以前、「なぜ財政・人事は出世コースなのか」を取り上げました。
参考:地方自治体の財政担当や人事担当はどうして出世ポストなのか?合理的な理由があるのか?

本ブログの中でも常にたくさん閲覧されている記事で、なんとなく共感してもらえているのではと思っています。

先日、本記事と同じ主旨をデータで立証した本を見つけました。

現代日本の公務員人事ーー政治・行政改革は人事システムをどう変えたか [ 大谷 基道 ]
現代日本の公務員人事ーー政治・行政改革は人事システムをどう変えたか [ 大谷 基道 ]


財政・人事・企画は出世ルート(証明済)

自治体の出世事情について触れているのは、同書の第8章です。

4県分の人事異動データを分析して、部長級に昇進する職員の多くが財政・人事・企画部門を経験していること、これら3部門の前に地方課(市町村への指導などを行う課)を経ていることを示しています。

財政・人事は情報を制する

後半では、TMS理論を使って、財政・人事経験者が出世することを裏付けます。

TMS理論では、以下のように考えます。
  • 人はコミュニケーションを介してお互いの持つ情報(記憶・知識)を利用し合う
  • 「誰が何を知っているか」という知識、つまりメタ知識によって、個々の知識が共有される
  • 相互に関係のある知識が組織内で分散している場合には、メタ知識を特定の個人に集める方が、仕事の効率が良い

TMS理論における「メタ知識を持つ存在」が、財政課や人事課に当たります。

財政課は予算査定、人事課は人事異動のプロセスによって、全庁から事業に関する情報を収集するとともに、「どの課の誰がどのような情報を持っているか」というメタ知識を蓄積します。

メタ知識は、地方公務員、特に高職位者にとって必須です。
役所の業務は多岐にわたっており、一人で全ての業務を把握するのは困難です。
そのため、どこの誰が今必要な情報を持っているのかというメタ知識が、業務を進める上で欠かせません。

財政・人事経験者は、業務で身につけたメタ知識を武器に、異動先でも成果を上げ、高い評価を受けます。
加えて、彼らはメタ情報の重要性を身を持って学ぶことで、人事・財政を離れてからもメタ情報を追い求めます。この姿勢もまた、業務での高評価に繋がります。
結果、昇進していくのです。

筆者は本文中で、「人事課と財政課は、将来のためのインプット(OJT)を行うことが可能な花形部署」と表現しています。
僕もまさにそうだと思います。

自治体人事の勘所はプレ財政・人事ポスト

財政・人事経験者が出世するのは誰の目にも明らかです。
僕が気になるのは、どうやって人事課・財政課候補を見つけているのか。
この部分は諸説飛び交っていて、真相は謎です。

定量的に能力を図っているのか?
各課の人事担当が推薦するのか?
特定の高位職員のフィーリングなのか?

この部分にこそ、各自治体ごとの人事システム特色や、時代的変遷が現れるのではと思います。
さらなる研究成果を待つばかりです。