キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

タグ:政策論


全国的にイベントごとが復活してきました。
(最近はまた怪しくなってきましたが……)
ただし、都市部と田舎を比べると、かなりの温度差を感じます。都市部のほうが復活のペースが早いです。

これから当面の間、田舎では、イベントごとに限らず、地域住民発の活動が下火になると思っています。
キーパーソンがいなくなるからです。
 
キーパーソンの内訳は様々です。リタイア後の地域住民、副業サラリーマン、ボランティア、地域おこし協力隊、イベント会社のプロデューサーなどなど……意欲的に地域を盛り上げようと励んでいる方を指します。

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【YouTube限定公開】コットンキャンディえいえいおー! Special MV(https://www.youtube.com/watch?v=Ksf_gq6fZZM )

こうした方々はこれまで、イベントの企画運営、地域住民コミュニティの運営、スモールビジネスなどを通して、地域を盛り上げてくれました。
しかし今後こうした方々は地域活動から離れていってしまうのでは、もしかしたら既に離れてしまったのでは?というのが、僕の懸念です。

キーパーソンはコロナ下でも活動している

かつて観光の仕事をしていた頃、地域のキーパーソンの方々ともよく関わりました。
今でも各種SNSで活動を追いかけています。

彼ら彼女らは、例えるならマグロです。
燃えたぎるパッションのために、活動を止められません。

新型コロナウイルス感染症のせいで外部環境が変わろうとも、彼ら彼女らのパッションは不変です。
人との接触や越境移動が制限されようとも、活動意欲は抑えられません。

そこで彼ら彼女らは、オンラインに活路を見出します。
オンライン上で同士を募り、できることを模索していくのです。

オンラインの悦びを知った上で地域に戻ってくるか?


思うに、田舎のリアル社会で活動するよりも、オンラインで活動するほうが、あらゆる面で有益です。

多くのターゲットにアプローチできる


田舎の地域社会でどれだけ精力的に活動しても、見込み客の数には上限があります。
いずれ頭打ちになって停滞せざるを得ません。
オンラインであれば可能性は無限大です。

全国の有能かつモチベーションの高い仲間と協働できる


田舎はそもそも人員の頭数が少ないですし、地域活動に意欲的な人間になるともっと少ないです。スキルもありません。
つまるところ、人的リソースが圧倒的に不足しています。
そのため、最終的なアウトプットの質も量も、自ずから限界があります。

一方オンライン上には、自分並みの有能な人間がごろごろいます。
そういった層と協力し合えば、地域住民とでは成しえなかったスケールのアウトプットが実現できます。

大きな仕事を達成する悦びを知ってしまった後に、ちんまりした事業を再開する気が果たして起こるでしょうか?
しかも仲間は、やる気も能力も今ひとつな田舎住民達。
オンライン上で出会った、意志を同じくする全国の優秀な仲間達とは雲泥の差があります。
 
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ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ALL STARS メインストーリーより

たいていの人にとっての地域活動は「やったらやったで楽しいけど、やり始めるまでは腰が重い」ものだと思っています。
いったん日々のルーチンに組み込まれてしまえば有意義に感じられます。
ただし一旦ルーチンが途切れると、再開するのは大変です。面倒臭さが勝ります。

新型コロナウイルス感染症のせいで、ほとんどの地域で活動のルーチンが途切れたことと思います。
キーパーソンの仕事は、まずは他の住民を呼び戻すことです。
やる気の冷えてしまった住民を再び揺り動かして、巻き込まなければいけません。
すぐに活動そのものを再開できるわけではありません。いわば土壌作りからやり直しなのです。

人間関係面でのオンライン活動との落差は凄まじく、地域住民への幻滅すらありえると思います。
この難局を果たして乗り越えられるのか?僕は正直悲観しています。

しがらみが無い


リアル田舎社会だと、外部から横槍が入って企画が頓挫するという事態が多発します。
議員古老が許さないとか、地元メディアが自社の営利活動に組み込むべくああしろこうしろと口出ししてくるとか……
「教育のため」をお題目に無理難題・私利私慾をぶつけてくるPTA団体もかなり厄介と聞きます。
他住民から妬まれて不快な思いをすることもあるでしょう。

オンラインだと、こうしたしがらみから随分解放されて、自分の思い描くままに活動できます。

(妬み・嫉妬はむしろもっとひどいかもしれませんが)

自分のキャリアアップにつながる


田舎社会でどれだけ頑張って成果を出しても、最終的に到達できるのはせいぜい地方議員くらいです。
オンラインであれば全国区の専門家へと羽ばたけます。
どっちが好ましいかは人それぞれでしょうが、大抵は後者を選ぶのでは?


