キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

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多くの地方自治体では、職員数削減やコストカットのために、業務の民間委託を進めてきました。
 
これまでは技能労務職(運転手やごみ収集など)の業務委託や公共施設の指定管理のような現業職的な外注が中心でしたが、最近はさらに、これまで正規の事務職員が従事していたような頭脳労働分野まで外注し始めています。
 
加えて、外注という関係性のみならず、役所の施策と類似したサービスを民間企業が独自に提供し始める……いわば役所の役割を侵略するような案件もちらほら出てきています。


公共領域への民間企業進出という現象は、現役の地方公務員にとっては当たり前の事実なのですが、役所の外側、特に学生からはなかなか見えづらいです。

しかし、地方公務員志望の学生こそ、民間企業がいかに公共領域に進出してきているか入念に調べる必要があると思います。
貴重な学生生活を試験勉強に割いて地方公務員になったのに、やりたかった仕事が実は民間企業に全面外注されていて、正規職員になってしまったがゆえに金輪際携われない……という悲劇を防止するためです。

受注と独自進出

民間企業の公共領域への進出には、大別して二つのパターンがあります。

ひとつは外注案件です。
これまで自治体の正規事務職員が担当してきた業務の一部が切り出されて、業務委託という形で外注されるものです。

具体的には、
  • 出納会計のようなルーチン的事務作業
  • 補助金事務局のような突発的業務
  • 統計調査や広報のような専門技能が必要な業務
あたりが挙げられます。

最近ではさらに、各種の中長期計画の策定のような役所特有の業務まで外注したり、大型新規事業のような目玉事業を丸投げするようなケースもままあります。
先進事例や成功事例としてメディアに取り沙汰されている事業が、実は民間企業に丸投げしてある案件だった……というケースも少なくないようです。

僕の住んでいる県内でも、ユニークな早期教育事業に取り組んでいて結構注目されている自治体があるのですが、その実態は民間企業に丸投げ(有力議員の親族がいるコンサルに仕事を回してるだけ)だったりしています。


もうひとつは、役所の施策と重複するサービスを民間企業が独自にリリースするパターンです。
具体的には、以下のような業務が挙げられます。
  • 中小企業の販路開拓、新商品開発、事業承継あたりの支援
  • 観光事業者とメディア・交通事業者との連絡調整、広域観光の連絡調整
  • 移住希望者と就業先のマッチング
こういった役所でも一応実施している事業を、民間企業ならではの専門性と自由度を活かして、役所以上のレベルで提供しています。もちろん有料です。

役所が無料で提供している内容と被るものを、わざわざ有料で提供する……ということは、それだけ既存の行政サービスがしょぼくて利用者のニーズを満たせていないということなのでしょう。
いわば、役所が提供している「安かろう悪かろう」のサービスの代わりに、より高品質なサービスを有料で提供しているのです。

こういった業務は、役所の中でも前向きな仕事であり、若手職員からも人気のある「花形」であり、配属される職員も比較的優秀な人ばかりです。
とはいえ、所詮人事ローテーションで回ってきただけで知識も経験も乏しいですし、いくら頑張っても限界があるのでしょう。 
やる気のある地方公務員にとっては、これまで花形と言われてきた仕事が「安かろう悪かろう」扱いをされているわけで、悔しがっている人もいます。

主要アクターはコンサルとシンクタンク

公共領域への進出を強めているのは、主にコンサルタントシンクタンクです。
特に会計系のコンサルが多い気がしています。

これらの業種が公共領域に進出しているという話題は以前からニュースにもなっていますし、転職サイトを見ていても公共領域要員を多く募集しています。

公共領域で活躍する民間企業の情報は、詳しく調べてみないとなかなかヒットしません。
少なくとも、普通に公務員就活をしているだけでは全然見えてこないでしょう。
こういう企業はたいてい東京に本社があるので、地方の学生にとってはさらに情報収集しづらいかもしれません。

