キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

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カテゴリ: 公務員の日々の仕事

そろそろ議会対応業務も一段落して、職場内は人事異動ネタ一色なのでは?
現部署に長年在籍している人なら、そろそろ引き継ぎ資料を作り始める時期でもあるでしょう。

僕は自分の異動見込みにかかわらず引き継ぎ資料を作っておく派です。
一年間の振り返りにもなりますし、新しく着任する上司によっては「引き継ぎ資料をくれ」と新年度早々に要求されて慌てるからです。

僕はこれまでの県庁生活で3回の異動を経験しています。結構多いほうです。
異動のたびに引き継ぎを受けるわけですが、本当に人によってバラバラです。

加えて、業務によっても書類での引き継ぎ易さが全然違います。
標準化しやすい仕事は資料も作りやすいですが、コミュニケーションがメインの仕事は難しいです。

引き継ぎ資料の標準化は難しいと思いますが、どんな業務でも役に立つであろいう、ぜひ作っておくべき引き継ぎ資料をピックアップしていきます。


すぐやるべき仕事リスト

着任したての時点では、仕事の優先順位がわかりません。
ついつい単純作業のような着手しやすい仕事から取り掛かってしまいます。

そのせいで大失敗しないよう、すぐにやるべきことをリストアップしておいてもらえると、後任者にとっても組織全体にとっても助かります。

一年間の大まかなスケジュール

どんな仕事でも締切は非常に重要です。
手遅れにならないよう、一年間の見通しをあらかじめ持っておけるよう、これも確実に引き継ぐ必要があると思います。

担当業務にまつわる歴史(年表)

どんな仕事でも「過去はどうだったのか」を調べる作業が絶対いずれ発生します。
その手がかりとして、担当業務に関する過去の出来事がわかるよう

・年度別の主な出来事をまとめた表
・議会答弁
・新聞記事
・予算額と決算額

くらいは整理しておいたほうが、後任者のためになるでしょう。

人物紹介・関係者相関図

人間関係において、第一印象はものすごく大切です。
初っ端に地雷を踏んで第一印象を損ねないよう、担当業務の関係者(特に役所外部の人間)の簡単な説明と、関係者どうしの関係性をまとめておくと便利です。

観光の仕事をしていたとき、とある観光施設とトラブル寸前に陥りかけたことがあります。
 
県庁とのやりとりの窓口である事務局長と、その団体の理事長の仲がものすごく悪いことを知らず、事務局長の前で理事長を讃えてしまったために、出禁にされかけたのです。
 
僕のケースでは前任者がうまく仲裁してくれたおかげで救われましたが、実際に揉め事になったケースを全庁的に頻繁に聞きます。


 

去年の夏頃から
  • 地方公務員が自分の境遇を嘆きがちなのは自己効力感が低いせい
  • 役所は構造的に職員の自己効力感を損なっていく
という直感を抱いています。

このことを記事にまとめるべく調べ物を続けているところなのですが、その過程で読んだ本に、役所の日常業務にすぐ活かせそうな記述がありました。
 




自己効力感を高めない公衆衛生施策は無駄

本文を引用します。

いくつかの制限はあるが、一般に人は、健康につながる行動を促進するようなキャンペーンを行う自由と能力を持っている。公衆衛生のキャンペーンは、この個々人能力を支援することができる。しかし、それが特定の状況下にある人々に配慮して適切に作成されたものでなければ、そのようなキャンペーンは多くの資源を浪費してしまうことになるだろう。

心理学者は、健康を増進するような習慣を身につけたり受け入れたりすることを促進するような影響を持つさまざまな要素を特定している。例えば、目標設定やその他の意思決定の過程は、変化を促す役目を果たす。しかし、健康によいというだけでは、人々が危険な行動を繰り返すことをやめ健康な行動を受け入れるために十分とは言えない。有益な行動を身につけ保持するようになるためのさまざまな状況では、自発的な思考が必要になる。

アルバート・バンデューラ編『激動社会の中の自己効力』P.232  金子書房、1997年

もし人々が、問題を解決するための最も良い手段が存在すると信じていれば、彼らは、適切な行動を取るために自分のもつ能力について丹念に考え、自分にその能力があると感じたときだけその手段を実行するだろう。

同 p.251

具体的に言い換えると、人は「こうすれば健康にいいぞ」と目標や手段を示されたところで、自分がそれを実現できると思えないと、まともに検討もしないし、実行にも移さないということです。

「1日1万歩」という健康目標を例に考えてみます。
「1万歩歩けば腰痛対策になるし内臓も強くなる」みたいに目標の有効性をアピールするだけでは、歩く人は増えません。
「2駅分歩けば1万歩に届く」のように目標達成の具体的手段を知らせても不十分です。

目標に向かう人を増やすには、「この目標なら自分でもきっと達成できる」と思わせることが必要です。
具体的な達成方法を多数教示するとか、目標をスモールステップに分割するとか、手法は多数考えられます。

