キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

タグ:出世

多くの地方公務員にとって、7月から8月は閑散期だと思います。
6月の議会も終わり、4月1日付け人事異動の余波も収まり、役所組織全体が平穏を取り戻す時期です。

ただし、9月補正案件を抱えてしまうと、状況は一変します。
7月半ばから財政課と折衝を始めて、お盆過ぎまで続きます。
担当者はその間、夏季休暇に取得する同僚を横目に、延々と資料を作ったりヒアリングを受けたりしなければいけません。

僕自身、一度だけ9月補正案件を担当したことがあるのですが、その夏は一日も休めませんでした。

夏場に財政課職員とやりとりしているうちに、彼らの食事が明らかに偏っていることに気がつきました。
昼も夜も麺類ばかり食べています。
カップ麺だったりコンビニ製品だったり出前だったり……調達形態は様々ですが、とにかく麺類ばかり食べています。

このことに気づいて以来、秋冬にかけて行われる次年度当初予算要求の際にも財政課職員が何を食べているのか注目していたのですが、やはり麺類が多いです。
つまるところ、僕の勤める県庁では、財政課職員は年中麺類ばかり食べています。

この傾向が全国共通なのか本県独自の傾向なのか、まだわかりません。
ただ僕は出世ルートに共通する特徴だと思っています。
麺類を主食に据えることは、出世ルートを生き抜くために、ものすごく合理的だからです。

すぐに食べられる

このブログでも何度か触れていますが、概して地方公務員は昼休み時間が保証されていません。

 
一応1時間の昼休み時間が設定されてはいるものの、急な仕事が舞い込んできたら休めません。

庁内ではもちろん「昼休み」の存在は認知されていて、昼休み時間中に仕事を振るのは非常識な振る舞いです。
しかし、住民やマスコミ、議員のような役所外部の方々からすれば、昼休み時間なんて役所側が勝手に決めたローカルルールであり、自分たちにとっては全く関係ありません。
「昼休みだから待ってくれ」なんて言おうものなら怒鳴り散らされます。

出世コースの職員であれば、なおさら急件に翻弄されるものです。
普通の職員以上に、いつ・どれくらいの時間を昼食に充てられるか、読めないのです。

このような労働環境下なので、短時間で食べきれる麺類が重宝されているのだと思われます。


疲れてても喉を通る

短時間で食事を済ませることが重要ならば、サンドイッチのようなパン類に頼るという手もあります。

ただ、長時間労働が続いて体力が落ちてくると、食事をすることすら億劫になってきます。
パン類はちゃんと噛まなければ飲み込めません。
この程度の「噛む」動作ですら辛くなるのです。

麺類はあまり噛まなくても喉を通ります。この点もまた重要なのです。
咀嚼する必要性が薄いということは、それだけ食事時間を短縮できるわけでもあります。



かつて僕の知人の現役キャリア官僚も「普段は麺類ばかり食べてる」と話していました。
 
汁物(かけそばやラーメン)よりもつけ麺スタイルが好きだけど、麺を箸でつまんでつけ汁にディップしている時間がないので、普段は汁物しか食べられず悶々としているとか。
つけ麺は価格だけでなく「食事時間」というコストもさらに上乗せして支払う必要がある贅沢な料理なんだとか。

当時は何を言っているのか正直よくわかりませんでしたが、今になってようやくわかりました。

自分が出世コース入りしているのかどうか、30歳を過ぎる頃になれば自然と分かってきます。
同期職員の間でも業務内容の差が広がり、忙しい職員と暇な職員にはっきり分かれるからです。

過去にも紹介したとおり、出世コースに入るか否かは20代のうちに確定すると僕は考えています。


役所の出世コースは明確で、「誰が出世コースに乗っているのか」は人事録を数年分見ればおおよそわかります。

出世競争最大の謎
であり役所人事の神秘は、その前段階である出世コース入りを賭けた2次選抜過程です。
誰が参戦しているのか傍目にはわかりませんし、戦っている当人すら自覚が無いかもしれません。