しかし、公共領域における民間企業の存在感はどんどん強まるばかりですし、現役職員目線では民間企業が手がける事業のほうが楽しそうでやりがいがあるように映ります。
公益のためにバリバリ働きたい!という志があるなら、試験勉強の時間を割いてでも調べる価値があると思います。
この一手間が人生を分つかもしれません。

地方公務員であれば、誰しも少なくとも一度は「公務員じゃなくて民間に行けばよかった」と嘆くものです。
他の職場が羨ましく思えてしまうのは、地方公務員に限らず、労働者全般に共通する本性だと思います。
ことわざにある通り、隣の芝は青く見えるものです。

ただ、地方公務員(特に新卒で役所に入った人)の場合は、「隣の芝は青い」効果のみならず、さらに特有の原因も上乗せされて、より一層「公務員はやめとくべきだった」という後悔を拗らせていると思っています。

この原因とは……就職前の自己分析不足です。
地方公務員の多くは、「働く」ということについて徹底的に考え抜くべき大学3年生の時期を試験勉強に費やしてしまうせいで、自分自身の「やりたい仕事」「歩みたい職業人生」を特定できないまま働き始めてしまうために、就職後にギャップに苦しみがちなのだと思っています。

受験勉強のせいで情報収集も自己分析もやってる暇がない

民間就活組と公務員試験組の、大学3年生の一年間のスケジュールを比較してみると、わかりやすいと思います。

民間就活組の場合、大学3年生の春頃からぼちぼち情報収集を開始して、夏〜秋にかけてインターンや説明会に参加、冬の後半頃から本格的に採用プロセスに臨み始める……という流れを辿ることになります。
同時に、自分の「職業選択の軸」や「職業的適性」を深掘りすること、いわゆる「自己分析」も行います。

いろんな業界・企業の情報を収集して比較検討(=業界・企業研究)しつつ、自分自身の希望や適性を見定める(=自己分析)……というプロセスを、1年間かけてじっくり進めるわけです。


他方、公務員試験組の場合は、大学3年生の春〜夏頃から公務員試験対策を始めます。
だいたいこの時期から大学主催の学内講座や予備校のコースが始まりますし、独学勢であっても「試験対策は1年前から」という目安で動く人が多数派のようです。

あとはひたすらずっと受験勉強優先の日々が続きます。
説明会やインターンに参加したり、受験候補自治体の情報収集したり、自己分析したりもするでしょうが、試験勉強の負担があるせいで民間就活組ほどには時間も労力も割けないでしょう。


民間企業を知らないのにどうして「公務員のほうがいい」と判断できるのか?

民間就活組と比べると、公務員受験組は、量的にも質的にも自己分析が不足しがちです。

量的は不足は、先述したとおり、受験勉強に時間と労力を奪われるせいです。
民間就活組が約1年かけてじっくり自己分析するところ、公務員試験組はエントリーシートを書く段階に至ってようやく自己分析に着手……なんて場合すらあるでしょう。

質的な不足は、情報収集の幅が狭いせいです
情報収集と自己分析は、別物ではなく一体的に進めるものです。
より正確にいうと、情報収集をしなければ、自己分析はうまくいかないと思います。

「自己分析」というと、ひたすら自分の過去や内面を掘り下げていくイメージがあるかもしれません。
ただし、就職活動における自己分析とはあくまで適職を見出すための分析です。
 
学生時代までの経験だけであっても「バリバリ稼ぎたい」「プライベートを優先したい」程度の大枠は特定できるかもしれませんが、具体的にどういう業界・職業に就くのがベストかを考えようとすると、どうしても材料が足りません。
世の中にはどういう仕事が存在するのか、つまりどういう選択肢が存在するのかをインプットしなければ、分析は行き詰まるでしょう。

民間就活も公務員試験も、就職するためのプロセスという意味では同一であり、やるべき自己分析も同じです。
しっかり自己分析するためには、幅広い業界・職業情報が不可欠です。

