キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

カテゴリ: 公務員になるまで

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長く不毛な試験勉強に耐えきり、今は自由を満喫していることと思います。
しっかりエンジョイしてください(羨望)

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最近少しずつ「定年延長で採用者数が減少するぞ!!!!」という煽りを見かけるようになりました。

ただ、具体的にどれだけ減るのかは、今のところ見つかりません。
そこで、現時点で入手できる情報を用いて、果たしてどれくらい減りうるのかを考えてみました。
あくまでも人事エアプによる試算です。

採用者数=退職者数

地方自治体の採用は、基本的に退職者補充です。
退職者見込み数と同数を採用します。
 
例えば2022年度中に100人退職する見込みだとすると、2022年度中の採用者(2023年4月から勤務スタートの人たち)は、100人がベースになります。
2022年度中に100人減る代わりに、2023年4月1日から新たに100人を雇い入れることで、総人数をキープするわけです。

定年延長期間中は、2年に1度のペースで定年退職者が発生しない年度、つまり退職者数が激減する年度が挟まります。
退職者数の減少が確実であるために、採用者数の減少も確実視されているのです。

約5割が定年退職者

総務省の「令和元年度 地方公務員の退職状況調査」(リンク先はPDF)によると、全退職者に占める定年退職者の人数は、54.5%とのこと。

以下、表現をシンプルにするため、全退職者に占める定年退職者の割合は約5割と置きます。
さらにシンプルにするため、職員の年齢構成は均一(どの年齢でも職員数は同一)と仮定します。

スクリーンショット 2022-02-11 10.32.24

 

定年が延長されようとされまいと、定年退職以外の退職者数には、直接の影響はありません。
ひょっとしたら「老いぼれを優遇する組織に未来は無い!」と若手の離職が増えたりするかも知れませんが、現時点では定量的に予測できないのでスルーします。

超単純に考えると、定年が引き上げられる年度(令和5,7,9,11,13年度)は、退職者数が最大で約5割減少するわけです。

先述したとおり、地方自治体の採用は基本的に退職者補充です。
退職者数が5割減るということは、採用者数も5割減ることになります。

つまり、またまた超単純に考えると、定年が引き上げられる年度(令和5,7,9,11,13年度)は、採用者数が最大で5割減少するかもしれないわけです。

ただし、その前後の年度(令和4,6,8,10,12,14年度)は、定年退職者が発生するので、新規採用者数は減りません。
新規採用者数は、令和4→5にかけて半減、令和5→6にかけて倍増、令和6→7にかけて半減……というサイクルを繰り返します。

不確定要素①:年度間で平均化するか?

めちゃくちゃ単純に考えるとこんな感じになりそうなのですが、実際の運用はもっと複雑になると思われます。
この方法だと職員の年齢構成が歪んでしまい、組織運営に支障が出るからです。

採用試験に関しても、「1年ずれるだけで倍率が全然違うのは非効率・不公平だ」という批判が上がるでしょう。

そこで、多くの自治体では、採用者数の減少幅を平均化するだろうと思われます。
「2年に1度のペースで新規採用者数を半減させる」のではなく、例えば「2年続けて新規採用者数を25%減少させる」ことで、年度間の採用者数の増減幅を縮小するのです。
定年延長と採用者.001


僕がこれまで「令和4年度の新規採用者数は減りそう」と呟いているのも、この発想がベースです。
令和5年度に新規採用者数を5割減らす代わりに、令和4年度と5年度に25%ずつ減らす……という人事戦略を採る自治体がそこそこあるのでは?と勘繰っています。

この作戦では、令和4年度は退職者>採用者となるため、令和5年度は欠員が生じます。
この分は会計年度任用職員で穴埋めするのでしょう。

反対に、令和4年度の採用数は減らさず、令和5年度〜14年度にかけて25%採用数を減らす、いわば採用枠を前倒しするような運用も考えられます。
こちらだと令和6,8,10,12,14年度は定員をオーバーしてしまうので、自治体としてはあまり気が乗らない気がします。