今回はこの「2次選抜」の真相に迫ってみます。
7割方妄想なので脱力して読んでください。

2次選抜過程=調整能力と激務耐性を試す

出世コースに乗るためには、少なくとも「事務処理能力」「調整能力」「激務耐性」の3つが欠かせません。
ここでいう「激務耐性」とは、忙しい時期でも仕事のパフォーマンスが落ちないという意味です。

このうち「事務処理能力」は、担当業務がどんなものであれ測定可能な指標です。
役所の仕事において、事務処理能力が求められないものはありません。

そのため、採用直後からの数年間にわたる1次選抜の過程では、主に「事務処理能力」を測定していると思われます。
「事務処理能力」が高いと評価された職員が、2次選抜に進みます。

2次選抜では、残る2要素である「調整能力」と「激務耐性」が主に測られます。
つまり、「調整能力」と「激務耐性」が試されるポストに配置されれば、自分が2次選抜にかけられていると判断できます。

20代後半の段階で、延々と事務作業が続くポストやほぼ定時で帰れるようなポストに配置されたとしたら、残念(幸運?)ながら2次選抜には進めなかったのだと思われます。

具体的な2次選抜ポストは自治体ごとにバラバラであり、人事録を読み込んで分析するしかありません。
しかし役所は役所であり、若手に任せても問題なくて「調整能力」と「激務耐性」をテストできるポスト、つまり2次選抜向けのポストは、ある程度は似通ってくると思います。

2次選抜ポストの典型例

予算担当

課の予算担当ポストや、部局の予算調整ポストは、言わずもがな庁内調整業務の要であり、来年度当初予算の編成時期(11月~2月)には激務を強いられます。

しかも部や課ごとに最低一人は配置されるポストであり、庁内全体で見れば相当な人数が存在します。
つまり、仕事の出来を比較でき、能力評価しやすいです。
「調整能力」「激務耐性」を測定するのにうってつけのポストと言えるでしょう。


前任者がもっと上位の職員だったポスト

これまで30代半ばの職員が担当していた業務の後任者として起用された場合も、2次選抜入りしている可能性が高いと思われます。

役所では基本的に、職位が上の職員ほど難しい仕事を割り当てられます。
歴代ずっと30代の職員が担当している業務は、若手職員では務まらない理由があるのです。
(例外もたくさんありますが……)

逆にいえば、これまで30代職員が担当してきた業務を難なくこなせる若手職員がいたとすれば、その若手職員は間違いなく優秀といえるでしょう。

ベテラン担当ポストにあえて若手を配置することで、その若手職員を試すのです。

部局長との接触機会が多いポスト

そもそも出世コース入りの可否を見極めているのは一体誰なのでしょうか?
職員の人事はもちろん人事課が決めているわけですが、いくら人事課といえども「調整能力」「激務耐性」のような抽象的な能力まで測定・把握できるとは思えません。

僕の見立てでは、出世コース入りの鍵を握っているのは部局長です。
部局長はいわば出世コースの大先輩であり、出世する職員に求められる資質を自らの経験をもって熟知しています。
人事課としても、部局長たちの意見を大いに参考しているのではないでしょうか?

とはいえ部局長ともなると普段は個室で仕事しており、若手職員を観察する機会がなかなかありません。
そのため、特に注目されている職員は部局長の目に入るポストに配置され、日々評価されているのだと思います。
 
具体的にはこのあたりが典型でしょう。
  • 各課・各部局の予算担当(予算や議会のヒアリングで確実に接触する)
  • 各部局の総括担当課(部局長の秘書的な業務がある)
  • 部局長へのヒアリングを頻繁に行う事業の担当(ヒアリングが多い=目玉事業でもあり、激務かつ調整も多い)