特に公務員就職の場合、「どうして民間ではなく公務員なのか」を深掘りするためには、公務員の情報のみならず民間の情報も幅広く必要なはずです。
しかし実際のところ、ちゃんと民間企業の情報を収集して業界・企業分析を経たうえで公務員を選択する人は、ごくわずかだと思います。

自己分析が甘いまま地方公務員になっちゃうと……

つまるところ、地方公務員の多くは、学生時代に民間企業の情報収集を怠ったせいで、自己分析が浅いまま働き始めてしまうのです。
 
そして、地方公務員として働く中で遅ればせながら自己分析が深まっていき、「やりたい仕事」や「歩みたい職業人生」が明確化されていきます。
その結果、人によっては「民間のほうがよかった」と本気で後悔し始めるのです。

大学3年時の苦労が一生を救う?

公務員試験対策を始める大学3年生の大半は、しっかりと情報収集や自己分析を済ませたうえで公務員を選択しているわけではなく、「今のうちから勉強を始めないと間に合わないから」着手するのでしょう。
たとえこの時点で「絶対公務員になるぞ!」と固く決意していたとしても、情報収集がまだまだ足りていないと思います。

情報が足りない中で下した判断は、正しいとは限りません。
なので僕は、少なくとも大学3年生の冬頃までは、受験勉強と並行して民間企業についても幅広く情報収集することを強くお勧めします。

国家公務員か地方公務員か、特別区か政令市か、都庁か地元県庁か……みたいな官官比較だけでなく、ちゃんと民間企業も選択肢に含めて就職先を比較検討することで、自己分析が深まり、後悔の少ない決断ができるはずです。



「『やりたい仕事』を明確化・具体化すべき」というアドバイスは、就職活動(特に新卒)の鉄板です。

地方公務員の場合も同様で、
  • ただ「地方公務員になりたい」だけでは不十分
  • 採用後にどんな分野でどのような仕事をしたいのか、具体的に考えるべき
  • 具体的に考えるための情報収集が欠かせない

というアドバイスが、一般的になされています。

「具体的にどんな仕事がしたいか」という質問は面接でも定番で、誰もが考えなければいけないポイントです。
ただ僕は、このポイントはあくまでも面接対策として必要なだけで、「地方公務員を目指すか、それとも民間就職するか」を決断する段階では、無意味だと思います。

民間就職ではなく地方公務員になる理由は、「具体的に〜〜したい」ではなく、「地方公務員になりたい」であるほうが、健全だと思うのです。

むしろ、採用前に「やりたい仕事」を具体化・明確化してしまうほど、採用後のミスマッチがひどくなり早期離職を引き起こすのでは……とすら思っています。

まず考えるべきは地方公務員という職業そのものの特異性であり、これに魅力を感じるか否かを徹底的に吟味したほうがいいと思います。

「やりたいこと」が実現できるわけない

日本は民主主義国家であり、行政は民主主義的決定事項を執行(実行)する立場にあります。
「何をするか」「どのようにするか」を決めるのは主権者たる国民であり、行政ではありません。

この原理原則はもちろん地方自治体にも適用されます。
役所(=地方公務員)の仕事のラインナップは住民が決めるわけで、地方公務員が決めるわけではありません。
役所の仕事の多くは法令に基づいていますが、法令はまさに民主主義的決定の結果であり、法令に基づく仕事は「住民が決めた仕事」の代表例です。

法令に基づかない仕事(例えば観光振興とか広報あたり)は、一見すると役所の裁量で動かしているように思われるかもしれません。
しかし実際は、議会や業界団体や地域住民の意見に従って進められており、役所の意向で動かせるわけではありませんし、担当職員の考えを挟む余地はほぼありません。

