キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

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新年一発目の記事から陰謀論をお届けしていきます。

広報担当者にとって、今年は地味に大変な一年になりそうだと思っています。
カネとネタに飢えたマスコミ(テレビ局・新聞社)が役所に群がってきそうです。

役所から広告費を絞りたい

マスコミの経営状況は思わしくありません。
特に広告収入の落ち込みがひどいようです。

株式を上場しているテレビ局の決算短信では、真っ先に「広告収入の減少」を訴えています。
新聞社は非上場なので詳細はわかりませんが、「広告収入が減って厳しい」と報道されています。


『鬼滅の刃』最終23巻の発売に合わせ、2020年12月4日の全国紙5紙(朝日、読売、毎日、産経、日経)の朝刊に、作中キャラクターの登場する広告が掲載されました。

漫画や映画の宣伝のため大々的に新聞広告を打つという宣伝方法自体は珍しくはありません。
ただ、『鬼滅の刃』でやるとは想像だにしていませんでした。

原作コミックスを最後まで読んだ方ならわかると思いますが、本作の終盤には新聞社的に絶対認められないであろう(「こんな展開を子供たちに読ませてはいけない」とか言って叩くほうが自然な)シーンがあります。
 
新聞社としての思想を捻じ曲げてまで広告収入が欲しかったのだろうと思わざるを得ません。
 


テレビ局の決算資料によると、広告収入減少の原因は、新型コロナウイルス感染症(以下「新コロ」)による経済活動の停滞です。
これまで広告を打ってくれていた民間企業が、新コロのせいで経費節減に走ったり、広告したいモノ・サービスをうまく生産できていないせいで、広告を打たなくなっています。
つまり、広告への需要が縮小しています。
 

この状況は日本全国どこの地域も変わりませんし、全国メディア・地方メディアともに直面している苦境だと思います。

羽振りの良い唯一のセクター=行政

経費節減ムードが蔓延する中、行政だけは例年になく金遣いが荒いです。
国では「持続化給付金」「Go toキャンペーン」のような超大型事業を立て続けに展開していますし、自治体でも独自の給付金やクーポン券事業などを行なっています。

あまり報道されませんが、自治体には「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」というお金が国から交付されています。
使用用途は幅広く、自治体の判断でかなり自由に使えます。
もちろん広報にも使えます。


役所攻めがローリスクハイリターン

  • とにかく広告収入が欲しい
  • 民間企業よりも行政のほうが資金的余裕がある
となれば、行政から広告収入を得ようとするのが自然かつ成功率の高い戦略です。
しかも超簡単です。広告が無くて空いている時間や紙面を使って、「住民に伝わってない、もっと広報しろ」とひたすら殴ればいいだけです。

実際、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」のうち相当な額が、既にマスコミに流れているんじゃないかと思っています。

もちろん、広報は重要です。
しかし、「テレビのスポットCM」や「新聞広告」のようなマスコミ経由の広報のほかにも、手段はいろいろあります。
マスコミに言われるがまま広告を打っていたら、それこそ無駄遣い極まりないです。

役所からネタを絞りたい

去年の年末に、総務省から「令和2年地方公務員給与実態調査結果等の概要」という資料がリリースされました。

自治体ごとの職員給与月額のラスパイレス指数などが掲載されている資料で、一部の層を除いて面白いものではありません。
しかし、僕の住む地域の地方紙では、この資料の中身を膨大な紙面を割いて解説していました。

思うに、記事のネタが枯渇しているのでしょう。

経済活動が停滞すると、マスコミが報道で取り上げる「ネタ」も減ります。
ニュースのネタになるには何であれ「動き」が必要です。動きが無ければネタは生まれません。

一方、役所は、むしろ平時よりも活発に動いていて、安定してネタを生産しています。
しかも最近は新コロのせいでいつになく行政の動きに関心が集まっており、どんなネタであれ反響を期待できます。
つまり、役所の動きに注目していれば、「それなりに受けるネタ」が安定的に見つかるのです。

役所側としては、自分たちの一挙手一投足がネタにされかねないという実情と、マスコミの監視の目を意識する必要があると思います。

これまで一度もマスコミに取り上げられたことのないようなマイナー事業こそ注意が必要です。
もし取材されたらどういうふうに紹介するのか、念入りに吟味しておいたほうが無難でしょう。
今の不安定な情勢下では、不用意な発言は命取りです。

マスコミは営利企業

カネとネタを求めるマスコミの猛攻は、2020年から既に始まっている流れなのでしょうが、今年はより一層過激になると思います。
対立路線で挑んでくるところもあれば、協調路線を敷いてくるところもあるかもしれません。
いずれにせよ真剣です。

マスコミは営利企業です。利益最優先で動きます。
よく「民意」「道徳」「倫理」のような高尚な概念を持ち出してきますが、これらを武器として使えば利益が出るからやっているだけです。これらの概念に遵奉したいわけではありません。

自治体の広報担当者は、例年になく強烈なマスコミからの外圧と対峙することになるでしょう。
まずは何より「相手は営利企業、利益のため打算的に動いている」「結局は広告収入とネタを欲している」ことを念頭に置き、冷静に対応したほうがいいと思います。

 

役所が提供するオンラインサービスがことごとく叩かれています。
雇用調整助成金のオンライン申請システムだったり、コロナ感染者追跡アプリだったり……そして何より特別定額給付金のオンライン申請。
僕自身、ここ数ヶ月で大量にお叱りの声をいただきました。どれも県庁は直接関係ないし、怒鳴られてもどうしようもなんですけどね……

