キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

2020年07月

何気に出世関係の記事が常時人気の弊ブログ。
地方公務員ブログを読むような現役職員って、「人生のコスパが悪いから出世したくない」とか「出世よりも『やりたい仕事』を優先したい」という考えの方のほうが多い印象ですが……なんだかんだで出世にも関心があるのでしょうか?

入庁からそれなりに月日が経過して、同期入庁職員からは財政課も人事課も輩出されてしまいました。
とりあえず、僕たちの出世レースはひと段落したところだと思われます。

「鉄は熱いうちに打て」ということで、ここで一旦、筆者が見た20代の出世レースを振り返ってみようと思います。

出世レースの実態は自治体ごとにバラバラだと思いますが、後で紹介する公務員人事の研究本の内容ともけっこう被っていたので、わりと汎用性のある内容になっているかもしれません。

ただし、そもそも半分妄想で組み立てる記事なので、アラサー職員がドヤ顔で後輩に語っている与太話くらいの感覚で読んでください。

出世イメージ

一次選抜:採用時~5年目頃まで

まずは5年間くらいかけて、見込みのある職員をピックアップしていきます。
ここでピックアップされるかどうかで、今後のキャリアが大きく変わります。

地方公務員の場合、採用時には「総合職」「一般職」の区別はありませんが、事実上この期間で、時間をかけてゆっくりと「総合職」を選抜しているようなものです。

予算担当のような中枢業務を任されたり、1回目の人事異動で花形部署に異動したりすれば、ピックアップされたものと思って良いでしょう。

二次選抜:6~8年目頃まで

引き続き、一次選抜でピックアップされた職員の中から、財政課や人事課という役所組織の中枢を担う人材、ひいては将来の部局長候補を選抜していきます。

この二次選抜こそ、地方自治体の出世競争を語るうえで最重要のポイントであり、最も謎のプロセスだと思っています。
自治体ごとの差が大きい部分でもあるでしょう。

この期間は、直接の人事評価者(課長など)だけでなく、より上位の部局長からもウォッチされていると思われます。
部局長候補にふさわしいかどうかは、経験者でないと判別がつかないからです。

財政課や人事課職員を選出した時点で、二次選抜は終了です。
選抜された職員は圧倒的出世コースを邁進します。
将来の部局長候補として、役所組織全体をバランスよく回すための帝王学を身につけるため、財政課や人事課を中心に経験を積んでいくことになるでしょう。

選抜されたなった場合の行き先

ここで選抜されなかった職員はそこそこ出世コースに入り、忙しいポストや難しい仕事を任されるポジションになります。
俗にいう「忙しい部署ばかり回される職員」は、この層とほぼ一致すると思われます。

この層に期待される将来的な役割は、本庁の課長です。
事業の遂行能力だけでなく、部下のマネジメント力も求められます。
そのため、見込まれた職員は早々に部下あり係長に任ぜられ、職員個人としてだけではなく、チームとして成果を出せるかも測られます。

もちろん、全員が本庁課長まで上り詰めるわけではありません。
いかに早く部下を持つか、そして管理職に昇進するか、 熾烈な競争が続きます。

しかも今後は、この競争が激化すると思われます。
採用数が抑制されていた今の30代後半〜40代と比べて、今の若手職員は人数が多いです。 
とはいえ、職員の人数増に応じて管理職ポストを増やすという選択肢は考えられません。
管理職が増えるほど人件費が増えるからです。

そのため、現在と同数の管理職ポストを、より多くの候補者の間で奪い合うことになるでしょう。

そもそもピックアップされなかった場合

一次選抜でピックアップされなかった職員には、二次選抜以降は関係ありません。
毎年同じようなことを繰り返しているような平和な仕事を転々とすることになるでしょう。
 
ただし、一次選抜期間中に産休・育休で休んでいた職員は、途中から「そこそこ出世コース」に上がることもあり得ると思います。
特に最近は女性の管理職登用が盛んに叫ばれているところでもあり、候補者がいれば積極的に登用したいところでしょう。

一方、産休のような特殊事情が無く、単に一次選抜のピックアップに漏れた職員は、出世とは縁遠い職員人生を歩み続けることになると思われます。 
前述のとおり、これからは管理職ポスト争いが熾烈化します。
候補者の割にポストが少ないのです。
そのため、これ以上候補者を増やすようなことは起こらない、つまりコースの垣根を超えた登用は起こりづらいと考えるのが自然でしょう。

真相は如何に……?