つまるところ、役所は職員個々人の「やりたい仕事」を実現できる環境ではありません。

「やりたい仕事」が実在しても担当できるとは限らない

もちろん、役所の仕事ラインナップの中に、自分の「やりたい仕事」が含まれている場合もあり得ます。
しかし今度は、「ジェネラリスト志向」とかいう人事異動の仕組みが立ち塞がります。
異動希望はほぼ通りませんし、通ったとしても数年でまた異動させられます。
「やりたい仕事」を担当できるかどうか未知数であるうえ、担当できるとしてもせいぜい数年なのです。
僕は今年でちょうど入庁10年目になりますが、同期入庁職員の中でこれまで「やりたい仕事」に配属されたことがあるのは、だいたい3割くらいです。

人事異動の無理ゲーっぷりを定量的に知りたければ、こちらの記事をどうぞ。

 

地方公務員の仕事は刻一刻と変わっていく

そもそも、役所が手がける仕事のラインナップ自体、どんどん変わっていくものです。
わずか数年後ですら、現時点では想像もしないような仕事を一般事務職員が担っているかもしれません。

新型コロナウイルス感染症の流行前後の激変っぷりが、まさに好例です。
コロナ前の自治体はインバウンドブームでした。
「訪日外国人観光客をいかに呼び込むか」が重要課題であり、ハード・ソフトともに新規事業がバンバン展開されていました。
「これからの地方公務員は英語で日常会話できるのが当然」なんて主張もなされていました。

もし当時にタイムスリップして、「2020年に新型感染症が世界中で流行して、一般事務職員が夜な夜な居酒屋を回って会食マナーを指導したり、ホテルに駐在して患者に弁当を配るよ」なんて言おうものなら、確実に頭がおかしいと思われるでしょう。

しかしこれが現実……

「地方公務員の特異性」に魅力を感じますか?

地方公務員の面接における「やりたい仕事は何ですか?」という質問、僕は本当にナンセンスだと思います。


採用された途端に、まるで「千と千尋の神隠し」冒頭のごとく
「贅沢な名だね、今からお前の名前は『主事』だ。いいかい主事だよ。わかったら返事をするんだ『主事』!」
と言わんばかりに没個性化を強いるのに、面接段階では個性を主張させようとする。何なんですかね。


多分、この質問が「ちゃんと下調べしているか」を測るのに好都合だからなのでしょうが、受験生的には「具体的に考えるのが大事なんだ!」「熱意が重要なんだ!」と勘違いしてしまいかねません。
そもそも採用側が虚飾だらけの情報しか公表していないのに、「やりたい仕事」を明確化・具体化しろと受験生に強いるほうがおかしい気すらしてきます。

「やりたい仕事」を具体的に考えるのは、面接対策の直前期だけで十分です。 
「やりたい仕事」は、面接を通過するための方便・手段に過ぎず、真剣に考えたところで何の役にも立ちません。
特に「地方公務員になるか、国家公務員になるか、民間就職するか」という根本的進路選択には、まず役立ちません。むしろ害悪です。
 
代わりにじっくり考え抜くべきなのは、
  • 地方公務員という職業は、国家公務員・民間勤務とどう異なるのか(=地方公務員の特異性)
  • 地方公務員の特異性に対し、魅力を感じるか

この2点だと思います。
地方公務員の特異性は、すでに多くの人が論じており、書籍でもインターネット上でもいろいろな説が提唱されています。
先にも触れたとおり、役所が「何を」「どのようにするか」を決めるのは住民であり役所に自己決定権は無いという性質……俗にいう「他律性」も、地方公務員の特異性の一つです。
「原則クビにならない」「病気休暇を取得しやすい」等の勤務条件も特異性の一つでしょう。

このような地方公務員の特異性を見つけるためには、地方公務員のみならず国家公務員や民間企業のことも詳しく調べて、比較することが欠かせません。


他職種と地方公務員を冷静に比較していくと、地方公務員のメリットが実はあんまりないことにきっと気がつくと思います。
それでも「地方公務員になりたい」と思えるのであれば、それこそ真のモチベーションです。
薄っぺらな「やりたい仕事」とは段違いに深みのある、本音の「志望動機」です。 