不確定要素②:定年延長を受け入れない職員の割合

ここまでの妄想は、満60歳を迎える職員が全員定年延長を受け入れる前提で展開してきました。
これまで定年退職してきた職員が「全員」残留するために、採用者数が圧迫されるという前提です。

しかし実際は、定年延長を受け入れず、満60歳で退職する人も存在するはずです。
つまり、定年延長年度(R5,7,9,11,13)であっても、退職者数が5割も減るとは限らず、ひいては採用者数の減少幅もより小さいかもしれません。
 
定年延長と採用者.002


「定年延長を受け入れず、満60歳で退職する人」の割合が高ければ高いほど、退職者数が増えるため、採用者を減らさずに済みます。
極端な話、この割合が100%であれば、定年延長は完全に形骸化して、これまでと全く変わらないわけです。
反対に0%であれば、全員が定年延長に従うことになり、5割の退職者減・採用者減が現実化するでしょう。

「定年延長を受け入れず、満60歳で退職する人」の割合は、現時点では全然読めません。
かつ、自治体によっても大きく差があるでしょう。

不確定要素③:現時点のフルタイム再任用移行率

自治体の職員の定員(職員数の上限)は、条例で決められています。
条例上の定員には、フルタイム勤務の再任用職員も含まれます。
(短時間勤務の再任用職員は含まれない)

つまるところ、現時点でも「61歳以上の職員」は、定員の中に存在するのです。
今回の定年延長は、この「フルタイム勤務の再任用職員」が「61歳以上の正規職員」に置き換わっていく過程だともいえます。

退職者補充という考え方は、職員数(定員)を一定に据え置くことが前提です。
定員を一定にするために、退職者数が少ない年度には、採用者数を減らすわけです。
定年延長のせいで採用者数が減るのは、これまで定年退職していた職員が退職しなくなり退職者数が減る、つまり61歳以上の職員が増えて定員を圧迫するからです。

ただし実際のところ、既に定員の中には「フルタイム再任用職員」という形で、一定数の61歳以上の職員が存在します。
定年退職しているものの、実は定員の中には残っているわけです。
そのため、定年延長が始まっても、フルタイム再任用職員の人数分はもともと定員に含まれているので職員数増とはならず、定員を圧迫しないのです。

職員数が増えないのであれば、採用数を減らす必要もありません。
つまるところ、フルタイム再任用職員が現状で多い自治体ほど、定年延長による採用者数の減少幅が小さいと言えるでしょう。

定年後にフルタイム再任用勤務へ移行する職員の割合は、自治体ごとにまちまちですし、同じ自治体の中でも年度によってばらつきがあると思われます。
これも不確定要素の一つです。

暫定的結論:最大25%?

現時点で入手できる公表数値ベースでは、
  • 2年に一度、最大で50%減少させる
  • 多くの自治体では、採用者数を平均化するため、10年間にわたり最大で25%減少する
  • 令和4年度採用から減らす自治体もあるかもしれない(最大25%減少)

までしか言えません。
あくまで「最大」であり、 実際はここまでは減らないと思います。

定年延長期間中の採用戦略は、今まさに各自治体の人事部局で真剣検討している最中でしょう。
そもそも使えるデータが少なく、悪戦苦労しているところなのではと思われます。 
人事通な方が書いたガチ解説が読みたいところなのですが、今のところ見つけられていません。
人事に詳しいほど、不確定要素がありすぎるために、確たることを発信できないのでしょうか……?


