キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

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タグ:防災

自治体広報には「全員にもれなく理解させなければならない」という原則があります。
これを達成するためにはアナログな手法をベースにせざるを得ません。
デジタルな方法だと、ツールをうまく使えない人に対して、情報を伝達できないためです。

とはいえSNSアカウントの運用のような、今時のデジタルな広報も、間違いなく重要です。
手間もコストも、発信に至るまでの時間も大幅に削減できます。
使える手段も増えて、内容も充実させられます。

デジタルな広報業務を担う職員は、地方公務員の中でも圧倒的少数です。
多分、1000人に1人くらいでは?
担当者は一から独力で勉強し、誰にも相談できず、孤軍奮闘する羽目に陥りがちです。

僕も観光の仕事をしていたとき、公式SNSを運用していた時期がありました。
幸いにも僕の場合、2ちゃんねるに始まり、ふたば、爆サイ、mixi、facebook、twitter、instagram、マストドンなどなど、それなりにインターネットでのコミュニケーションに触れてきた経験があったおかげで、ネット上の作法には自信がありましたし、すぐに「それっぽい」運用ができました。
最近のギスギス具合を見ていると、「リナカフェなう、誰か氏〜」とか言ってた頃のTwitterが本当に懐かしくなります。

しかし、こういう予備知識がない人間がいきなりSNSを任されたら、かなり大変だと思います。
前述のとおり圧倒的少数派であり、庁内にも仲間がいないので、疑問があっても誰にも相談できないのです。
自分の力でなんとかするか、自治体をまたいだ横のつながりを作るしかありません。

そんな悩める広報担当職員にぜひお勧めしたいのが、先月発刊された『まちのファンをつくる 自治体ウェブ発信テキスト』です。


今年読んだ役所本の中でも暫定ナンバーワンです。
若手よりも、ある程度役所の常識が染み付いてきた職員のほうが、心に響くと思います。

ひたすら具体的でわかりやすい

よくあるビジネス書だと、抽象的な概念図や数式を用いて、広報のコツを紹介しています。
民間企業のサラリーマンであれば、普段から身近にマーケティングのことを考えているために、概念を説明されるだけで自らの経験とリンクできて腹落ちするのかもしれません。
 
しかし公務員の場合、そんな素地がありません。
抽象的な一般論を説明されても、字面を追うのに必死で、理解できるとは限りません。

本書はひたすら事例ベースで具体的です。抽象概念や専門用語が無く、すっと理解できます。
読んだらすぐに実践できる事柄も多数取り上げています。

これからの予算要求にぴったり

本書で取り上げているのは、全国の自治体が実施している先進事例・成功事例です。
まさにこれからの来年度予算要求にも大いに役立つと思います。
新規施策のヒントにしたり、予算折衝の材料に使ったり……全部で100事例も掲載されているので、きっと参考になるものが見つかるでしょう。
発刊のタイミングが絶妙です。


職員が疑問に思うポイントを的確に押さえている

僕がSNS運用に関わったのは半年弱でした。
2ちゃんねる(大学受験サロン)でコテハンやっていた頃と同じ感覚で、何より炎上しないように節度を保ちつつ、応援したくなるような誠実さ・好感度を演出するように投稿していたのですが、本当にこれでいいのか迷う場面も多数ありました。

本書を読んで僕が何より感激したのは、当時疑問に思っていたポイントの多くが、本書で触れられていたことです。
著者の方は本当に自治体のことをよく見ていると思います。
自治体職員が悩みそうなポイントを把握していて、答えを提示しているのです。


例えば、SNSアカウントに寄せられたリプライへの反応。
僕の場合、炎上回避のため、以下のルールで運用していました。
  • 基本的に反応しない(プロフィールにあらかじめ明記しておく)
  • 投稿内容のミスを指摘するリプライのみ、感謝の意を返信する(「黙って修正した」と後から叩かれないように)

当時この本があったら、このような対応には止まらなかったと思います。


攻めに転じる手がかりとして

インターネット上には意図的に炎上案件を発生させて楽しむ悪い人がたくさんいます。
そんな方にとって、自治体は格好のターゲットです。
幸い、自治体には炎上を回避するノウハウが豊富に蓄積されています。
公平性と網羅性の徹底なんかは、その最たるものでしょう。