今の世の中、「デジタル化」という単語を至るところで見かけます。
 
特に地方自治体はデジタル化が遅れていると連日揶揄されており、新聞なんかでは「自治体のデジタル化が進まないせいで〜〜のような問題が生じている」みたいな指摘がほぼ毎日繰り返されています。
「ネタが無いときの紙面埋め要員か?」と疑りたくなるくらいです。
 
実際のところ、役所はアナログな組織です。
民間企業と比べて明らかにデジタル技術の導入が遅れていて、新しいサービスが提供できていなかったり、非効率なプロセスが残っていたりしています。

デジタル化の遅れは、マスコミから糾弾されるまでもなく、職員自身が自覚しています。
少子高齢化や人口減少、財政悪化、公共施設の老朽化などと並んで、誰もが共通して認識している「行政課題」の一つと言えるでしょう。
 

これから地方公務員試験の採用面接に臨む方の中には、「自治体行政のデジタル化」を志望動機に据えようと計画している方もいるかもしれません。
大学で情報関係の勉強をしていたとか、IT関係のアルバイトをしていたとか、情報処理技術者などのIT系資格を保有しているとか……このような「自分の強み」を活かして「デジタル化」を進めたい、というストーリーを練っている方もいるかもしれません。

個人的には、「デジタル化」を前面に押し出すのは、避けたほうがいい気がしています。
綺麗なストーリーが作れるかもしれませんが、それが面接官に受けるとは限りません。
 

所詮は木端役人

いくら高度なデジタルスキルを持ち合わせていようとも、地方公務員は地方公務員です。
できることには限界があります。

役所のデジタル化が遅れている案件を深掘りしていくと、デジタル以前の理由がボトルネックとして浮上してきます。
法令の規制に引っかかるとか、お金が無いとか、何より住民の理解を得られないとか……
 


デジタル化に限った話ではありませんが、行政課題は頻繁に「総論賛成、各論反対」という民意によって阻まれます。
総論として「行政のデジタル化を進めるべき」だと誰もが思っていても、あるプロセスのデジタル化という個別具体的な論点になると「それは無駄だ」「アナログのままがいい」みたいな反対意見が噴出して、止まってしまうのです。


自治体行政をデジタル化していくためには、単なる新技術の導入のみならず、デジタル以外のボトルネックを解消しなければいけません。
こういうボトルネック解消には、残念ながらデジタルスキルは活かせません。

それどころか、ボトルネックの中には自治体にはどうしようもないものも多く、職員がどれだけ有能であっても解消できるとは限りません。
デジタルに強い地方公務員が増えたところで、自治体のデジタル化は簡単には進まないのです。


このような背景が存在するために、受験生が「行政のデジタル化!自治体DX!」みたいなことをどれだけ熱く語ったとしても、面接官側としては現実味を感じられないと思われます。

「自分のデジタルスキルを活かして〜」という前置きが加わると、皮肉なことに一層非現実的に聞こえます。
個人のスキルで行政課題を解決するなんて、ちゃんと業界研究した人であればまず口にできません。
あまりに現実離れしているために、勉強不足だと思われても仕方ないでしょう。

内部プロセスなら改善できるかもだが……

とはいえ、職員のデジタルスキルだけでも対応できる課題もわずかながら存在します。
それは組織内部のプロセス改善、特に非効率の解消です。
 
  • 組織の問題……部署間のデータ共有ができていなくて、複数の部署で同じような作業を重複して行なっている
  • 職員の問題……職員のデジタルスキルが低くてデータの扱いが下手で、効率が悪い
こういう組織内部しか関係してこない課題であれば、職員個人のデジタルスキルで解決できるかもしれません。