僕はこれまでずっと本庁勤務で、頻繁に人事異動を繰り返しています。
そのため多数の部局を経験しており、「各年次のエース級職員は誰なのか」「部署ごとの出世ポストがどこなのか」を無駄に知っています。
出世競争にまつわる裏話(信憑性のほどは不明)も多数耳にしてきました。

こうやって得た経験をベースに、公務員人事の研究成果をまとめた以下の2冊を参考にしつつまとめあげたのが、本記事になります。

現代日本の公務員人事ーー政治・行政改革は人事システムをどう変えたか [ 大谷 基道 ]
現代日本の公務員人事ーー政治・行政改革は人事システムをどう変えたか [ 大谷 基道 ]

学歴・試験・平等 自治体人事行政の3モデル [ 林 嶺那 ]
学歴・試験・平等 自治体人事行政の3モデル [ 林 嶺那 ]





実際のところ人事の仕組みなんて全くわからないわけですが、本気で出世したいなら採用直後から全力を尽くしたほうがいいという経験則だけは確実と思われます。 

大型市役所や県庁志望の方は、今ごろ面接ネタを練っているところと思います。
中には「役所だけではどうしようもない課題を、住民や民間企業と協力しながら解決していきたい」という展開を考えている方もいるかもしれません。
 
とても耳触りの良いストーリーではありますが、実務をやっている身からすると現実味がありません。
面接官としても心を動かされないと思います。

協力してもらえれば解決できそうな課題は実際たくさんありますが、「いや役所の責任でしょ」と一蹴されるのが常であり、そもそも協力しあえる素地があれば、現存する社会課題の多くは今ほど深刻になる前に解決できていたはずです。
いまだに課題のまま残っているものは、過去に協力を仰ごうとして失敗したと考えるほうが自然です。

もし「住民・民間企業との協力による課題解決」要素を使いたいのであれば、国内自治体の成功事例を探しておいたほうがいいと思います。
少なくとも事例が無いと、根拠があまりにも薄弱だからです。

ただし、どんなに優れた成功事例があったとしても、指定管理者ネタだけは絶対に避けたほうが無難です。
全国各地でトラブルが相次いで発生していて、職員を悩ませているからです。

指定管理者の懐具合

指定管理者制度の概要は、インターネットで検索したほうが正確かつわかりやすいでしょう。
ここでは省略して、お金の話を中心に進めていきます。

役所側から見ると、指定管理者制度は
  • コスト削減(特に人件費)になる
  • 役所では提供しづらいサービス(物販や飲食、娯楽イベントなど)を提供でき、施設の魅力向上につながる
というメリットがあります。

一方、指定管理者として施設を預かる民間側(受託者)からすると、
  • 設備は役所が準備してくれるので、初期投資なしで事業が始められる
  • 賃料や固定資産税がかからないので、運営コストが安い
  • 指定管理料という安定収入を得られる
というメリットがあり、一見双方にとってお得な制度のように見えます。

建前はこんな感じなのですが、実際やってみると、上記メリットの恩恵を受けられるとは限りません。
特に受託者側の負担が想定以上に重くなり、受託当初は想定していなかった多額の赤字を抱えることになりがちです。

想定外のコストが嵩む

赤字の原因の一つは、住民や議会からの要望です。
運営を指定管理者(民間)に任せているとしても、施設自体は役所のものです。
そのため、民主主義の原則から逃れることができません。通常の民営施設のように営利優先での運営ができないのです。

完全民営の施設であれば、お客さんから要望があったとしても応じる義務はありません。
「利益につながるかどうか」を判断基準として検討するでしょう。
しかし役所の場合は、民間企業の感覚では一蹴すべきトンデモ案件や、利益には到底結びつかない提案であったとしても、しかるべき相手・人数からの要望であれば応じなければいけません。