この「自分がそれを実現できると思う」「自分にその能力があると感じる」ことが、自己効力感です。
健康に限った話ではなく、あらゆる分野に適用できる概念です。

導入困難だけど不可欠な視点

健康福祉に限らず、役所の施策は目標を示すだけに止めたがります。
「『この目標なら自分でもきっと達成できる』と思わせる」という、受け手の自己効力感を高めていくという視点は、最初から検討すらされていないでしょう。
理由はいろいろありますが、深入り・具体化すればするほど批判を受けることが最大の理由だと思います。

しかし、自己効力感の観点から見れば、このような施策は資源の無駄と一蹴されるものです。

自己効力感の側面から施策を評価すべきとは思いません。
ただ、このような視点が世の中に存在することは認識しておいて損は無いでしょう。

何より直感的に正しい観点だと思います。 
何すればいいのか全くわからない空気なキャッチフレーズや、非現実的な手段を突きつけてくる施策を見かけるたびに頭を捻ってきましたが、これらが無意味だと断じてくれているわけです。

ここ数年、私生活で紙を使う機会が激減しました。
ペーパーレス生活を意識しているわけではありません。自然と使わなくなりました。

一方、役所の中は今も紙だらけです。
2020年に入って既に500枚はコピーや印刷で使っています。
こっちは盛んにペーパーレスに移行するよう叫ばれているのに、全然変わる気配がありません。

もともと僕はガジェット好きで、職場から指示されずとも勝手にペーパーレスしていきたい派です。
しかし今のところ全然うまく進んでいません。僕の努力ではどうしようもない課題が横たわっています。

紙の代わり(デジタルデータ)が超不便

ペーパーレス化を進めるためには、紙の代わりとなる別の情報記録媒体を使わなければいけません。
役所の場合はデジタルデータが最有力の代替手段です。

しかし役所は、パソコンをはじめ、デジタルデータを扱うための端末機器のスペックがものすごく低く、デジタルデータだけでは仕事が成り立ちません。

例えば僕のパソコン(メモリ2GBのVISTA世代端末に無理矢理win10をインストールした)だと、どんなに軽いPDFファイルでも開くのに数十秒かかります。
パワーポイントとエクセルを同時に起動すると50%でフリーズします。

こんな職場環境なので、デジタルデータに頼るのはリスクが高すぎます。
データはいつ消えるかわからない、使いたいときに自由自在に使えるわけではない水物という認識です。

一方、紙は一旦印刷しておけば突然消滅しません。
紛失にさえ気を付けていれば、いつでも好きな時に使えます。
これだけで圧倒的に紙に優位性があります。

ペーパーレスだと利用者が困る

もう一つのボトルネックは、行政サービス利用者のデジタルリテラシーです。
 
インターネット上ではペーパーレス・デジタル推進派の方が目立ちますが、現実はそうとは思えません。
紙が無いとついていけないという方が、年代や社会階層を問わずたくさんいます。
そのため、役所が提供するサービスは、どうしても紙中心にせざるを得ません。
 
基本的に全て紙媒体で準備して、希望する方のみオプションでデータも利用化という形です。
こうしないと「差別だ」と激しく非難されます。


世間のペーパーレス化・デジタル化の流れは今更止められないでしょう。
そのため役所も、遅々としてではありますが、変わっていくだろうと思います。
今はその過渡期、とても長くてゆっくりした過渡期のスタート地点なのでしょう。

だいたいどの役所も、庁内ヒエラルキーの最上位に、財政・人事・秘書・企画部門が君臨しています。
※ここでいう権力とは「他の部局の意思決定にどの程度介入できるか」という意味合いです。

二軍になると自治体ごとの特色が見られます。首長の意向が表れていたり、外部環境の影響を受けていたり……色々です。

今回は役所によって順位が大きく異なる部署を紹介します。

支払い担当部局(会計課・出納課)

まずは公金の支払いを担当する部局です。
この部局が了承しなければ、お金を払うことができません。
抜け道はありません。どんな部署でも等しくチェックを受けなければいけません。そのため権力を持ち得ます。

会計課といえば、支払い書類がルール的に間違っていないかを審査して、必要あれば各課に修正を指示する部署です。
誤字脱字があるとか、印鑑が擦れているから捺印し直してほしいとか、修正指示は具体的かつ書類の体裁上のものばかりです。
書類を差し替えれば済みます。

一方、強大な会計課の権能は書類チェックに止まりません。
書類のミスを指摘するだけでなく、支出に至った各課の意思決定に対しても修正を突きつけてきます。

彼らの武器は民法です。
強大な会計課は、書類の体裁上のチェックだけでなく、契約書や約款、仕様書の中身も入念にチェックします。
この業務には民法知識と経験が欠かせません。法令に強い職員が配置され、日々の業務で鍛えられて行きます。

さらに会計課には全庁から支払い書類、つまり契約書が集まってきます。
そのため庁内で過去にどんな内容・条件で契約を結んでいるのかを網羅的に把握でき、自由に参照できます。

豊富な法令知識と事例データベースを駆使しながら攻められると、各課では到底敵いません。

条例・公報の審査部局(法規課)

