キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

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現実世界でもオンライン上でも、地方公務員に対する非難の声は絶えません。
絶えず非難され続けている地方公務員は、「サンドバッグ」と形容されることがあります。
どなたが発案者なのかは知りませんが、この呼称は本当に秀逸だと思っています。

サンドバッグは、どれだけ殴られても壊れません。
同じく地方公務員も、叩かれたところで実害はありません。
個人事業主であれば、インターネット上でちょっと叩かれただけで廃業を余儀なくされかねないところ、地方公務員は職を失うどころか給料が下がることすらありません。

しかし、地方公務員も人間であり、ただのサンドバッグではありません。叩かれれば心が傷つきます。
僕自身、これまで少なくとも200回は罵倒されてきましたが、いつになっても慣れはしません。

そして悲しいことに、新型コロナ禍を経て、地方公務員叩きは悪い方向へ進化している気がしてなりません。

「職叩き」から「人叩き」へ

平成20年代前半くらいの地方公務員叩きは、地方公務員という「職業」を叩いていました。
  • ノルマが無い
  • 単純作業ばかり
  • 無駄も多い
  • そのわりに給料が高い

僕が採用された頃は、このあたりの定型句を電話口で延々と聞かされるのも「初任者研修の一環」だと言われていました。

一方、最近の地方公務員叩きは、職業としての地方公務員ではなく、「人」としての地方公務員を叩いてきます。
地方公務員として働いている個人そのものを非難してくるのです。


表現は色々です。「多様化する行政課題に対応できるほどの素養があるとは思えない」などと流麗に言葉を紡いでくる方もいれば、シンプルに「バカ」「クズ」などと罵ってくる方もいます。
どちらにしても、地方公務員である「お前」「あんた」は無能であり有害だと主張してきます。

「職」叩きから「人」叩きへと潮流が変わったのには、二つの理由があると思っています。

新型コロナで露見した地方公務員の弱点

ひとつは新型コロナウイルス感染症です。
新型コロナに翻弄された3年間(令和2年~4年)、マスコミは延々と行政の失態を報じ続けてきました。
この3年間を通して、大半の国民の頭に「日本はコロナ対策に失敗した」「新型コロナによる被害の大半は人災」という認識が刷り込まれたと思います。

この認識が正確なのか誤りなのか、正直よくわかりません。
研究者がしっかりファクトベースで検証してくれるのを待つしかありません。
(そもそも新型コロナ対応全般を総括して成功だの失敗だのと断じること自体がナンセンスで、個々の施策ごとに成否を判断すべきだと思います)

デジタル

コロナ対策関係では、特に行政のデジタル化の遅れが非難されました。
民間では普通に使われているデジタルツールが未だ導入されていないとか、パソコンでやったほうが効率的な作業をわざわざ手作業でやっているとか……

「デジタル敗戦」などとも言われるこういった事態が生じた原因が、地方公務員の能力に帰せられてきました。
  • 有事への備えが甘かった(先見性が無い)
  • 民間企業がいかに進歩しているのかを知らない(世間知らず)
  • デジタルリテラシーが低くてツールをろくに使えていない
  • 仕事のやり方を変更するだけの知能が無い
  • どうせ使えないんだから公費でパソコンを買うのは無駄だ

僕が実際に受けたお叱りのうち、覚えているものだけをリストアップしてみました。
「エクセルの1マスに2文字入力できるだけで課長になれるんだろ?」という煽りも受けましたね。
(俗にいう「神エクセル」「Excel方眼紙」ばかり使っている、というニュアンスの嫌味だと思います)


コロナ禍が一段落した今年度でも引き続き、ほぼすべての苦情電話の中で、「お前らは職員はデジタルを使えていない」というお叱りを受けています。

コロナ以前の時代にも、「地方公務員は無能」という指摘はずっと受けてきましたが、はっきりと理由まで主張してくる人はあまりいませんでした。
理由を付すにしても、あくまでも自分の個人的経験ベース(窓口対応した職員の説明が下手だった等)で、印象論・感覚論にすぎませんでした。

しかし今は、コロナ禍を経て、「地方公務員=デジタルに弱い」という現状が明らかになり、「地方公務員は無能である」という客観的根拠ができてしまった状態……と言えるでしょう。