指定管理者が運営している施設も、税金を原資に提供されている行政サービスであることには変わりありません。
民主主義の原則に従い、役所本体が提供するサービスと同程度に、住民の意見を尊重しなければいけません。

かっこよく言うと、公設という性質上、採算度外視でロングテールのニーズに応じなければいけないのです。 
  • 農産物直売だけでなく試食も出してほしい →加工・提供スタッフ増員(人件費増)、衛生管理のコスト増
  • 街灯代わりに照明を点けておいてほしい →光熱水費増加
  • ふるさと納税の受付窓口機能も持つべきだ →対応スタッフ増員
  • 避難所機能も持つべきだ →非常食などの備蓄(消耗品費増)
指定管理料を増額したりして役所側で費用増額分をカバーできればいいのですが、全てカバーするのはなかなか難しいです。
こういう要望に応じるたびにランニングコストが嵩んでいって、赤字を積んでいくのです。

役所から支払われる指定管理料ではなく、受託者の独自財源を使っている事業であっても、状況は変わりません。
その事業単体では確かに公費は入っていませんが、事業に使っている施設の財源は税金である以上、「独自事業だから好きにやらせてほしい」とは言えません。

「住民や議会からの要望を優先せざるを得ない」という現実は、受託者の裁量を制限し、意欲を減退させます。
受託者としてやりたいことがあっても、こういった要望に応じるために予算が枯渇してしまって実行できなかったり、真逆の要望を受けたために諦めざるを得なかったり……。
まさに学習性無気力という状態に陥るケースもよく聞きます。

人材確保できないためにオペレーション効率化できない

指定管理で運営されている施設で働いているのは、ほぼ全員が非正規雇用の方々です。
正社員は施設長くらいでしょう。しかも元から受託者の別部署で働いていた方を配置転換しただけで、指定管理のために新たに雇用するケースはごく稀だと思います。

施設の指定管理は、たいてい3年くらいの有期契約です。この期間が終了したら、次どうなるかは全くわかりません。
もし正社員を雇用して、3年後に継続受託できなかったら、余計な人員を抱えることになります。
このため、指定管理のために受託者が正社員を新たに雇用するケースはほぼ無く、アルバイトや契約社員を中心に運営することになります。

アルバイトや契約社員を募集するにしても、「3年後に終わるかもしれない」という点がネックになります。
将来性に欠けるため真面目な人がなかなか集まらず、採用できたとしても腰掛け的なジョブホッパーかリタイア世代ばかり採用せざるを得ないのです。
職場としての魅力に欠けるために離職者も多く、採用活動はずっと続くことになります。

スタッフが定着しないために、日々のシフト調整ですら苦労する羽目になり、長期的な経営計画はもちろんのこと、年間の運営計画すら見通せません。
人の入れ替わりが激しいせいでノウハウが育ちにくく、運営のマニュアル化も難しいです。
このような手探り・場当たりの環境がずっと続くために、オペレーションの改善が進まず、非効率・高コストな運営になりがちです。

そもそも儲からない?

指定管理業務をやっている上場企業は、なかなかありません。
決算に現れるくらいに大きなウェイトを占める企業だと、シダックス株式会社しか見つかりませんでした。

トータルアウトソーシング部門

有価証券報告書によると、同社は全国で指定管理を受託していて豊富なノウハウを持っており、しかもグループ内で流通会社を持っているためにローコストで物品調達ができるとのこと。
さらに社員もたくさんいるので、先述した人材確保の問題もある程度は緩和されるでしょう。

つまり、指定管理ビジネスをやっている企業の中でも、かなり高い利益率を確保できるほうと思われます。
しかし、それでも営業利益率6%前後(しかも本社機能の経費は別途発生)なのです。
そもそもビジネスとしてあまり儲かる分野ではないのでしょう。

担い手がいない

このような事情が深刻化しつつあり、指定管理の担い手がいなくなりつつあります。

現行の受託者は、人手不足や赤字を理由に継続受託を断念することが増えています。
新たに指定管理者を公募しても、応じる事業者が見つからないケースが多発しています。

役所が直営で運営できる施設ならまだしも、道の駅のような物販や飲食機能のある施設だと、直営は不可能です。
実際、指定管理者が見つからないまま閉鎖状態の施設も出てきました。