とにかく、一度オンラインでの活動を経験したら、あまりの心地よさのために、二度と地域活動に戻ってきてくれないのでは?と思えてならないのです。

決めるのは「住民の人柄」


合理的に考えれば考えるほど、オンライン上での活動を続けるほうが賢い選択です。
堅固な合理的理由を打ち破り、彼ら彼女らを地域に繋ぎ止められるとしたら、地域住民との絆しかないと思います。
  • やる気も能力もいまひとつだけど、一緒に活動しているとなぜか楽しい仲間
  • お金も名誉もくれないけど、素直に喜んでくれる地域住民


こういう存在が桎梏とならない限り、キーパーソンは地域を飛び出していってしまうと思います。

今更どうこうできる話ではありません。これまで(コロナ発生前まで)の蓄積の問題です。
キーパーソンが孤軍奮闘していたような地域はさらに衰退するでしょうし、地域全体で盛り上がっていたところは早々に復活するでしょう。


かつて観光の仕事をしていた人間がこんなこというと怒られてしまいそうですが、僕はイベントごとは「確固たる目的があるものを除き不要」だと思っています。
この機にゾンビイベント(特に意味なく延命されている、開催することだけが目的なイベント)が払拭されればいいなと思うくらい。
ゾンビイベントが減れば、会場や人員、予算面でのリソースが生まれて、新しい「目的のある」イベントが生まれてくるはずです。

押印ルール見直しの機運が高まっています。
僕自身これまで非合理的な押印ルールのせいで散々苦しめられてきたので、この機にやり過ぎなくらいに簡素化すればいいと思っています。

現在生き残っているルールは、これのおかげで誰かが得をしているからこそ存続しているのだと思っています。
このため、ルールを変えようとすると、その誰かがきっと反発してきます。

現行のめんどくさい押印ルールも同様です。
世間の大多数が手を煩わせることで、誰かがきっと利益を享受しているはずです。
これから押印廃止が現実味を帯びてきたら、既得権益を死守すべく、その誰かが反旗を翻してくるでしょう。

これから押印廃止反対派との論争のネタになりそうだと思っているポイントをまとめておきます。

「押印廃止」と「行政のデジタル化」は密接に関係しているけど根本的には別問題

同じようなタイミングに話題になったためなのか、「押印廃止」と「行政のデジタル化」を混同している方がけっこういるように思います。

押印を廃止すれば、確かに紙の使用量は確実に減少するでしょう。
ただし、紙の使用量が減れば行政のデジタル化が進むかといえば、そう簡単な話ではありません。

行政のデジタル化を進めためには、押印ルール以外にも、色々な規則や慣習を見直さなければいけません。
押印廃止よりもずっと難しく、気の長い道のりになるでしょう。


一方、押印廃止の効果は、紙資源の節約(=ペーパーレス)だけにとどまりません
紙資源以外にもインクなどの節約になりますし、資材だけでなく時間や労力もカットできます。

そもそも、押印ルールの不合理・非効率は、役所に限った話ではありません。
押印問題は、少し前までは「押印作業のせいで出社せざるを得ない」というテレワーク阻害の文脈で語られていました。

たとえ押印廃止が行政のデジタル化に繋がらなかったとしても、他にもたくさんメリットがあります。
むしろ行政のデジタル化は、たくさんあるメリットのひとつに過ぎません。
とりわけ紐付けて議論する必要は無いと思います。


