キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

2020年06月

動画制作といえば、都道府県よりも市町村の方が一歩前を歩んでいる印象です。
ただ最近のコロナ騒動を受けて、イベント関係が中止になった分の観光振興予算を回したりして、都道府県も動画に注力し始めるのではないかと思います。

実は僕も、仕事で1本だけ動画を作ったことがあります。
庁内向けのプロトタイプなので、世間一般にお披露目するものではありませんが、テロップを入れたり色味を調整したりサムネイルも作ったり……なかなか手間暇をかけました。
 
動画を自ら作ってみることで、編集の巧拙や作者の工夫・こだわりがちょっとわかるようになったという副産物もありました。
この意味でも有意義な仕事でした。

役所が動画を作る機会はこれからもどんどん増えていくでしょう。
ただ役所にとって、動画制作は茨の道です。
たくさんの苦難が待ち受けていることが容易に予想されます。

動画はどうしても網羅性に欠ける

役所はとにかく網羅性を重視します。
世の中には「重箱の隅を突きたがる層」が相当数存在して、内容に少しでも遺漏があると執拗に食らいついてくるからです。

広報物では特にこの傾向が強いです。
「役所が作るチラシはごちゃごちゃして醜い」というお叱りのとおり、役所作の広報物は網羅性を優先するあまりレイアウトが崩壊しがちです。
醜いのはもちろん承知しています。
しかし、レイアウトを犠牲にしてでも網羅的に中身を詰め込まないと、もっとお叱りを受けるのです。

そのため動画制作でも網羅性を持たせたいところなのですが、動画という媒体は網羅性とは相性が悪いです。
網羅的に内容を盛り込もうとしたら、ものすごい分量になってしまいます。

実際に僕が動画を作ったときも、上司から色々と不足点を指摘されて、それらを次々に盛り込んでいきました。
その結果めちゃくちゃ長くなり、パソコンのハードディスク容量を超えてしまいました。
僕も上司も目からウロコが落ちました。役所の王道である網羅性至上主義と動画媒体の相性の悪さを痛感しました。

このため、役所が動画を作るときは、網羅性を諦めるしかありません。
となると、「重箱の隅を突きたがる層」の格好の餌にならざるを得ません。

要素をコントロールしきれないせいで隙が生じる

単なるチラシや文書とは異なり、動画には「音」と「動き」という要素があります。
これらもまた「重箱の隅を突きたがる層」の格好の標的になります。

映像制作のプロは、「絵」「音」「動き」ほか動画を構成する要素の全てをコントロールして、制作側の意図を視聴者に伝えようとするでしょう。

しかし、役所の職員にそんな能力はありません。
メッセージ性の薄い、ひどい時にはあり合わせの素材で済ませてしまうでしょう。

「重箱の隅を突きたがる層」は、こういう「甘い」部分を見逃しません。
「ボディがガラ空きだぜ」と言わんばかりに痛烈な指摘を繰り返してきます。


「重箱の隅を突きたがる層」は、最近どんどん増えてきています。
そのため役所側は、当面は網羅性重視の広報体制を改められないでしょう。

網羅性に欠ける媒体である動画は、優先順位がなかなか上がらないでしょうが、それでも世間の潮流には逆らえません。役所の動画利用はどんどん増えていくでしょう。
当面の間は、動画を作るたびにクレームを受けつつノウハウを蓄積していく「雌伏の時」が続きそうです。

事前面談会が大変なようで……当事者の皆様は本当にお疲れ様です。
ネット上にいろんな声が上がっていますが、僕の感覚では「まあそうなるよなぁ……」という感じで、正直驚きはありません。
表向きのルールを守らない流れなら、やっぱ今年も伝統行事「地上試験日拘束」やっちゃいそうですね……

事前面談会で深淵を垣間見た結果、国家総合職への就職を再考している方もいるかもしれません。
ただ、現時点で完全に見切りをつけられる方はごくごく少数でしょう。
そして大半は大いに迷っていることと思います。
特に「これまでの努力が無駄になってしまう」という葛藤と戦っているのでは?

