キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

タグ:採用


僕の職場の若手職員(20代の職員)は本当に退庁が早く、20時を過ぎて残業する人は一人もいません。
早く帰るのは良いことなのですが、先輩や上司に仕事を残して帰られてしまうケースも少なからず発生していて……


21時頃に30代・40代のメンバーでその尻拭いをしていると、自然と「最近の若手、本当に質が落ちてるよな」という愚痴が聞こえてきます。

このような愚痴トークを何十回も繰り返す聞いているうちに、ここでいう「若手職員の質の低下」には、二種類のニュアンスが含まれることがわかってきました。

ひとつは「全体的に能力が落ちている」という現象です。
これまで当たり前に任せていられた軽度の単純作業すら回せない職員が増えた等、ボリューム層の能力が落ちてきているという意味です。

そしてもう一つは、「優秀な職員がいなくなった」という現象です。
出世ルート突入間違いなし!といえるような傑物が見当たらない、つまり上位層がごっそり抜け落ちているという意味です。


「若手地方公務員の能力が低下している」という話題自体は、今に始まったことではありません。
僕が入庁した頃も「最近の若手は……」と難癖つける人だらけでしたし、多分いつの時代もそうなんだろうと思います。

その原因も、「民間と比べて待遇が悪い」「職業として魅力が無い」という2点に集約されています。
僕自身、今更改めて議論する話題ではないと思っていました。

ただこの一年間、愚痴トークをBGMに仕事をしているうちに、後者の現象(優秀な若手職員の消滅)に関する新説に思い至りました。
県内での人口集中、すなわち県庁所在地や中核市“以外”の過疎化もまた、優秀な職員が県庁に入ってこなくなった原因のひとつだと思っています。

若者の都市部流出は止まらないが「真の田舎」の若者は「田舎都市部」にとどまってくれる

同じ田舎県の中でも、県庁所在地・中核市の周辺と、それ以外の地域の間には、歴然とした差があります。


以下この記事では、便宜上、三大都市圏を「真の都市部」、県庁所在地や中核市を「田舎都市部」、それ以外の地域を「真の田舎」と称します。


三大都市圏のような都市部在住の方からすれば「どっちも田舎だろ」と思うかもしれませんが、設備も住環境も雰囲気も暮らしぶりも……全然違います。
何より心情が異なります。
「田舎都市部」と「真の田舎」は、物理的距離のみならず心理的距離でも離れているのです。

勤労世代であれば「田舎都市部」「真の田舎」を行き来する機会があり、それほど心理的距離は離れないと思われますが、行動範囲が狭くなる高齢者や子どもは、居住している「田舎都市部」または「真の田舎」にどっぷり浸かることになり、たとえ同じ県内であっても心理的距離は隔絶します。


災害発生時には、この違いがわかりやすく露見します。
典型的な事例が、「危険で不便なのに頑なに避難を拒み、被災地に留まろうとする高齢者の方々」です。
令和6年能登半島地震でも、金沢市などに二次避難せず、水道も電気も無いのに被災地生活を続けている方々が相当数いらっしゃることが連日報道されていました。
彼ら彼女らにとって、金沢市のような「田舎都市部」はまさに未知の世界であり、被災地生活の不便さを凌駕するほどに強烈な不安を感じたのだろうと推察します。

被災地の中学生の一部が金沢市に集団避難したという報道もありましたが、この集団避難に応じた中学生の心労も計り知れません。
集団避難した中学生が「一部」に留まり、危険で不便なのに被災地に残った中学生がいたことも理解できます。



今回注目したいのは、子ども世代の心理的距離です。

「田舎都市部」の子どもは、「真の田舎」「真の都市部」いずれに対しても心理的距離を感じています。
「真の田舎」に住んでいる子どもは、「田舎都市部」に対して心理的距離があり、「真の都市部」に対してはさらに隔たりを感じています。

この心理的距離の違いが、進路の選択、具体的には進学と就職の選択に影響してきます。
「真の田舎」の子どもにとって、「田舎都市部」に出る段階でまず心理的なハードルがあり、「真の都市部」まで出るのは、さらにもう一段高いハードルがあるのです。