不人気職業にしか就けない連中、という印象

もう一つの理由は、公務員試験の倍率低下です。


平成20年代の前半までは、地方公務員はそれなりにハードルの高い職業でした。
やたら科目数の多い公務員試験を受けなけらばならず、倍率も10倍近い。
そのため、地方公務員批判をしてくる人たちも、よく「頭でっかち」とか「机上でしか通用しない」などという表現で批判してきていました。
暗に「筆記の勉強だけはできる」と、能力の一部を認めていたといえるでしょう。

一方近年では、公務員試験の倍率はどんどん下がってきており、定員割れも珍しくなくなってきました。

「勉強ができない人間でも余裕で就職できる職業」という認識に変化したのだと思います。



無能なのは認めるとして、無能を理由にいじめを正当化していいのか?

つまるところ最近の地方公務員叩きでは、デジタル技術を活用できていないとか、採用倍率が低いというファクトに基づいて、地方公務員を「劣った人間」と論理的に結論付けたうえで叩いています。


デジタル化が遅れていることも、採用倍率が下がってきて人材確保に苦戦していることも事実であり、否定できません。
このような根拠がある以上、地方公務員が劣った人間だという主張も、受け入れざるを得ないと思っています。
役所が何か失敗したときに、その原因を「職員が無能なせいだ」と追及されるのも仕方ないと思います。

しかし、劣っているからといって公然と叩いてよいか?と言われると、それは絶対に違うと思います。
いじめられる理由があるからといって、いじめてよい理由にはなりません。


SNSで投稿する程度であればまだ個々人の自由としても、わざわざ役所に電話してきて罵ってくるのは、さすがにおかしいと思います。

こういう相手の対応は本当に不毛ですし疲れます。
あくまでも僕の感覚ですが……地方公務員が憎くて叩いているわけではなく、ちょうど叩きやすいから叩いているだけで、「叩ければだれでもいい」「理屈さえ立てば他人に危害を加えてもいい」と考えている人が多いと感じます。
行政に対して課題感や問題意識を持っているわけでもなく、ただ一方的に罵倒するのを楽しんでいるだけので、話を聞いていても得るものがありません。

このような「他人を攻撃したいだけの人」のことを何と呼称すればいいのでしょうか?
「クレーマー」とも「カスハラ」とも異なる、新しいカテゴリだと思うんですよね。

新規採用職員の皆様も、そろそろ「出先」と「本庁」の違いを理解しつつある頃合いではないかと思います。
採用されたばかりの頃は、「出先機関=当たり」「本庁=ハズレ」なんだろうと漠然と思っている人が大多数だと思いますが、この半年間の自分の経験を踏まえ、異なる感想を抱いている方もいるでしょう。

とはいえ、「本庁勤務のほうがむしろアタリ!」などと宗旨替えする人はごく稀で、出先配属の人は「やっぱ当たりだわ」と胸を撫で下ろし、本庁配属の人は「なんで自分はこんな不幸な目に遭わされてるんだ……」と嘆いているのではないかと思います。
僕自身、初任で本庁配属になり、出先に行った同期よりも圧倒的に残業も休日出勤も多くて、ゲンナリしていた記憶があります。

ただ今となっては、新人の頃に本庁配属されて良かったと思います。
新人の頃に築いた人間関係ーーつまり人脈に、今かなり助けられているからです。

「実力」の7割くらいは「人脈」なのではないか

役所の事務職は、専門知識や技能がさほど求められない代わりに、他者と上手くコミュニケーションをとって仕事を円滑に進めることが求められます。
特に組織内部の人、庁内の別職員とのコミュニケーションは、担当業務が何であれ日常的に発生します。
つまり、組織内部のコミュニケーションがうまくとれる人は、どんな部署に配属されても、どんなポジション・職位であろうとも、優位に仕事を進められます。

このためには、頭の回転速度やトーク力のような所謂「コミュニケーション能力」に加えて、人間関係のストック……つまり人脈も重要です。
組織内部に味方が多ければ多いほど、間違いなくコミュニケーションは取りやすくなります。