この感情こそ、かの有名な「一貫性の法則」「サンクコストの錯誤」と呼ばれる人間の思考の癖です。
狩猟時代から人類の脳に刻まれた思考パターンであり、無意識のうちに人間の決定を方向付けます。
そしてときには不合理な決定をもたらし、後悔の素となるのです。
 
ファーストキャリアに国家総合職を選ぶかどうかは、人生において非常に重要な選択です。
認知の歪みに左右されることなく、合理的に考え抜いたうえで決定すべきです。

「一貫性の法則」や「サンクコストの錯誤」そのものの解説は別サイトに任せるとして、これらの思考の癖から解放されるためのヒントを考えてみます。


一貫性の法則:志望動機を冷静に深掘りしてみる

端的にいうと、「これまでずっと国家総合職を目指してきたから今更進路変更なんてしたくない」という気持ちを惹き起こすのが「一貫性の法則」です。

この法則の影響から逃れるためには、なぜ国家総合職を目指しているのかを今一度冷静に見つめ直して、「一貫性の法則」とは関係なく本心から国家総合職を志しているのかを問い直すのが効果的です。

  • 官僚というステータスに憧れている
  • 入庁後にやりたい仕事がはっきりしている

このように断言できるのであれば問題ありません。邁進してください。

断言できないのであれば、国家総合職を目指す動機を細分化してみることを勧めます。
 
前述の「官僚というステータスに憧れている」パターンでなければ、国家総合職への就職は目的ではなく手段です。

  • 目的を達成するための手段は、「国家総合職への就職」一択でしょうか?
  • または「国家総合職への就職」が利用可能な手段のうち最善の選択肢でしょうか?

どちらの問いもノーであれば、国家総合職への就職が必ずしも合理的とは言えません。
より志望動機を深掘りしていって、さらに問いを深めてみては?

その結果「国家総合職がベストだ」という結論に辿り着ければ問題ありません。

反対に「他の選択肢の方が良いんだけど、どうしても国家総合職を捨てきれない」という状態から脱せないのであれば、「一貫性の法則」のような認知の歪みが作用している可能性が高いです。
自分で悶々と考えていても仕方ないので、第三者の意見を仰ぐことを勧めます。
それか前掲の『影響力の武器』『ファスト&スロー』を読んでみて、自分の心理状態を客観的に見てみてください。

サンクコストの錯誤:そもそもサンクコストではない

「一貫性の法則」と若干被りますが、「今更国家総合職の道を止めるのは、これまでの過程を失敗とみなすことと同義だ。これまでつぎ込んできたお金・時間・労力などのコストを無駄にしたくない。だから国家総合職しか進路は無い!」という心理状態が「サンクコストの錯誤」です。

もしこういう風に考えているのでしたら、安心してください。
国家総合職を志して努力してきた日々は、少なくとも地方公務員になるのであれば、決して無駄にはなりません。

国と地方がうまく歩調を合わせられない理由の一つとして、官僚と地方公務員の間の絶望的な法令知識格差があると思っています。 
地方側に法令知識(中でも特に、民法と行政訴訟裁判例)が無いために、官僚の意図が正しく伝わっていないのです。
(いずれ別途記事にしようと思っています)
 
こういう構造的課題があるために、官僚並みに法令知識を備えている職員が地方側にいれば、国・地方の相当にとってものすごくありがたいのです。
過去の記事で「東大卒は人事異動のペースが遅い」と書きましたが、高学歴ならではの固有スキルである「知識の厚み」を活かして国と地方の仲介役という代替困難な役割を担っているために、異動させづらいのかもしれません。


 

公務員にならないにしても、国家総合職試験に向けて膨大なインプットをこなしてきたという経験はきっと役立つでしょう。
とにかく無駄にはなりません。

どこの役所の採用面接でも、志望動機を書いたり喋ったりすると思います。
地方公務員の面接試験は大体ネガチェックです。
まともに受け答えできれば、よほどまずいことを言わない限り大丈夫でしょう。

今年は新型コロナウイル感染症のせいで説明会も無く、OB訪問もしづらい状況です。
そのためインターネットで情報蒐集している方が多いでしょう。
ただ、インターネット上の指導動機の例文を見ていると、僕からすれば「よほどまずい」に該当する地雷ワードが散見されます。

例文そのものが間違っているわけではなく、多分、田舎自治体向けではないのです。
あくまで推測ですが、インターネット上の受験情報は、都会の大規模自治体向けに最適化されているのでしょう。
受験者総数が多くて情報としてニーズが高いですし、合格サンプルも集めやすいので、そうなって当然です。

