どこの役所の採用面接でも、志望動機を書いたり喋ったりすると思います。
地方公務員の面接試験は大体ネガチェックです。
まともに受け答えできれば、よほどまずいことを言わない限り大丈夫でしょう。

今年は新型コロナウイル感染症のせいで説明会も無く、OB訪問もしづらい状況です。
そのためインターネットで情報蒐集している方が多いでしょう。
ただ、インターネット上の指導動機の例文を見ていると、僕からすれば「よほどまずい」に該当する地雷ワードが散見されます。

例文そのものが間違っているわけではなく、多分、田舎自治体向けではないのです。
あくまで推測ですが、インターネット上の受験情報は、都会の大規模自治体向けに最適化されているのでしょう。
受験者総数が多くて情報としてニーズが高いですし、合格サンプルも集めやすいので、そうなって当然です。

ただし、田舎自治体の職員としては違和感があるのは事実です。
例文をそのまま使えば、面接官から「業界研究が足りない」と思われても仕方ないと思います。

これまで本庁内のいろんな部局をたらい回しにされてきた経験をもとに、部局ごとの地雷ネタをまとめてみました。
もちろん自治体ごとに地雷は異なります。
できることなら避けたほうが無難な話題、というくらいの感覚で受け取ってください。

地雷さえ避ければ使いやすい

産業振興:個別企業・個人への支援までは触らない

産業振興関係は、自治体ごとに業務内容がばらばらで、力の入れ具合も全然違います。
前向きな仕事が多いので志望動機にも使いやすいでしょう。受験自治体のこれまでの施策を調べて、その流れに沿って喋ることが重要です。

ただし地雷もあります。
まず、自治体は個別企業の経営改善までは深入りしません。
これは半公的機関である商工会・商工会議所の役割です。

経営者の高齢化、後継者不在、複業化が進んでいなくて経営基盤が脆弱……等々、地方の企業は色々な課題に直面しています。
自治体の役割は、こうしたが外部課題の解決に役立つであろう支援制度を整備することです。
コンサルタントのように企業経営に立ち入って社内の問題そのものを解決するのではありません。

<地雷を踏んでしまう志望動機>
経営学のゼミに所属して、教授の指導のもと企業の経営分析を多数こなしてきました。この経験を活かして、経営者や生産現場とも綿密にコミュニケーションを取りながら、中小企業の経営安定化に携わりたいです。

経営学の知見自体は大歓迎なのですが、「やりたい仕事」が役所とはかけ離れています。
補助金、講習会、アドバイザー派遣、マッチング機会の設置などの支援制度整備が役所の仕事です。

雇用・失業対策も注意が必要です。
こちらは主に労働局(厚生労働省)の仕事で、自治体の役割はあまり大きくありません。
特に失業者個人への支援は労働局の専売特許です。自治体は立ち入りません。

自治体が行う雇用施策では、最近だとUIJターン促進大学生の県外流出防止が熱いようです。
公務員試験受験者にとっては、ある意味最も身近な施策かもしれません。
自分自身がピンポイントにターゲットなのです。
深く考えなくてもオリジナルの意見がどんどん出てくるでしょう。
志望動機としても使いやすいと思います。

時間に余裕があれば、この本を読んでみてください。
地方企業の現状と課題がコンパクトにまとまっています。
産業振興部局の職員ならだいたい読んでいる基本書です。

文化振興:宗教との距離感に注意

産業振興と同じく、自治体ごとに業務内容がばらばらです。
受験自治体のこれまでの施策を確認して、その路線に沿いましょう。

ただし、政教分離の原則を忘れないよう注意してください。
いくら地域を代表する寺院であっても、自治体は宗教団体と距離を保たなければいけません。
面接でも、特定の寺院や宗教の名前を出すのは控えたほうが無難でしょう。


危機管理:ある意味成長分野

都道府県と市町村の役割分担がはっきりしています。
それぞれの役割をしっかり把握して、混同しないことが重要です。

危機管理業務に対してネガティブな印象を持っている方も多いかもしれませんが、福祉と並んで役所ならではの役割であり、かつ近年どんどん重要性が増してきている分野です。
県民の防災意識自主防災技能の向上わかりやすい防災情報の提供あたりは、志望動機としても使いやすいと思います。

観光:施策の考え方を押さえておく

過去記事を参照ください。



地雷は少ないがネタにもしづらい

環境:受け身な仕事が多い

都道府県と市町村の役割分担がはっきりしています。
それぞれの役割をしっかり把握して、混同しないことが重要です。
例えば廃棄物処理だと、一般廃棄物(家庭ごみ)の所管は市町村ですが、産業廃棄物は都道府県が担います。
<地雷を踏んでしまう志望動機>
家庭ごみを減らすためには、まずは無駄なものを買わないこと、後々ごみになる過剰包装のアイテムを選ばないことが重要です。アルバイトを通じて身につけた発信力を活かして、個々人の意識を変えていき、家庭ごみを減らして行きたいです。