「指定管理者 断念」あたりのワードで検索すれば、いろんな事例が出てきます。
今後はさらに増えていくと思われます。新型コロナウイルスの影響でさらに収益性が悪化して、会社として生き残るために、指定管理業務をリストラせざるを得なくなるケースが予想されるためです。

指定管理という運営方法が成り立たなくなった場合の対策を検討しているのが田舎役所の現状です。
もし面接で「指定管理制度を活用して〜」みたいなことを発言されたら、少なくともローカルニュースに全然目を通していないんだなと思われるでしょう。 

ジョークのつもりで投稿したこの記事、安定してPVを集めています。



出世に真剣な人に申し訳なくなり、本当に役立ちそうな出世作戦をずっと考えて続けきた結果、ついに一つの答えにたどり着きました。

昇進試験が無い自治体の場合、職員の出世の命運は全て上司からの定性的評価にかかっています。
俗にいう出世コースに乗るためには、課長のような直接の人事評価者だけでなく、さらに上位の部局長のようなキーパーソンからも見初められなければいけません。

定性的な高評価、つまり「気に入られる」ためには、ごますりに徹したりゴルフのお供をしたりなんかが具体策としてよく挙げられます。
民間企業であればこれで良いのかもしれませんが、地方公務員の場合は平職員と部局長との距離が遠く、ごまを擦る機会がありません。
ゴルフも下火です。今となってはすっかりダーティな印象が根付いてしまい、公務員同士ですらあまり行かないようです。
これからの出世競争は、キーパーソンが重要視している要素をさりげなく見せつけることで評価を高めていく、正攻法の時代なのでしょう。

役所内のキーパーソン、つまり出世の頂点にたどり着いた職員が高確率で重視するであろう要素。
それは地方財政、特に歳入面の知識です。

部局長クラスがもれなく重視する

部局長クラスになると、たとえ財政課出身でないにしても、もれなく自治体財政の仕組みに精通しています。
財政の仕組みを理解していないと、役所組織全体のバランスを整えたり長期的視点から政策決定をするという、部局長の仕事がこなせないからです。
こういう知識と能力(感覚)が評価されたからこそ、部局長まで出世できたともいえます。
つまり、キーパーソンは、財政知識は出世に不可欠だと認識しているのです。

ここからは推測です。
他職員を評価する際も、「地方財政の知識」はものさしの一つとして機能する可能性が高いと思われます。

「地方財政の知識」以外にも、職員評価のものさしはたくさんあります。
ただしキーパーソンごとにバラバラです。これまで歩んできたキャリアによって全然違うでしょう。
ずっと総務部局にいたのであれば内部調整能力を重視するでしょうし、産業振興や観光に携わっていたのであれば役所外との交渉能力を求めるでしょう。
ほかにも、法令知識、議員との折衝能力、人脈などなど……いろいろ思いつきます。

一方「地方財政の知識」は、どこの役所であれ、大半のキーパーソンが共通して重視する要素だと推測されます。
つまり、あらゆるキーパーソンたちが共通して持っている、数少ない普遍的なものさしであり、これ一つ身につけておくだけで、大抵のキーパーソンにアピールできるのです。

差別化要因にもなる

地方財政の知識は、働いていれば自然と身につくわけではありません。
特に歳入面の知識は、大半の職員にとって縁遠いものです。

地方自治体の歳入は、主に地方税、地方交付税、地方債、国庫支出金があります。
このうち特に地方交付税と地方債は、財政課以外は滅多に触れません。

つまり、地方交付税と地方債もひっくるめて地方自治体の歳入の全体像を知っている職員は、財政課以外にはほとんどいません。
希少性があり、他の職員との差別化に直結するのです