ただし、田舎自治体の職員としては違和感があるのは事実です。
例文をそのまま使えば、面接官から「業界研究が足りない」と思われても仕方ないと思います。

これまで本庁内のいろんな部局をたらい回しにされてきた経験をもとに、部局ごとの地雷ネタをまとめてみました。
もちろん自治体ごとに地雷は異なります。
できることなら避けたほうが無難な話題、というくらいの感覚で受け取ってください。

地雷さえ避ければ使いやすい

産業振興:個別企業・個人への支援までは触らない

産業振興関係は、自治体ごとに業務内容がばらばらで、力の入れ具合も全然違います。
前向きな仕事が多いので志望動機にも使いやすいでしょう。受験自治体のこれまでの施策を調べて、その流れに沿って喋ることが重要です。

ただし地雷もあります。
まず、自治体は個別企業の経営改善までは深入りしません。
これは半公的機関である商工会・商工会議所の役割です。

経営者の高齢化、後継者不在、複業化が進んでいなくて経営基盤が脆弱……等々、地方の企業は色々な課題に直面しています。
自治体の役割は、こうした外部課題の解決に役立つであろう支援制度を整備することです。
コンサルタントのように企業経営に立ち入って社内の問題そのものを解決するのではありません。

<地雷を踏んでしまう志望動機>
経営学のゼミに所属して、教授の指導のもと企業の経営分析を多数こなしてきました。この経験を活かして、経営者や生産現場とも綿密にコミュニケーションを取りながら、中小企業の経営安定化に携わりたいです。

経営学の知見自体は大歓迎なのですが、「やりたい仕事」が役所とはかけ離れています。
補助金、講習会、アドバイザー派遣、マッチング機会の設置などの支援制度整備が役所の仕事です。

雇用・失業対策も注意が必要です。
こちらは主に労働局(厚生労働省)の仕事で、自治体の役割はあまり大きくありません。
特に失業者個人への支援は労働局の専売特許です。自治体は立ち入りません。

自治体が行う雇用施策では、最近だとUIJターン促進大学生の県外流出防止が熱いようです。
公務員試験受験者にとっては、ある意味最も身近な施策かもしれません。
自分自身がピンポイントにターゲットなのです。
深く考えなくてもオリジナルの意見がどんどん出てくるでしょう。
志望動機としても使いやすいと思います。

時間に余裕があれば、この本を読んでみてください。
地方企業の現状と課題がコンパクトにまとまっています。
産業振興部局の職員ならだいたい読んでいる基本書です。

文化振興:宗教との距離感に注意

産業振興と同じく、自治体ごとに業務内容がばらばらです。
受験自治体のこれまでの施策を確認して、その路線に沿いましょう。

ただし、政教分離の原則を忘れないよう注意してください。
いくら地域を代表する寺院であっても、自治体は宗教団体と距離を保たなければいけません。
面接でも、特定の寺院や宗教の名前を出すのは控えたほうが無難でしょう。


危機管理:ある意味成長分野

都道府県と市町村の役割分担がはっきりしています。
それぞれの役割をしっかり把握して、混同しないことが重要です。

危機管理業務に対してネガティブな印象を持っている方も多いかもしれませんが、福祉と並んで役所ならではの役割であり、かつ近年どんどん重要性が増してきている分野です。
県民の防災意識自主防災技能の向上わかりやすい防災情報の提供あたりは、志望動機としても使いやすいと思います。

観光:施策の考え方を押さえておく

過去記事を参照ください。



地雷は少ないがネタにもしづらい

環境:受け身な仕事が多い

都道府県と市町村の役割分担がはっきりしています。
それぞれの役割をしっかり把握して、混同しないことが重要です。
例えば廃棄物処理だと、一般廃棄物(家庭ごみ)の所管は市町村ですが、産業廃棄物は都道府県が担います。
<地雷を踏んでしまう志望動機>
家庭ごみを減らすためには、まずは無駄なものを買わないこと、後々ごみになる過剰包装のアイテムを選ばないことが重要です。アルバイトを通じて身につけた発信力を活かして、個々人の意識を変えていき、家庭ごみを減らして行きたいです。

