地方公務員6年目にしてようやく『公務員1年目の教科書』を読みました。
感想をざっくりまとめると、以下の通り。
- 内容には全面的に賛同しますが、一年目職員にはハードルが高い
- もっと優先して教えるべきことがあると思う
正論だけど一年目には難しすぎる?
著者は民間企業に就職後に市役所へ転職、企画財政畑を歩んでいます。
正統派エリートコースです。
そのせいか、節々に生存者バイアスを感じました。
普通の新卒採用職員には、高度すぎるのでは?
例えば、業務マニュアル作り。
本書では、最初の一ヶ月目から業務マニュアルを作ろうと提案しています。
こんなこと、普通の人間には無理では?
僕の理解では、マニュアル作成とは、個々のケースから帰納的に一般的ルールを見出していく作業で、ある程度担当業務に慣れるまでは不可能な作業です。
一方、着任当初からマニュアルを作るのは、「こういうルールだときっとうまく回るぞ」という普遍的原理を目の前の現実に当てはめて微調整を繰り返して行く作業であり、演繹的な行為です。
公共政策大学院を出ていて行政手法に詳しいとか、民間企業のメソッドが体に染み付いているとかして、ある程度の知識・経験が備わっていないと不可能では?
エリートコースに乗って出世したいのであれば、本書の通り一年目から頑張ればよいでしょう。
しかし、平均的な地方公務員には、本書の内容を1年目でこなすのは困難です。高度すぎます。
目の前の仕事を確実にこなしたほうが自分のためになるし、周りのためにもなると思います。
本書にある内容は、初任配属先で勤務する最初の2〜3年の間に習得するのが現実的かと思います。
もっと重要なことがあるのでは
本書で紹介されている内容は全面的に賛同できるのですが、「一年目の教科書」というくくりで見ると、もっと優先して教えるべき内容があるだろうと思えてしまいます。
例えば、
- つまらないと思うことでもきちんと上司に報告しよう、つまらないか重要かを判断できるのは上司です
- 役所の常識は世間の非常識、上司だけでなく住民もきちんと納得できる仕事をしよう
とか。
著者は市役所勤務、僕は県庁勤務ということで、自治体規模の違いが、優先順位の差として現れているのかもしれません。
新人公務員が本書を読むなら、配属から半年くらい経って一通り実務を経験した後の方が、頭に入ってくると思います。
それよりまずは目の前の作業を覚えるのが先決です。
あとはお金の勉強して、私財を守りましょう。
模範的エリート公務員の価値とは
ここからは僕の独り言です。
本書のスタンスがわかりやすく現れている部分を引用します。
「役所はぬるま湯」「普通の職員は腐っている」という危機感が本書の根底にあるようです。本書のスタンスがわかりやすく現れている部分を引用します。
実際、公務員にとって最も怖い風土病は「出ない杭は腐る」です。最初はとても意欲的だった新人が、半年も経てば目の輝きが失せ、1年後には「普通の職員」になってしまったというのは、多くの人事・人材育成担当者の悩みです。「腐る」理由にはいろいろありますが、結局、「ぬるま湯」な職場風土にどっぷり浸かってしまったということです。堤直規『公務員1年目の教科書』2016年 学陽書房 p.164~165
本書は模範的エリート公務員の養成を志向しています。
筆者は管理職であり、模範的エリート公務員を育成したいと思うのは当然でしょう。扱いやすいし。
ただ僕は、ある程度大きな役所の場合、職員にも多様性が必要だと思っています。
アウトローだけど特異な技能を持った奴。
組織全体の総合力を考えると、こういう存在も必要だと思います。
組織全体の総合力を考えると、こういう存在も必要だと思います。
正統派エリート公務員にしろ、アウトロースペシャリストにしろ、堕落せず自己研鑽を積まなきゃいけないのは一緒です。
自己研鑽の重要性を熱く説いているのが、スマイルズの『自助論』。
腐りたくないなあと思うなら、ぜひこちらを読んでみてください。
自己研鑽の重要性を熱く説いているのが、スマイルズの『自助論』。
腐りたくないなあと思うなら、ぜひこちらを読んでみてください。
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