クールジャパン戦略について、いちオタクとしての見解を置いておきます。
ルネサンス期にメディチ家が果たした役割を持ち出すまでもなく、クリエイターの育成にはパトロンが必要です。
クールジャパンの対象となるコンテンツでも、特にアニメ制作や伝統工芸分野では、現状パトロンたりうる存在が欠落しており、大成したクリエイター以外は厳しい生活を迫られています。
生活すら厳しい中で、世界的にも通用するコンテンツを製作するのは、不可能でしょう。
現状の日本のコンテンツは、バブル期の残滓とも言われているようです。
(僕がこれまでお話ししてきた伝統工芸業界の方は、口を揃えてこう言います)
現在の主力クリエイターは、バブル期に舞い込んできた潤沢な資金により、しっかりと経験を積めました。
しかし、現在は日銭を稼ぐのに精一杯で、後進の育成にまで面倒を見られません。
人材面での衰退は既に始まっています。
「市場の失敗」が生じているとも言えるでしょう。
「市場の失敗」を是正するのは、政府の役割です。
戦略を読む限りでは、クリエイターよりも、コンテンツをマネタイズする人材の育成に注力しています。
現状は多分、売り込むコンテンツには事欠かないため、マネタイズ人材育成のほうが急務なのでしょうが、かといってクリエイター支援をないがしろにすると、じきに売り込むコンテンツがなくなってしまいます。
クリエイター奨学金のようなダイレクトな支援に加え、もっとコンテンツの制作現場にお金が落ちる仕組みづくりが必要だと思います。
既存コンテンツのマネタイズも急務
一方、既存のコンテンツを使って手っ取り早くお金を稼ぐことも必須です。
先日の阿波踊り騒動のように、うまくマネタイズできていない(または特定のセクターの既得権益化している)せいで、コンテンツの存続自体が危ういという状況も、全国各地で発生しています。
マーケットインとか、分野横断的に取り組むとか、インバウンド需要を取り込むといった観点は、既存コンテンツのマネタイズの方法としては王道だと思います。
ただ、行政が絡むと、「公平性の観点」「政治的な配慮」といった事情のために、金稼ぎに最適化できません。ここが不安要素です。
(マネタイズ失敗という意味では、自治体アンテナショップが好例です。)
広報戦略も重視していますが……必要あるのでしょうか?
つまるところ、明らかに「市場の失敗」が生じているコンテンツ制作現場を救済するのが、行政の役割では?ということです。
既存のコンテンツを使って稼ぎつつ、稼いだお金を広告代理店が全部持っていくのではなくコンテンツ制作現場にも回していく、という環境ができればいいのですが……
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