ない世界では、個々人の能力よりも、いかにスムーズに組織を動かし、仕事を進めていくかのほうが業務遂行に直結するからです。



専門知識がある職員よりも、庁内で顔の広い職員の方が評価されますし、仕事もしやすいです。
新規採用職員として本庁勤務することが、量・質ともに有益な人脈を築けます。

「量」も「質」も本庁のほうが有利

役所内における人脈には、「量」「質」の2つの側面があると思います。

人脈の「量」とは、知り合いの多さです。
知り合いがたくさんいるほうが何事も進めやすいのは、言うまでもないでしょう。

人脈の量を稼ぎやすいのは、圧倒的に本庁勤務です。
出先機関と比べて本庁は単純に職員数が多いですし、業務内容的にも他課との調整業務が多く、多くの職員と関わることになります。
自発的に動かなくても自然と人脈が広がっていくのです。

人脈の「質」とは、役立つ職員と知り合うことです。
役立つ人というのは、具体的には、以下のような職員です。
  • 助けてくれる人
  • これから出世していく人
  • 学ぶところの多い人、お手本になる人
「仕事ができて、かつ人格的にも優れている職員」と言い換えても良いでしょう。

特に若いうちは、お手本にできる優秀な先輩職員と出会うことが非常に重要だと思います。
地方公務員は、研修や教育を受ける機会が皆無に等しく、OJTもあまり機能していません。

そのため、「教わる」ことができない新人は、まず誰かの「真似」をすることになります。
ここで、「誰の真似をするか」が非常に重要になってきます。
きちんとしたお手本たりうる優秀な職員の真似をできれば問題ありませんが、周囲に変な職員しかいない場合には、間違った仕事の進め方を習得してしまうことになりかねません。

質の高い人脈を築けるのも、出先ではなく本庁だと思います。
30代以上になると、職員の選別もだいぶ進んできて、同世代の中でも比較的優秀な職員が本庁に残るようになります。
そのため、出先にいるよりも、本庁にいる方が、優秀な職員と出会える可能性が高いです。

「新人ボーナス」で好感度を荒稼ぎ

人脈を築くためには、単に人と出会うだけでは不十分です。
相手から好感を持ってもらうことが重要であり、敵とみなされるようなことがあれば、逆に人脈を築くどころか悪影響を及ぼしてしまいます。
特に仕事の世界では、信頼関係が好感の基盤となるため、相手に「この人とはまた一緒に仕事したい」と思ってもらうことが不可欠です。

新人の場合、この好感を得ることは容易です。
多少のミスがあっても「新人なら仕方ない」と寛容に見てもらえることが多いからです。

また、近年の傾向として、若手が仕事に対して消極的な印象を持たれやすいため、やる気を見せるだけでも良い印象を与えることができます。
少しの積極性や努力を見せることで、周囲に「あの新人は頑張っている」と評価され、自然と好感度が高まります。

たとえ認知されなくても有益

ただし、往々にして優秀な職員には仕事が集中し、わざわざ新人を個別に認知する余裕は無いかもしれません。
当然のことながら、お互いがお互いの存在を認知しなければ、人脈たり得ません。
「自分だけが相手のことを一方的に知っている」という状態は、正確には人脈とは言えません。

しかし、認知されることが全てではありません。
新人にとって最重要の恩恵、つまり優秀な職員から得られる「学び」は、相手が自分を認識していなくても享受できるものです。

優秀な人々の仕事ぶりを観察し、彼らから無意識のうちに得られる知識やスキルは、新人にとって貴重な経験となります。こうした学びの積み重ねが、長期的に自分のキャリアにプラスとなるのです。

したがって、相手に認知されるかどうかに焦点を当てるよりも、自分がどれだけの意欲を持って学び、成長し続けるかが、最終的には重要な鍵となるでしょう。



世間的にはいまだに、公務員の仕事=書類にハンコを押す単純作業……という印象を持たれていますが、このような単純作業は、最近は外注したり、会計年度任用職員に任せることがほとんどです。
その代わり、正規職員の業務に占めるコミュニケーションの割合が、どんどん大きくなっています。

このような状況において、もちろん一番重要なのはコミュニケーション能力になりますが、ストックとしての人脈もまた重要です。
これからの役所は、ますます単純作業が減っていって、同時に庁内人脈が重要になっていくと思います。
そのためには、新人ボーナスをフル活用して、若いうちから人脈形成しておくことが重要だと思うのです。