都道府県の志望動機としてこんな発言をしてしまうと、研究不足と思われてしまいかねません。家庭ごみは市町村の仕事です。

環境部局の仕事は規制法令の運用がメインで、民間団体が取り組んでいるような先進的な環境保全活動までは、なかなか着手できていません。
そのため、環境保全への熱意を示せば示すほど、役所側としては温度差を感じてしまいます。
下手をすると行政批判とも受け取られかねません。
話題にしろ言葉にしろ、チョイスには細心の注意が必要です。

SDGsの話題も避けたほうが無難でしょう。SDGsを意識した施策を打ち出している自治体はまだまだ少なく、面接官が知っているとも限りません。


厚生・福祉:都道府県ならではの役割を見いだすのが難しい

たくさんの制度があり、どれも複雑です。
市と町村で役割が違うもの(町村エリアは都道府県が担う)も多く、都道府県だけの役割が正直よくわかりません。反対に市町村ならではの役割ならいくつもあるのですが……
志望動機にするなら入念に下調べしてください。

地域医療(過疎地域の医療体制確保、病院ネットワークの再編など)は、都道府県ならではの仕事で、かつ最近熱い話題です。
新型コロナウイルス感染症を受けて既定路線の見直しが始まりそうで、今後さらに熱くなっていくのでしょう。

おすすめ志望動機としてインターネット上でよく見かける「少子化対策」は、市町村と都道府県の明確な役割分担がありません。
そのため、少子化対策だけでは、「どうして都道府県(市町村)なのか」という決め手に欠けます。
受験自治体のこれまでの取り組みを確認して、この部分をしっかり補強する必要があります。


国際交流:役所の役割はものすごく地味

自分の強みとして語学力をアピールしたい方はたくさんいると思います。
留学のような経験や定量的根拠(TOEICの点数など)のような裏付けも作りやすく、話しやすいですし。
「語学力という自分の強みを生かしたい」という理由で国際交流部局を志望するのも、一見すると自然かつ論理的な流れです。

しかしここが落とし穴。国際交流の名を冠している部署であっても、職員自身はあまり外国語を使いません。
外国語を扱うのは専門の職員(たいてい非正規)で、正規職員は国際交流団体(日本人)との連絡調整のような事務仕事がメインです。
そのためせっかくの語学力が活きないのです。

<地雷を踏んでしまう志望動機>
留学経験を通して身につけた語学力を発揮して、国際交流部局で、県内に住む外国人の生活利便性向上に携わっていきたいです。

こういう活動をする民間団体を支援するのが役所の役割で、自ら企画立案するわけではありません。

「語学力を活かしたい」と言われたら、面接官は親切心で別の仕事を勧めたくなるでしょう。
役所には語学力を活かせるポジションが無いのです。

関連記事も置いておきます。





志望動機になりうるが自治体ごとの温度差が激しい

広報:あえてやらない自治体もある

広報業務への注力具合は、都道府県ごとに全然違います。
がっつり予算を注ぎ込んで、広告代理店を使ってイメージ戦略・ブランド構築に取り組んでいるところもあれば、公式ホームページ運用と広報誌発行くらいしかやっていない自治体もあります。

志望動機に広報ネタを入れるなら、受験自治体の広報業務へのスタンスを見極めなければいけません。
 
真剣に取り組んでいる自治体なら、「自分も感化された」等の体験談を交えつつ、熱い想いをぶつければよいでしょう。
一方、広報業務に力を入れていない自治体なら、そもそも志望動機にはしないほうが無難です。意図的に手を抜いている可能性が高いからです。

住民からすると、広報業務にどれだけ注力しようとも、生活水準の向上には繋がりません。
もちろん間接的な恩恵はあります。自治体の知名度が高まり観光客やふるさと納税が増え、自治体財政が豊かになり、行政サービスの質も向上するとか。
 
しかし住民の多くは、こんなまどろっこしい恩恵は求めていません。即物即金を尊びます。
そのため民意レベルでは、広報は無駄金という方向に傾きがちです。

首長や幹部職員にも、広報のような成果が不確実な事業にただでさえ少ない予算を配分するのは論外だと考える人がいます。
広報に力を入れていない自治体は、こうした事情があるために、あえて注力していないのです。

