キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

2019年06月

経済界の大物から「終身雇用を維持できない」という発言が続いたせいか、「地方公務員はスキルが身につかない」「早々に転職の準備をすべき」論が盛り上がっています。
アフィリエイト収入狙いの煽りのようにも見えますが……

ちょうど良い機会なので、離職に関する僕のスタンスをまとめておきます。

民間全落ちマンに転職する勇気は無い

以前からネタにしている通り、僕は民間企業の就職活動に失敗して公務員になりました。
海外展開している大手企業から、県内にしか拠点のない地元企業まで、幅広く落ちました。

僕の出身大学は関東の某私立大学で、偏差値も知名度も地元国公立大学より上です。
地元企業の選考ならば、学歴的には僕の方が有利なはず。それでも全滅しました。
ということは、学歴という加点要素ではカバーしきれないくらいの欠陥があるのでしょう。

どこが悪いのか、残念ながら自覚はありません。今も全然改善していないでしょう。
そのため、民間企業への転職は全く考えていません。採用される気がしません。

他の公務員への転職も選択肢としてはあり得ますが、こちらは待遇的に除外です。
待遇面を考えると、今の県庁勤務よりも上にいける気がしません。

県内市町村は残業手当が一切出ないとの評判ですし、他自治体まで出て行って公務員を続けるのは金銭的に割りに合いません。

フリーランスは最もありえません。
複数の民間企業から「使えないなあ」と評された人間が独り立ちできるわけがない。

そもそも人並みに働けるのか?

加えて、年を経るごとに体調が悪くなりつつあります。
単なる老化なのかもしれませんが、連日深夜残業のようなハードワークはもう無理です。
この意味でも、民間ではやっていけないと思います。 

役所は、僕みたいな労働弱者に優しいです。
労働力としての使い勝手は明らかに悪いのに、給与ではまず区別されません。出世はできないでしょうが、その方が正直ありがたい。
僕の分のしわ寄せが健康な方に行っているわけですが……

セミリタイア(アーリーリタイア)も困難

俗にいうセミリタイアやアーリーリタイアも考えていません。
給与に代わる収入源を確立できる見込みが立たないからです。

パラサイトシングル生活を続ければ、だいたい45歳時点で4,000万円くらいは貯蓄でき、なんとか配当金生活に入れるかもしれません。

ただ、購入するアセットが問題です。
日本株は減配リスクが大きいですし、外国資産は円高リスクが怖いです。
資産規模を大きくして分散させれば、ある程度はリスクを織り込めますが、そうするとリタイア時期が遅くなり、アーリーとは言えなくなりそうです。

「いつ辞めるか」を自分で考えるのは大事

というわけで、心身を壊さない限りは、現在勤務している県庁に寄生していきます。
たとえ待遇が悪化したとしても、僕のような労働弱者にとっては、県庁生活継続が最善手でしょう。 

ただ、「いつかセミリタイアしてやるぞ」という意気込み、退職時期を自分で決めるというスタンスは、非常に重要だと思っています。

冷静に考えて、定年退職というシステムは、日本独特かつごく最近の文化です。
いつ無くなってもおかしくないと思います。
 
これからの人口減少、特に勤労世代の減少を受けて、日本社会はこれからも長く働く方向に変わっていくでしょう。
自ら積極的に仕事を辞めないと、低賃金でこき使われ続ける目に遭いそうです。

僕は根が自堕落なので、いつまでも働きたいとは思いません。
「いずれは不労所得」を合言葉に、セミリタイアするつもりで蓄財に励んでいきます。

話題の金融庁報告書をやっと全文読みました。
内容に目新しさはありません。インデックス投資ブログのまとめ記事かと思うくらい。
ただ、主張を支える根拠データの厚みがブログとは大違い。さすが官僚です。
行政が作った報告書とは思えないくらい具体的な示唆に富んだ内容で、一読の価値ありです。

以下、僕が気に留めたポイントを書いていきます。

収入減にも関わらず高齢者の支出は減ってない(P.9〜10 )

「世帯主の年齢階級別収入の推移」グラフによると、1994年をピークに全世代で収入が減少しています。
一方、「世帯主の年齢階級別消費支出の推移」グラフでは、現役世代(35歳〜64歳)の支出は1994年をピークに大きく減少している一方で、65歳以上の世代は殆ど減少していません。