まずは行政ならではの守備優先の運用方法を習得してから、本書にあるような「攻めの運用」を考えていけばいいのではないかと思います。

広報のレベルは、自治体ごとに相当格差があります。
あえて力を入れていない(広報より内実に注力する)という考え方の自治体もあるのでしょうが、そうであったとしても、全国的な成功事例・先進事例を知っておくことは重要だと思います。
手軽に全国の事例を総ざらいできるという意味でも、本書は大変有用です。

今回の台風19号の被害に遭われた方には、心よりお見舞い申し上げます。
元防災担当部署の公務員として心が痛い日々を送っています。

連日報道される凄惨な被害状況もそうですが、ツイッター上で防災論を語る公務員アカウントが、前提条件を誤っているために的外れな指摘をしているところを見ると、別の意味で心が痛みます。

公務員なら知っておいた方が無難な河川防災に関する基礎事項をまとめました。
ツイートする前にさらっと読んでいただけば、きっと役立ちます。

浸水想定区域図は国or都道府県、洪水ハザードマップは市町村

よくニュースで取り上げられる「浸水想定区域図」と「(洪水)ハザードマップ」は、別物です。

ざっくりいうと、
  • 浸水想定区域図は国または都道府県が作成するもので、洪水が発生した場合どこが浸水するのかをシミュレーションして、川(水系)ごとに作成します。
     
  • 洪水ハザードマップは市町村が作成するもので、浸水想定区域図をベースに、避難場所や防災倉庫のような避難関係情報を追加し、地域ごとに作成します。




そのため、
ハザードマップ上では浸水しないはずの地域が浸水していた!
という批判を市町村にぶつけるのはお門違いです。(ベースとなる浸水想定区域図が間違っているため)

また、
浸水想定区域内に避難所があるのはおかしい!
という批判を都道府県にぶつけるのもお門違いです。(避難所を決めるのは市町村のため)


河川工事の基本は「下流から」

河川工事の目的は「流下能力の改善」、つまり一度に流せる水の量を増やすことです。

川の水は最終的に海に流れます。
海まで全部送り届けないと、途中で陸地に溢れてしまいます。
つまり洪水が発生します。
そのため、流下能力は、河口部で最大にならなければ意味がありません。

ウォータースライダーを想像してください。

もし入口だけ太くしてアベックが手を繋いで同時に滑走できるようになっても、ゴール地点が細いままだったら、途中で詰まってしまいます。
人間という固体だと詰まってしまうわけですが、これが水だとしたら溢れ落ちます。

川の場合も同様です。ゴール地点(河口部)が太くないと、途中で溢れてしまいます。


見るからに川幅が狭くて危なそうなのにどうして工事しないのか?という批判をよく見かけますが、工事したくても下流部が終わっていないからできないというケースも多々あります。

河川工事の原則は「川幅を広げる」

流下能力の改善とは、具体的には「断面積の拡大」です。
断面積を広げる方法は主に3つあります。
参考:長崎県ホームページ
  1. 川幅を広くする
  2. 川底を深くする
  3. 堤防を高くする

川底を深くすると、下流部との標高差が縮まってしまい、勾配が緩くなるため、流下速度(水の流れ下るスピード)が落ちます。
流下速度が急に落ちる箇所は、洪水のリスクが高まります。

堤防を高くすると、川の水の位置エネルギーが高まり、決壊した場合の破壊力が増します。

そのため、なるべく川幅を広げる方法で対処するのが原則です。
(河川工学的には諸説あるらしいのですが、少なくとも役所的には)

しかし、この方法には、川の両側の用地買収が必要で、費用と時間がかかります。
既に川沿いに街が出来上がっている地域だと、そもそも用地買収できず、実現できません。

時々見かける川の両側に高い壁を作れ!という主張は、非常に危険です。
壁自体にものすごい水圧が加わって簡単に壊れてしまいますし、壊れた瞬間に濁流が上から滝のごとく降り注ぎます。

水位計と水位標

河川に設置される水位計というと、定期的に水位情報を自動計測してデータを送信するものを指します。
計測機だけではなく、計算用のコンピュータや無線機もあり、コンクリート製の小屋のような設備です。
設置にも維持管理にも費用がかかるので、たくさんは設置できません。