本省出向はあくまで2次選抜の序章

国家本省への出向も2次選抜プロセスの一部だと思っています。
1次選抜で「事務処理能力あり」と認められた職員でなければ、出向しないでしょう。
 
ただし、本省出向そのものが2次選抜の結果を左右するとは思いません。
本省への出向中は、だれもその仕事ぶりを直接観察できず、「調整能力」も「激務耐性」も測定できないからです。

本省出向の目的は、1次選抜で「特に見込みあり」と認定された本命職員をさらに成長させることなのではと思っています。

2次選抜の本番は出向から帰ってきた後であり、本省出向を経験したから出世ルート当確とは限りません。
本省出向者はあくまでも1次選抜の成績が良かっただけで、2次選抜で巻き返される可能性は十分ありえます。

真相がわからないなら勝手に解釈してもいい

自分がどう評価されているかなんて、正直よくわかりません。
正解がわからないのであれば、自分に都合よく解釈してしまえばいいと思います。

仕事で成果を出したいのであれば、「自分は出世候補者だ、組織から見込まれているんだ」と勝手に思い込むのも大いにアリだと思います。
自然とやる気が溢れてきて、仕事が楽しくなるかもしれません。


県庁における圧倒的出世コースといえば、財政課(予算編成担当)と人事課(人事異動担当)です。
異論を挟む余地がありません。いずれかに乗ってしまえば、部局長クラスが見えてきます。

問題(そして格好の話題)は、出世コース候補者がしのぎを削る選抜ポストと、惜しくも圧倒的出世コースから漏れてしまった職員がしのぎを削るそこそこ出世コースです。
こちらは自治体ごとに大きく異なるのでしょう。インターネット上の情報でも、書き手によって答えが異なります。

中でも評価が割れているのが「市町村課」です。
財政・人事に次いで出世に近いとの高評価を下す人もいれば、そもそも触れもしない人もいます。

僕は「選抜ポスト」「圧倒的出世コース」いずれでもないと考えています。

本稿を読む前に、この記事を読んだほうがわかりやすいかもしれません。


業務面:小難しい

市町村課の主な仕事は、総務省・財務省・内閣府と市町村の中継ぎです。
都道府県のホームページでは、市町村課の業務として「市町村行財政の指導」みたいなことが書かれていますが、都道府県が何らかの意図を持って指導するわけではありません。
あくまでも国家本省から通知された内容に従います。いわば現場監督です。

このほか、市町村そのものの存在に関わる手続き(自治体間の境界変更など)、一部事務組合のような広域行政に関する業務も、市町村課の役割です。
選挙管理委員会を兼ねている自治体も多いようです。

これらがコア業務であり、自治体によっては、ふるさと納税や移住促進あたりも所管しています。

あくまでも国家本省と市町村の中継役なのであって、県庁内各課と市町村の中継役ではないところが重要です。

市町村課という名前だけ見ると、県庁の事業課と市町村の橋渡し役を務めるかのように思えるかもしれませんが、市町村課は他課の業務には関与しません。 
ある意味、市町村課は、庁内では浮いた存在です。他課との関わりがほぼありません。

基礎能力の高い職員しか配置できない

市町村課の職員には、国が作った膨大なルールやマニュアルを解読して咀嚼する「理解力」、市町村からの質疑に応じる「記憶力」「解説力」が必要です。
いずれも公務員であれば必須の能力ではありますが、市町村課の場合は取り扱う分量が非常に多く、しかも小難しいものばかりなために、高い水準が求められます。

しかも、普段やりとりするのは、市町村の人事課や財政課という、市町村職員の中でも選りすぐりのエリートばかりです。
パッとしない職員は舐められて丸め込まれてしまい、指導監督役が務まりません。

こういった事情ため、もともと実績があって高く評価されている職員でないと、市町村課には配置しづらいのではないかと思います。

職員配置面:県庁職員以外がたくさんいる

市町村課には、たいてい市町村からの派遣職員がいます。
どういう基準で派遣職員を選んでいるのかは不明ですが、僕の勤務する県庁の市町村課には期待のホープが送られてくると言われています。