その結果、せっかく能力があるのに、心理的なハードルを越えられずに「田舎都市部」に留まってしまう人が少なからずいます。
例えば、普通に旧帝大を狙えるのに地元国公立大学に入学したり、ハイスペックなのに就職先として県内企業・県内自治体しか視野に入れていなかったり……

県庁内にいる「優秀な職員」の中にも、このような過程を経て入庁してきた人が少なくありません。
チャレンジさえしていれば「真の都市部」のエリート層に食い込めたはず……という、傍から見れば「もったいない」人たちです。

採用担当者の努力で人口動態的変化に対処しきれるのか(絶望)

改めて言うまでも無く、日本全国の「真の田舎」地域において、急激に人口が減少しています。
特に子どもの減少が著しく、高齢化率がどんどん上昇しています。

この人口動態的な変化が「優秀な若手職員」の減少にも影響していると、僕は思っています。


「真の田舎」出身の子どもの総数が減れば、その中に一定割合で存在する優秀な人材の総数も減ります。
総数が減った結果、県庁に入ってくれる「真の田舎」出身の優秀な人材(もったいない職員)が減っており、結果的に「優秀な若手職員」も減っているのではないか……と思うのです。

「真の田舎」出身の若者が、能力に恵まれているにもかかわらず心理的ハードルに阻まれて「田舎都市部」に留まるという現象自体は、今後も続くと思います。
しかし、「真の田舎」の人口はこれからもどんどん減少していくでしょう。
もはや「もったいない人材」をあてにするのは無理だと思います。

優秀な若手職員を確保するには、もとから優秀な人を他から奪い取って採用するか、今いる人材を育成するしかありません。
現状多くの自治体で前者の方法を取っています。
優秀な人材を確保するため、仕事のやりがいや魅力をアピールしたり、近年はついに給与水準を上げています。
つい先日、僕の勤務先自治体の募集要項を見ていたら、僕の採用時から初任給が約3万円も上がっていて驚愕しました。

しかし、田舎の自治体がどれだけ頑張ったところで、「真の都市部」への若者流出は止められません。
給料を上げるにしても限度がありますし、たとえ給料を大企業並みに引き上げたとしても、それ以外の部分……たとえば生活の利便性や娯楽、文化資源、人的資源では、到底敵いません。

そろそろ現実を見て、人材育成をまともに考える時期が来ているのだろうと思います。

この4月から、地方公務員歴11年目にして初めて庶務を担当することになりました。
しかも、庁内でもかなりの大所帯で、いろんな国庫補助金やら交付金やらが入り混じる課です。

庶務経験のある職員であれば、単に作業量が多くてめんどくさいだけなのでしょうが……
僕はマジでズブの素人なので、そもそも何をどう作業すればいいのかすら全然わかりません。
過去の資料を見ても、他人に質問しても、そもそも用語がわからないので理解できません。
右往左往しているだけで時間が過ぎていきます。こんなに辛い人事異動は初めてです。

全国の庶務ガチ勢の皆さんには大変申し訳ないのですが、庶務の仕事をやればやるほど、どうして人間がこんなことをやらなければいけないのか……と疑問に思えてきます。
庶務のルールを作っているのは会計課だったり財政課だったりするのでしょうが、彼ら彼女らが「こんなに精緻で美しいルールを作った自分たちすげえ!」と悦に浸るための生贄にされているとしか思えなくなってきました。
新採でこんなことをやらされたら、そりゃ辞めたくなりますよ……

とはいえ、住民対応が無いという点だけは非常にありがたい。
3ヶ月間も苦情対応してないなんて、入庁以来初めてです。
ここで庶務担当になれたことで、40代以降は出先の庶務係長ポストで悠々過ごすというキャリアプランも現実味を帯びてきました。

この一年をなんとか乗り切れば、以降はルーチンワークとして処理できるはず……と信じて、目の前の仕事に向き合っていきます。

アクセス数が激減

今年から不定期更新(と言いつつも月2回ペースをキープ)で運営している当ブログ。
ついにPVが前年割れするようになりました。
だいたい3割くらい落ちています。予算のシーリングみたいです。
 