「行政のデジタル化」という困難な課題の一手段として「押印廃止」が位置付けられてしまう、いわば「行政のデジタル化」と「押印廃止」の間に主従関係を設けられてしまうと、押印廃止反対派にとって都合が良くなります。
「行政のデジタル化という目標のためであれば、押印廃止はあまり効果がない。コスト的に無駄だ。もっと他のところを見直すべきだ」という反論が有効になってしまうのです。

前述のとおり、押印廃止の効果は、行政のデジタル化を差っ引いてもたくさんあります。
行政のデジタル化と無理に結びつけず、ガンガン進めていいと思います。


押印をひとくくりにせず内実ごとに分けて考えたほうがいい

役所絡みの押印手続きは、ざっくり分けて以下3通りがあると思います。

①凛議文書に押印する(押印決裁)
②公文書に公印を押印する
③役所外(住民や民間事業者)から提出してもらう文書(申請書や請求書など)に押印させる

これらはそれぞれ、押印する人も違いますし、文書の宛先も異なります。
押印している背景・理由も別物です。
このため、押印廃止にあたっての検討事項も、廃止するためのアプローチも異なります。

①は、既に電子決裁システムを導入している自治体であれば、一瞬で解消します。
それを使えばいいだけです。
未導入の自治体だと時間がかかりますし、補正予算を組んで議決を経るというプロセスも発生するため、時間がかかるでしょう。

あとは公文書管理の問題も関係してきます。
「説明責任」を重視する方々にとって、決裁過程は文書で残しておかなければいけないものです。
「電子決裁を隠れ蓑にして意思決定プロセスを隠すつもりだ、許せない」と息巻いている方も既にいらっしゃいます。
こういう外圧といかに調和するか、整理が必要です。

さらにはパソコン周りの設備も更新が必要でしょう。というかやるならぜひ更新してほしい。
たとえば僕のパソコンだと、ワードファイルひとつ開くのに数十秒かかりますし、PDFファイルを開こうとすると2割ほどの確率でフリーズします。
こんな環境で電子決裁しようとすれば、データを開くための待機だけで膨大な時間を消費します。


②は、内規を見直す作業がメインになるでしょう。
あとは法律の専門家にヒアリングして、押韻を廃止しても支障無いかを確認する必要があります。
①③と比べて一番簡単だと思います。


③が多分一番難しいです。
役所の内規を見直すだけでなく、民間の商慣習・法律や会計の専門家の見解・会計検査院の動き(押印なし請求書でも適正と認められるか?)など、考慮すべき事項がたくさんあります。
自治体レベルではなかなか改革できず、まずは国の会計手続き変更を真似ることになるでしょう。


①〜③を十把一絡げにして、全ての押印手続きに対して同一のアプローチだけを講じれば、そもそもの背景・理由の違いのために、トラブルが生じるでしょう。
押印廃止反対派は、押印廃止によって発生したトラブルを目ざとく見つけて、あげつらってくると予想されます。

押印の性質をきちんと見て分類し、それぞれに個別のアプローチをとって、極力トラブルを未然に防ぎたいところです。

体験談

本記事をご覧の方には、特に学生の方だと、「どうして世間が押印を目の敵にしているのか」いまいちわからないかもしれません。
というわけで、僕の個人的経験を最後に書き記しておきます。


とある外資系企業の日本支社(以下X社)に業務を発注したときの出来事です。
僕が仕事を発注した日本法人は「Xグループの東アジア支社」という扱いでした。
日本事業の責任者は、「Xグループ東アジア支社長」です。

このような組織形態のため、X社から図領した書類には、文書の発出者として「Xグループ東アジア支社長」の氏名が記載されて、東アジア支社長の印鑑が押されていました。

僕の勤める県庁には、「民間企業から図領する支払い関係書類は全て『代表取締役社長』の押印が必要」という会計ルールがあります。
外資系企業であっても同様です。
「支社長」の押印では支払いできず、「代表取締役社長」の押印が必要です。

ダメもとで会計課に提出してみましたが、「代表取締役社長の押印を貰うこと」というメモ書きとともに即座に突き返されてしまいました。

当然のことながら、東アジア支社の独断では、代表取締役社長の印鑑(=海外にある本社の印鑑)なんて使えるわけがありません。
そのため、東アジア支社から本社に対して、押印してもいいかの稟議を回してもらいました。
X社の担当者からは「数百万円オーダーの契約で本社まで稟議を回すのは初めてです、普通は百億超えたら回すんですけど……」と苦笑されました。
僕も苦笑するしかありません。