あくまでも僕の観測範囲内の話ですが、ここ数年で「新規採用職員に占める予備校利用者の割合」が高まってきています。
出題傾向が変わって独学だと合格しにくくなっているのか、予備校費用を惜しまないくらいに公務員志望度が高い人が増えているのか……理由はわかりませんが、とにかく予備校利用者が増えて、独学合格者が減っているようです。

僕はこれまで半ば趣味で色々な資格試験を受けてきましたが、地方公務員試験はかなり難しい部類に入ります。
凡人が努力でなんとかなるレベルの限界だと思います。



「公務員になりたい」のであれば、予備校に通うのが確実でしょう。
僕自身は予備校に通っていませんが、予備校利用者達からは「講義をサボらず受けて与えられた課題をきっちりこなせば合格できる」と聞きます。

一方、独学の場合だと、使用する教材、スケジュール、到達地点(完成度)の設定など、すべてを自分で管理しなければいけません。
予備校であれば最初から用意されていた「課題」を、自ら設定するところから始めるのです。

予備校利用にせよ独学にせよ、目的は同じ「公務員試験突破」です。
ただしプロセスはずいぶん異なります。
どちらのプロセスにもメリット/デメリットがあり、好き嫌いがあるでしょう。
いずれにせよ合格すればいいのです。

ただ、公務員試験に合格した後、つまり地方公務員として実際に働くにあたり役立つのは、圧倒的に独学経験だと思います。
地方公務員人生には「独学」がつきものだからです。

「教えてもらえる」環境ではない

過去の記事でも触れましたが、地方公務員の研修は適当です。

他人に仕事を懇切丁寧に教えるだけの余裕がありませんし、そもそも教えられるだけ詳しい職員がいないケースも多々あります。

「公文書の書き方」「議会対応」「出納規則」みたいな全庁共通のルールであれば、他の職員から教わることができますが、地方公務員の仕事(特に本庁)には「庁内でも自分しか携わらない仕事」がたくさんあります。
制度の運用や許認可業務あたりが典型でしょう。

こういう仕事の中身は、同じ係内の同僚や、直属の上司であっても、全然わかりません。

唯一わかるのは前任者ですが、前任者も全知全能というわけではなく、せいぜい数年担当していただけです。
教わるにしても基本的事項程度が限界で、予備校講師やテキストみたいに全幅の信頼を寄せることはできません。

誰も知らない「新要素」がどんどん増えていく

旧態依然というイメージの強い役所仕事ではありますが、それでも日々変化しています。
法令や制度が改正されてルールそのものが変わったり、新任の上司が業務フローを自分好みに変えたり……
理由はどうであれ「これまで通り」が通用しなくなるのです。
民間企業では当たり前の事象なのでしょうが、役所でもよくあります。

こういう場合は、誰からも教わることができません。
誰もが自分と同レベルの知識しか持っていないために、講師役が存在しないのです。

ルールを知る=インプットはされど重要

地方公務員の仕事はルールに基づくものが多く、「調べればわかる」「どこかに答えがある」仕事が多いです。
センスに従って判断するとか、ロジカルシンキングを駆使して答えを導出するのではなく、ルールをインプットすることがまず必要です。

つまり適切なインプットさえできればこなせるものが多いですし、反対にどれだけ地頭が良くてもルールのインプットを怠ればこなせないのです。

インプットの方法は様々です。
中でも「教わる」のは、誰もが義務教育にて経験しているインプットであり、馴染み深いものでしょう。
 
しかし前述のとおり、地方公務員という仕事においては、「教わる」がうまく機能しません。
そのため、否が応でも独学せざるを得ないのです。

独学によるインプットは、地方公務員人生においてずっと続きます。
少なくとも異動のたびにみっちり独学しなければいけない時期がやってきます。

最初にも触れたとおり、地方公務員試験はかなり難しい部類であり、独学合格には相当高度な「独学力」が必要でしょう。
逆にいえば、独学で地方公務員試験を突破できた方は、予備校利用者よりもハイレベルな独学力が備わっているのです。


そのため、やる気さえあれば、予備校利用者よりも高効率でインプットが可能なわけであり、インプットの重要性が高い地方公務員という職業においては、それだけ有利だと言えるでしょう。