都道府県の志望動機としてこんな発言をしてしまうと、研究不足と思われてしまいかねません。家庭ごみは市町村の仕事です。

環境部局の仕事は規制法令の運用がメインで、民間団体が取り組んでいるような先進的な環境保全活動までは、なかなか着手できていません。
そのため、環境保全への熱意を示せば示すほど、役所側としては温度差を感じてしまいます。
つまり、やる気をアピールしづらいのです。

SDGsの話題も避けたほうが無難でしょう。SDGsを意識した施策を打ち出している自治体はまだまだ少なく、面接官が知っているとも限りません。


厚生・福祉:都道府県ならではの役割を見いだすのが難しい

たくさんの制度があり、どれも複雑です。
市と町村で役割が違うもの(町村エリアは都道府県が担う)も多く、都道府県だけの役割が正直よくわかりません。反対に市町村ならではの役割ならいくつもあるのですが……
志望動機にするなら入念に下調べしてください。

地域医療(過疎地域の医療体制確保、病院ネットワークの再編など)は、都道府県ならではの仕事で、かつ最近熱い話題です。
新型コロナウイルス感染症を受けて既定路線の見直しが始まりそうで、今後さらに熱くなっていくのでしょう。

おすすめ志望動機としてインターネット上でよく見かける「少子化対策」は、市町村と都道府県の明確な役割分担がありません。
そのため、少子化対策だけでは、「どうして都道府県(市町村)なのか」という決め手に欠けます。
受験自治体のこれまでの取り組みを確認して、補強が必要です。


国際交流:役所の役割はものすごく地味

自分の強みとして語学力をアピールしたい方はたくさんいると思います。
留学のような経験や定量的根拠(TOEICの点数など)のような裏付けも作りやすく、話しやすいですし。
「語学力という自分の強みを生かしたい」という理由で国際交流部局を志望するのも、一見すると自然かつ論理的な流れです。

しかしここが落とし穴。国際交流の名を冠している部署であっても、職員自身はあまり外国語を使いません。
外国語を扱うのは専門の職員(たいてい非正規)で、正規職員は国際交流団体(日本人)との連絡調整のような事務仕事がメインです。
そのためせっかくの語学力が活きないのです。

<地雷を踏んでしまう志望動機>
留学経験を通して身につけた語学力を発揮して、国際交流部局で、県内に住む外国人の生活利便性向上に携わっていきたいです。

こういう活動をする民間団体を支援するのが役所の役割で、自ら企画立案するわけではありません。

「語学力を活かしたい」と言われたら、面接官は親切心で別の仕事を勧めたくなるでしょう。
役所には語学力を活かせるポジションが無いのです。

関連記事も置いておきます。





志望動機になりうるが自治体ごとの温度差が激しい

広報:あえてやらない自治体もある

広報業務への注力具合は、都道府県ごとに全然違います。
がっつり予算を注ぎ込んで、広告代理店を使ってイメージ戦略・ブランド構築に取り組んでいるところもあれば、公式ホームページ運用と広報誌発行くらいしかやっていない自治体もあります。

志望動機に広報ネタを入れるなら、受験自治体の広報業務へのスタンスを見極めなければいけません。
 
真剣に取り組んでいる自治体なら、「自分も感化された」等の体験談を交えつつ、熱い想いをぶつければよいでしょう。
一方、広報業務に力を入れていない自治体なら、そもそも志望動機にはしないほうが無難です。意図的に手を抜いている可能性が高いからです。

住民からすると、広報業務にどれだけ注力しようとも、生活水準の向上には繋がりません。
もちろん間接的な恩恵はあります。自治体の知名度が高まり観光客やふるさと納税が増え、自治体財政が豊かになり、行政サービスの質も向上するとか。
 
しかし住民の多くは、こんなまどろっこしい恩恵は求めていません。即物即金を尊びます。
そのため民意レベルでは、広報は無駄金という方向に傾きがちです。

首長や幹部職員にも、広報のような成果が不確実な事業にただでさえ少ない予算を配分するのは論外だと考える人がいます。
広報に力を入れていない自治体は、こうした事情があるために、あえて注力していないのです。

<地雷を踏んでしまう志望動機>
学生時代を東京で過ごしましたが、近隣の〇〇県や▽▽県はマスコミなどによく取り上げられていたのに、●●県は全然見かけませんでした。これでは●●県の魅力が伝わらないと悔しい思いをしました。これまでに学んだマーケティングの知見を活かして、●●県の広報を強化していきたいです。