更新が減ればPVも減るのは当然なのですが……
Googleアナリティクスを見るに、更新頻度のほかにも原因がありそうな気がしています。

Googleアナリティクスでは、閲覧者の属性(住所、性別、年齢帯など)がわかります。
属性別に前年比を調べてみると、「18~24歳」が激減していました。

10代後半から20代前半。
勘の良い方はピンと来ているかもしれません。

そう……公務員試験受験者の主要受験層と重なっています。

ここからは完全に仮説です。
公務員試験受験者の減少が、当ブログのPVにも影響しているんじゃないかと思っています。
公務員試験に興味のある人が減ればそれだけ公務員ブログへのニーズも減る……という因果関係も成り立ちそうです。

公務員試験の受験者減少は、今に始まった話ではありません。
それでも当ブログのPVには表れてきませんでした。
今年ついにPVにまで影響が及んできたのだとしたら、今年の公務員試験の倍率は例年以上に激しく落ち込むかもしれません。

ちなみに、「18~24歳」閲覧者の性別をみると、男性も女性も同じく減少しています。
女性の公務員試験受験者は増えているはずなのですが、ブログタイトルのせいで敬遠されているのでしょうか……?

公務員試験受験者のみならず、実際に採用される職員でも、女性がどんどん増えています。
これから地方公務員ネタでPVを稼ぐには、女性受けを意識する必要があるんでしょうね……僕には無理です。何もわからない。

地方公務員の待遇関係の主張は、役所当事者側も反行政側も、往々にして印象論に終始しがちです。
説得力のある主張をするのであれば、双方ともにしっかり事実に基づくことが必要でしょう。

僕自身「地方公務員は減っている」とか「手当が削減されている」あたり気軽に書きそうになるのですが、ちゃんと事実に基づくべく、現時点のファクトを確認しておきたいと思います。
本記事ではまず、地方公務員の人数について見ていきます。

全国総数約280万人(うち一般行政は約93万人)

まずは最新時点の地方公務員数を確認していきます。
今入手できる最新のデータは、総務省「定員管理調査」の令和4年4月1日時点版です。
 
01_R4.4.1部門構成

総務省の「定員管理調査」データによると、令和4年4月1日時点の地方公務員の人数は約280万人です。
部門別では、一般行政職員が約94万人、教育部門が約106万人、警察部門が29万人、消防部門が約16万人、公営企業等が約35万人います。
こうしてみると、教育部門の割合がかなり大きいです。一般行政部門の職員は1/3にすぎません。
 

02_団体区分別構成

団体区分別にみてみると、都道府県職員が約143万人、市町村等(一部事務組合を含む)職員が137万人います。
人数だけ見ると大差ありませんが、部門別の構成比は全然違います。
都道府県は教育部門が過半数を占めており、一般行政部門はわずか約16%にすぎません。
一方で市町村等では、一般行政部門が過半数を占めています。

地方公務員関係の統計データを見るときには、部門ごとの構成比に留意が必要です。
特に、「都道府県の一般行政部門」のことが知りたい場合、都道府県職員全体に占める一般行政部門の割合はかなり小さいので、都道府県職員全体のデータだけを見ていても「都道府県の一般行政職員」の傾向は読み取れません。


最近は増加に転じている

続いて、職員数の推移を見ていきます。
こちらの出典も総務省「定員管理調査」の令和4年4月1日時点版です。
 

03_4.1職員数推移

地方公務員の人数は、平成6年度にピークに達した後に減少に転じており、平成30年度に底を打ってからは微増しています。
特に平成17~22年度にかけては、「集中改革プラン」に基づく定員純減という国主導の地方公務員削減が行われており、減少人数も大きいです。
 
令和元年以降は増加傾向に転じており、令和元年度から令和4年度にかけて約7万人増えています。
地方公務員の人数は長らくずっと減少し続けてきたので、そのトレンドが今も続いているかのように錯覚してしまいがちですが、実際は増加に転じているのです。
もちろんピーク時と比べると大幅に減少していますが……

 
特に増えているのが臨時的任用職員で、令和元年度から令和3年度にかけて約4万7千人増えています(総務省「給与実態調査」より)。
臨時的任用職員は、原則として1年未満の期間だけ正規職員の代替として採用される職員で、年度途中に産休に入った職員の穴埋め要員あたりが典型です。

ただし、この期間の定員管理調査によると「任用の適正化による臨時的任用職員の増加」(多分「空白期間」の解消)という説明がなされていて、実際に人数が増えたかどうかは正直よくわかりません。
 
