ゾンビランドサガ、最終回まで神作でした。
自治体コラボアニメという観点から見ても、本作は間違いなく伝説になりました。

佐賀じゃなくてもできるのに、佐賀抜きでは成り立ち得ない 

「ゾンビランドサガ」のメインテーマは、ゾンビの方にあります。
佐賀県ご当地ネタがふんだんに盛り込まれてはいるものの、ストーリー展開上必須かといえば、そうではありません。
極端な話、「ゾンビランドシガ(滋賀)」でも、「ゾンビランドカガ(加賀)」でも、同じくらい面白く、話題になったでしょう。
もっと極端にいうと、架空の街でも問題なかったはずです。

お話がしっかり出来上がっているところにご当地要素を詰め込もうとすると、不自然になります。
作中人物の感情や言動と、ご当地要素が衝突するのです。

特に、有名な観光地や名産品を無理矢理入れると、ものすごく浮きます。
かつてはこの浮きっぷりが逆に話題になって功を奏したこともありました。

しかし、最近は逆です。
ノルマのように詰め込まれたご当地要素を見ると、オタクは萎えてしまいます。
「聖地巡礼してね」「お金落としてね」というメッセージが見え透いているのです。


そんな中、「ゾンビランドサガ」は、ご当地要素とメインテーマ(ゾンビ)を見事にマッチさせ、ご当地要素を活用しながらストーリーを展開しました。
無くてもいいはずの佐賀要素を上手く調理して、展開に不可欠なパーツへと仕上げているのです。
ドライブイン鳥の使い方は、本当に見事でした。

もし「ゾンビランドシガ」だったとしても、琵琶湖や彦根城をうまく使って、それはそれで神作品になったことでしょう。
ここまでうまくいったのは、ひとえにスタッフの力量だと思います。

ゾンビという死後の存在を題材にしたアニメに表立って協力する決断をした佐賀県にも感服です。
うちの自治体だったら「寺社仏閣から苦情がくるから絶対だめ」と即断されそう。

「色づく世界の明日から」と比べて

同じく2018年秋クールに放送された、これまた同じく九州地方(長崎県)を舞台にしたアニメ「色づく世界の明日から」は、「ゾンビランドサガ」とは異なり、長崎舞台でないと描き得ない作品でした。

  • 出島があった名残で西洋イメージが強く、「魔法」が出てきても違和感ない
  • 舞台を色彩豊かにするための「海」「広い空」「夜景」が揃っている
  • 60年後でもあんまり街が変わっていなさそう(都会すぎない)

パッと思いついたものを列記してみました。
どれが欠けたとしても、本作は成り立ちません。

新感覚ご当地アニメ

これまでの自治体コラボアニメは、「色づく世界の明日から」タイプの作品ばかりでした。
地域の魅力を最大限活かしたアニメ、とでもいえばよいでしょうか。

前述のとおり、ご当地要素とストーリーを融合させるのは、とても難しいです。
過去の伝説級作品は、「true tears」「たまゆら」のように地域と完全融合するか、ご当地要素を薄くしてストーリーで魅せるかのどちらかでした。

そんな中、「ゾンビランドサガ」は、ご当地要素をふんだんに使ってストーリー(ご当地要素関係なし)を進めていくという難業を成し遂げたのです。
そして見事に、佐賀県をPRしました。広報戦略としても大成功です。

観光や広報に携わる地方公務員なら、視聴必須の作品だと思います。