つまり、現役世代は収入減に合わせて支出も減らしたが、高齢世代は減らせていません。

高齢世代になるほど、支出に占める固定費(家賃など)の割合が上昇して節約余地が狭まり、医療費など節約しようのないコスト増が待ち受けている、ということを示しているのでしょう。

アドバイザーの充実(p.33)

今後の対応策のひとつとして、個々人のマネープラン策定などのアドバイスを提供できる「アドバイザー」的存在の充実が挙げられています。

特に強く求められるのは顧客の最善の利益を追求する立場に立って、顧客のライフステージに応じ、マネープランの策定などの総合的なアドバイスを提供できるアドバイザーである。
こうしたアドバイザーとなり得る主体としては、投資助言・代理業、金融商品仲介業、保険代理店やフィナンシャルプランナーなど様々な業者が存在する。
米国では証券会社などの金融サービス提供者から独立して、顧客に総合的にアドバイスをする者が多数いるが、日本においてこれに類似する者は存在するものの、まだまだ認知度は低く、数は少ない。
今後は認知度向上に努めるとともに、そのサービスの質的な向上に努めることが望まれる。

また、本人に一番身近な金融機関などの者においても、単一の業態に留まらない顧客のニーズに応じた総合的なアドバイスを行うことは、顧客からの信頼を得る上で、また、高齢社会の金融サービス提供における役割を果たす上でも重要なことである。

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」 p.33

個人向けマネープランコンサルティングサービスは、今まさに地銀が猛プッシュしているところで、iDeCoや NISAと一緒に広まりつつあります。
年金破綻煽りも相まって、これからさらに盛り上がっていきそうです。

実施主体が誰であれ、コンサルサービスは慈善事業ではなく、自社の儲けのためのビジネスです。
顧客の利益を考えると言いつつも、自社の利益を追求します。
つまり、サービス提供者の言いなりだと、顧客の利益の一部が吸い取られます。
サービスを受ける側の金融リテラシーがとても重要なのです。

個人年金利用率が突出して高い29歳以下(P.20)

「老後に向け準備したい(した)公的年金以外の資産」グラフによると、18〜29歳の世代では、預貯金・退職金についで「民間保険会社などが販売する個人年金」の利用率が高くなっており、30%に上ります。
一方、証券投資とiDeCOは10%未満です。

生命保険会社と証券会社の営業力の違いが、そのまま反映されているのだと思われます。
民間保険会社は、セールスレディを使った営業ノウハウを積み上げ、若年層を囲い込んでいます。
前述の「アドバイザー」としての立場をセールスレディが占めている、と言っても間違いではないでしょう。

生保セールスレディは、生命保険以外の運用方法を決して勧めません。
そのため、アドバイザーとしては不適格です。
しかし、彼女らが若年層のアドバイザーとして幅を効かせているのが現状なのです。

これから彼女らの牙城を崩すための戦いが始まることでしょう。
誰が勝利するのか?ネット証券なのか地方金融機関なのか、それとも独立系FPなのか……
 

個々人の金融リテラシー向上が必須

今後、金融機関の個人顧客への営業がさらに活発になるのは確実でしょう。
しかも、あたかも我々の利益優先のような顔をしつつ、ちゃっかり自社利益を確保しようと企んでいるのです。

カモられないよう、早いうちから金融リテラシーを身につけていくべきでしょう。

「文系研究者の行き場が無い」みたいなニュースを見るたびに、自治体に来てくれないかと思っています。
文系理系問わず、どんな分野であれ、大学院での研究経験は地方公務員稼業に役立つでしょう。

研究経験自体が役に立つ

大学院で研究した中身自体は、残念ながら役所では殆ど役に立たないでしょう。
高度な学術的知見を活かす場面が無いからです。

しかし、指導を受けながら真面目に研究したという経験そのものが重要です。
正統派のリサーチ方法を指導されているだけで、スタートラインが違います。
特に「データの扱い方」「統計知識」は今後どんどん重要になっていくでしょう。

大学院で学ぶ研究者としての基礎は、公務員として働くにしても役立ちます。
しかし、役所内ではまともに知っている人がおらず、OJTでは教えようがありません。
一旦役所に就職してしまうと、身につきようがないのです。