苦笑だけで済めばよかったものの、事態はどんどんヒートアップしていきます。
稟議を回したところ、Xグループ本社法務担当から「たかが数百万円規模のくせに代表取締役社長の押印を求めるなんて、一体どんな案件なんだ?ひょっとしたらこれを皮切りに超大型プロジェクトが始まるのかい?東アジア支社には期待していいんだね?」という強烈なプレッシャーを掛けられてしまったらしく、東アジア支社は事態の沈静化に奔走する羽目になりました。

弊庁に対しても、「あくまでも事務手続き上、代表取締役社長の押印が必要なだけです、深い意味はありません」という一筆が欲しいと、わざわざ支社長から連絡がありました。

結局、2ヶ月くらいかかってなんとか代表取締役社長印を押してもらえたのですが、X社からは後々苦言を呈されました。
代表取締役社長印を押すための人件費だけで、今回の業務の利益がほとんど吹き飛んだとのこと。
「もう二度と自治体とは仕事したくない」とまで言われてしまいました。
 

僕のケースは極端かもしれませんが、役所の押印ルールのせいで誰かに迷惑をかけた経験は、公務員であれば誰でも持っていると思います。
だからこそ押印廃止の流れにときめいているのです。



公務員・教員界隈で話題になっている「文部科学省の学校の情報環境整備に関する説明会」の動画を見ました。



学校のオンライン教育を充実させるため国でがっつり補正予算を組んでいるから自治体も付いてきてねという趣旨の動画で、いろいろな補助金メニューが紹介されているのですが、


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このスライド(だいたい22分〜28分あたりで登場)のように役所らしからぬ熱い説明が展開されます。


個人的にツボったスライド

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めっちゃわかる。特に回線の遅さは深刻と聞きます。

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やっぱ世界はGAFAMなんだねと痛感しました。
日本メーカー……

とはいえ実現性は薄いと思わざるを得ない

文部科学省の熱意に本物だと思いますし、教育環境を充実しなければいけないのも事実だと思います。
ただ、田舎役場職員の感覚では、実現はかなり難しいと感じてしまいます。

まず、住民の理解を得られるとは思えません。
 
教育への投資によってメリットを得られるのは主に若い世代です。
しかし田舎(特に有力者)はご高齢の方が多く、たとえオンライン学習環境が整ったところで恩恵は受けられません。
ありとあらゆる言い分を拵えて無駄金扱いして、別の用途に振り向けようとします。
 
環境整備がこれまで進んでいない大きな理由がまさにここ、自分に直接的なメリットが無いために教育への投資を無駄金扱いする層がものすごく分厚いためだと思います。


実際に運用する段階では、家庭間のITリテラシー格差が大きなハードルになると思います。
ボトム層は本当に機器の使い方を知りません。
 
例えばスマートフォンだと、電話・LINE・カメラ・ネットくらいの使い方しかできず、自らアプリをインストールすることすらできない人も実際います。
(LINEは販売店にインストールしてもらう)

家庭学習には親御さんのサポートが不可欠です。
しかしボトム層家庭だと、サポートは一切期待できません。
学校である程度端末の使い方を教えてもらった後でないと、そもそも使い方がわからず何もできないでしょう。

教育力のある家庭では、既に家庭にオンライン学習を取り入れていることでしょう。
そのため、行政による整備の恩恵も、さほど大きくないと思われます。
 
一方、自らオンライン学習環境を整備するだけの意欲・余裕のない家庭は、大いに恩恵を受けられることになります。 
しかしこういう層の多くは、IT機器に疎く使い方に不慣れです。
恩恵を受けるだけのリテラシーが追いついていないのです。
機器と教材だけ準備して「後は家で頑張って」というスタンスでは、格差がより広がるだけなのではと思います。

何より僕自身、オンライン学習のメリットがよくわかっていません。
そのせいかあんまり推したくなりません。冷暖房整備の方が先じゃないかと思ってしまいます。
自ら体験してみたら理解できるんでしょうか?
やはりiPadProを買うしかないのか……?