ただし今度は、どういう課題を解決するのか具体的に挙げようとすると詰みます。

非効率の事例としてよく槍玉に上げられている「紙資料使いすぎ」とか「神エクセル」みたいな有名な課題は、徐々に改善されつつあります。
内部プロセスの改善事例として上げられている「会議資料のペーパーレス化」「テレワーク環境の整備」「RPA導入」あたりは、今やどこの自治体でも大なり小なり取り組んでいます。

こういった事例を今年の面接でなんて話そうものなら、さすがに時代遅れです。
勉強不足と思われてしまうでしょう。

組織内部の課題は、実際に組織を観察しなければ見えてきません。
特にデジタル化に関しては、自治体ごとに進捗具合がバラバラで、課題もバラバラだと思います。
めちゃくちゃ熱心にOBOG訪問してリサーチしたり、長期インターンなどで既に組織の一員として働いた経験があったりして、組織内部の状況を熟知しているのでもなければ、地雷を踏みかねないと思います。

素っ頓狂な深堀りを喰らうリスクも

そもそも面接官が「デジタル人材」の実態を理解しているか、かなり疑問です。
僕自身、情報処理技術者試験の勉強をするまでよく知りませんでしたが、一口に「デジタル人材」と言っても、色々な専門分野に分かれています。

しかし面接官は、デジタル人材といえば、
  • プログラムを作れて
  • ネットワーク配線工事ができて
  • データ分析できて
  • プロジェクト管理できて
  • SNSでバズれて
  • スマホやパソコンのおすすめの機種に詳しくて
  • パソコンの使い方をやさしくわかりやすく説明できて……
みたいなパーフェクトオールラウンダーを想定している可能性が大いにあり得ます。

そのため、面接でデジタルスキルをアピールしたら、一発目の受けは良いかもしれませんが、全然専門外の分野から深堀りされるかもしれません。

面接官的には「的確な返答が返ってくるはずだ」と期待しているところ、専門外分野ゆえにしどろもどろになってしまうと、「ハッタリかよ…」と落胆されてしまいかねません。
もちろん適切な深掘りができない面接官の方が悪いのですが、面接の場だとそういう指摘もできません。

アピールしたいなら「添えるだけ」

どうしてもデジタルスキルネタを使いたいのであれば、「行政のデジタル化」という大きな課題を持ち出すのではなく、「〇〇の分野に携わりたい、具体的にはデジタルの知見を活かして〜」みたいに、あくまでもデジタルは手段の一つとして位置付ければいいと思います。

このように位置付ける場合でも、「どうして現時点ではデジタル化が進んでいないか」理由をしっかり確認する必要があります。
ひょっとしたら、自治体では太刀打ちできない理由のために、「デジタル化したくてもできない」かもしれないからです。

こういう観点でスクリーニングしていくと
  • 法令の規制がなく
  • しっかりしたシステムを組む必要がなく(=ローコスト)
  • 住民の「お気持ち」を反映させる必要が薄い
このあたりの条件を満たす分野、具体的には広報とか観光あたりに絞られるのではないかと思います。


変な話、行政全般のデジタル化に本気で携わりたいのであれば、IT企業に就職して行政向けの機器・サービスを開発するほうがよほど近道だと思います。 
コンサルファームに入って行政関係のプロジェクトに参加するのもアリでしょう。


あくまでも僕の観測範囲内の話ですが、ここ数年で「新規採用職員に占める予備校利用者の割合」が高まってきています。
出題傾向が変わって独学だと合格しにくくなっているのか、予備校費用を惜しまないくらいに公務員志望度が高い人が増えているのか……理由はわかりませんが、とにかく予備校利用者が増えて、独学合格者が減っているようです。

僕はこれまで半ば趣味で色々な資格試験を受けてきましたが、地方公務員試験はかなり難しい部類に入ります。
凡人が努力でなんとかなるレベルの限界だと思います。



「公務員になりたい」のであれば、予備校に通うのが確実でしょう。
僕自身は予備校に通っていませんが、予備校利用者達からは「講義をサボらず受けて与えられた課題をきっちりこなせば合格できる」と聞きます。

