「地方公務員 出世ルート」と検索すると、どのサイトでも「財政」「人事」が真っ先に挙げられています。

僕の知る限りでも、この二つを担当した職員は、同期入庁職員の中でも出世が早いですし、最終到達点も高いです。


これらの業務は、忙しいうえにストレスが半端ないと聞きます。

これらの業務を数年間こなせれば、プレッシャーに耐え切ったという意味で、他の職員よりも優秀とみなせ、出世できるという見方も可能でしょう。
 

ただ、僕はさらに、これらの業務への適性が、自治体の管理職に必要なとある能力の基礎になっており、財政人事業務をうまくこなせる→管理職としてもある程度はうまくこなせる、という図式が成立するために、出世するのだと思っています。


(注)以下、財政担当=予算編成の担当と読んでください。


調整能力の試金石


その能力とは、様々な要素を同時に考慮しながらたくさんの条件をクリアしていくという、高度な調整能力です。

端的に言えば、限りなく最良の折衷案を作り出す能力でしょう。


財政担当を例に見てみます。

役所には色々な人間の要望が寄せられており、その要望が各部局を通して、予算要求という形で財政担当に集約されます。

日本国憲法に照らして、国民皆平等だと考えると、どの要望も無下にはできません。

しかし、自治体予算には限りがあり、優先順位をつけざるを得ません。

どのように優先順位をつければ良いかを判断する、つまり「なるべくたくさんの要望を叶えつつ、首長や関係団体や議会の了承を得られ、これまでの施策との整合性が取れる形」を作るのが、財政担当の仕事、予算編成業務です。


これはまさに、調整能力の見せ所です。


各部局でも、このような調整はどこでも発生します。

例えば、僕の所属する観光部局では、複数ある観光名所のうち、どこをパンフレットの表紙に使うかを毎年考えなければいけません。

地域住民やボランティア団体、地域の商業団体など、いろいろなところから「自分のところで頼む」という要望がありますが、その中からどれか一つを選ばなければいけません。

もちろん、自治体としても、「今年はこの観光地を推したい」という要望(意思)があります。


これらたくさんの要望を、最終的にどのように処理するのか。

案は担当職員が考えますが、最終決定を下すのは各部局の管理職です。

スケール感は異なるものの、財政担当の予算編成業務と同種の能力と感覚が求められると思います。


調整能力は、このようにして、各課の管理職にも欠かせないものです。


人事担当も同様に、人というリソースを配分する仕事です。財政担当と同じく各部局からの要望が寄せられ、それらをうまく処理しなければいけません。同じく調整能力が求められます。

部局ではなくポスト


今回の記事では、あえて「財政部局」ではなく、「財政担当」「人事担当」と表記しました。

出世ポストにあたる担当業務は、これらの部局の中でも限られていることを明示したく、このような表記にしました。


財政部局では、前項で説明したとおり、予算編成担当です。各部局から上がってくる予算要求を審査し、要求内容自体の論理性、これまでの経緯や他部局とのバランス、政局との関係などなど……色々な要素を考えながら部局ごとの予算額を決める仕事です。
 

人事部局では、組織定数担当と人事異動担当です。組織定数担当は、人員面での予算編成担当のようなもので、各部局からの希望職員数を調整して、各部局の人数を決める仕事。人事異動担当はそのまま、どの職員をどの部局のどのポストに充てるかを決める仕事です。



とは言え、予算編成と組織定数編成は全く同種の業務だと思いますが、人事異動だけは仕事の質も求められる能力もちょっと違う気もするんですよね……整理できたら別記事で書いてみたいと思います。出世ポストであることは間違いないのですが……