臨時的任用職員のうち、各種統計で「職員数」としてカウントされるのは、何らかの理由で12月以上継続勤務している人数だけに限られます。
任用の「空白期間」が解消されたことで、統計上の位置付けが変わっただけ(これまで職員数にカウントされていなかった人がカウントされるようになった)による影響が大きいような気がします。


ちなみに、「地方公務員が減ったのは民主党のせい」という主張をする方がいますが、先述の「集中改革プラン」を推し進めたのは小泉政権です。
民主党はそのプランを継承しただけで、「地方公務員を減らすぞ!」と決断したのは、むしろ自民党のほうです。

一般行政部門だけでも微増傾向

一般行政職員だけを抽出したのが下表です。参考に採用数も掲載しています。
(以下「定員管理調査」ではなく「給与実態調査」の数字を使っていきます。そのため冒頭の「部門別職員数」とズレが生じます。)
表(一般行政推移)


一般行政部門だけでみると、職員数は平成25年度に底打ちして、以降は微増傾向にあります。
 
一方、採用者数の推移を見てみると、平成17・18年度で激減、H19以降は増加傾向にあります。
平成20年代は団塊世代前後が定年を迎える時期で、退職者数が高止まりしていたので、採用者が増えたところで退職者も多かったため、職員数は増えなかったようです。
 
令和元年以降は、大量退職が収束しつつある一方で採用者数が高止まりしたままなので、職員数が増加に転じたのでしょう。

地域によって明暗くっきり

「都会の自治体ほど財政力に余裕があるから、職員数をカットせずに済んでいる」という説もたびたび見かけます。
この説を検証すべく、都道府県の一般行政職員の自治体別内訳を見てみます。

 表(都道府県別)
H15からH25にかけては、どの団体でも職員数が減少しています。
減少率はバラバラです。
青森・秋田・千葉・岐阜のように20%以上減少しているところもあれば、10%未満の自治体もあります。 

H25からH30にかけては一層バラツキが広がり、引き続き減少している自治体と増加に転じる自治体に分かれます。
東京都が大幅増しているのは、オリンピック開催が決まったためでしょう。
一方、大阪府・兵庫県では大幅減が続いています。これが維新の会による改革の結果なのかもしれません。
 
H30からR3にかけては、増加する自治体のほうが多数派になりますが、さらに減少を続けている自治体もあります。

全国総数で見ると先述のとおり「平成25年度に底打ちして、以降は微増傾向」なのですが、引き続き職員数削減を続けている自治体もあるようです。


「若者」と「女性」が増えている

続いて職員の年齢構成を見ていきます。

表(年齢構成)

20代職員の人数は、採用動向とほぼリンクしていると言えるでしょう。
平成10年台の採用抑制の結果、H20の20代職員数はかなり少ないです。
平成20年半ば頃から採用数が増えた結果、H30時点では1.4倍ほどに増えて、直近の令和3年度時点ではさらに増えています。

一方、40~59歳の職員はどんどん減少しています。
平成一桁代以前の大量採用時代の職員が定年を迎えて辞めていき、採用抑制時代の職員に置き換わっていくことで、自然と減少しているのだと思われます。

60歳以上の職員は爆発的に増加しています。
ほとんどが再任用職員のはずですが、年金支給開始年齢が引上げられた影響が大きいのでしょうか?


最後に男女比です。(R3のデータは見つかりませんでした)
性別1(都道府県)
性別2(市町村)
 
都道府県・市町村ともに、女性職員が増える一方で男性職員が減少しています。
これらが相まって、女性職員の割合が大きくなっています。

年代別に見ると、若い世代ほど女性職員の割合が高まっています。
結婚や出産のタイミングで離職する人が多いともいえるでしょうし、社会全体で徐々に女性の正規職就労が進んだ結果なのだろうとも思われます。
とはいえ、相変わらず男性のほうが多い職種であることには変わりありません。

個人的に気になったのが、24~27歳の若手層で女性職員割合が高まっている点です。
近年「公務員試験の受験者が減っている」「倍率が下がっている」と嘆かれているところですが、ひょっとしたら「公務員離れ」は男性に顕著な事象で、女性はそれほどではないのかもしれません。