一方、独学の場合だと、使用する教材、スケジュール、到達地点(完成度)の設定など、すべてを自分で管理しなければいけません。
予備校であれば最初から用意されていた「課題」を、自ら設定するところから始めるのです。

予備校利用にせよ独学にせよ、目的は同じ「公務員試験突破」です。
ただしプロセスはずいぶん異なります。
どちらのプロセスにもメリット/デメリットがあり、好き嫌いがあるでしょう。
いずれにせよ合格すればいいのです。

ただ、公務員試験に合格した後、つまり地方公務員として実際に働くにあたり役立つのは、圧倒的に独学経験だと思います。
地方公務員人生には「独学」がつきものだからです。

「教えてもらえる」環境ではない

過去の記事でも触れましたが、地方公務員の研修は適当です。

他人に仕事を懇切丁寧に教えるだけの余裕がありませんし、そもそも教えられるだけ詳しい職員がいないケースも多々あります。

「公文書の書き方」「議会対応」「出納規則」みたいな全庁共通のルールであれば、他の職員から教わることができますが、地方公務員の仕事(特に本庁)には「庁内でも自分しか携わらない仕事」がたくさんあります。
制度の運用や許認可業務あたりが典型でしょう。

こういう仕事の中身は、同じ係内の同僚や、直属の上司であっても、全然わかりません。

唯一わかるのは前任者ですが、前任者も全知全能というわけではなく、せいぜい数年担当していただけです。
教わるにしても基本的事項程度が限界で、予備校講師やテキストみたいに全幅の信頼を寄せることはできません。

誰も知らない「新要素」がどんどん増えていく

旧態依然というイメージの強い役所仕事ではありますが、それでも日々変化しています。
法令や制度が改正されてルールそのものが変わったり、新任の上司が業務フローを自分好みに変えたり……
理由はどうであれ「これまで通り」が通用しなくなるのです。
民間企業では当たり前の事象なのでしょうが、役所でもよくあります。

こういう場合は、誰からも教わることができません。
誰もが自分と同レベルの知識しか持っていないために、講師役が存在しないのです。

ルールを知る=インプットはされど重要

地方公務員の仕事はルールに基づくものが多く、「調べればわかる」「どこかに答えがある」仕事が多いです。
センスに従って判断するとか、ロジカルシンキングを駆使して答えを導出するのではなく、ルールをインプットすることがまず必要です。

つまり適切なインプットさえできればこなせるものが多いですし、反対にどれだけ地頭が良くてもルールのインプットを怠ればこなせないのです。

インプットの方法は様々です。
中でも「教わる」のは、誰もが義務教育にて経験しているインプットであり、馴染み深いものでしょう。
 
しかし前述のとおり、地方公務員という仕事においては、「教わる」がうまく機能しません。
そのため、否が応でも独学せざるを得ないのです。

独学によるインプットは、地方公務員人生においてずっと続きます。
少なくとも異動のたびにみっちり独学しなければいけない時期がやってきます。

最初にも触れたとおり、地方公務員試験はかなり難しい部類であり、独学合格には相当高度な「独学力」が必要でしょう。
逆にいえば、独学で地方公務員試験を突破できた方は、予備校利用者よりもハイレベルな独学力が備わっているのです。


そのため、やる気さえあれば、予備校利用者よりも高効率でインプットが可能なわけであり、インプットの重要性が高い地方公務員という職業においては、それだけ有利だと言えるでしょう。

もちろん、地方公務員の仕事は、ルールに基づく業務だけではありません。
むしろコミュニケーションに属するもののほうが多いと思います。
とはいえ「ルールの独学」は基礎中の基礎であり、「教わらないと理解できない」というタイプの方は、試験を突破できても実務で苦労するかもしれません。

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