もちろん、地方公務員の仕事は、ルールに基づく業務だけではありません。
むしろコミュニケーションに属するもののほうが多いと思います。
とはいえ「ルールの独学」は基礎中の基礎であり、「教わらないと理解できない」というタイプの方は、試験を突破できても実務で苦労するかもしれません。

地方公務員志望者にとって、「自分が本当に地方公務員に向いているのかどうか」は、非常に気になるポイントでしょう。

地方公務員になるには、筆記試験対策のために、貴重な時間とお金を投じなければいけません。
そのため、「せっかく就職したのに向いていなくて退職した」あるいは「向いていなくて毎日苦痛」という事態を避けたく思うのは必然でしょう。
楽しく働きつづけられなければ、いわば「投資に失敗」なのです。

地方公務員は部署によって業務内容が異なり、求められる能力も適性も異なります。
ある部署には向いていなくとも、別の部署にはピッタリ嵌ることも多いです。
「あいつ観光課は適任だったけど環境課には向いていないよね」みたいな会話は日常茶飯事です。

とはいえ、どんな部署でも影響してくる「普遍的な適性」も、僕は存在すると思っています。
なるべく網羅的に紹介していきたいと思います。


重要度★★★:心労祟って辞めざるを得ないかも……

まずは、役所という職場環境に致命的に向いておらず、休職・離職のリスクが高いタイプから触れていきます。

「地方公務員はガツガツしておらず穏やか」という印象を持っている方も多いかもしれません。
実際、地方公務員には穏健な人が多いと思います。

しかし、「働いている職員が穏やか」だからと言って、「役所という職場も穏やか」とは限りません。

役所勤務では、公務員以外の方々とも多々接触します。
「役所稼業で接触する公務員以外の方々」は、むしろ過激派・激情派が多いです。

「のんびりして穏やか」な職場を期待して地方公務員になった方は、面食らうと思います。
そして、意外と激しい職場環境に順応できなければ、働き続けられないでしょう。


粗暴な言動が無理

役所は常に外部からの暴力に晒されています。
形式は様々です。
窓口で暴れたり、電話越しで脅迫してきたり、出張先でモノを投げつけられたり……事例を挙げだすとキリがありません。

こういう粗暴な言動とは、どんな部署にいようとも遭遇します。
遭遇頻度は部署によってかなり異なるとはいえ、無縁な部署はありません。

たとえ役所外部とは一切関わりのない内部管理専門の部署であっても、「お前らが無駄な仕事を作るせいで現場の仕事が遅れるんだ、お前らは社会の癌だ!」みたいな罵倒が定期的に飛んできます。

実際に肉体的暴行を受けることまでは滅多にありませんが、
  • 怒鳴られる
  • 大きな物音を立てられる(机を叩く、椅子を蹴飛ばす等々)
  • モノを投げつけられる
  • 威圧的態度(机に足を乗せる、唾を吐く等々)
  • 暴行のポーズを見せられる(拳や杖を振り上げる、手指の関節をポキポキ鳴らされる、目の前で空き缶を握り潰す等々)
  • 睨まれる
  • 舌打ちされる
少なくともこのあたりの粗暴な言動とは、地方公務員として働く以上、新規採用時から退職するまで、ずーっと付き合わざるを得ません。



僕自身、就職前は「怖いなあ」と不安だったのですが、今のところはなんとかなっています。
役所には暴力対処のノウハウがきちんと蓄積されており、数をこなすうちにどんどん耐性が出来上がってきます。
暴力耐性という意味では、確実に成長できていると思います。



地方公務員として働き続けるには、暴力耐性は必須です。
普通に勤務していれば自然と身につきます。

ただ、物音にものすごく敏感だったり、暴力に対して強い忌避感がある方もいらっしゃると思います。
そういう方は確実に地方公務員に向いていません。
耐性が身につく前にトラウマを抱えてしまい、メンタルがもたないでしょう。
僕の勤務先県庁でも、これが原因で毎年1人は新人が辞めているようです。