川のたくさん設置してある目盛りみたいなものは、水位標(量水盤)と言います。
目視で水位を確認するためのもので、近隣住民の避難判断や、水位計が狂っていないかのチェックなど、河川管理に欠かせないものです。

両者は名前は似ていますが、全くの別物です。


河川防災についてもっと知りたい方は、この本をどうぞ。
今回の記事のネタ元でもあります。

河川工学の基礎と防災 (気象ブックス) [ 中尾忠彦 ]
河川工学の基礎と防災 (気象ブックス) [ 中尾忠彦 ]


防災部局経験者ならお馴染みかと思いますが、大雨の可能性を測る指標として「相当温位」というものがあります。
厳密な定義は検索してください。

今回の台風では、中部地方から東側全域が360k超えという超危険なラインに達していて、どこで豪雨が降ってもおかしくない状況でした。

気象災害が頻発し、公務員稼業における防災業務のウェイトが大きくなりつつある今日この頃。
部局を問わず広く防災関係知識を広めるべき時期に来ているのかもしれません。

官民問わず、今週から本格的に仕事を再開している方が多いと思います。
今年も暑い夏でしたね。 
暑いおかげで引きこもりが正当化され、個人的には過ごしやすい夏でした。

名残を惜しみつつ、公務員の夏休み事情を振り返ります。

夏期だけ使える特別休暇がもらえる

公務員の場合、民間企業のような夏期休業期間は設けられていません。
夏の間だけ使える有給休暇が付与されて、職員が各自好きな時に取得するパターンが多いようです。
僕の勤務する自治体も同じスタイルで、特に月曜日や金曜日に取得して連休をつくる方が多いです。


利用期間や日数は自治体によって異なります。
たとえば徳島県だと、7月〜9月の間だけ使える5日間の特別休暇が付与されます。
 
僕の知る限りでは、徳島県のように
  • 利用期間 7月〜9月
  • 日数   5日間
という組合せが多いです。

旧盆以降は実質休めない

権利的には認められていても、実態は異なります。
特に本庁勤務の場合、8月下旬以降は、この特別休暇はほぼ使えません。

9月に入ると議会が始まります。
議会対応の準備はもっと早く、ちょうど旧盆が終わった頃からスタートします。

議会関係業務が始まると、休暇どころではなくなります。
いつ質問が湧いてくるかわからないので、とりあえず役所内に居なければいけません。
たとえ特別休暇が余っていたとしても、そもそも休暇が認められないため、使えないのです。

出先機関の場合は9月でも休めるようです。
議会業務に左右されないからなのでしょう。

反面、8月は休みにくいようです。
平日なかなか役所に来られない人が、お盆休みを使って窓口に押し寄せるのです。

全庁的に暇だけど、忙しい人も少なからずいる

特別休暇の事実上の利用期限である「7月〜8月旧盆」の期間、大体の部署は暇です。
議会業務のような役所全体を巻き込む仕事が無いので、役所お得意の「調整業務」が激減し、各部署固有の仕事しか残らないからです。

ただ、この時期こそ忙しい部署や担当業務も勿論あります。
こういった部署・担当業務の職員は、せっかくの特別休暇を捨てざるを得ません。

9月議会で目立っちゃう部署

全庁的な準備は8月下旬から始まるものの、条例案を提出したり、9月補正予算として追加で予算要求するなど、目立ったことをする場合には、7月中から内部調整が始まります。
 
この関係で、
  • 条例の文言担当(総務系部署の文書係、法規係ポジション)
  • 財政課の予算担当
  • 条例案や予算案を提出する各課の関係職員
には、休んでいる暇がありません。むしろ休日出勤するほどです。
 
冷房の効かない休日出勤は地獄そのものです。

参考:地方公務員の冷房事情とは?