さらにこの知識は、自主的に勉強しないと身につかないものでもあります。
これを備えていることは、勉強熱心であり仕事への意欲に燃えていることの証明にもなるのです。

重要なのは実務的知識

ざっくりまとめるとこんな感じです。
  • 地方財政の知識は、どんな役所でもキーパーソンから重要視されている能力であり、評価ポイントにもなる
  • 中でも歳入面の知識は、意図的に勉強しなければ身につかず、他の職員との差別化要因になる
  • 勉強しなければ身につかないゆえに、勤勉さと仕事への熱意のアピールにもなる

公務員試験の科目にも「財政学」がありますが、僕が今回重視しているのは、もっと実務的な知識です。
僕自身全然わかっていないのですが、同期の財政課職員によると
  • 主要な施策・制度の財源内訳(例:生活保護の国庫負担割合)
  • 国の補助金・交付金のうち、主なものの仕組み(災害復旧、社会資本整備、地方創生関係など)
  • 地方交付税(普通交付税、特別交付税)それぞれの算定項目と、どういう条件を満たせば交付額が増えるのかの勘所
  • 地方債の種別ごとに交付税算入率と交付税措置率、定番の地方債発行戦略
こういうところが基本中の基本とのこと。

学問としての財政学を押さえた上で、こういう実務面の知識も身についていれば、「こいつはできる」と思われるでしょう。


役所の人事評価は完全なブラックボックスです。
仕組みがわからない以上、対策のしようもありません。

今回提案した「地方財政の知識」作戦も、通用する確証はありません。
ただしこの作戦は、いつでもどこでも誰でも、個人レベルで取り組めるものです。
勉強するだけなので失敗もありません。ローコストかつノーリスクです。

今のうちから勉強していけば、秋以降の当初予算の部内ヒアリングという絶好のアピールチャンスに間に合うと思います。
誰か試してみてください。僕はもう手遅れなので……

 

チラシにしろ動画にしろホームページにしろ、役所が作る広報物はだいたいどこかダサいです。自覚はあります。
役所が作ったパワポ資料を朱書きしてデザイン的な誤りを指摘するツイートなんかも定期的にバズっていますし、役所の中の人間だけでなく、世間一般から「ダサい」と認識されていると考えて間違いないでしょう。

デザインにものすごく気を遣っている自治体も最近は増えてきましたが、そのせいでかえって、普通の自治体がいかにデザインを疎かにしているかが露骨にわかるようになってしまいました。

役所が作る広報物のデザインはどうしてレベルが低いのか。
その理由は明確です。しかしなかなか手をつけられずにいるのが現状です。

「正確さ」という呪縛

役所の広報は、何よりも発信内容の正確さを重視します。
民間企業であれば、発信する情報の種類ごとに、広報の目的も手段も普通は異なると思います。
しかし行政の場合は、どんな内容であってもとにかく正確であること、より正しく言えば誤解されないことを重視します。

誤解が生じる余地の無い一義性網羅性、悪意ある者に攻撃されても「それは屁理屈だ」と堂々と反論できるだけの堅牢性を、役所組織を挙げてひたすら突き詰めます。
ここに時間も労力も全てつぎ込むため、デザインにまで気を回している余裕がありません。

役所が発する情報は、幅広い住民が受け取ります。
一読して理解する人もいれば、利害関係者ゆえに過剰反応する人、何らかのバイアスがあって変な方向に解釈する人などなど……想定しなければいけないケースは多岐に及びます。
もし誤解を与えてしまった場合、後から補足するだけでは済まず、取り返しのつかない事態を引き起こしかねません。

さらに困ったことに、マスコミにしろ住民にしろ、行政が発した情報を意図的に曲解したり揚げ足取りしたがっている人が大勢います。
特に最近はこの傾向が強まっていて、どんな細かい内容でも気を許せません。


具体例:チラシ作成の場合

例えばチラシを作る場合だと、テキストや画像のような個々のパーツの校正にとにかく全力を尽くします。
特にテキストは一言一句まで厳密に精査します。時間の許す限り、極力たくさんの利害関係者にチェックしてもらって、脇の甘い表現や記載漏れが無いかを確認します。