本庁配属の方は、恵まれた環境にいることをフル活用してもらえればと思います。

結婚相談所での婚活を始めるにあたり、さすがに世間の動向を仕入れておかねば……と思い、今月から毎日ネットニュースをチェックするようになりました。

本当は芸能やスポーツ関係のニュースを見るべきなのでしょうが、どうしても興味が持てず、行政関係の炎上ニュースばかり見てしまいます……

行政機関のトップは政治家



今月に入って早々に、首相官邸の公式アカウントが炎上していました。
炎上の理由は投稿内容そのものではなく、言葉の使い方

赤ペン先生みたいな人が大挙して「敬語の使い方がおかしい」と非難しているのがどんどん拡散して、「そもそも首相は役所にとって上司にあたる人間で、上司に敬語を使うなんて民間ではあり得ない、やはり公務員には常識が欠如している」「将来性ゼロの公務員になるくらい時流が読めないんだから日本語も読めなくても当然」などなど、公務員叩きへと発展して行きました。

結局、首相官邸側が謝罪したうえで投稿を修正する……という形で収束したようです。

この炎上案件、僕は首相官邸職員に非は無いと思っています。

日本国憲法に「国民主権」が掲げられている以上、この国で一番偉いのは国民であり、国会議員は国民の代表者であり代弁者です。
ゆえに、公僕たる公務員が国会議員に対して敬意を表するのは当然です。
国会議員をぞんざいに扱うことは、つまり、国民をぞんざいに扱うのと同義であり、怒られて当然の蛮行です。

そして首相は、行政機関のトップであると同時に、国会議員でもあります。
つまり、公務員から見ると、「上司」であると同時に「国会議員」…という二重の性質を帯びているわけです。

「身内の上司に対して敬語を使わない」のは、役所においても常識です。
しかし、上司だからといって、最高権力者である国民様の代表たる「国会議員」を蔑ろにすることが許されるのか?というと……悩ましいところだと思います。

今回の炎上は、国会議員の地位低下が露見した案件なのだろうと思います。
「国会議員は主権者たる国民の代表だから、公僕たる公務員は無条件で敬意を表さなければいけない」という民主主義の原則が霞むほどに、国会議員に対するヘイトが高まっているのでしょう。


放火犯を救うための署名







公共施設に放火した職員に有罪判決が下ったとのこと。
僕と同世代で主査ということは、これまで心身を損なうことなく真っ当に勤務してきて、それなりに信頼されている職員なのだろうと思います。
そんな人が放火するまで追い込まれるということは、相当しんどかったのだろうと推察します。
この年齢であれば両親も存命でしょうし、妻子もいるかもしれませんし、本当に辛い……

しかも同僚から嘆願書が出ているとのこと。
364名分の署名があるとのことですが、調べたところ白山市役所の職員は全員で739人。
全職員のほぼ半数が署名に応じたことになります。

報道からではわからない、深淵な事情がありそうな気がします。


「業務の効率化」などと簡単に言ってくれますね




財政制度等審議会の分科会が、地方に対して徹底的な歳出削減を改めて求めたとのこと。
暇があったので報告書の全文も読みました。
  • これから生産年齢人口が減るから公務員数も減らすべき
  • だから地方はもっと業務を効率化する必要がある
  • 具体的には、ITを活用や公共施設の統廃合
という論調なのですが、大前提の「生産年齢人口が減るから公務員数も減らすべき」の部分から賛同できません。

行政サービスの多くは「弱者救済」の要素が強く、主な顧客は高齢者です。
これから少子高齢化・人口減少が進んでも、高齢者の減りは相対的に遅いです(だからこそ少子高齢化)。
ゆえに、「生産年齢人口が減るから公務員数を減らすべき」という行政サービス供給サイドを話をすると同時に、「生産年齢人口が減っても、求められる行政サービスの量は減らない」という需要サイドの分析も必要だと思います。

むしろ、「行政サービスの需要はこれからも高止まりするが、生産年齢人口が減るせいで供給が難しくなる」というのが正しい現状理解ではないでしょうか?

加えて、「ITの活用による業務効率化」にはお金がかかることに言及していないのも、ずるいと思います。
財務省的には、「人は減らせるけど、人件費以上にランニングコストがかかる」システムは、ありなのでしょうか……?

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