つい先日まで「どうせ人事課と財政課は休日でも冷房入ってるんだろ?」と疑っていましたが、財政課に異動した同期職員から「つかないよ」「だからまだ涼しい夜に出勤して仕事してるよ」とやつれた顔で呟かれ、心底反省しています。

採用・インターン関係

県庁の場合、7月〜8月にかけて採用面接が続々行われます。
夏休み期間中に入ると、学生向けの職場見学会やインターンもあります。
これらの業務に追われるので、人事課は休めません。

夏だから忙しい部署

全庁的には暇とはいえ、夏特有の季節業務を抱える部署は忙しいです
たとえば渇水対策。万一の場合に備え、水道関係の部署は準備に奔走します。
防災部署も忙しいです。台風が発生するたびに説明資料を作り、庁内幹部に説明して回ります。
 
観光部局も結構忙しいです。最近流行りの「ナイト〇〇」の準備や現地対応で、昼間よりも定時後の方が忙しいかもしれません。
市町村だと地域のお祭り対応も大変そうです。

実際休めているのか?

僕の場合、防災部署にいたときは不運にも台風が続々上陸してきて忙殺されたせいで、2日くらいしか消化できませんでしたが、そのとき以外は安定して4日間は休めています。

観光部局にいたときも、僕は休めました。
ただ、観光施設のライトアップ担当だった同僚は全然休めていませんでした。こちらは運が良かった。

ただ、5日間完全消化は一度しかできていません。
旧盆までに5日取得する計画を立てても、直前に緊急業務が飛んできて休めなくなり、代わりの休日を見繕えないままに9月に突入してしまいます。

周囲を見ていても、5日間完全消化している職員は滅多にいません。3日休めたら及第点だと思います。
僕含め、若手職員は「使えたらラッキー」程度の認識でいます。

都会・田舎で差がありそう

今回紹介したのは、あくまでも田舎役所の事情です。
都会の役所だと相当事情が異なると推測します。

田舎の人間は、お盆に帰省する必要がありません。
帰省するとしても近場なので、長期の休みは不要です。

一方、都会人の場合、田舎の実家に帰省する都合で、長めに休みたい方も多いでしょう。
僕達のように「使えたらラッキー」程度のゆるい認識ではなく、もっとガツガツ取得しに行くのでは?と思っています。

当ブログの一番人気記事は相変わらず学歴ネタなのですが、ついで人気なのが資格関連の記事です。

勉強結果が形に残るという意味で、資格勉強はやりがいに満ちています。
しかし、地方公務員の実務には、なかなか役立ちません。

一方の実務知識は、どれだけ蓄えても異動のたびにリセットされてしまうため、自発的に勉強するほどのモチベーションが湧かないものです。

「地方公務員として働く中でライフワーク化できるくらい、どの部署でも役に立つ知識はないものか」と常々考えてきたのですが、ついに1つ思い当たりました。郷土史です。

攻める業務での郷土史

観光系・産業系の部署では、既に確立した地域の強みや魅力をさらに磨き上げるだけでなく、新たな素材の発掘も行っています。

郷土史は素材の宝庫です。
「当時は日本一」「日本初」といった文言がたくさん見つかります。
これらは全て、何も手を加えなくとも、最初からオンリーワン。
素材として非常に有望です。うまく調理できるかは別問題ですが……

地域住民とコミュニケーションをとる際にも、郷土史知識は役立ちます。
ボランティア団体の方々など、一緒に仕事をしていく住民からは、相手方の郷土史的事情を知っているだけで、ある程度は信頼を得られます。
友好的な関係を築くための第一歩です。


守る業務での郷土史

受け身・後ろ向きな業務でも、郷土史は役立ちます。
自治体が現在抱えている問題の発端は、地域特有の歴史事情にあることも多いです。
一般的な日本史(政治史)の知識だけしか備えていないと、本質を見落とすおそれがあります。

例えば、国有地の不法占拠。
河川敷の中に勝手に畑が作られている場面を考えます。
 
この場合、趣味の園芸で畑を作っているのか、明治維新や戦争中のどさくさの中で行政側が勝手に土地境界を定めたのかで、対応方針が変わってきます。
前者であればすぐに行政指導ですし、後者であれば登記を調べ尽くしてから低姿勢で事情説明です。
 
一般的な日本史政治史の知識しか無ければ、「どさくさ」という可能性にたどり着きません。
後者のようなソフトな対応は、思いつきもしないでしょう。

この例は非常に単純ですが、具体的に書くのが憚られるくらい生々しい郷土史由来の問題が現場には転がっています。
一般的な常識だけで判断すると、手痛いカウンターを食らってしまいます。