ここ数年でいろんなサービスのデジタル化が進んでいます。
この流れは止まらないでしょう。有用なテクノロジーが次々出てくる、経費削減になる、人手が足りない……等々、追い風が吹きまくっています。

役所も同様です。
経費削減のために紙冊子の発行・配布をやめてPDFをホームページに掲載するようにしたり、リアルタイムの防災情報のようにウェブでないと提供不可能なサービスを始めたりと、デジタル技術の恩恵を受けています。
民間と比べれば遅々としてはいますが、それでも日々進歩しています。

しかし、サービスのデジタル化という社会的進歩が、役所の現場で新たな問題を引き起こしています。
「デジタル化についていけない人々」の存在です。

デジタル化についていけない人にも等しく対応が必要

デジタルリテラシーという言葉があります。
 
明確な定義は無く、色んな意味で使われていますが、本稿では「インターネットや電子機器を使う能力」程度のふわっとした意味合いで使います。

世の中のサービスの多くは多数派のデジタルリテラシーに合わせて作られます。
そのため、デジタルリテラシーが足らないために、サービスを使えない少数派が必ず発生します。
そもそも、誰もが確実に使えるサービスを作るのは不可能でしょう。

民間企業の場合、デジタルリテラシーの低い人は切り捨てればいいだけです。
少数派のためにわざわざコストを費やす必要はありません。利益を重視すればいいのです。

しかし行政は、デジタルリテラシーの高低に関係なく、住民全員にあまねくサービスを届けなければいけません。
デジタルリテラシーという一要素だけをもって、格差をつけることは断じて許されません。

ふるさと納税の場合

行政の施策でもインターネット利用前提のものが増えてきました。
例えばふるさと納税。どこの自治体でも多種多様な返礼品を用意しています。
返礼品はインターネットで検索して選んでもらうのが前提だからできる判断です。
紙媒体のカタログを作るのであれば、あらかじめ返礼品の種類数に上限を設けるでしょう。

前述のとおり、行政という立場は、デジタルリテラシーの高低に関係なく等しくサービスを提供しなければいけません。
少なくとも、求められたら断れません。行政である限り。

ふるさと納税の場合であれば、返礼品にどんなものがあるのかをアナログ媒体で提示しなければいけません。
インターネットサイトを全部印刷して見せて、その中から選んでもらうことになるでしょう。
ものすごく大変です。端的に言って地獄では? 

ふるさと納税に限らず、役所内のあちこちで、こういった案件が続々発生しています。

僕の場合(キレられた) 

観光部局にいた頃にはよく怒られました。
イベントの詳細を電話で聞かれた際に「会場図はホームページで閲覧してください」と回答すると、よく「最近の役所はすぐに『ホームページを見てくれ』って逃げるんだ、不親切にもほどがある!」と怒られました。

つい最近だと、とある補助金の募集説明会に参加したのですが、「申込様式はホームページからダウンロードしてください」という担当者の説明に対し、「ホームページなんか見れないんだが?ふざけるな!」という怒声が即時湧き上がり、他人事ながら背筋が凍りました。

弱者対策の重要性

ふるさと納税やお土産は富者の嗜みなので、対応しきれなくてもなんとかなります。
 
しかし、行政が提供するサービスには、福祉や防災など命に直結するものもあります。
これらのサービスは、デジタルリテラシー云々は抜きにして、住民全員に届けなければいけません。
例えば、「ネットが無いから最新のハザードマップが見られない」と言われたら、真剣に対応しなければいけません。リアルタイムの河川水位や雨量情報なんかも同様でしょう。

デジタル技術を活用してサービスの質・量を向上することは勿論重要です。
しかし、役所の場合はこれだけでは足りません。
向上したサービスをいかにしてデジタルリテラシー弱者にも届けるか、真剣に考える必要があります。