ある一年度の年齢別・男女別職員数のデータだけを使って「30代半ばから女性職員の人数が激減している!地方公務員もマタハラで女性が辞めている!」という主張をする方が一定数いますが、これは誤解です。
今の30代以降はそもそも男女ともに採用数が少ないので減って当然ですし、今の30代中盤以降の職員が採用された時代は採用時点から女性比率が低く、この特徴が今も引き継がれているだけです。

弊ブログを以前から読んでいる方は薄々勘づいているかもしれませんが、僕の勤務先自治体には「昇進試験」なるものがありません。
そこそこの年齢になると、ほぼ全員が横並びで昇進していきます。

よく出世ネタを取り上げているわりに、昇進試験に関して一切言及していないのは、昇進試験がどんなものなのか全然わからないからです。
「昇進試験対策本」みたいな書籍も、実物は見たことがありません。
昇進試験制度を有している自治体が県内には(多分)存在しないので、需要が無いのでしょう。

実態を全然知らない身からすれば、昇進試験は良いものに映ります。
「試験の出来不出来と実務能力は関係無いから、やるだけ無駄」という意見があるのも承知していますが、昇進試験という制度が存在するだけで相当メリットがあるように思われるのです。

「昇進しない」という選択肢が生まれる

昇進試験最大のメリットは、昇進試験を受けないことで「昇進しない」という選択肢をとれる点だと思っています。

昇進したくないと思っている若手職員は少なくありません。
僕の周囲だと、20代のうちは単に「苦労したくない」「割に合わない」という甘ったれた理由が多かったのですが、30代も半ばに差し掛かってくると、自分の心身に変調をきたしたり、親御さんの介護などの家庭事情のために、労働強度を落としたくなる職員がちらほら出てきます。

昇進試験が無い場合、職員本人の意向とは関係なく、年齢や年次が一定程度に達すると自動で昇進します。
昇進しないためには、再起不能なほどに心身を壊して頻繁に休職するしかありません。
つまり、普通の健康な人生を送るのであれば、昇進は避けられないのです。

もちろん、昇進しても楽なポスト(係長級だけど業務内容はヒラ職員並み)は存在していて、運良くそこに配属されれば労働強度を落とせますが、そういうポストはごくわずかです。
さらに、これから定年延長が始まると、61歳以降の役職定年してきた職員がそういうポストにどんどん着任していくだろうと思われます。


やや皮肉ですが、昇進試験があれば「昇進しない人生」を選択できるようになります。
昇進試験が無い自治体では、そもそもこの選択肢が存在しません。
この違いはかなり大きいです。


成長の機会になる

試験には試験勉強がつきものです。
昇進試験の場合も、相当の時間とエネルギーを試験対策に注ぎ込むことになるでしょう。

過去の記事でも何度か触れていますが、地方公務員は試験勉強というインプットが比較的得意な人種です。(得意でなければ、公務員試験を突破できていないはずです)



現状、採用後の研修は配属先でのOJTが中心で、「見て学べ」「慣れて覚えろ」というスタイルです。
配属先固有の知識や技能のみならず、コミュニケーションやマネジメントのような一般的スキルも、全てOJTです。
本来ならテキストを使って「読み書き中心」でインプットする機会を設けたほうが効果的に研修できる気もするのですが、現状そのような運用をする余裕が無く、せっかくの人材的な強みを活かせていないと思われます。

昇進試験は、仕事に必要な実務的知識を、試験勉強という地方公務員の得意分野で習得させるという、効率的な職員育成手段なのではないかと思われます。

職員個人レベルで見ても、昇進試験対策でみっちり勉強することで、自身の成長を実感できるのではないかと思われます。
昇進試験を受けて主任になった職員と、僕みたいに何もせず自動的に主任になった職員では、相当の能力差がついていることでしょう。

「昇進させない」合理的理由になる

アラサーになる頃には、「こいつを昇進させたら危険なのでは……?」という職員がちらほら出てきます。
典型的なのがパワハラ上司予備軍です。20代のうちから後輩を潰しだす職員はざらにいます。

昇進試験が無い自治体だと、こういう危険分子も自動で昇進していきます。
もし昇進させないとしたら、相当の理由が必要です。
一人二人潰しただけでは、単に相性が悪かったとか、潰れた側に非があるという可能性も否定できず、昇進させない理由としては弱いでしょう。

