キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

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『目からウロコの幸福学』という有名な本があります。
目からウロコの幸福学
ダニエル・ネトル
オープンナレッジ
2007-03-28


 
『Happiness: The Science Behind Your Smile』という本の訳書で、ものすごく評判が良い本なのですが、早々に絶版になってしまい中古価格が暴騰しています。
この記事を書いた時点(2020年3月)では20,980円でした。
 
収蔵している図書館も少ないです。
知名度の割に実際読んだ人は少ないという不思議な本でした。

そんな本が今年2月、タイトルを改めて出版されました。

ざっくりいうと、本書は「幸福」に関する心理学の知見をまとめたものです。


幸福追求という本能

大抵の人間は「幸せになりたい」と思うわけですが、これは生存競争を勝ち抜くための進化の過程で脳に刻み込まれた、いわば本能です。
幸福を追求することが、人間の生存戦略なのです。

重要なのは、本能が求めるのは「幸福であること」ではなく「幸福を追求すること」である点です。
人間はある程度の幸福を達成したとしても、さらに一段階進んだ幸福の段階へと突き進むよう、本能に急き立てられます。
つまり、いつまでも幸福追求の努力を止めさせてもらえないのです。

欲望と快感と幸福

さらに人間は、幸福そのものを追求しているわけではありません。
幸福に類似した概念である「欲望」と「快感」を追求しています。

欲望は「欲しい」という気持ちです。脳内物質ドーパミンによって支配されています。
快感は「嬉しい」という気持ちです。脳内物質オピオイドによって支配されています。

大抵の場合、欲望と快感と幸福とはリンクしています。
欲望を満たすように行動すれば快感を得られ、幸福に近づけます。
さらには生存競争を勝ち抜くにも、こうなる選択をするのが最善手です。

しかし、このリンクが途切れているケースも実際には多々あります。
現代社会では特に顕著です。
そもそも、この仕組み自体ができたのは太古の昔。野生動物と食うか食われるかの戦いを繰り広げていた時代です。現代社会とは全く状況が違います。

つまり人間は、本能の赴くままに欲望を満たしたとしても、幸福になれるどころか、一時的な快感を得られるかどうかすら怪しいのです。

地方公務員の幸せとは?

以上、本書で提示される論点を2つだけ紹介しました。
他にもたくさんの観点から幸福について切り込んでいきます。
 
中には結構シビアな結論も出てきます。
幸福かどうかは遺伝で決まるとか。

ただし本書は不安を煽るだけではありません。
具体的な対策、幸せになるための具体的な処方箋も示してくれます。

また絶版になってしまう前に、是非手にとっていただきたい一冊です。

ちなみに本書の記述によると、
  • 地方公務員は自己決定権に乏しいため、幸せになりづらい
  • その対策として、定時ダッシュしてブログを書くのが有効

という結論になります。
これだけ見ると意味わからないかもしれませんが、読めばわかります。

第一印象の悪さには自信があります。
他人から紹介で女性からは、7割くらいから初対面の直後にLINEブロックを食らいますし(残り3割は既読スルーされるようになる)、就職活動でも一次面接でほぼ全滅しました。
 
第一印象のせいで損した・傷ついたエピソードは他にもたくさんあります。
中学生くらいからずっと第一印象がコンプレックスです。

なので、今回紹介する本のタイトルがものすごく刺さりました。
人生の悩みの種である第一印象を改善する、またはこの劣等感をケアするヒントがあるのではと期待していました。

第一印象の科学――なぜヒトは顔に惑わされてしまうのか?
アレクサンダー・トドロフ
みすず書房
2019-01-17



第一印象からわかるのは現時点のみ、本質はわからない

本書の結論は明確です。
第一印象(顔面から抱く印象)は、その人の現時点での状態(感情など)を推測する手がかりではあるものの、その人の性格や能力を示すものではありません。