感受性が強すぎる/共感しすぎる

行政サービスの主要顧客は「困っている人」「苦しんでいる人」です。
人生順調で健康でハッピーな方は、基本的に役所には用がありません。

この傾向は、部署を問わず共通します。
生活保護や国民健康保険のように「セーフティネット」として明確に位置付けられている行政サービスのみならず、産業振興や観光のような一見前向きな分野であっても、救済的要素の強い施策がたくさんあります。(制度融資あたりが典型でしょう)

そのため、地方公務員として働く中で出会う人は、何らかの苦悩を抱えている方が多いです。
彼ら/彼女らの苦悩を、施策を用いて解消することが、まさに地方公務員の仕事といえるでしょう。

他者の苦悩を解消するためには、まずその苦悩を知るところから始めます。
苦悩の原因となった哀しい過去、今まさに感じている負の激情、世の中の理不尽に対する怒りと嘆き……等々、たくさんの「暗い情報」をインプットしなければいけません。

というよりも、役所にいると「人々の苦悩」や「暗い情報」が自然と耳に入ってきます。

感受性が強く共感性の高い方は、日々舞い込んでくる「人々の苦悩」「暗い情報」を処理しきれない危険があります。
悲しいニュースを見聞きするたびに気が滅入ってしまうようなタイプの方は要注意です。
役所という職場は、その悲しいニュースを毎日無理やり聞かされるような環境です。

個々の案件に心を痛めていたら、どんな強者でも精神が保ちません。 
他者の苦悩に対して機敏すぎると、地方公務員は続けられないでしょう。


重要度★★:うまく仕事をこなせず辛いかも……

続いて、地方公務員の業務特性と能力的に合わないタイプに触れていきます。
「仕事ができない奴」との烙印を押され、肩身の狭い思いをしかねないタイプです。

文章を読むのが苦痛

公務員は毎日、大量の文章を読まなければいけません。
メール、法令、通知文、マニュアル、参考書籍、外部から提出された申請書などなど……文章の形式は色々、書き手も色々です。
読みやすい文章もあれば、小難しくてわかりにくい悪文もあります。

文章を読むのが苦痛であれば、地方公務員の仕事も苦痛そのものでしょう。
文章読解が苦手で時間がかかる方は、それだけ業務に時間がかかることになります。
文章が嫌いな方は、業務時間中ずっとストレスを感じるでしょう。
何より、文章の意味を理解できなければ、仕事が進みません。

地方公務員実務で触れる文章と比較すると、公務員試験の問題文のほうがはるかにわかりやすいです。
正解がひとつに定まるよう、細心の注意を払って作文されているからです。
「問題文を読むのが苦痛」と感じている方は、採用された後も苦労すると思います。


スケジュール管理(イレギュラー対処含む)が苦手

地方公務員の仕事の多くは、定量的な成果を求められません。
「やれば終わる」ものがほとんどです。
そのため、いかに「きちんとやる」か、無理なく無駄のない段取りを組むことが非常に重要です。

ここでいう段取りとは、一日または一週間程度の短期間の予定管理から、数年単位のプロジェクト全体の舵取りまで、あらゆる時間的スケールを含みます。
長期間の段取りスキルが必要な職員はごく少数でしょうが、短期間の段取りは職員全員に求められます。

段取りが重要……とはいえ、地方公務員の仕事はいつも他律的です。
役所の内(上司や他部署)からも、役所の外(住民やマスコミ)からも、急な案件がどんどん降ってきます。

そのため、どれだけ完璧な段取りを組んだとしても、すぐに崩されます。
たった1日でさえ目論見通りには過ごせません。予定の7割も達成できれば良い方でしょう。
当初の段取りが崩れても、柔軟に動いてリカバリーしなければいけません。

つまるところ、地方公務員であるなら、どんな部署に配属されようとも
  • 締切日から逆算して仕事の段取りを組み
  • それに従って仕事を進めていきつつ
  • イレギュラーが発生して段取りが崩れても臨機応変にリカバリーして
  • 締切には必ず間に合わせる
こういう一連の流れが連日発生します。