戦いでの郷土史

最も郷土史知識が必要となるのは、アンチ行政な方々との折衝業務です。
彼らはたいてい郷土史に精通しており、郷土史の中から行政批判のネタを拾ってきます

明治期に様々な規制法令が施行された結果、藩政期までは住民の自由に委ねられていた日常的行為の多くが、行政の規制下に置かれることになりました。
 
もちろん、完全に規制できるわけがなく、施行直後に揉めたまま現代まで法適用できていないケースが存在します。

郷土史を紐解くと、 こういった例外的なケースに第三者が気づいてしまいます。
例外を許している行政に対し、「怠慢では?」「特権的な取り扱いをしている」と攻撃するのです。

他にも、このあたりはありそうです。
  • 史跡の復元工事をしている自治体に対し、「行政の史料解釈は間違っている、このままだと間違った形に仕上がる」と工事差し止め
  • 災害発生時に、「『経験したことがない災害』と説明しているが、過去の災異史には同様の事例が載っている」と損害賠償請求

彼らの主張を理解し、対策を考えるには、郷土史の知識が欠かせません。
郷土史を知らないままに対応すると、相手のペースに飲まれます。
気づかぬうち不利な言質を取られてしまうでしょう。

郷土史を勉強するには?

どうやって勉強すればいいんでしょう?僕も知りたいです。

とりあえず、山川出版社から出ている『〇〇県の歴史』『〇〇県の歴史散歩』シリーズは、必読かと思います。

まずはこれらシリーズの、お住まいの地域の巻を読んで、通史を把握してはどうでしょうか?


埼玉県の歴史 (県史)
田代 脩
山川出版社
2010-11-01





埼玉県の歴史散歩
山川出版社
2005-03-01



西日本豪雨の災害復旧対応に当たっている皆様、本当にお疲れ様です。

加えて、西日本以外の自治体にいる防災担当部署の皆様も、お疲れ様です。
今年の夏は全然休めなかったのでは?

今回は、国内のある地域で大きな災害が発生した場合に、そことは縁もゆかりもない遠方の自治体ではどんな動きをするのか、紹介したいと思います。

とりあえず調査する

遠方で災害が発生した場合、類似の災害が管内でも発生しないか、すぐに危険度調査をするよう指示が下ります。

発案者は様々です。議会、地元マスコミ、地元経済界、住民団体などの外圧かもしれませんし、首長自らの判断かもしれません。
学校ブロック塀のように、国が要請する場合もあります。


予算はほぼゼロです。
もともと予定していなかった業務ですし、予算要求する時間的余裕もありません。

そのため、普段なら外部に発注するような専門的な内容でも、職員が自らやります。
特別な計器が必要でも、手持ちの道具で済ませます。

時間も予算もノウハウも道具も無いという悲惨な条件下で行う調査なので、精度は疑わしいです。
あくまでも「どう見ても明らかに危険な箇所がないか」をチェックする機能しかありません。

この調査では、スピードが何より求められます。
結果をすぐに発表できないと、「日頃の危機管理体制が甘い」というお叱りを外部から受けてしまうからです。
災害のニュースが下火にならないうちに、調査結果をまとめ上げ、公表します。

今年の場合は、河川やため池の堤防強度調査を実施したのでは?
9月議会で結果報告すべく、お盆休み返上で結果取りまとめに当たったことでしょう。

自治体によっては、調査結果を踏まえた緊急対策プランを作って、補正予算で打ち出すところもあるでしょう。
今年中に詳細な調査を実施、冬場に工事設計、来年度頭から対策工事スタートして出水期に間に合わせる……くらいのペースでしょうか?

職員(特に管理職)にとってはまさに天災

この危険度調査、職員としては、それこそ天災のような業務です。
とにかく手探りで至急結果をまとめなければいけません。
平常業務はストップ、調査業務だけでものすごい残業時間になります。

ヒラ職員なら残業代で報われるものの、残業代の出ない管理職はたまったものではないと思います。

日本のどこかで災害が発生すると、被災地から遠く離れた自治体でも、このような突発的業務が発生します。
この行為を無駄と思うか、リスク管理としてあるべき姿と捉えるか。難しいところです。

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