「ジェネラリスト育成」という題目の下、地方公務員は数年ごとに部局をまたいで異動していきます。
しかし実際のところ、役所内にジェネラリストはほとんどいません。

業務を通して得られる知識なんて大したことない

本来の「ジェネラリスト」とは、いろいろな部局を経験することで幅広い見識を身につけているという意味合いなのでしょう。
しかし、地方公務員業務を通して得られる知識は、目の前の課題に対処するためだけの付け焼き刃にすぎません。
その業務の背景にあるアカデミックな知識や統計的情報のような基礎情報は、余暇時間を使って自発的に学習しない限り、身につきません。

単なる付け焼き刃は、すぐに陳腐化します。
次の部署に異動してアップデートする機会が無くなってしまえば、すぐに使えなくなります。
そのため、ジェネラリストに期待される「過去の部署で得た知識との相乗効果」なんて、期待のしようがないのです。

業務を通して得られる知識のうち異動後も役に立つのは、地名くらいではないかと思います。
参考:若手地方公務員(特に県庁職員)は「大字(おおあざ)」をたくさん覚えてほしい

役所の人事異動で育つ人材とは

役所の部局横断人事ローテーションによって出来上がる人材とは、「ジェネラリスト」ではなく「役所内調整のスペシャリスト」です。

役所内調整とは、端的にいうと、役所内の人間関係をうまく回すことです。

役所内のいろいろな部局を回るなかで、命令する側・命令される側・規制する側・規制される側などなど……色々な立場から人間関係を整えることになります。
この経験が、役所内調整能力を育んでいきます。

役所内調整能力の価値

鍛え上げられた「役所内調整のスペシャリスト」も、役所から出てしまえばただの人です。
地方公務員をやめた方のブログを見ていると、「役所内でしか通用しない人材は嫌だ」という理由で退職という方も結構いるようですね。

以前にも記事にしましたが、「役所内調整スキル」の有無が出世速度を決めます。
 
いつか超難関資格を取って、司波達也お兄様みたいに「庁内では評価されない項目ですからね」(CV中村悠一)って言い放ってみたいですね。
お兄様
 
調整能力を磨き上げた果てにプロネゴシエーターの域に達する方も、ごく一部存在します。
こういうプロフェッショナルを目指すのであれば、役所生活にどっぷり浸かるのもアリなのかもしれません。