このことを、いろいろな側面から、多数の実験結果を引用しながら説明していきます。

本書の説明によると、「性格が顔に出ている」という言い回しは正しくありません。
顔に出るのは、その瞬間の気分や体調であり、性格は出ません。

第一印象からは、能力もわかりません。
本書では以下のとおり、採用面接をこき下ろしています。

人物証明書は、職業上の成功を推測する手段としては、面接より優れている。なぜなら人物証明書がまとめているのは、見かけの印象以上のものだからだ。面接は職業上の成功を推測するには非常に劣った手段であることが判明している。面接で受けた印象と職務遂行能力との相関係数は0.15を下回る。もしこの結果が意外に思われるとしても、あなたは独りではない。この相関係数を推測するように求められた人たちは、0.6くらいだろうと答えた。
 
第一印象の科学 なぜヒトは顔に惑わされてしまうのか P.226
アレクサンダー・トドロフ 2019年1月 みすず書房
面接で確実に評価できるのは「第一印象が良いかどうか」だけであり、能力や性格は評価できないのです。

自治体の採用は大丈夫なのか……?

面接という採用方法を否定するつもりはありません。
第一印象が良いことは、ビジネスパーソンとして成功するために欠かせない素質の一つです。
入念に審査する必要のある項目でしょう。

しかし、その他の素質は測定できないとなると、面接を重視しすぎるのは危険です。

民間の大手企業は、長期インターンや人づての紹介など、面接よりも時間をかけて人物評価する方法を採っているところが増えていると聞きます。

一方、最近の自治体職員採用は、「人物重視」の名の下に、筆記より面接を重視するところが増えてきました。
本書の記述によると明らかに悪手なのですが、大丈夫なのでしょうか……?

精神的に楽にはなるものの……

第一印象だけでは人格や能力を性格に評価できないと思うと、精神的にはかなり楽になります。
 
第一印象しか使えない場面(面接など)でたとえ酷評されようとも、その評価は正確ではないのです。
つまり、自分自身が否定されたわけではないのです。
否定されたのはその時点の自分の客観的印象、つまり自分を構成するごく一部でしかありません。 

とはいえ、本書によると、第一印象を重視してしまうのは人間の宿命です。
どれだけ啓蒙されようとも社会は第一印象に基づく評価を基礎に回って行くのでしょう。

「第一印象だけでは自分を評価しきれないから」と精神的には楽になっても、実質的な損失は免れません。
就職活動に失敗したり、結婚できなかったり……僕のように苦境に立たされるわけです。

本書の中には、第一印象を改善する方法にも若干ながら触れています。
中でも実践できそうなのが健康に気を遣うことです。
健康であれば若々しく見え、それが第一印象の改善につながります。

人生のいろんなところで第一印象のせいで辛酸を嘗めてきたので、僕自身はなるべく第一印象だけで他人を評価しないように気をつけています。
この方針は正しかったようです。これからも心がけていきます。

去年の夏頃から
  • 地方公務員が自分の境遇を嘆きがちなのは自己効力感が低いせい
  • 役所は構造的に職員の自己効力感を損なっていく
という直感を抱いています。

このことを記事にまとめるべく調べ物を続けているところなのですが、その過程で読んだ本に、役所の日常業務にすぐ活かせそうな記述がありました。
 




自己効力感を高めない公衆衛生施策は無駄

本文を引用します。

いくつかの制限はあるが、一般に人は、健康につながる行動を促進するようなキャンペーンを行う自由と能力を持っている。公衆衛生のキャンペーンは、この個々人能力を支援することができる。しかし、それが特定の状況下にある人々に配慮して適切に作成されたものでなければ、そのようなキャンペーンは多くの資源を浪費してしまうことになるだろう。

心理学者は、健康を増進するような習慣を身につけたり受け入れたりすることを促進するような影響を持つさまざまな要素を特定している。例えば、目標設定やその他の意思決定の過程は、変化を促す役目を果たす。しかし、健康によいというだけでは、人々が危険な行動を繰り返すことをやめ健康な行動を受け入れるために十分とは言えない。有益な行動を身につけ保持するようになるためのさまざまな状況では、自発的な思考が必要になる。

アルバート・バンデューラ編『激動社会の中の自己効力』P.232  金子書房、1997年

もし人々が、問題を解決するための最も良い手段が存在すると信じていれば、彼らは、適切な行動を取るために自分のもつ能力について丹念に考え、自分にその能力があると感じたときだけその手段を実行するだろう。