<地雷を踏んでしまう志望動機>
学生時代を東京で過ごしましたが、近隣の〇〇県や▽▽県はマスコミなどによく取り上げられていたのに、●●県は全然見かけませんでした。これでは●●県の魅力が伝わらないと悔しい思いをしました。これまでに学んだマーケティングの知見を活かして、●●県の広報を強化していきたいです。

広報をあえてやらない自治体に対してこんなことを言ってしまうと、致命的な見解の相違が生じます。研究不足と思われても仕方ないでしょう。

総合政策・企画:自治体ごとに立ち位置が全然違う、事前リサーチ必須

インターネット上では財政・人事と並んで神格化されている企画部局ですが、全ての役所がこうとは限りません。
企画部局の立場が弱いところもあります。

例えば長期構想や総合戦略の策定業務。
企画部局がリーダーシップを発揮して方向性や内容を決めている、つまり各事業担当課よりも企画部局の意見のほうが優越するところもあれば、単に各課から提出されたものを合体させているだけのところもあります。

僕の友人が務める某県庁では、企画部局は「ポエマー」「ホッチキス」と揶揄されているとのこと。
各課から提出された原案の細かい表現にケチをつけるだけで、自ら代案を示すこともせず、合体作業しかやらないらしいです。

志望動機として企画業務を語るのであれば、受験自治体の企画部局の業務内容や立ち位置を、OB訪問などで事前に調べておいたほうが安全です。

勘違い君と思われる

建設・土木:事務職は裏方

建設・土木系の部署は、技術職が主役です。
事務職の仕事は庶務経理がほとんどで、あとは用地買収、公営住宅賃料などの滞納管理、許認可法令担当がいるくらいです。
いずれも目立つ仕事ではありません。

<地雷を踏んでしまう志望動機>
    • 大学で学んだ都市経済学の知識を活かしてまちづくりに携わりたい。
    • 特徴的な景観で世界的に有名な▽▽国に留学して、伝統的な景観を守りつつも住民生活の利便性を向上させる術を学んだ。この知見を活かして、●●県の景観保全に携わりたい。

こういうきらびやかな仕事は事務職の役目ではありません。志望動機としても使わないほうが無難です。

農林水産系:事務職は裏方

建設土木系と同じく、ほとんどの業務で技術職が主役になります。
事務職は裏方です。庶務経理がほとんどで、あとは生産者(農業従事者)支援制度の運用や、許認可・法令担当が少しいる程度でしょう。
華々しい仕事はたいてい技術職です。

例えば、特産品の販路開拓やプロモーション。
一見事務職の仕事のように思えるかもしれませんが、実際は専門的な農業知識が必要なため事務職には荷が重いです。

「特産品のプロモーション」と聞くと、通行人に試食を渡したり、イベントにブース出展して販売したり、動画や冊子を作ったり……という、イベント会社のような仕事を想像するかもしれません。

こういった業務も実際ありますが、売り子や動画製作自体は役所の役割ではありません。だいたい外注します。
役所の役割は、特産品の魅力は何なのかを分析し、定義することです。
このプロセスには農学の専門知識が不可欠で、事務職では困難です。

加えてプロモーションでは、法人相手の営業活動にも注力しています。
消費量を増やすには、個人のファンを増やすよりも、小売や流通、飲食業界の法人顧客を作るほうがずっと効果があります。
さらに、法人相手の営業活動は、個々の生産者には難しいです。自治体というネームバリューと予算規模が必要で、生産者サイドからも需要のある事業といえるでしょう。

法人相手の営業では、職員はプロのバイヤーと対峙しなければいけません。
ここでも農学全般の知識が必要になります。事務職員では太刀打ちできない世界です。

生産者(農業従事者)と接触する仕事も、ほぼ全て技術職が担当すると考えて間違いないでしょう。
生産者も農業のプロです。事務職の付け焼き刃知識なんて求めていません。

総務:個人ではどうしようもない

総務部局系の話題(≒役所組織の話題)は、面接では避けたほうが無難です。
職員個人の思いでなんとかできるレベルの話ではありません。

しかも面接官(だいたい人事課)は、職員の中でも組織運営の専門家です。知識の深さでは敵いません。
ごりごり深掘りされて言葉に窮する場面が容易に想像できます。

おすすめ(無難)な志望動機ネタ

僕のおすすめは、
  • 産業振興(特に若者の県内就職促進)
  • 危機管理(特に自主防災支援)
  • 文化振興
  • 観光
です。

産業振興と危機管理は、役所ならではの仕事であり、かつ市町村よりも都道府県よりの仕事です。
差別化を意識しなくても、自然と都道府県の志望動機に仕上がっていくでしょう。