総務省からも、たびたび若手職員が派遣されてきます。
こちらも詳細は不明です。総合職だけなのか、一般職でも来られるのか……

市町村や国と人事交流している部署は他にもあります。
ただし、派遣職員の人数では、市町村課が圧倒的最多です。

コミュ力の高い職員しか配置できない

派遣職員のいる部署では、彼ら彼女らのマネジメント業務(業務配分、進捗管理、指導など)も、県庁生え抜き職員の仕事です。
しかも市町村課は派遣職員が多いため、年齢にかかわらず、ほぼ全員がマネジメント業務に携わることになるでしょう。

そのため、しっかりコミュニケーションが取れる職員でないと、市町村課の仕事は勤まりません。
自分の仕事だけに没頭するのではなく、常に周囲の職員の様子を見て、的確にサポートできるタイプでないといけません。

派遣職員が多いということは、生え抜き県庁職員の割合が少ないということでもあります。
そのため、首長発の政治的案件のような派遣職員には任せられない突発的業務が発生したら、わずかな生え抜き職員で対応せざるを得ません。

つまるところ、職員配置面から考えても、それなりに評価の高い職員しか配置できないと思われます。

出世コースとは本質的に異なる

まとめると、市町村課には以下のような特徴があると思われます。
  • 業務内容・人員体制の特徴的に、それなりに高評価の職員でないと配置できない
  • 役所運営の根幹である行財税政と選挙の知識が身につく
  • 年齢に関係なくマネジメント業務を経験できる
これだけ見ると、有能な職員が配置され成長の機会も与えられている環境、つまり出世コースのように見えます。

しかし、正真正銘の出世コースである財政課や人事課と比べると、根本的な違いがあります。
市町村課では、出世に不可欠である「庁内調整能力」が身につきません。

市町村課の役割は、あくまでも国(総務省・内閣府)と市町村の仲介役であり、市町村課が何らかの意思決定を下すことは滅多にありません。
部局長や首長の判断を仰がなければいけない大仕事も比較的少ないでしょう。

加えて、市町村課の業務が庁内他課に影響を及ぼすことも少なく、ほとんどの業務が課内で完結するため、庁内での利害関係調整もありません。

これらの事情のために、市町村課では、庁内調整能力が求められる機会に乏しく、育まれることも無いと思われます。

本流出世コースである財政課や人事課では、庁内調整能力を徹底的に鍛えられます。
将来的に部局長として役所を回していく際に、この能力が必要不可欠だからです。
逆に言えば、庁内調整能力が身に付かない市町村課は、出世コースたり得ないのです。

結論:20代前半までに配属されたら期待大

新卒入庁で最初の配属先が市町村課だったり、1回目の人事異動で市町村課に配属された場合は、人事から期待されている可能性が高いです。

市町村課の業務を無難にこなせば、基礎能力は合格点です。
ただ、最重要評価項目である「庁内調整能力」は、まだ一切評価できていない状態です。 
次の人事異動で「選抜ポスト」、つまりは庁内調整能力を試される部署に配置されて、そこでも無難に仕事をこなせれば、晴れて出世コースに入れるでしょう。

20代後半以降に配属された場合は、少なくとも一軍メンバーからは脱落していると思います。
ただし、基礎能力が高く評価されていることは間違いありません。
そうでなければ、そもそも市町村課に配置されないでしょう。

とはいえインターネット上には「市町村課は出世コース!」と断言しているサイトも複数あるので、自治体によっては出世コースなのでしょう。人事録を遡ってみると面白そうです。 

ちなみに僕は市町村課にかなり興味があります。ブログネタの宝庫でしょう。
話し下手コミュ障なので絶対あり得ないでしょうが……

「地方自治体の出世コースといえば人事・財政・企画」という言説がインターネット上ではすっかり根付いています。
書き手によって順位付けは異なるものの、この3部局が突出している点ではだいたい共通しています。