色合いやレイアウトのようなデザイン面は二の次です。デザイナーさんから上がってきた案をそのまま採用するか、職員による手作りで済ませます。
もし外部から「デザインが悪い」と叩かれても有効打にはなり得ないため、役所としては注力する理由が極めて薄いのです。
マーケティングの本なんかだと頻出の「色使いの心理的効果」や「視線誘導」なんかは全く考慮しません。

レイアウトで唯一気にするのは、個々のパーツに強弱・序列を持たせず、いずれの要素も平等に扱うことです。
情報の強弱は、誤解の原因であり、攻め入る隙にほかなりません。


ライブのチラシ

架空のイベントのチラシを試しに作ってみました。
中止なのにお客さんが来てしまうケースを何より避けたくて「雨天中止」を強調したとします。
こういう強調をすると、
  • どうして「現金のみ」を強調しなかったのか。今やキャッシュレスが当たり前の時代であり、よほどの用事がない限り誰も現金なんて持ち歩かない。役所は常識が無い。
  • 朝早くから始まるイベントであり、近くにコンビニもないから、もし現金を持ってこなかったら下ろしにいけない。危機管理能力がない。
このような、「雨天中止」は強調したのに「現金のみ」を強調しなかったという判断に対する苦情が多数寄せられるでしょう。
実際の来場者からの「現金を持っていなくて入れなかった」という苦情ではなく、あくまでもチラシの表記に対する批判です。

逆に「現金のみ」を強調したとしたら、
  • どうして雨天中止だと強調しなかったのか。朝早いイベントであり、間違ってキモオタク公園にきてしまったら、帰る手段がない。
  • ただでさえ自然災害が増えている時代なのだから、雨天の中に不用意に外出させるようなことはあってはならない。「雨天中止」という情報な何よりも大事だ。
というお叱りが四方八方から飛んでくるでしょう。
 
つまり、役所側で情報に強弱をつけると、「強弱をつけたこと」「強弱の判断」に対する批判が発生するのです。
実際の役所業務では、こういう批判の声を誰もが予想して、どちらも赤字&太字で強調するでしょう。
結果、あらゆる情報が同程度に強調された、ゴテゴテしたチラシに仕上がります。

この状況は、民間企業の広報であっても同様でしょう。
受け手によって、重視する情報は異なります。
発信側としては劣後する情報であっても、そちらを重視する人はどこかに存在するものです。

ただし役所の場合、先述のとおり、誤解や批判を何より避けたがります。
特定の情報を強調することにどれだけメリットがあるにしても、誤解・批判を招きかねないというデメリットがわずかでもあるのなら、採用できません。


職員のデザインスキルが低い

このように、役所ではデザイン面について考える機会がほぼ無いため、どれだけ地方公務員としてのキャリアを積もうともデザイン力は磨かれません。
むしろどんどんデザイン面に鈍感になっていきます。
どれだけ職員が努力してデザイン面を改善しようとしても、そもそもの能力が足りていないのです。

さっきのチラシを見てもらえば察してもらえると思います。
Pagesのテンプレをいじっただけですが、これを作るのに小一時間かかりました。
一応僕は広報業務経験者です。チラシやSNSの投稿をたくさん作ってきました。
それでもこの程度です。 

もし独学で勉強してデザインスキルを身につけた職員がいたとしても、その技能が活かされるのはごくわずかな期間だけでしょう。
そもそも広報業務がある部署は限られています。デザイン業務に携わる職員は少ないですし、定期人事異動のために同一の業務をずっと続けることもできません。
一度もデザインに関わらずに定年を迎える職員もいるでしょう。
 
異動を挟んでも継続して広報業務を担当する確率は著しく低いです。
役所内でデザイン自体が重視されていないために、職員のデザインスキルは評価されず、異動時にも考慮されるとは思えません。

ワードプレス等を使って綺麗なサイトを作っている公務員(現職・元職いずれも)の方は本気で尊敬しています。
公務員として働いていたら逆にどんどんデザイン力が落ちていくはずなのに、きちんとしたレイアウトのサイトを構築でいるということは、余暇を費やして猛勉強したか、それか本物の天才です。