文化振興も使いやすいのですが、市町村との差別化が難しいです。
観光も使いやすいのですが、市町村だけでなく民間との差別化も考えなければいけません。
差別化ポイントをあらかじめ考えておく必要があります。

役所の昼休みといえば、照明が全部消えて真っ暗になることで有名です。
省エネのためらしいですが、来客に対して失礼なんじゃないかといつも思っています。

民間企業からの転職組と話していると、「入庁前後でギャップがあったポイント」として、昼休み時間をよく挙げられます。
役所生活に浸かってしまった僕にとっては、消灯以外のどこにギャップの生じる余地があるのか全然見当もつきませんでしたが、よくよく聞いてみると役所特有の事情がわかってきました。

全員一律で休む

窓口業務メインの部署では昼番係を設定して交代で休みを取っているところもありますが、それ以外だと全員一律で昼休みを取ります。
民間企業だと、本社のバックオフィス部門でも時間差を設けて段階的に昼休みを取るところが多いようですが、役所は一律です。

大体の自治体は、12:00〜13:00を昼休み時間に設定しています。
この時間帯は、仕事に関するコミュニケーション(報告、指示、相談など)を原則取ってはいけません。
自分一人で黙々と仕事をするのは全く咎められません。他人を巻き込むのがマナー違反なだけです。

対外的には昼休みも通常営業

ただし、役所機能そのものが休止しているわけではありません。
来客や電話があれば、この時間帯も通常通り対応します。

特定の職員しかわからない案件が舞い込んできて、その職員が離席していたら、問答無用で携帯電話に架電して呼び戻します。

呼び戻しリスクがあるせいか、昼食を外で食べる人は少数派です。
大体は自分の座席で済ませます。

運悪く昼休みが仕事で潰れてしまったら、それでおしまいです。
13:00以降は普通通り仕事に戻らなければいけません。
別の時間に代わりに休むことは認められません。

仕事してなくても拘束はされている

実際のところ、昼休みは頻繁に潰れます。
特に民間企業からの問合せ電話が多いです。ほぼ毎日かかってきます。
民間企業勤務の方にとっては、交代で休みをとるのが当たり前で、役所が全員一律で休みを取っているとは想像もしていないのでしょう。

役所の昼休み時間は、実質的には待機時間のようなものです。職員は職場に拘束されています。
優雅にランチを楽しみたいという方は、地方公務員に向いていないと思います。無理です。

中央省庁や都庁志望の優秀な若者を田舎役所に引きずり込みたいという邪念を抱きながら日々更新している本ブログ。
このブログがきっかけで地方公務員に興味を持ってくれたらこの上ない喜びです。

ただし、万人に対して地方公務員就職を勧めたいとは思っていません。
役所という組織も公務員の仕事も合わない人にはとことん合いませんし、何より辞めた後の選択肢が限定されます。
特に民間企業への転職は難しく、公務員並みの待遇と求めるとなると相当困難でしょう。

そのため、一旦地方公務員に就いたなら、なるべく辞めてほしくありません。
入庁前に情報収拾して、自分の適性を考え抜いてほしいです。

役所組織や実務への適性は、インターネット上にたくさんの情報が既にありますし、このブログでも何度か取り上げています。











 
今回は役所から離れて、地方都市生活への適性について考えてみます。

大都会(特に東京)からUターン・Jターン就職してきた方の中には、政令市レベルの都市でも満足できずに結局東京に戻ってしまう方が一定数います。
政令市のどういうところに満足ができなかったのか、何が不足しているのか。
僕がこれまで見聞きしたケースを紹介します。

文化資源が全然足りない

美術館や博物館巡りの魅力に目覚めてしまった方は、地方都市に満足できなくなってしまいがちです。
これら文化施設のコンテンツ力は、東京の一人勝ちです。

常設展示もさることながら、企画展や特別展示の回数・質は、地方都市とは比べものになりません。東京の圧勝です。
海外の美術館からの借り物をはじめ、東京でしか開催されない企画展も多数あります。