この流れを苦手に感じるタイプ、例えば
  • 計画を立てるのが苦手で万事行き当たりばったりなタイプ
  • 計画が狂うのが苦手で慌ててしまうタイプ
こういった方は、毎日強いストレスを感じるでしょう。
周囲からも、たとえ仕事の成果のクオリティが高くても、「困った人」扱いされかねません。


「外界をシャットアウト」しないと作業できない

役所という職場は、集中しやすい環境からは程遠いです。

まず何より雑音だらけです。
電話は鳴り放題ですし、常時誰かの喋り声(ときには怒鳴り声)が聞こえてきます。

視界にも余計なものがたくさん映ります。
周囲には他の職員が大勢いてお互いに挙動が丸見えです。
職員以外のお客さんもいらっしゃいます。

このような環境下のため、多くの地方公務員は「集中」をそもそも諦めており、せいぜい50%くらいの集中力で仕事をこなせるように最適化されていると思います。
集中せずとも、「ながら作業」で大抵の仕事を回しているのです。

「物音や他人が気になると集中できず、集中しないと作業が手につかない」というタイプの方は、役所だとかなり苦労すると思います。

集中力全開でバリバリ仕事をしたいのであれば、そういう労働環境がきちんと整っている民間企業に進んだほうが幸せだと思います。
喫茶店や図書館でイヤホンをつけて公務員試験の勉強をしている若人を見かけるたび、お節介ながらも「イヤホン外してノイズの中で勉強したほうが実務でも役立つんだろうけどな……」と心配になります。

重要度★:楽しい役所生活を送れなさそう……

「地方公務員はつまらない人間ばかり」とか「つまらない人間しかいないから役所組織もつまらない」みたいな意見をよく見かけますが、僕を含めて「地方公務員の生き様」や「役所組織のメカニズム」を面白がっている人は結構います。

役所そのものを面白がれなければ、地方公務員生活の充実度はかなり下がってしまうと思います。

他人に興味がない

役所はそれなりに大所帯の組織です。
人間観察が趣味というタイプにとっては動物園のように楽しめるでしょう。
特に「出世レース観戦」「キーパーソン観察」は、個人的にものすごく面白いです。

役所は年功序列の組織で、よほどのことがない限り年齢横並びで昇進していくのですが、それでも出世レースは確実に存在しています。
同じ役職の中でも明確に序列があり、例えば同じ「主任」であっても、主要ポストの主任とどうでもいい主任は、職責の重さも庁内発言力も段違いです。

そして役所は、少数の「主要ポスト」職員がモーターとなり、他の大多数の職員を歯車として回しているような組織です。
主要ポストに誰が就くか次第で、業務量も判断内容も雰囲気も一変します。

つまるところ、他の職員に関心を持てば持つほど、役所組織全体の仕組みが見えてくるのです。


この項を読んで「悪趣味だなあ」とドン引きした方はおそらく正常です。
しかし地方公務員人生では、その正常さがかえって仇になります。

地方公務員には人間観察愛好家が多いです。
アンチ人間観察派だと周りの職員が気持ち悪くて仕方ないでしょうし、何より役所組織最大の娯楽を享受できないわけで、非常にもったいないと思います。

政治的駆け引きに興味がない

役所のトップである首長は、選挙で選ばれた存在であり、紛れもない政治家です。
そして地方公務員は首長の部下、つまるところ政治家の部下です。
否応無く政治の片棒を担がされます。

実際、地方公務員の仕事には政治的動向がガンガン絡んできます。
最も典型的なのは「議員から無理強い」でしょう。
ほかにも様々な形態があります。

政治的駆け引きへの対応はかなり面倒です。
しかし、そこで一手間かけて、これまでの経緯や関係者のプロフィールを調べてみると、政治的駆け引きは「ショー」へと一変します。