これら3部局に配属されることが出世への近道、つまり出世コースであることは僕も完全に同意します。
ただし、配属後の業務の性質でみると、企画部局だけは毛色が違うと思います。

人事と財政は、仕事の中身がおおかた決まっています。
ものすごく重要かつ面倒だけど手順・作法が決まっている仕事を確実にこなすことが求められる、いわば急勾配で空気が薄いけど舗装された登山道で頂上を目指すようなものだと思います。

一方の企画部局は、どんな仕事が飛び込んでくるか、誰も予想できません。
未舗装かつ測量すらしていない斜面をひたすら手探りで登っていくようなものです。

俗にいう「長期構想」「基本計画」のような、全庁横断的(総合的)で長期的な計画のことを、本稿ではまとめてウィキペディアに倣い「総合計画」と表現します。

そもそも企画部局の仕事とは?

企画部局は、自治体によって名称がバラバラです。


都道府県だと、ここに掲載されている部局が「企画部局」にあたるものと思われます。
(山形県と新潟県は違うかな?)
「企画」「戦略」「総合」「政策」あたりの文言が特徴です。

自治体ごとに名称が異なるとおり、企画部局の所管業務は自治体ごとに異なります。
インターネット上では「企画部局=総合計画」というシンプルな整理をされている情報が目立ちますが、実際は他にもたくさんの業務を抱えています。

企画部局の業務をおおまかに分類すると、以下の3つに分類できます。
  1. 総合計画の策定、実績評価
  2. 全庁的な意見のとりまとめ
  3. 外部から突発的に降ってきた新規案件をとりあえず引き受ける

1は言わずもがな、企画部局の代表的業務です。
ただし、同じ総合戦略関係の業務でも、そのプロセスは自治体ごとにまちまちであり、特に企画部局が内容に口出しできるかどうかという点には注意が必要です。

強い企画部局であれば、実際に事業を行う課が作った原案にどんどん口を挟んで、目標値を上乗せしたり、事業期間を前倒したり、そもそもの目標を変えたり……等々、暴虐の限りを尽くします。まるで政治家です。

しかし弱い企画部局には、各課が提出してきた原案を日本語的に読みやすく整える程度の権限しかありません。


2の業務は、自治体としての総意をまとめるものです。
具体的には、首長どうしの懇談会や国会議員への要望が挙げられます。
こういった機会では、庁内各部局の案件をまとめてパッケージ化する必要があります。
業務プロセスは総合計画と似ていて、まずは各部局から原案を集め、それらを組み直し、縦割り感を消して統一感を持たせます。


3の業務は、事業内容がはっきりしなかったり、あまりに斬新な案件であったりするために、すぐには担当部局を決められない場合に、しぶしぶ企画部局が引き受けるものです。
最近だと中央省庁の地方移転やSDGsあたりでしょうか。

一旦は企画部局が引き受けるものの、あくまでも暫定的な対応です。
いずれ別部局に引き継ぎます。
引き継いだ後もちゃんと業務を回るよう「先鞭をつける」「前例をつくる」のが企画部局の役目と表現しても差し支えないと思います。

2と3の役割は、自治体によっては企画部局以外(財政、秘書、総務あたり)が担っているかもしれません。

とにかく精神がすり減っていく

前述の1〜3のいずれにしても大変な仕事です。
業務量はそれほどではないかもしれませんが、精神的負担は非常に大きいです。

「ゼロから全て組み立てる」という公務員らしからぬ仕事

まず、企画部局の仕事にはルールもマニュアルもありません。
達成すべき目標も、目標に向かう作業工程も、作業に必要なツールも、すべて自ら準備しなければいけません。
上司や同僚に相談しても有益な答えは返ってこないでしょう。彼ら彼女らもわからないからです。

ゼロベースで仕事を組み立てていくのが好きな方もいるでしょうが、大抵の地方公務員にとっては苦行です。
過去の業務経験がほとんど活きず、ひたすらもがき続ける日々が続くでしょう。


