ワードやエクセルのファイルには、作成者が入力した中身のほか、作成者や作成日、最終更新日なども、パソコン側で自動で記録しています。
これらは「プロパティ」を開くと見られます。
これらの自動で記録される情報をまとめて「メタデータ」と呼びます。

デジタルカメラで撮影した写真にも、メタデータがたくさん含まれています。
「プロパティ」を開くと、撮影日時や機種名、シャッタースピード、焦点距離などが記録されているほか、GPS機能が内蔵されたカメラであれば、位置情報も入っています。
これらをまとめて「Exif情報」と呼びます。
写真好きの間では常識なのですが、そうでない方にとってはどうでもいい情報で、あまり知られていません。

あまり知られていないものの、このexif情報を野放しにしておくと、トラブルの原因になりかねません。
今回はExif情報丸出しのリスクについて紹介します。
本記事を読んで、「Exif情報を消す」一手間をかける公務員が一人でも増えてくれることを祈っています。

Exifは誰でも見られる


Exif情報は、画像をダウンロードしてプロパティを覗けば、誰でも確認できます。
ポインタを合わせるだけでExif情報を覗けてしまうGoogle chromeの拡張アプリもあります。

数年前、インターネット上にアップされた写真のExif情報から個人情報を漁る悪い人が問題になりました。幸いにも、現在は多くのWebサービスでExif情報自動削除機能が装備されてきて、実際にトラブルになるケースは減っているようです。
フェイスブックやインスタグラムは勿論、ライブドアブログも、Exif情報を自動で削除してくれます。

しかし、地方自治体のサイトコンテンツ管理システム(CMS)には、自動削除機能がついていないものがまだまだ多いようで、Exif情報丸見えのサイトを時々見かけます。

Exif丸出し事例

最近見つけたのは、このサイト。
http://www.kumamon-tokyo.com/category/blog
 
くまモンの東京活動記録ですね。

キャプチャ

こんな風に、撮影日時や、iPhone7で撮影したことがわかってしまいます。

この写真の場合であれば、わかったところで全く問題ありません。
ただ、Exif情報丸見えだと、トラブルにつながるケースも想定されます。

例えば、もしカメラの内部時計がずれていて、Exifデータ上の「撮影日」が実際の撮影日から1日遅れていたとしましょう。
サイトの閲覧者からすると、本文では4/28のイベントについて書いてあるのに、写真は4/29に撮影されたもので、ちぐはぐに見えてしまいます。
これでは、「このイベント、本当はくまモンが来ていないのでは?」と疑われても仕方ありません。

こういうトラブルの可能性を根絶するためにも、Exifデータを事前に消しておいた方が安全だと思います。
消すのは簡単です。右クリックで「プロパティ」を開き、消したい項目にチェックを入れれば完了です。
枚数が多いと手間がかかりますが、その時はフリーソフトを使えばいいでしょう。


公文書管理との関係

Exifデータの取り扱いは、今話題の公文書偽造問題にも関連してくるかもしれません。
 
公文書の定義自体いろいろあるのですが、だいたい「公務員が職務として取得・作成した紙文書及び電子データ」で、「組織的に保管しているもの」が公文書に該当します。
この定義によると、職員が撮影した写真データも、「職務上作成したもの」で「組織的に保管」されていれば、公文書にあたります。
具体的には、自治体主催のイベント風景を撮影したもので、職場の共用サーバーに保管されていれば、その写真データは公文書です。

保管中の公文書を事後に書き換える行為は、公文書の偽造です。
これは電子データでも同じです。
僕は、「Exifデータの削除」も、この「データの書き換え」という禁止行為に該当するのでは?という議論が、いずれ交わされるのでは?という予感がしているのです。

例えば、水害訴訟。
川が溢れた瞬間の時刻が、原告(住民側)と被告(行政)との間で見解が異なり、争点になっているとします。
 
原告側は、13:00に川が溢れたと主張し、これは12:58に行政側が実施した「ダムの緊急放流」が原因だと主張しています。
一方行政側は、川が溢れたのは12:55で、ダムの緊急放流とは関係が無いと反論しています。
行政側は、その証拠として、12:55に撮影した写真を提示しています。
この写真では、すでに川が溢れています。

ここで、原告側に写真に詳しい人間がいたら、その写真の電子データを公文書公開請求することでしょう。
入手次第、Exifデータを確認します。
もし「撮影日時」が12:55を過ぎていれば、被告は虚偽の主張をしていることになり、一転攻勢を仕掛けられます。
また、Exifデータが削除されていれば、「わざわざ削除するという一手間かけたということは、やましい事情があるに違いない」という攻撃を仕掛け、世論を味方につけることができます。


今のところ、Exifデータが原因の行政関係トラブルは聞いたことがありませんが、いずれ問題になるような予感がしています。 
何らかのルールができるまでは、安全側をとって、公開するものは少なくとも消しておく方が無難かなと思います。