地方の施設にも魅力的なコンテンツはありますが、数が少なく、入れ替わりもほとんどありません。
そのため一度行けば十分で、新鮮味がありません。
東京の刺激を一度知ってしまったら到底満足できません。

休みをとって上京して巡回するという方法もありますが、なかなか難しいようです。
こういった文化施設はたいてい行列ができ、入場までに時間がかかります。
そのため地方から上京していては時間が全然足りないのです。

地方都市には存在しない業種・職種に就きたい

とりあえず就職してみたものの、本当にやりたい仕事とのミスマッチに耐えかねて、東京に戻って行くパターンもよく聞きます。
仕事の幅では、東京には到底敵いません。
特に学識を活かすタイプの仕事は、政令市には無い職種がたくさんあります。

わかりやすいのは理系の研究職・開発職です。
地元大手企業に就職するも、大学時代と比べて研究・開発水準があまりに低くつまらなさすぎたというパターンを頻繁に聞きます。
僕の友人の中には「高校物理のほうがレベルが高い」と言い残して東京に戻っていった連中もいます。

加えて地方企業だと、研究や開発に専念させてもらえないことも多いようです。
研究職で採用されたのに、人手不足を理由に経理も兼務しているとか。


文系は一層深刻です。
地方都市の文系職は、たいてい何でも屋です。
役所並みにジェネラリスト志向のところが多く、たとえ大学で高度な学識を身につけていようとも考慮されません。
つまり、文系学問の知見を活かせる仕事が地方都市にはそもそも存在しないのです。

東京本社の大都市と比べて組織が小さいために、文系専門職を雇うだけのキャパシティが無いのでしょう。
都庁と県庁を比較しても、この傾向がはっきり見て取れます。
専門家を採用・育成しようとする都庁と、ひたすらジェネラリスト(笑)志向の地方県庁。
組織のスケール的にどうしようもないのだろうと思われます。

東京で築いた人間関係がものすごく大切

UIJターン就職すると、東京で築いた人間関係からは疎遠になります。
いくら遠隔通信手段が発達した時代とはいえ、東京在住時代と同程度の緊密さをキープするのは至極困難です。
僕自身、大学時代の友人とどんどん疎遠になって行くのを感じています。
結婚式なんかで久々に再会すると特に実感します。

会話は続かないし、愛想笑いの頻度の多いこと。
共通の話題といえば大学生当時の思い出話ばかりなのですが、これすら評価が割れます。
僕にとっては「楽しいエピソード」なのに、周囲にとっては「どうでもいいこと」だったり。逆も然り。

かつての友人とどんどん疎遠になっていくことを、僕は仕方ないものと思っています。
人間は日々変化していくものです。
そしてこの変化には、周囲の環境が大きく影響します。
地方都市と東京という異なる環境下で暮らしていれば、それぞれ異なる方向へ変化していって当然です。

僕は人間関係全般に対して関心が薄いので、こういうふうに割り切っていますが、そうでない方のほうが多数派だと思います。

そのため、東京で築いた人間関係を重視する方は、自然と東京に戻っていきます。
大学時代がものすごく楽しかったリア充にありがちなパターンです。

よく言われるように、一度生活のレベルを上げてしまうと、元のレベルに落とすのが非常に苦痛に感じられます。
人間関係も同様で、一度ハイレベルな環境を経験してしまうと、通常の環境では満足できなくなるのです。

「楽しくない」「つまらない」という不満感だけでなく、劣等感を覚える人もいるでしょう。
地方都市にいる自分が相対的に停滞しているように感じられるのです。

結局はメリデメの比較

東京生活にはデメリットもたくさんあります。
通勤のストレスだったり、物価の高さだったり、人口密度だったり、自然の少なさだったり……
 
こういったデメリットを打ち負かすほどの強烈なメリットとして人を動かしたのが、今回紹介した3事例になります。

今回挙げた3事例は、いずれも2013年〜2019年という限られた期間に観測されたケースです。
これからどうなるかはわかりません。
ただ個人的には、変わらないどころか、もっと顕著になると思います。

結局のところ、自分が本当に地方都市で満足できるのかどうかは、自分にしかわかりません。
今まさに東京にいるのであれば、まずは考えうるデメリットを全て経験してみてください。
貴重なヒントになるはずです。

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