「忖度に次ぐ忖度」に陥りがち

「ゼロから仕事を組み立てていく」とは言うものの、担当職員に決定権限があるわけではありません。
むしろ担当職員の裁量は小さく、首長はじめ幹部職員、議員、地域住民の声、経済界の有力者といった方々の意見を収集し、ちょうどよい「落とし所」を探るのが担当職員の役割でしょう。

偉い人たちが意思決定するための準備(資料作成、事例収集など)をして、決まったことを機械のように実行していくだけです。
職員自身の意に反する流れになろうとも、口を挟む権限は全くありません。
むしろ「自分の意思」なるものを極力排し、偉い人たちの意向が正確に実現されるよう心を砕くべきです。いわば高度な忖度です。

どんな部局であれ、地方公務員の仕事には「偉い人への忖度」が含まれるものですが、企画部局の仕事は特にこの要素が強いと思います。
忖度は巧拙はっきり分かれます。誰でもできるわけではありません。
苦手な人にとっては苦痛でしかありません。



他部署に仕事を押し付けざるを得ない

企画部局の仕事は役所全体に影響します。
他部局に仕事を振って、平常業務の手を止めて作業させるくらいは日常茶飯事で、時には過去の意思決定を撤回してもらうことすらあります。
他部局からするとたまったものではありません。いい迷惑です。

そのため、企画部局はよく他部局と揉めます。
人事や財政とは異なり、企画部局には権限がありません。
他部局からすると、企画部局に従うメリットも無ければ、従わない場合のデメリットもありません。
企画課側から何か指示したところで大人しく従ってくれるケースは稀で、たいていは自らの主張をぶつけ返してきます。

いかに他部局を従わせるか、企画部局の職員は日々頭を悩ませていることでしょう。
「最初から敵意全開の相手を説得する」という他部局とは比にならない高度な調整能力が求められますし、相当な精神的負担があることは想像に難くありません。

僕自身、企画部局からの作業依頼を素直に引き受けたせいで上司から怒られた経験があります。
「君がその作業に手をつけてしまったら、それが前例になって、議会の質問も住民訴訟も全部うちが引き受けなきゃなんないんだぞ?しかも企画部局案件だから人員も予算も増えないんだぞ!?」と。
完全に厄介者扱いです。

配属されてからが真の競争

企画部局の仕事は、頑張ってどうにかなるものではありません。明らかに向き不向きがあります。
他の出世コース(財政・人事)の仕事よりも体系化されておらず、きちんとこなせる職員は少ないでしょうし、年度による当たり外れも大きいでしょう。
そのため、人事や財政と比べ、適応できずに脱落する職員の割合が大きいと思われます。


その反面、企画部局でしっかり仕事をこなせれば、役所内でも希少な人材となり得るとも言えるでしょう。
企画部局で経験する「ゼロからの業務組立」「対外的な忖度」「高度な庁内調整」は、いずれも間違いなく役所運営に欠かせない要素であり、どんな部署でも、どんな地位まで上り詰めようとも活きてくると思います。


民間企業だと、「営業職」「経理職」「法務職」のように担当業務の種類ごとに社員を分類します。
対して地方公務員は、所属する部局ごとに分類するのが一般的です。
業務の種類では、「事務職」「技術職」のような採用区分よりも細かく分けることはほとんどありません。

役所では、事務職であれ技術職であれ、一人が何役も兼務しています。
そのため業務内容別に職員を括るのが困難です。

例えば今年度の僕の場合、経理(支払い事務)・法務・ホームページ管理・雑用担当を兼ねています。
それぞれの業務に費やす時間も労力も凡そ均等で、どれがメインとも割り切れません。

とはいえ、自分のポストがどういう種類の業務から成り立っているのか分析して客観的に眺めてみれば、新たな発見が得られのではないでしょうか?