条例や公報の文言をチェックする部局です。
課として独立しているところもあれば、係レベルだったり、独立した係すら無かったりと、役所によって人員規模も大きく異なります。

弱小法規担当だと単なる文言チェックだけですが、強大な法規担当は、庁内弁護士集団のように機能しています。

各課の意思決定を法的に後押ししてくれることもありますが、法的に制止してくることもあります。
特に行政手続法や行政不服審査法、行政事件訴訟法のような行政法規案件では、各課は逆らえません。

議会事務局

議会や委員会の運営、議員と役所各課の仲介役を務める部局です。
役所によっては、単なるメッセンジャーを通り越して、議員の名を借りて各課の意思決定に介入するところもあります。

先に取り上げた会計課や法規課とは異なり、議会事務局の権力には法令の後ろ盾がありません。議員という政治的権力があるだけです。
高確率で揉め事に発展するため、介入する側もされる側も大変そうです。


庁内ヒエラルキーは役所ごとに特有の文化です。
ある部署が強い(弱い)ことを迂闊に発言すると、そこから勤務先を特定されかねません。
特定を恐れるなら、今回取り上げた3部局に限らず、庁内権力への言及は慎重になったほうが無難だと思います。僕も常々気をつけています。

地方公務員に就職した直後、入庁前のイメージとのギャップがいくつもありました。
前例踏襲もその一つです。

前例踏襲は、役所や地方公務員の基本的性質としてしっかり定着しています。
そして非常に評判が悪いです。罵倒・非難の常套文句でもあります。
「役所といえば思考停止で前例踏襲」だとか、「前例踏襲しかできないのが地方公務員」だとか、現役職員なら月1くらいで耳にしているのでは?

僕も入庁当初は、前例踏襲に対してネガティブに捉えていました。
しかし今は違います。役所は必要に迫られて前例踏襲しています。

前例踏襲しないとトラブルになる

前例踏襲には、前例は正しいという前提があります。
前例は正しい、だから踏襲するのです。
正しい前提ならば踏襲する、とも言い換えられます。

対偶をとると「踏襲しないならば、その前例は間違っている」になります。

これは一見正しそうに見えますが、実際は間違っています。
 役所の施策や意思決定には、一つの絶対的な正解はありません。
そのため、単純な論理式に落とし込めません。

しかし実際には、このことを理解してくれない、又はあえて理解しようとしない人がたくさんいます。
「前例と違うということは、前例は間違いだったのだな!」と攻撃してくるのです。

一定の条件を満たす法人に給付している補助金があると想定します。
 
補助金申請の説明会を、例年は県内3箇所でやっているところ、今年度は4箇所に増やすことにしました。
このとき、「今年は4会場で説明会を開催します。より便利になりました」みたいな説明をすると非常に危険です。
 
「これまで3箇所しか開催してこなかったのが間違いだと認めたな!謝罪しろ!」と鼻息荒く攻撃されかねないのです。

前例が間違っている場合も実際あります。そのときは真摯に謝ります。
前例よりもグレードダウンする場合は批判されて当然です。
しかし大半は、眼前の案件も過去の類似案件も、どちらの意思決定も正しいケースです。

一見して似ている案件でも、全く同じケースは存在しません。
少なくとも発生した時期が違います。
色んな分野で激変が続く昨今の世の中、時期が少し異なるだけでも、意思決定に影響する要素の一つや二つ、簡単に変わってしまいます。
したがって、過去の意思決定をそのまま引きずる方が不健全です。

しかし、役所の過ちを指摘することが生きがいだったり、役所がミスしたことにしたくてたまらない人にとっては、そんなことお構い無しです。
前例をあえて踏襲しない案件は、こういう方々の格好の餌になりかねないのです。

役所は日々、「役所は前例踏襲ばかり!」という怒りの声だけでなく、「前例踏襲しないということは、前例は間違いなんだな!」という愉悦混じりの罵声も浴びています。
そして後者のほうが厄介で、これを抑えるために前例踏襲をベースとしているのです。

前例は隠すもの

こうしたトラブル回避のため、役所は極力「前例と違うことをした」とは言いません。
前例と違うことをする場合には、前例の存在を隠して、全く新しい意思決定に見せかけます。

前例の存在を明るみに出すのは、前例と異なることをする完璧な理屈がある場合と、前例踏襲する場合に限ります。
前者は滅多にありません。
そのため、前例踏襲するケースの方が圧倒的に多く見えるのです。

役所の実務では前例踏襲はほとんどありません。
費用対効果を考えるとむしろ無駄なのではと思えるくらいにエネルギーと時間を注いで、前例からの改善を追求します。
しかし対外的には決して「前例をベースに改善した」とは言いません。あくまでも完全な新規施策として扱います。

今の世の中、役所の無謬性を信じている人は誰もいないと思います。
しかし、間違うことも許しません。
PDCAを回すなんて言語道断です。最初から100点満点の対応を求めます。
とにかく前例は100点満点で改善の余地なしということにしておかなければ、世間が許さないのです。

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