肩代わりしてくれる

どこでもいいので実際にアンテナショップに行ってみて、目についた商品名をググってください。
その商品のメーカー通販サイトが見つかったら、値段をチェック。
大半の商品が、通販サイトの価格と同一のはずです。

ごく一部の例外を除き、アンテナショップでの販売価格は、現地商店での販売価格と同額にするという暗黙のルールがあります。

本来、現地販売とは異なり、東京アンテナショップで販売する場合には、東京までの商品配送料という追加コスト、つまり流通コストが発生します。
 
この流通コスト、食品セレクトショップのような専門小売店では、販売価格にこっそり上乗せされることが多いです。
しかし、アンテナショップでは、行政が絡んでいるという事情からなのか、販売側が負担しています。消費者には一切負担させません。

多くのアンテナショップでは、この流通コストを店舗運営者が負担しています。
運営者ではなく商品メーカーが負担しているところもあるようですが、誰が負担するにせよ、利用者的にはどうでもいいことです。
本当なら消費者が負担するはずのコストを販売側が肩代わりしている事情には変わりありません。

通販サイトと比較してみれば、お得さがはっきりするです。
メーカー直販サイトと同じ価格で、いつでも送料無料で買い物できるのです。

原価率の高い商品(高原価商品)が集まってくる

狭義の原価(商品製造に要する費用のみ)だけを見ても、アンテナショップはお得です。

アンテナショップでは、地元でも比較的小さいメーカーの商品を多く取り扱っています。
小さいメーカーの商品は、概して効率的な大量生産ができないため、原価率が高いです。

原価率が高いと、その分だけ下代(仕入れ値)も高くなります。
下代が高い商品は、通常の小売店ではなかなか取り扱ってくれません。
 
こういう商品を優先的に取り扱うのが、アンテナショップの使命です。
とりあえず販売してみて、売行きやお客さんの反応をメーカーに伝えて商品改良を促したり、バイヤーに紹介して一般流通に乗せてあげるのが、俗にいうアンテナショップの「販路開拓機能」、アンテナショップの主要機能です。
 
つまり、アンテナショップの役割上、原価率の高い商品が続々と集まってくるのです。

原価厨垂涎の飲食メニュー

アンテナショップの中には、レストランを併設しているものもあります。
このレストランも、原価厨的にはめちゃくちゃ美味しいです。

アンテナショップレストランの役目は、地元食材の販路開拓です。
販路開拓ということは、現在は販路が無い、つまり首都圏では通常流通していない食材を使うことになります。 
アンテナショップレストランのために、わざわざ地元から入荷しなければいけないのです。
 
このため、アンテナショップレストランで使っている食材も、販売商品と同じく、追加的な調達コストがかかっています。

そもそも、一般流通に乗らない食材は、概してお値段が高いです。
高価な食材を、高いコストをかけて調達するのです。原価率が高くならざるを得ません。
 

そもそもアンテナショップとは何なのか(陰謀論)

以下、ネタなので気楽に読み流してください。

最初に掲載した図を、ちょっと拡幅してみます。

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お分りいただけたでしょうか。
アンテナショップを通して、地方自治体に流出していった地方交付税が東京都へと還流しています。

アンテナショップのサービスの源泉は、各自治体住民の税金であると同時に、都民の税金でもあるのです。
「アンテナショップはお得」というよりも、「アンテナショップを利用しないと損を取り返せない」と表現する方が正確かもしれません。

東京オリンピック・パラリンピックが近づくにつれ、各アンテナショップ間の競争もエスカレートしていくことでしょう。
エスカレートすればするとほど、東京都民は得をします。

アンテナショップ、マジで目が離せないと思います。