とりあえず事務職の県庁職員バージョンの分類法を考えてみました。

県庁職員の5大業種


まず、県庁職員(事務職)の業務を、
  • 内部調整
  • 庶務・経理
  • 法規・制度
  • 住民対応
  • 非法定事業

という5つの類型に整理します。
これらの項目は完全に僕のフィーリングです。もっと適切な分類方法もあるでしょうが、今回はこれで進めます。


先にも触れましたが、地方公務員は複数の担当業務を兼任している場合がほとんどです。
そのため、ある職員を5類型のうちのどれか1つに当てはめようとすると無理が生じ、正確な把握ができません。

そこで、業務全体に占める5要素それぞれの内訳(割合)という形式を用います。
10ポイントを各要素に配分して、「内部調整3、庶務・経理4、法規・制度3」のような形で、担当業務を定量的に表現します。
さらに配点をレーダーチャート化することで、業務の特徴が可視化されて、よりわかりやすくなります。
 

01_チャート概説


具体的な事例も掲載しておきます。

02_典型例



定量的に表現することで、これまでの担当業務の比較が容易になります。

例えば、楽しかった年度(または辛かった年度)の間に、共通する特徴を見つけられるかもしれません。
僕の場合、「非法定業務」がある年度は、残業が多かったものの楽しかったです。

一方、「内部調整」と「法規・制度」の両方にポイントが計上された年度は、いずれも非常に辛かった。
法令的に不可能な処理を別部署から無理強いされるケースが多発し、精神的に磨耗したせいだと思われます。

応用編 〜業務経歴の可視化〜

過去の担当業務のスコアを足し上げていけば、これまでの自分の経歴を可視化することも可能です。

経験豊富な業務ほどスコアが高くなります。

地方公務員の業務経歴に触れる場合、たいていは所属していた部局を語ります。
ある部局の所属年数が長いことを以って「〇〇畑だ」と表現するのが、その典型です。

しかし地方公務員は部局をまたいで異動するのが普通であり、「〇〇畑」を自称できるほど特定部局に特化できるケースはむしろ稀です。
このために「自分には専門分野が無い」「公務員は専門性が身につかない」と嘆く人も多いです。

所属部署という要素を除外して、業務の種類という観点で経歴を見てみると、全く別の特徴が見えてきます。
役所がよく標榜している「ジェネラリスト育成」という題目では、5要素どれもを均等に経験させることを理想としていると想定されますが、実際は結構偏っていると思います。
この偏りから、自分のキャリアの特徴、つまり専門性が浮かんできます。

出世コースの謎が解ける?

業務経歴を定量化することで、出世コースへと選抜される職員の特徴を特定できるかもしれません。
試しに僕の同期職員のケースで算定してみました。比較対象として僕のケースも掲載しておきます。
 
03_経歴比較

出世コースに進んだ職員と僕とでは、チャートの形が明らかに異なります。


出世コースへと選抜された職員は、部局が変われども「内部調整」「非法定事業」スコアの高い業務を担当し続けていました。
俗にいう新規施策や目玉施策は、これらのスコアが高くなります。
こういった目立つ事業を担当しているうちに幹部の目に留まって、出世コースへと抜擢されるのでしょうか?

事例を収集していけば、役所の神秘「出世コースに選ばれるまでの過程」を検証できるかもしれません。

誰か改良してみて(他力本願)

この方法の肝は、数多くある役所の仕事をいかに分類・集約するかだと思います。

僕は前掲のとおり5要素にまとめてみましたが、もっと良い方法があると思います。

まず、5要素のほかに「役所間調整」を別要素として設けるべきか否かで未だ迷っています。
特に県庁の場合、国や市町村とのやりとりが業務内に大きな割合を占めていますし、庁内調整とも住民対応とも異なる独特のコミュニケーション力を必要とする業務でもあるからです。

他にも
  • 「定型作業」を別要素として設けるか
  • 外部団体への出向をどうスコア化するか
  • 係長級以上はこの5要素だと通用しなさそう(あくまで担当レベルの分析ツールにとどまる)

あたりは、現状認識している課題です。



このページのトップヘ