一方、昇進試験があれば、こういう危険分子を「試験不合格」を理由にして昇進させないことが可能だと思われます。
一旦昇進を保留して、本当に昇進させても問題ないのかをもう1年かけてチェックするという時間稼ぎができるのです。
組織運営上、これは相当なメリットなのではないかと思っています。

人間関係がギスギスしそうな気も若干する

最初に触れたとおり、昇進試験制度が存在する場合、あえて昇進しないことが可能になります。
昇進試験を受けるかどうかで、仕事に対する自分のスタンスが可視化されるわけです。

しかも、昇進試験を受ける/受けないという単純明快な二分法です。
つまるところ、昇進試験を受ける職員と受けない職員の間で断絶が生じて、職場の人間関係がギスギスするのではないかと思われるのです。

国家公務員のように総合職と一般職で最初から住み分けされているわけではなく、最初は対等の立場だったのに昇進試験時期を境に分断されると、余計に人間関係で揉めそうです。

昇進試験のメリットを3つ、デメリットを1つ挙げてみましたが、いずれも完全に推測です。
「他にもメリットありますよ」「実際そんなにうまくいきませんよ」みたいな実体験コメント、お待ちしています。

新年一発目の記事は、今回も「今年の展望」でお送りします。

今年は「新型コロナ関係の集団訴訟」と「採用抑制」が大いに話題になると思います。
去年も同じことを書いていますが、今年こそガチです。


今年こそ新型コロナ集団訴訟が始まる?

去年は結局、訴訟関係の目立った動きはありませんでした。
感染症自体はまだまだ落ち着かないものの、重症患者は減りましたし、社会全体が良い意味で「慣れてきている」気がしています。

とはいえ、住民訴訟に関してはまだまだ安心できないと思います。
去年の記事でも書きましたが、発災から提訴まで年単位で間が空くのが住民訴訟の特徴です。
行政に対する住民の悪感情は、なかなか消えないものです。

昨年提訴されなかったのは、全国旅行支援や各種給付金のようなバラマキ施策のおかげだと思います。
住民訴訟を起こすのは、バリバリ働いている現役世代ではなく、時間に余裕のある方々です。
昨年展開されたバラマキ施策は、時間に余裕のある人ほど恩恵を受けられるものばかりで、(意図的では無いでしょうが)潜在的原告を宥める効果もあったと思っています。
個人事業主や中小企業に対する補助金も、同様に訴訟抑止効果があったでしょう。

今年もしバラマキ施策や補助金類が衰えたら、「金の切れ目が縁の切れ目」と言わんばかりに、今度こそ訴訟ラッシュが始まると思います。
これは完全に推測ですが、行政訴訟を生業としているプロの方々のほうでは、既に訴訟の材料や論点は準備できているはずです。
一旦始まってしまえば、かなり急展開で進んでいくと思います。


2023年の地方公務員採用数はほぼ確実に減る(減少幅は未知数)

今年からついに地方公務員の定年延長が始まります。
令和5年度はまず61歳まで定年が伸びることになり、年度末には定年退職者が発生しません。例年よりも退職者が減少するわけです。
従って、2023年度の採用者(2024年4月1日から勤務開始する人)も減らさないと、総職員数が激増してしまいます。

総務省の資料では、「定年退職者が2年に一度しか生じないことを踏まえ、2年ごとの平準化を基本としつつ、各職種の状況を踏まえ、平準化を行う年数については柔軟な検討が必要」という一文があり、定年退職者が発生する年度としない年度の採用者数の平均人数を算出して、2年ともこの平均人数を採用する…という方法を基本としているようです。(総務省資料を読解してみた過去記事はこちら。



つまるところ、2023年度は退職者数<採用者数となり総職員数が増えることを許容しています。
(逆に2024年度は退職者数>採用者数となり総職員数は減少)
そのため、2022年度と比べて採用者数が激減するようなことは無さそうです。

とはいえ、採用計画を決めるのは各自治体ですし、実際どうなるかはまだまだ分かりません。
とんでもない運用をする自治体が出てきたり、採用者数の減少以上に志望者が減って倍率が激減したり……何かと話題になりそうだと思っています。要注目です。


僕個人のレベルでは、次の異動先が最懸念事項です。
今の民間出向は今年3月いっぱいで終了するはずで、4月からは役所勤務に戻ります。
業務内容は最早何でもいいので、とにかく人間関係の良いところに潜り込みたいです…… 

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