万人受けするデザインはとても難しい

最近だとWebサービスのUIも酷評されています。
こちらも広報物と同様、
  • 役所という組織がデザイン面を重視していない
  • 職員のデザインスキルが足りない
という事情のために生じている事態だと思われます。

役所が提供するサービスは、住民全員が利用者になり得ます。
こんなに対象が広いサービスはほかにありません。

加えて、役所という立場上、民間企業であれば「外れ値」として無視してもいいようなレアユーザーに対しても、役所の場合はきちんとわかりやすく、使いやすくなるよう考慮しなければいけません。

しかし実際のところ、万人がわかりやすい・使いやすいデザインは現状の役所の能力では実現不可能であり、どれだけ洗練させたとしても批判は根絶できないと思います。
それでも叩かれないように務めた結果、サービス自体が不便になったというパターンを、役所は繰り返しています。

最初にも書いたとおり、最近ではデザイン面にこだわっている自治体も出てきました。
実情はわかりませんが、単なる情報の羅列以外のものをリリースすれば、絶対に批判が飛んできるものです。
華々しい広報の裏で、職員は日々戦っていることでしょう。

こういうところが批判に屈せずに成果を残してくれれば、他の役所も追随して変わっていくはずだと思いたいところです。

日曜日の夕方から夜は、どうしても気分が沈んでしまいます。
明日からの労働を意識せざるを得ないせいです。
気分を紛らすためにスマートフォンを無目的にいじり続けたりして、せっかくの自由時間を無駄にしてしまいがちです。

憂鬱な気分そのものは対処しようがないのでしょう。
「サザエさん症候群」という言葉がすっかり定着して、随分と経ちました。
多くの人に課題として認識されていながらも、長らく克服できていないのです。

とはいえ、社畜にとって貴重な自由時間であることは違いありません。
スマホポチポチで潰すにはあまりに勿体ないです。
毎日早起きしたりして時間を捻出する前に、日曜夜を有効活用する方が、ライフハックになるでしょう。

これまでに編み出した、憂鬱な気分のままでも実行できる有意義な活動を紹介します。

部屋の整理整頓

床の上に散乱している物を収納場所に戻す、衣類をタンスに仕舞う、ごみ箱を空にする等々……一つ一つの作業自体は簡単なのですが、ついつい後回しにしてしまいがちな作業です。

平日は部屋の滞在時間が激減します。
部屋にいなければ散らかりようがありません。
そのため、日曜日のうちに片付けておけば、一週間ずっと整った部屋で過ごせるのです。

室内が整理されているほうが効率良く過ごせます。
無駄な探し物が減ったり、物につまづいたり……ただでさえ穏やかでない平日をさらに荒立てる小事件を未然防止できるのです。

レシートの整理

財布の中身の整理、特にレシートの処分もおすすめです。
 
レシートは意外と嵩張って財布を膨張させ、通勤鞄の容量を圧迫します。
通勤帰りにスーパーやドラッグストアに寄ったりすると、レシートは平日もどんどん貯まっていきます。
 
日曜日の時点で一旦空にしておかないと、週末にはとんでもない量が溜まってしまうでしょう。

食料品の賞味/消費期限チェック

食料品のストックも、日曜夜時点で一度棚卸ししておくと良いでしょう。
 
食料品は、休日・平日を問わず、どんどん買い足されていきます。
特に平日は整理整頓する時間が無いので、買ったものを適当に冷蔵庫に突っ込みがちだと思います。 
そのため、消費せずに残っているものがどんどん奥に追いやられて忘れ去られ、いずれ悪臭や謎汁を放ち始めます。

もう食べられないものは処分して保管スペースを空ける、今週中に消費しなければいけない食品は一箇所にまとめておく等、週一くらいのペースで整理しておけば、こういう事故を減らせるでしょう。
さらに廃棄も減って、経済的にもお得だと思います。


今回紹介した3事例は、いずれも思考せずにできる単純作業です。
気分が憂鬱なときは、インプットにしろアウトプットにしろ、生産的な活動は効率が落ちます。何より楽しくありません。
それなら義務的にやらざるを得ないことをこなすほうが、有意義な時間の使い方になるでしょう。

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