マスコミも、僕が直接対応した住民の方々も、オンラインサービスの不出来さを叱責するついでに、役所仕事の非効率さも一緒に詰ってきます。
ハンコ文化だとか、テレワークできてないとか、電話に頼りすぎとか、ペーパーレスを進めるべきとか、職員のパソコンスキルが低いとか……
「とにかく役所は電子化が進んでいない」と言う結論で締めくくるのが定番のパターンです。

実際のところ、役所が提供するオンラインサービスはだいたいお粗末だし、役所内部の設備も業務プロセスも前時代的なままで非効率なのは間違いありません。叩かれても仕方ありません。

しかし、前者(住民向けのサービス)と、後者(役所内部)の問題を、ひとまとめにして叩くのは危険だと思っています。
この二つは大元の原因が異なります。
 
両者をひとまとめにして叩くだけでは根本的な問題解決にはなりませんし、間違った方向にすら進みかねないと思っています。
特に前者を叩きすぎると、役所の本来の役割である「市場の失敗の補完」を見失いかねません。

【2020/9/25追記】
「デジタル庁」というキャッチーなキーワードが世に産み落とされたので、記事タイトルを変えました。
省庁横断でデジタル化を進めること自体は大賛成ですが、やはり「住民向けサービス」と「役所内の業務面」を分けて考えるべきだと思います。

オンラインサービス拡充よりもデジタル弱者救済の方が優先

過去の記事で、世の中のデジタル化についていけてない方々(以下「デジタル弱者」)の支援が今後の役所の課題になると書きました。


デジタル化が進むにつれて、従来のアナログなサービスがどんどん削減されています。
アナログからデジタルへの移行についてこられていないデジタル弱者にとっては、ここ十数年で生活が不便になってきました。

アナログサービスの削減により困っている人が発生しているという現状は、市場の失敗の一例です。
市場の失敗の補完は、役所の基幹業務です。
つまり、デジタル弱者の救済は、役所の本業なのです。

インターネット上に現れてこないだけで実はものすごく多い

デジタル弱者はものすごく多いです。今回のコロナウイルス感染症騒動で痛感しました。
僕自身が対応した住民の方々からも、
  • 持続化給付金にしろ自治体独自の給付にしろ、インターネットが使えないとろくに補助制度のルールすら調べられないのは差別だ、全員平等に郵送せよ!
  • 特別定額給付金を真に必要としている貧困者はインターネットが使えないんだから、オンライン申請者を先に始めるのは本末転倒だ!
という声をたくさんいただきました。
人数でいえば、役所のアナログ具合を糾弾する方よりも多かったです。
しかもアナログ批判の声よりも真剣味があり、本当に困窮している様が伝わってきました。

さらに言えば、怒りのレベルも高かったです。
アナログサービス削減に対する憤懣、社会全体への鬱憤が普段から溜まっているのでしょう。
インターネットでしか情報配信しない姿勢に対して、何回も「殺人鬼」呼ばわりされました。

デジタル弱者が地方政治の王道派

デジタル弱者の大半は高齢者で、中には政治力のある方もいます。
地元の名士で膨大な票数を動かせたり、議員OBだったり……

6月議会の議事録を見てみれば一目瞭然でしょう。
田舎の自治体だと、デジタル化推進よりもデジタル弱者救済を求める質疑のほうが多いはずです。

現役世代にもデジタル弱者はたくさんいます。
最近流行りの「GIGAスクール構想」関係で、家にネット回線がある家庭の割合がたびたび報道されていますが、どこの自治体も7割前後止まりです。
誰もがインターネットにアクセスできる時代は未だ到来していません。


まとめると、
  • デジタル弱者の救済(=市場の失敗の補完)は役所の本来の役割
  • デジタル弱者は数が多くて真に困っており、救済施策のニーズがある
  • デジタル弱者は政治力を持っている

以上3つの理由から、地方政治ではデジタル弱者側が優先されがちです。

現状、地方財政にゆとりは無く、オンラインサービス拡充とデジタル弱者救済を両立させるのは困難です。
政治力による駆け引きの結果、オンラインサービス充実は劣後して、デジタル弱者のほうに予算と労力を振り向けています。

もし役所が現状の世論に与してオンラインサービスを拡充するのであれば、デジタル弱者の救済策も同時にもっと強化しなければいけません。
そうしないと、役所は福祉という本来の役割を放棄して、格差拡大に加担するという本末転倒になってしまうのです。

どんなデジタル弱者でも使えるやさしいオンラインサービスを整備することが理想なのですが……利用者(住民)のデジタルリテラシー格差があまりにもすさまじく、正直想像できません。

世論が認めてくれたらいくらでも設備投資できる(はず)

一方、役所内のデジタル化が進んでいなくて業務が非効率なのは、設備投資をする予算が無い(認められない)からです。
ボトルネックは世論です。

職場環境に設備投資しようとすると「職場環境への投資は職員のためにしかならない。住民に還元されない。だから認められない」というロジックが席巻しているために、設備投資したくてもできないのです。

コロナウイルス感染症騒動をきっかけに、業務継続計画(BCP)を真剣に考え直している自治体も多いと思います。 
今であれば、「第二波に備えた業務体制の整備」 みたいな名目で、設備投資予算が通るはず。
個人的には千載一遇のチャンスだと思っています。 



役所内のデジタル化の遅れは、世間が叩けばきっと是正されます。
来年度当初予算に堂々と計上できるよう、来年の2月くらいまで叩き続けて欲しいくらいです。

一方、住民向けのオンラインサービス整備の遅れは、ただ叩くだけでは解決しません。
デジタル弱者の救済という優先課題の存在を忘れないでほしいです。

もし面接でオンラインサービスのことを聞かれたら、デジタル弱者救済のことにも触れてみるといいかもしれません。

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