同 p.251

具体的に言い換えると、人は「こうすれば健康にいいぞ」と目標や手段を示されたところで、自分がそれを実現できると思えないと、まともに検討もしないし、実行にも移さないということです。

「1日1万歩」という健康目標を例に考えてみます。
「1万歩歩けば腰痛対策になるし内臓も強くなる」みたいに目標の有効性をアピールするだけでは、歩く人は増えません。
「2駅分歩けば1万歩に届く」のように目標達成の具体的手段を知らせても不十分です。

目標に向かう人を増やすには、「この目標なら自分でもきっと達成できる」と思わせることが必要です。
具体的な達成方法を多数教示するとか、目標をスモールステップに分割するとか、手法は多数考えられます。

この「自分がそれを実現できると思う」「自分にその能力があると感じる」ことが、自己効力感です。
健康に限った話ではなく、あらゆる分野に適用できる概念です。

導入困難だけど不可欠な視点

健康福祉に限らず、役所の施策は目標を示すだけに止めたがります。
「『この目標なら自分でもきっと達成できる』と思わせる」という、受け手の自己効力感を高めていくという視点は、最初から検討すらされていないでしょう。
理由はいろいろありますが、深入り・具体化すればするほど批判を受けることが最大の理由だと思います。

しかし、自己効力感の観点から見れば、このような施策は資源の無駄と一蹴されるものです。

自己効力感の側面から施策を評価すべきとは思いません。
ただ、このような視点が世の中に存在することは認識しておいて損は無いでしょう。

何より直感的に正しい観点だと思います。 
何すればいいのか全くわからない空気なキャッチフレーズや、非現実的な手段を突きつけてくる施策を見かけるたびに頭を捻ってきましたが、これらが無意味だと断じてくれているわけです。

今年8月に発行された本書を遅ればせながら読みました。



 
痛快で面白いです。元気が出ます。
目先の成果だけでなく10年以上の長期スパンを見据えて活動された方が多く、その熱意と慧眼に感服するばかりです。

本書の中身は、実際に読んで確かめてください。
僕からはひねくれた感想を置いておきます。

プライベート搾取の裏付けになる?

本書で取り上げられている方々の成功の秘訣は並外れた専門スキルや人脈(以下まとめて「人的資源」とします)だと、僕は理解しました。

さらに、これらの人的資源は、地方自治体入庁前であったり、入庁後であっても業務時間外に得たものです。
研修のおかげでもなければ、役所業務の中で体得したわけでもありません。職員が自らの余暇と私財を投じて獲得したものです。

職員個人が自腹を切って得た人的資源のおかげで、役所は目覚ましい恩恵を得られたわけです。
つまるところ、役所の体制側(人事・財政など総務部局、ひいては首長)は、職員が余暇と私財を犠牲にして得た人的資源にフリーライドしているのです。

役所の場合、職員に対する成果給はありません。(ボーナスが若干上積みされるくらい)
自腹を切って成果を出した職員に対し、何も報いない。本物のフリーライドです。

本書を読み終えて、嫌な予感がしました。

本書のエピソードを取り上げて、「役所が変わるには職員個人の自発的な自己研鑽が重要」だと、業務時間外の自発的な勉強・活動を強いてくる上司が出てくるのではないか。
 
日々の業務でも、「これも勉強だから」という名目で、業務時間外に自腹でなんでもやらされるようになるのでは。

議会や住民にとっても、これまで以上に公務員に業務外奉仕を求める絶好の口実になるでしょう。

「みみっちいな、だからモテないんだよ」と思われそうですが、日頃から自腹で出張したり参考資料を買ったりしている身としては大変切実です。

異世界からの救世主が来ないと変われない組織?

