小さい自治体と大きな自治体、どちらがホワイトな労働環境なのかという議題は、永遠の課題です。

好みに依る部分も大きいと思います。
小さな自治体であれば皆顔見知りで人間扱いされますが、大きな自治体であれば無個性な歯車にならざるを得ません。
前者を好む人もいれば、後者を選ぶ人もいるでしょう。

本稿では「職員数が少ない自治体」という意味で「小さい自治体」という言葉を使います。
小さい自治体は人口流出と少子高齢化が進んでいるとか、税収が先細りだとか、そういう社会情勢は抜きにして、勤務先としての評価を考えていきます。


小さい自治体の方が「一人当たりの業務の幅」が広い

自治体の仕事には自治事務と法定受託事務があります。
前者の仕事は、予算とマンパワーの制約を考えながら自治体の裁量で決める業務であり、身の丈にあった業務量に落ち着きます。

しかし後者は、自治体の規模にかかわらず同じ業務が規定されています。
「職員数500人以下なら免除」のような甘い規定はありません。

つまり、小さい自治体は、少ない職員数で、大きな自治体と同じだけの業務幅に対応する必要があります。
そのため、必然的に職員一人当たりの担当業務の幅も広くなります。

有事の際の業務量がえげつなくなる

業務の幅が広い=忙しい、というわけではありません。

業務の幅と業務量は比例しません。
法定受託事務として規定されていても、普段は全然発生しない業務もたくさんあるからです。

自治体の業務には、こういう「埋没した業務」がたくさん隠れています。

小さい自治体の職員は、職員数が少ないために、「埋没した仕事」をたくさん抱えざるを得ません。
そのため、いきなり猛烈に忙しくなるというリスクを常に抱えています。

埋没した仕事に対しては、役所内にノウハウが蓄積されておらず、担当者がゼロから始めなければいけません。
まずは制度概要を勉強して、決裁文書を作り……ハンコ一個もらうたびに質問責めに合い、調べて資料にまとめて……という途方も無い作業を強いられるでしょう。

「埋没した仕事」は自治事務にも眠っています。
大昔に制定された規制条例を漁るとたくさん出てきます。

リスクがあるならリターンもある

大きい自治体も小さい自治体も、職員数が増えるという方向性は無いと思います。
一方、役所に求められる役割はどんどん増えています。
これにつれて業務の幅も量も増えていくでしょう。

あくまでも僕の想像ですが、小さな自治体はこれから職員の個人プレーが増えていくと思います。
増え続ける業務をさばききれなくなり、管理職によるマネジメントが機能しなくなった結果、職員個人の熱意に組織が押し負けてしまうのです。

公務員という肩書きと自治体の予算を使い、職員個人のやりたいことができる。
首長のカラーにもよるとは思いますが、こういう自治体が増えるのではと予想します。

一方、定時帰りやルーティンな業務を希望するなら大きな自治体を選ぶ方が無難でしょう。