観光部局に異動して一番初めにやった仕事が、パンフレットの校正でした。
正直、お年寄りでもインターネットを使うようになりつつある時代なのに、紙媒体にがっつり予算と時間を割く必要はあるのか疑問でしたが、半年も経たないうちに考えを改めました。

知名度が非常に低いものを告知するときには、インターネットよりも紙媒体の方が安上がりかつ効果的です。

インターネット上の情報を探すときは、ユーザーが見たいものが自然と集まってきます。
見たくないもの、そもそも存在を知らないものは、なかなか表示されません。

検索すらされないワードを告知するには?

ファーノー・ジョーダンという人物をご存知でしょうか。
C.G.ユングの著書『タイプ論』の中にちょろっと出てくる方で、『身体と血統に見られる性格』という本を書いたらしいです。

「らしいです」という無責任な表現になっているのは、この人物についてこれ以上の情報が見つからなかったためです。
少なくとも日本では、かなりマイナーな人物といえるでしょう。

図書館でこの人物の特集を組むことになったと仮定します。

この特集企画の場合、インターネットでの告知には期待できません。
豪華な告知サイトを作ったとしても、アクセス数は少ないでしょう。
そもそも誰も「ファーノー・ジョーダン」を知らないからです。

「ファーノー・ジョーダン」で検索すれば最上位にサイトが表示されるでしょうが、そもそも誰も検索しません。
「タイプ論」であればまだ検索数は多いでしょうが、関連性が非常に薄いので、優先順位は相当劣ります。

知名度皆無な情報をインターネットで広めたければ、ポータルサイトの力を借りるか、バズる必要があります。
前者にはものすごくお金がかかります。後者は狙ってできるものではありません。
どちらも現実的ではありません。

一方、紙媒体(例えばチラシ)であれば、「ファーノー・ジョーダン」を知らない人にも簡単にアプローチできます。
人通りの多いところに設置するだけでいいのです。
手に取ってもらえるかは別としても、とりあえず視界には入ります。

遠方に旅行に行くと、インターネットで事前調査したときには全然ヒットしなかった観光地やイベントのチラシと遭遇することが多々あります。
「〇〇市 観光地」で検索しても全く見つからず、名称を直接入力しない限りヒットしないのです。

地方自治体が告知したい情報って、こういうものばかりです。
そもそも知名度が低すぎて、ネット上だと誰の目にも触れません。
そのため、紙媒体の併用が不可欠なのです。

もともと知名度の高い情報ばかりが優先して表示されるのは、最近のインターネット(検索システム)の宿命でもあります。
自治体が自前で強力なポータルサイトを持つ等、弱い情報を披露する場所をインターネット上にも設ける必要があるのかもしれませn。