個人ブログを運営し始めてから、地方自治体のホームページ運用方法の歪さに気がついてしまいました。仕方ない部分もあるとはいえ、正しい情報をより多くの人に届けるという意味では、現状の運用方法は相当まずいのではと危機感を抱いています。

原則上書き、コンテンツ総量は据え置き

自治体のホームページは、上書きが基本です。
新たな情報を掲載するたびに、古い情報を消していきます。
 
総ページ数は原則増やせません。
同じURLのページを、内容を変えて使い回すイメージです。
そのため、コンテンツの総量はいつまでたっても増えません。

こういう運用になっている理由は、大きく二つあります。

サーバー容量への配慮

一つは、サーバー容量の都合です。
各部署で好き放題にコンテンツを増やしていったら、サイト容量が際限なく増えていってしまいます。
サーバー容量のパンクを防ぐため、自主規制が敷かれている状況です。

粗探し対策

より重要な理由は、過去のページの粗探し対策です。
 
行政の粗探しをしたい方にとって、過去のWebページは格好の攻撃材料です。
ページの作成者がすでに異動してしまったであろう更新日時の古いページを探して、「文言の使い方がおかしい」「そもそもの制度趣旨がおかしい」などなど指摘してくる方が、結構います。
 
古いページの中身だと、現在の職員では即時回答できないことも時々あります。
この場合、回答に詰まること自体を嬉々として非難され、そのまま小一時間サンドバッグにされてしまいます。

こういった案件が頻繁に発生するので、用済みになったページはすぐに消してしまうのが、行政のサイト管理の原則です。

僕のような観光系の部署の場合、終わったイベントの情報は全部消しています。
特に、毎年恒例のイベント情報は念入りに消します。過去の情報を残しておくと、「現在との違い」について粗探しされるリスクがあるためです。

「なんで去年は来場者特典が『先着100名』だったのに、今年は50人に減ってるの?」とか、「ステージイベントの開始時刻を繰り上げたのは何故?」とか、とにかく邪推して揉め事にしたがる方が多くて……

コンテンツ価値の観点

上書き保存のみの運用だと、サイト上のコンテンツの総量が増えません。
コンテンツの総量が増えないと、サイトとしての価値は低いままです。
そのせいで、公式サイトなのに検索順位が低くなってしまいがちです。
 
自治体の公式サイトであれば、検索上位に来るように配慮されているようですが、公式サイト外に独自ドメインを取得して掲載しているサイトの場合は、「〇〇県お出かけ情報」みたいなキュレーションサイトの方がだいたい検索上位に来ます。

書籍名を検索した際に、出版社サイトよりもAmazonの方が上位に表示されてしまうのと同じですね。

キュレーションサイトの方が先に表示されたとしても、内容が正しければ問題はありません。
ただ、結構な頻度で間違いがあり、実際問題になっています。

現に、僕の課が管理している観光施設でも、「ウェブ上に載っている開館時間が間違っている」とのクレームがありました。
もちろん、公式サイトでは正しい時間が掲載されています。
最初は誰も意味がわかりませんでした。

よくよく調べてみると、いくつかのキュレーションサイトで開館時間が間違っていることが発覚。
各サイトのご意見フォームから訂正依頼を送り、現在は修正されています。

こういった事件が今後多発していくのではないかと危惧しています。

サジェスト汚染の危険も?

公式サイトの検索順位が低いと、サジェスト汚染への耐性も弱くなってしまいます。
ネガティブワードで一度バズってしまったら、なかなか修復できないでしょう。

幸いにも?今のところ実例は見たことがありません。
ただし、マイナーな観光地に対して有名ブロガーが「がっかり観光地だ」という記事を投稿した結果「がっかり」 がサジェストされるようになってしまう……くらいの展開は近々起こりそうですし、実際既にどこかで発生していそうです。
 

より良いサービスのため、粗探しは勘弁してほしい

少なくとも観光振興においては、「これから何をするのか」と同じくらい、「過去にどういうことをやっていたのか」も、重要な情報です。
そのため、なるべく過去イベントの情報も残しておきたいと常々思っています。

ただし、「粗探しして説教してやろう」という方が多数いらっしゃる以上、過去イベント掲載はハイリスクです。
今後の地域の発展のため、粗探しは勘弁していただけないでしょうかね……?