役所が関わる分野は幅広く、持ち込まれる政治的案件数も多いです。
本来は役所は関係ないはずの、あくまでも民間人どうしの権力闘争ですら、様々な意図をもって役所を巻き込もうとしてきます。

だからこそ、政治的駆け引きを「ショー化」して見世物として楽しめるタイプは楽しいですし、単に「面倒だ」「薄汚い」と思うだけならストレスが絶えないでしょう。


重要度★:労働環境・働き方に不満を持ちそう……

役所の労働環境は、大卒者が就職するような民間中堅〜大手企業よりも劣ります。
働いているうちに慣れるものですが、中には許容できない人もいるでしょう。

バリバリ稼ぎたい

稼ぎたいのであれば民間企業に就職してください。
特に20代のうちは、バイトを詰め込んだほうが稼げると思います。



やりたい仕事がはっきりしている

これまでも散々言われているとおり、地方公務員の配属は完全に運です。
携わりたい分野があったとしても、その担当者になれる保証はどこにもありません。

加えて、もし念願叶ってやりたい仕事の担当者に着任できたとしても、自分の意向を実現できるとは限りません。

日本は民主主義国家であり、「何をどうすべきか」を決めるのは国民です。
国民が決めたことを粛々と実現するのが公務員の役割であり、公務員の意思によって「何をどうすべきか」を変えることはできません。

そのため、もし希望の仕事を担当できても、民主主義的決定の内容と自分の意向が一致しない場合は、むしろ「やりたくないこと」を強いられます。

例えば、「農産物のブランド化を進めたい、そのために研究開発を支援したい」という大望を抱いて地方公務員になり、幸運にも農業振興担当に着任した職員がいるとします。
一方、地元農家たちは「ブランド化しても競争激しいから、加工食品向けのノーブランド品目を大量生産していきたい、だから生産設備の補助が欲しい」という意見でまとまったとします。

この場合、優先されるのは地元農家の意見です。
職員は、「ブランド化」という自分の理想とは正反対の「大量生産」のために、仕事をしなければいけません。

地方公務員への就職には、「やりたい仕事に関われない」リスクのみならず、「やりたい路線とは真逆のことを強いられるかもしれない」リスクも存在するのです。

教育を受けたい

地方公務員には、体系だった教育を受ける機会が存在しません。
(税関係だけは例外で、中長期のがっつりした研修もあるみたいです)

とはいえ地方公務員は学ばなくてもなんとかなる仕事……というわけではなく、常に自学自習(自腹&業務時間外)が求められます。
  • 「何を学ぶか」という科目設定
  • 「何を使って学ぶか」という教材設定
  • 学びを継続するための自律心
こういった要素が求められます。

自学自習ではなく、しっかり教育を受けたいのであれば、大手の民間企業のほうが良いと思います。

残業は絶対したくない

「役所は9時5時、残業なし」という通説をいまだ信じている方はさすがにいないと思いますが、「残業が少ないから」という理由で地方公務員を志している人は少なからずいると思います。

地方公務員の残業事情は人それぞれです。
同じ課内でさえバラつきがあります。

「残業がほぼないポスト」もありますが、そこに座れるのは特殊な事情のある職員のみです。
乳幼児を抱えているとか、家族の介護とか、自身の健康の事情とか……
普通の職員が「残業のない部署に行きたいです」と主張したところで到底叶いっこありません。


一人で黙々と作業したい

「地方公務員といえば単純作業」というイメージを持っている方もいるかもしれません。
実際、書類の誤字を探したり、エクセルに延々と数字を入力したり……といった一人で行う単純作業も少なからずありますが、そういう仕事はどんどん外注したり非常勤職員にお願いするようになっています。

正規職員の仕事の多くは、なんらかのコミュニケーションです。
民間企業のように、高度な「トーク力」や「プレゼン力」が必要なわけではありませんが、少なくとも定時内は延々と他者とコミュニケーションを取り続ける必要があり、コミュニケーションが面倒だというタイプにとっては煩わしいことこの上ないでしょう。

