自治体の採用活動が本格化してくる頃合いです。
今年の情勢を見るに、自治体主催の個別説明会や大学主催の交流会のようなイベントごとは縮小されるかもしれません。
その分、インターネット経由で閲覧できる採用ホームページやパンフレットの重要性が増すでしょう。

採用情報に限った話ではありませんが、役所には独特の語彙体系があり、役所内でしか通用しない用語(サブロジ、問取りなど)もあれば、世間一般で広く使われている用語であっても役所特有の意味合いで用いられているケースも多々あります。
 

採用関係のような対外的に積極開示する情報の場合、役所内でしか使われない用語は念入りに除去(言い換え)します。
しかし、一般的に使われている単語までは気が回らず、特段補足することなくそのまま使われがちです。

対面での説明会であれば、その場で質問して深掘りできますが、インターネット上ではなかなか難しいです。
 
本稿では、自治体の採用パンフレットに頻出で、かつ一般的な用法通りに解釈したら誤解になりそうな単語について補足していきます。

企画:枠組み・計画づくり

企画業務はあくまでも大枠を決める段階を指します。
大枠を決めた後の段階、例えば「具体的な内容を詰める」「実際に運営する」段階は、企画業務には含まれません。
採用パンフレットには「●●の企画と実施を担当しました」みたいな文面がよく登場します。
「企画」と「実施」を併記する意味がよくわからないかもしれませんが、役所的には全くの別物です。


さらに、役所の担当職員が主役というケースはごく稀です。
政治家、経済界、地域住民といった利害関係者の意見を聞いて、大学教授のような有識者からの助言も受けつつ、落とし所を探るようなプロセスが採られるケースが多く、事務職員はあくまでも裏方に徹します。
担当職員の知見やアイデアが活かされるわけではありません。

もちろん、何事も裏方がいなければ回りません。目立ちはしないものの重要な仕事です。


支援:ルールに従ってカネとコネを提供する

事務職が担当する支援業務は、自ら所管している助成制度を使ってもらったり、別団体が運営している助成制度を紹介することを指します。
事務職員自らが専門家として知識やノウハウを提供するわけではありません。
行政という立場上、あくまでどの支援先に対しても原則公平に接しなければいけません。
そのため、支援先との距離感はあまり近くなく、俗にいう「伴走型支援」「プッシュ型支援」のようなスタイルではなく、基本的には受け身です。

事務職員の仕事は、助成制度の設計や運用です。
制度運用はルーチンワーク的なところもあり閑職枠でもありますが、制度設計は花形業務です。


会議:2種類ある

役所における会議業務は、個々のイベントとしての会議運営組織体としての会議運営という二つに大別されます。

前者の業務は資料づくり、会場設営、参加者の出欠管理あたりがメインで、後者は組織体の経理や文書管理がメインです。

いずれにしても社会的ステータスの高い方々を集める業務であり、揉め事が起きないよう気を遣います。
(下っ端だけの集いは「打合せ」「ミーティング」などと称し、「会議」とは呼びません)

PR:なんらかの情報を対外的に積極的に開示すること&開示される情報(コンテンツ)作成

PRという単語は辞書的な意味よりも幅広く使われています。

広報活動そのもののみならず、広報活動に使う冊子・動画制作や観光施設運営のような業務、つまり広報されるコンテンツの作成も、ざっくりPRの一言で片付けがちです。

しかも、こういうPR業務の実態は、役所ごとにバラバラです。
職員自らが手を動かしている自治体もあれば、民間企業に丸投げしている自治体もあります。
職員に裁量がありボトムアップで作り上げている自治体もあれば、広報やブランディングの専門家に順服して職員は単純作業するだけの自治体もあります。

つまり、PR業務という言葉だけでは「役所外部に情報開示するプロセスのどこかに何かしら関わっている」程度の情報量しか無いのです。
具体的な内容は読み取れません。詳しいことが知りたければ、担当職員に直接尋ねるしかないと思います。

調整:全て

PR以上に幅広く、無秩序に使われている単語が「調整」です。
具体的に説明すると長ったらしくなるものは全て「調整」の一言で済ませている、と理解して差し支えないと思います。