地方公務員として漫然と働いているだけでは全く成長が得られないということも改めて痛感しました。
 
本書で取り上げられた方々は、役所勤務を通して得た経験や知見のおかげで問題を解決できたわけではなく、解決に必要な人的資源は役所外部から持ち込みました。
別の言い方をすれば、役所内で得た経験・知見だけでは、問題解決できなかったのです。


本書を読んでドラゴンクエスト7を思い出しました。

 
同作では、主人公たちが魔物に支配された異世界にワープして、その世界を支配する魔物を倒す……という繰り返しでストーリーが進むのですが、これと似たものを感じました。
(わかりやすさ重視&ネタバレ回避のため、あえて不正確な表現にしています)

異世界で暮らす人々は、魔物の支配に怯えながらも、反抗を諦めています。
抗戦している人もいますが、力が足りず敗北を喫しています。
そこに主人公たちーー数多の異世界を旅して経験値を蓄えた別次元の存在ーーが現れて魔物を倒し、世界を救います。

役所は「魔物に支配された異世界」なのかもしれません。
世界の住民、つまり地方公務員は、自らの力では世界を変えられません。
世界を変えるには、外から来た勇者が必要なのです。悲しいけれども。

開設以来、順調に PV数を伸ばしてきた本ブログですが、ここ3ヶ月間、月間PV19000で頭打ちを迎えています。

せっかくなのでPV20,000の壁を超えたいなと思い、新規記事の投稿だけでなく過去記事もちょくちょく点検しています。

同時並行で勉強もしています。
諸先輩方のブログ運営術を拝見したり、本を読んだり……

最近読んだ中では、『沈黙のWebライティング - Webマーケッター ボーンの激闘』が特にわかりやすく面白く実用性に富んでいました。

沈黙のWebライティング Webマーケッター ボーンの激闘 [ 松尾茂起 ]
沈黙のWebライティング Webマーケッター ボーンの激闘 [ 松尾茂起 ]


以前の記事で、自治体ホームページの欠点について触れました。

『沈黙のWebライティング - Webマーケッター ボーンの激闘』を読んで、どうして自治体関係のホームページが検索上位に表示されないのか、新しい理由がわかりました。
感情表現の欠落です。

感情を揺さぶらないのが役所的名文

文章を読んでもらうために必要な3つの視点
 
  • 感情表現を入れ、自分事化による“共感”を誘発する
  • 伝えたいことがきちんと伝わるよう、“見やすさ”“わかりやすさ”にこだわる
  • ファーストビュー(冒頭文)で、伝えたいことをまとめる
 
『沈黙のWebライティング ーWebマーケッター ボーンの激闘ー p.236』

読みたくなる文章作りの視点として、同書では3点を挙げています。
人間が読みたくなる文章であれば、SEOにおいても高評価を得られ、高PVに繋がります。 

役所の作る文章では、第一に挙げられている「感情表現」「共感の誘発」は厳禁です。
感情表現は徹底的に排除します。
読み手が一切感情的に揺れず、単に情報伝達だけが実現する、そういう文章が役所的な名文です。

ホームページに掲載する文章でも同様です。
不特定多数が目にするので、一層気を遣って感情表現を排除し、事実の羅列に徹します。

反感ゼロ>>>超えられない壁>>>共感されてバズる

この事情は、役所のトップ、つまり首長が選挙で選ばれた立場だという性質が影響しています。

感情を揺さぶる表現は、それに共感する人もいれば、反感を抱く人もいます。
役所は反感を恐れます。反感がそのまま首長のマイナスイメージになり、次の選挙への悪影響が懸念されるからです。
このあたりの危機管理が上手い職員はガンガン出世します。

書けるのにもったいない

共感狙いの文章を発射したいときには、ペイドパブリシティを使います。
役所発の文章ではなく、取材したライターの個人的感想という体裁であれば、たとえ反感を持たれても首長へのダメージは軽く済みます。

観光部局で仕事していた頃、僕もよくペイドパブリシティを利用しました。
自治体が提供した資料をベースにプロのライターが文章を作ってくれるのですが、正直物足りなかったです。

内容に具体性が無く、固有名詞を入れ替えれば他の自治体でも使い回せるものばかり。
担当職員の雑談の方がずっと面白い。

ライターが悪いのではなく、自治体の担当職員の方が詳しすぎるのだと思います。
担当職員は、誰よりも長い時間、題材と接しています。
常人には見えない魅力まで見えて当然です。

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共感を誘発する文章を書くためのネタはたくさん持っているのに、封印せざるをえないという現状。勿体無いなといつも思います。

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