僕も幾度となく、大学院卒の先輩に助けてもらっています。 

研究室への所属経験自体が役に立つ

研究室という組織への所属経験も重要です。

自治体と大学の連携、俗にいう官学連携は、これからも増えていくと思われます。
自治体としては華々しい成果でメディア受けしますし、大学としては研究資金獲得に繋がります。
結果が出るかどうかは別にして、連携を始めること自体は双方にメリットがあるでしょう。

ただ、自治体は大学組織のことを全然知りません。
  • 教授会や学部会とは何なのか
  • 研究室単位でどれくらいの権限・裁量があるのか
  • 大学教授はどれくらい忙しいのか
  • 研究者には色々肩書きがあるけど、それぞれの違いは何なのか
どこかの研究室に所属したことがあれば、少しは触れたことがある情報でしょう。
しかし、役所の職員は全然知りません。
僕もわかりません。大学組織の何がわからないのかがわからない。圧倒的無知です。

田舎の県庁だと、大学院卒職員はほとんどいません。
どこの部署に行ったとしても重宝されるでしょう。

2019年5月30日の毎日新聞朝刊に掲載された記事が公務員の間で話題になっています。

「窓口対応お断り」50代男性に通告 佐賀・嬉野

数年間にわたり窓口に通い続け、職員に対する暴言が複数回見られた50代男性に対し、市長名で
  • 市への質問は文書に限り、回答は文書で行う
  • 住民票や戸籍、保険、年金の窓口交付以外の対応は文書の受け取りだけに限る
  • 電話には一切応対しない
という内容の通知を発出したようです。

報道した毎日新聞は、この対応をかなり否定的にとらえています。
前掲のヤフーニュース見出しとは異なり、新聞紙面での記事見出しは

暴言対策やりすぎ? 市役所「窓口対応お断り」

と、端から否定的です。

有識者のコメントも加えて、?マークが霞むくらいに批判しています。

なぜ市長名で通知したのか?

新聞の報道姿勢はどうでもいいですし、窓口対応お断りの通知自体も大して珍しくはありません。
僕が気になったのは、市長名で通知文を発出した理由と背景です。

僕の知る限りでは、市長名で通知するメリットがありません。
むしろデメリットばかりです。

市長名で通知すると、行政処分に該当してしまいます。
行政処分であれば、行政不服審査法に基づく不服申立てのような、裁判よりも安価で手軽な法的反抗手段がいろいろあります。
そのため、市長名での通知は、新たな攻撃手段のプレゼントにほかなりません。

そもそも、市長名でこういう通知を出せるものなのか疑問です。

基本的に役所は、所管法令に基づく行為か、議会で承認された行為しか実行できません。
こういう通知の場合は前者でしょう。
市が所管する許認可等の法令に基づく通知であれば、市長名で堂々と発射できます。
ただ、今回の通知は、どういう法令に基づいて窓口利用を制限しようとしたのでしょうか?

庁舎管理条例違反なら問題ありません。
軽犯罪法だと厳しい気がします。市長は軽犯罪法を所管していないためです。
根拠法令を示さず、単に「暴言がひどい」「業務妨害だ」という理由だったら、脇が甘すぎます。

今回のような根拠法令のはっきりしない通知は、弁護士名で出すのが基本だと思っています。
役所から弁護士に対し、通知相手の窓口対応を委託するのです。

弁護士からの通知は、行政処分ではありません。
そのため、通知された側は、裁判を起こすしか法的反抗手段がありません。
法的ではない手段はいろいろありますが、何にせよ行政処分よりは反抗しにくいことは確実です。

なぜ弁護士名で出さなかったのか

ここからは100%僕の空想です。
本当は弁護士名で出したかったけど、何らかの理由で実現に至らず、次善の策として市長名での通知に落ち着いたのでは?

「弁護士への報酬支払い理由が立たない」と出納部門から止められたとか。
市内の弁護士が人権派ばかりで誰も応じてくれなかったとか。

理由は何せよ、市長の英断にただ感激です。
これから不利な戦いを強いられるのが見えているにもかかわらず、職員を守るために一歩踏み出した。

今の世の中、すべての自治体が不当要求に苦しんでいると思います。
僕も最近はご無沙汰ですが、以前の部署では相手3人vs僕1人、6時間ぶっ通しとかも経験しました。
「今のうちに親孝行しておけ」と言われたこともあります。

今回のニュースが良い先例になってほしいと切に願います。

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