前回の記事では、地方公務員として働くことでプレゼンスキルが身につくかもしれないという説を紹介しました。

今回は、公務員として働かない限りなかなか身につかないであろうユニークスキルを紹介します。

挨拶文・祝辞の作成→公務員の固有技能?

そのユニークスキルとは……挨拶文や祝辞の作成能力です。

文面作成にあたっては、色々な話題を盛り込みつつ分量自体は短くするのが大原則です。
「分量を短くする」のは、文章術として広くノウハウが解かれていますが、「話題の盛り込み方」のほうは公務員の固有技能だと僕は思っています。

式典で首長や部局長が読み上げる「挨拶」や「祝辞」の類いは、大抵の自治体では職員が作っています。
作成作業はかなり力の入る業務で、最低2週間は必要です。

文面の作成自体は数日とかからないものの、文面にどのような要素を盛り込むかの取捨選択に時間を要します。 
式典の背景を調べ、関係者を調べ、当日の参加者を調べ……入念な下調べをした後、式典出席者が聞きたがっていることを推測して文面に落とし込んでいきます。

主に感謝を述べるわけですが、どういった点に感謝するのか、聞き手の心情を推し量り、場合によってはこっそり関係者(聞き手側)からヒアリングすることもあります。
 
こちらがお招きされた側の場合は、主催者やほかの来賓へのリスペクトをいかにして滲み出させるか、表現の細部までこだわり抜かなければいけません。

挨拶文の重要性

挨拶文や祝辞は、慣れない人間が文面を考えると、自己満足に陥りがちです。
自己満足スピーチを聞かされて、喜ぶ人間はいません。反感を持たれるか、内心嘲笑されるかのどちらかです。
どちらも、後々のトラブルの火種になります。
少なくとも田舎では絶対になります。

例えば、僕の通っていた小学校では、地域のお偉いさん(連合町内会長)がかつて卒業式の祝辞でやらかしてしまい、来賓の議員さんの機嫌を損ねてしまった結果、その議員さんが裏で動いてコンビニの出店計画を潰して回っていると噂されていました。


自治体には、過去の文面がしっかり公文書として残されているうえ、文面作りのノウハウもしっかり蓄積されています。
このノウハウ、自治体以外にはなかなか無いのでは?

自治体OBが業界団体の事務局長や理事なんかに再就職するパターンが、どこにでもよくあるかと思いますが、気の利いた文面を作ってくれることも役割の一つなんだろうと思っています。

出世する人ほど上手い?

挨拶文の中身は、最終的にはそれを喋る人、つまり管理職が入念にチェックします。
変なことを喋ったら、即座に自分の失敗になってしまいます。
そのせいか、職位が上の職員ほど、文面作成が上手いです。

以前の記事で出世ルートとして挙げた財政・人事部局では、ことあるごとに他部局の挨拶文もまとめてチェックしています。
管理職になる前に、出世ルートを歩む最中で鍛えられるのでしょう。