広報をあえてやらない自治体に対してこんなことを言ってしまうと、致命的な見解の相違が生じます。研究不足と思われても仕方ないでしょう。

総合政策・企画:自治体ごとに立ち位置が全然違う、事前リサーチ必須

インターネット上では財政・人事と並んで神格化されている企画部局ですが、全ての役所がこうとは限りません。
企画部局の立場が弱いところもあります。

例えば長期構想や総合戦略の策定業務。
企画部局がリーダーシップを発揮して方向性や内容を決めている、つまり各事業担当課よりも企画部局の意見のほうが優越するところもあれば、単に各課から提出されたものを合体させているだけのところもあります。

僕の友人が務める某県庁では、企画部局は「ポエマー」「ホッチキス」と揶揄されているとのこと。
各課から提出された原案の細かい表現にケチをつけるだけで、自ら代案を示すこともせず、合体作業しかやらないらしいです。

志望動機として企画業務を語るのであれば、受験自治体の企画部局の業務内容や立ち位置を、OB訪問などで事前に調べておいたほうが安全です。

勘違い君と思われる

建設・土木:事務職は裏方

建設・土木系の部署は、技術職が主役です。
事務職の仕事は庶務経理がほとんどで、あとは用地買収、公営住宅賃料などの滞納管理、許認可法令担当がいるくらいです。
いずれも目立つ仕事ではありません。

<地雷を踏んでしまう志望動機>
    • 大学で学んだ都市経済学の知識を活かしてまちづくりに携わりたい。
    • 特徴的な景観で世界的に有名な▽▽国に留学して、伝統的な景観を守りつつも住民生活の利便性を向上させる術を学んだ。この知見を活かして、●●県の景観保全に携わりたい。

こういうきらびやかな仕事は事務職の役目ではありません。志望動機としても使わないほうが無難です。

農林水産系:事務職は裏方

建設土木系と同じく、ほとんどの業務で技術職が主役になります。
事務職は裏方です。庶務経理がほとんどで、あとは生産者(農業従事者)支援制度の運用や、許認可・法令担当が少しいる程度でしょう。
華々しい仕事はたいてい技術職です。

例えば、特産品の販路開拓やプロモーション。
一見事務職の仕事のように思えるかもしれませんが、実際は専門的な農業知識が必要なため事務職には荷が重いです。

「特産品のプロモーション」と聞くと、通行人に試食を渡したり、イベントにブース出展して販売したり、動画や冊子を作ったり……という、イベント会社のような仕事を想像するかもしれません。

こういった業務も実際ありますが、売り子や動画製作自体は役所の役割ではありません。だいたい外注します。
役所の役割は、特産品の魅力は何なのかを分析し、定義することです。
このプロセスには農学の専門知識が不可欠で、事務職では困難です。

加えてプロモーションでは、法人相手の営業活動にも注力しています。
消費量を増やすには、個人のファンを増やすよりも、小売や流通、飲食業界の法人顧客を作るほうがずっと効果があります。
さらに、法人相手の営業活動は、個々の生産者には難しいです。自治体というネームバリューと予算規模が必要で、生産者サイドからも需要のある事業といえるでしょう。

法人相手の営業では、職員はプロのバイヤーと対峙しなければいけません。
ここでも農学全般の知識が必要になります。事務職員では太刀打ちできない世界です。

生産者(農業従事者)と接触する仕事も、ほぼ全て技術職が担当すると考えて間違いないでしょう。
生産者も農業のプロです。事務職の付け焼き刃知識なんて求めていません。

総務:個人ではどうしようもない

総務部局系の話題(≒役所組織の話題)は、面接では避けたほうが無難です。
職員個人の思いでなんとかできるレベルの話ではありません。

しかも面接官(だいたい人事課)は、職員の中でも組織運営の専門家です。知識の深さでは敵いません。
ごりごり深掘りされて言葉に窮する場面が容易に想像できます。

おすすめ(無難)な志望動機ネタ

僕のおすすめは、
  • 産業振興(特に若者の県内就職促進)
  • 危機管理(特に自主防災支援)
  • 文化振興
  • 観光
です。

産業振興と危機管理は、役所ならではの仕事であり、かつ市町村よりも都道府県よりの仕事です。
差別化を意識しなくても、自然と都道府県の志望動機に仕上がっていくでしょう。

文化振興も使いやすいのですが、市町村との差別化が難しいです。
観光も使いやすいのですが、市町村だけでなく民間との差別化も考えなければいけません。
差別化ポイントをあらかじめ考えておく必要があります。