場合によっては、届けないという判断もあるかもしれません。

現状、職員をすりつぶして何とかやり過ごしてる状態です。長くはもたないでしょう。

デジタルリテラシー弱者にとって、世の中はどんどん不便になりつつある

サービスのデジタル化が進むにつれ、アナログなサービスがどんどん無くなりつつあります。

古い例では、携帯電話の普及につれて公衆電話が激減しました。
最近では、無人レジの導入、銀行の支店統廃合などなど……例を挙げればキリがありません。

デジタルリテラシー弱者にとって、ここ数年の社会の流れは、これまで使っていたアナログサービスの縮小・終了としか映りません。
慣れ親しんだサービスが次々と無くなり、どんどん不便になっていると感じています。

よくツイッターで「高齢者からデジタルサービスの使い方を教えるよう上から目線で要求された」というツイートを見かけます。
高齢者の立場からすれば、上から目線にもなりたくなるでしょう。
これまで使っていたアナログサービスがなくなってしまったので、嫌々ながら付き合わされているという意識だからです。

これから民間企業は、どんどんアナログなサービスを縮小して、デジタル技術で代替していくでしょう。
デジタルリテラシー弱者にとっては、ますます住みにくい世の中になります。鬱憤も溜まるでしょう。
怒りの矛先は、コンビニ店員、スーパーのレジスタッフ、コールセンター……役所も逃れられません。

僕の住む自治体では、銀行窓口が一気に減ったせいで、ATMを使えない層が現金難民になっていると聞きます。
役所に「現金を下ろさせてくれ、役所なら税金が溜まってるでしょ?」と通帳を持ってくる方もいるとのこと。
 
近いうちに「デジタルリテラシー弱者の救済は行政の仕事」という流れになるんじゃないかという気がしています。

デジタルだけでない「情報リテラシー格差」

デジタル云々に関係なく、情報リテラシー格差は近々に大問題になると思います。
このあいだの山手線休止へのクレームを見て確信しました。
東京まで片道3時間超の片田舎に住んでる僕ですら知ってたのに、東京に住んでいながら知らないって、どういう生活してるんでしょうか?正直理解できません。

「どうして知れなかったのか理解できない」という状況自体が、格差の根深さを証明しています。
情報リテラシーに関しては、よく言われる世代間格差ではなく、もっと本質的な問題が横たわっていそうです。

テレビや新聞の地位が落ち、「誰もが見ているマスメディア」がなくなったことが影響しているとか?
インターネットの発達で「情報源の偏り」が強化されてきているとか? 
既存の研究もありそうです。 


【2020.11.7追記】
総務省がリリースした資料に「インターネットを使いこなせていない人」への言及がありました。
その数およそ1247万人。個人的にはもっと多い気がします。


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本記事で取り上げた「デジタル化についていけてない人」そのものではありませんが、かなり重複すると思います。
国の有識者会議でもちゃんとデジタル弱者対応が議論されているようで、とりあえず一安心です。


【2020.9.22追記】
本記事で危惧しているとおりの案件が発生しました。
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文化庁補助金の精算書類としてエクセルファイルの提出が必要になり、エクセルが使えない事業主の方から強烈に反発されています。
たいていの炎上案件では「リツイート数=ツイート主を揶揄する人の数」なのですが、本件の場合はツイート主に賛意を示す方も相当数いて、まさに賛否が分かれています。

田舎の役所だと、このようなクレームは日常茶飯事です。
というより、どんな案件でもこういうクレームは想定済みで、抜け道としてアナログな手段も用意しておきます。
あまりに日常的光景なので、職員間の話題にすらなりません。

このブログにたどり着いているようなデジタルリテラシーの高い方であれば、領収書をいちいち管理して郵送するよりも、エクセルで一覧表を作ってメールで送るほうが楽だと感じるでしょう。

しかし世の中には、そうでない方も大勢います。
そして役所が関わるのは、どちらかといえば、デジタルが苦手な方のほうです。


老後資金2,000万円不足に続き、興味深いレポートが国から発表されました。


厚生労働省若手による緊急提言という形で、
  • 業務改善
  • 人事制度
  • オフィス環境
上記3点にフォーカスして、厚生労働省の労働環境がいかにひどいかの具体的指摘と、改善に向けての具体的提言をまとめています。