「一人でコツコツ作業するのがメイン」という働き方を希望するのであれば、役所はおすすめできません。


僕と同じ年次に入庁した職員(いわゆる同期)の中には、東大・京大といった超高偏差値大卒業生が5人弱います。
(以下、入学偏差値の高い大学=上位大学、と表記します)

他愛ない雑談の中で、上位大学出身者には度々「○○大まで行ったのにどうして地方公務員になったの?」「せっかく○○大卒なのに地方公務員なんてもったいないよね~」という質問が投げかけられています。

個人的にこれはガチなタブー発言だと思っています。
上位大学出身者は、県庁が第一志望の就職先とは限りません。
国家総合職や民間大手企業、資格専門職(弁護士、公認会計士など)といった地方公務員よりも就職難易度の高い職にチャレンジしたものの敗退して、次善の策としてやむなく地方公務員になったのかもしれません。

そのため、自分自身が一番「どうして……」と思い悩んでいるかもしれませんし、本心では「もったいない」以上のドロドロした感情を抱いているかもしれません。
うかつに出身大学をネタにして軽口を叩いてしまうと、彼ら彼女らの心の傷を抉りかねないのです。

こうした発言には別の危険もあります。
「どうして?」「もったいないよね~」発言に対し、もし正直に「他が駄目だったから県庁に入った」と答えられてしまえば、県庁を第一志望に頑張ってきた多数派はプライドが引き裂かれてしまいます。
歓談の場が冷め切って、後にも尾を引く内部分裂が生じてしまいかねません。

僕の周囲にいる上位大学出身者は幸いにも人格者なので、同期どうしの宴席のような大勢が集まる場では「他が駄目だったから県庁に入った」とは決して言いません。
とはいえ面白い返しがあるわけでもなく、会話がストップして微妙な空気になります。

とはいえ「上位大学出身なのに地方公務員になるのはもったいない」と感じる気持ちはよくわかります。


地方公務員でなければ活かせるのに……

上位大学を卒業するメリットは、「○○大学卒」という肩書だけではありません。
人間関係、学識、習慣、思考方法、センス、振る舞い……等々、上位大学で学生生活を送り卒業しないと身につかないものがたくさんあると思います。

「○○大学卒」という肩書の価値は落ちてきているのかもしれませんが、こうした上位大学に身を置くこと
で得られる諸々の価値は、いまだ衰えていないでしょう。
 
  • 中位以下の大学だと何も見につかない
  • 中位以下の大学で身につくものは無価値or価値が低い
という意味ではありません。

価値の貴賤は置いといて、
  • 上位大学でないと身につかないものがある
  • それらが活きる場面は数多くある
というだけです。

しかし、地方公務員という仕事は、上位大学卒業者ならではの諸価値が活きにくい職業です。
学識や小難しい日本語の読解力は確実に役立ちますが、それ以外はなかなか日の目を浴びないでしょう。


特に田舎だと、せっかく築いた人間関係が全然活きません。
むしろ地元大卒業者の人間関係のほうがはるかに重宝されます。

極端な話、たとえ七大商社全てにコネクションがあろうとも、全然活きてきません。
それより地場スーパーとのコネクションのほうがずっと重要です。


僕が感じる「もったいない」ポイントはまさにここです。
地方公務員以外の仕事では大いに役立つはずの「上位大学卒業者ならではの諸価値」が、地方公務員になってしまったがために活かしきれないのです。

地方公務員稼業だけが人生ではない

とはいえ、あくまでも「これまで」活かせていなかっただけで、これからは活用のチャンスがあるのかもしれません。
それに何より、「上位大学卒業者ならではの諸価値」は、仕事だけでなくプライベートにも活きてくるものです。
 
仕事だけが人生ではありません。
「仕事で活きないから」という理由だけで一概に「もったいない」と決めつけるのは早計だと思います。
もったいないかどうかを決めるのは当人であり、まわりがとやかくコメントする案件ではないでしょう。

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