とても読みやすい「概要版」もあるので、公務員であろうとなかろうと、万人にぜひとも読んでほしいです。
むしろ本体よりも概要版を読んでほしい。役所が作るレポートとしては近年稀に見る怪作です。

あくまで僕の推測ですが、このレポートは社会に広く読まれることを目的として作られています。

類を見ない気合の入り具合

僕がこう考えるのは、体裁があまりに役所っぽくないからです。
 
役所がまとめるレポートの類は、普通もっと無機質です。
ワードで手作りした感が満載のシンプルなつくりで、お世辞にも読みやすいとは言えません。
そもそも役所関係者以外には読ませるつもりがないので、読みやすくする労力を節約しているのです。

一方、今回の緊急提言(概要版)は、役所っぽくありません。
ビジュアルにとことんこだわり、読みやすく感情を揺さぶります。巧いです。

ここまで作りこむのはものすごく大変です。しっかりお金をかけて外注しているでしょう。

官僚が作成した原文をプロのライターが改稿し、デザイナーがオリジナルのイラストやピクトグラムを作り、InDesignあたりの専用グラフィックソフトを使って紙面レイアウトを作り……という複雑かつ豪華な工程が眼前に浮かびます。

「お金と手間と時間をかけてでも役所以外の人間にも広く読んでもらいたい」という強い意図を感じます。

役所はマジで職場環境にお金を使わない

大手優良企業にお勤めの方がこの報告書を見たら、厚生労働省の職場環境があまりに時代遅れなことに驚くでしょう。
冷房が効かなくて夏場32度あるとか、ブレーン担当の官僚が会場設営と荷物運びに忙殺されているとか、スケジュールが共有されていないとか……

実際のところ、これらは厚生労働省に限った話ではありません。
ほとんどの役所も似たような状況です。

役所ごとに理由はいろいろあるのでしょうが、どこでも共通して最大のネックなのが、職場環境改善のための予算が全然認められないこと。

地方自治体の場合、職場環境改善のために予算を使おうとすると、ほとんどの場合、議会や住民から反発を受けます。

彼ら彼女らへの恩恵が無いからです。

「職員の勤務環境改善」なんて言い出したら、次回の選挙で落ちてしまいます。
そのため、トップダウンでは絶対出てこないし、ボトムアップでも途中で圧殺されるのです。

国の状況はよくわかりませんが、似たような状況なのかもしれません。

「役所はやる気がないからいつまでも旧態依然としているのだ」と思っている方もいるかもしれませんが、それ以前に予算が全然無いから改善できないという事情も知ってほしいです。

報告書の目的

このレポートは単なる現状暴露ではなく、厚生労働省が堂々と職場環境改善のための予算要求をするための布石なのだと思っています。

ただ「職場環境改善の予算をくれ」と要求しても却下されてしまうので、世論を味方にするために、このような緊急提言を出したのでしょう。

「職場環境がダメだから役所はダメなんだ!しっかり改革しろ!」
こんな感じの国民の怒声を財務省にぶつけることで、予算要求を通そうとしているのです。

もしかしたら、老後資金2,000万円不足の報告書がバズった様子を見て、二匹目のどじょうを狙ったのかもしれません。

この予算が通過すれば、自治体も追従する流れが生まれるかもしれません。
僕の勤める自治体も例に漏れず超絶ローテク環境です。
職場で使っているパソコンはWindows Vista時代の年代物で、エクセルファイルを3つ以上開くとフリーズします。 10MB以上のPDFはメモリ不足なのか開けません。

みんな読もう!そして声を荒げましょう!


個人的に一番僕が紹介したいページがこちら。
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会議参加者用のお茶を発注したり、会議室の冷暖房や照明をオンオフしたり、会議室のマイク電池残量を確かめたり……
いずれも国家公務員(総合職)若手の重要な仕事です。

答弁準備とかで疲弊している中、こういう単純作業もしっかりこなせるかどうかが、若手官僚の評価基準だともっぱらの噂。
どう考えても非効率というか、頭脳の無駄ですよね……

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