去年の12月は「#忘年会スルー」というハッシュタグが流行り、ネット上では大喜利合戦が繰り広げられていました。
このハッシュタグとともに恨み節をこぼしていたアンチ忘年会派の方々にとって、今年の自粛ムードは如何なものなのでしょうか?
心から清々している人もいれば、なんだかんだ物足りない人もいるのでは?
僕の職場でも忘年会は勿論ありませんし、そもそも今年は一度もオフィシャルな飲み会がありませんでした。
ただ、新型コロナウイルス感染症が収まり次第、飲み会はすぐに復活すると思っています。
田舎だと役所はかなり巨大な組織であり、役所の飲み会は業界にとってそれなりに大きな収入源です。
そのため、役所が恒久的に飲み会を開かなくなれば、業界にとってかなりの痛手になります。
「役所が率先して地域経済を回すべき」のような論法を以て、議員などの有力者から圧力が加わり、飲み会を再開していくことになると予想しています。
飲み会の中でも忘年会は特に規模が大きく、参加するかどうかの判断も悩ましいところです。
そのため、コロナ収束後は再び「#忘年会スルー」が話題になると思います。
役所が忘年会を再開するのが果たしていつになるのか、今のところは見当がつきません。
忘れてしまう前に、役所の忘年会の特徴を記録しておきます。
年末年始とは限らない
役所の中には、年末こそ忙しい部署もあります。
例えば財政課。12月は来年度当初予算編成の真っ盛りで、年末年始含めて休んでいる暇はありません。
雪が降る地域であれば、除雪を担当する出先の建設事務所や、本庁の防災・危機管理担当部署も大忙しです。
これらの部署では、忙しくなる前の時期(10月頃)に、忘年会を済ませてしまいます。
理由は後述しますが、「やらない」という選択はほぼあり得ません。時期をずらして極力開催します。
「役所だ」とは名乗らない
予約する際には、決して公務員であることを明かしません。
架空の団体名を使うか、幹事の名前だけを伝えます。
宴席でのトラブルや、後々のクレームを予防するため、「公務員が飲み会を開いている」という事実を極力隠したいのです。
一部住民にとって、公務員の忘年会は不愉快極まりないものです。
彼ら彼女らにとって、公務員の飲み会は税金の無駄遣い、生活保護受給者がギャンブルするのと同じ扱いです。
「酒が飲めるくらい余裕があるなら給料下げて、その分税負担を軽減しろ」というロジックなのでしょう。
こういう方々に忘年会が見つかってしまうと、その場で悪態を吐かれたり、後日人事課にクレームが入ったりします。
せっかくの宴席が台無しですし、お店にも迷惑をかけてしまいます。
特に宿泊付きの場合、旅館の入り口に「〇〇役所△△課ご御一行」みたいな予約プレートが下げられてしまったら、確実にトラブルに発展します。
そのためよく「〇〇会」のような架空団体名を使います。
幹事のネーミングセンスが問われます。
僕自身、数年前の忘年会にて、おじさん集団に怒鳴り込まれたことがあります。
「役所の分際で飲んでるんじゃねえ!」と激昂するおじさん達を、同席していた別職員がうまくなだめてくれましたが、もし僕しかいなかったら暴力沙汰に発展していたかもしれません。普通に怖かった。
住民絡みの宴会トラブルは、市町村役場のほうが多いと聞きます。
特に選挙前後は感情的に刺々しくなりがちなので、仕事の話は徹底的に避けて身バレを防いでいるようです。
新規開拓には及び腰
忘年会に限らず、役所の飲み会は、過去に使ったことのある店、いわば「安全な店」を使い続けます。
これまで利用したことのない店を使う場合には、その店の関係者を洗ったり「別の部署がその店で過去に飲み会を開いた事例」を探したりと、いろいろな下準備が必要です。
例えば最近オープンしたばかりの店舗であれば、店舗の公式サイトやSNSアカウントを遡って、オープン当時の画像を探して、開店祝いの胡蝶蘭や花輪の贈り主を調べます。
ここから関係者を洗い出していくのです。
飲食店にしても宿泊施設にしても、政治色を帯びているケースが多々あります。
経営者が政治団体に所属していたり、組合がものすごく強かったり、大株主に議員がいたり、そもそも経営者が議員一族だったり……
政治色のある店舗を公務員が利用すると、「公務員がこの店舗を利用した」という事実を政治利用されかねません。
あとあと面倒な事案に発展しうるので、極力避けたいところです。
経営者がアンチ行政なために、公務員の入店を嫌がるケースもあります。
ただし前述のとおり、予約時点では「役所です」と名乗らないため、事前に弾くことができません。
そのため飲み会当日に初めて公務員を招き入れてしまったと判明するパターンが多いです。
常連客にアンチ行政な方がいる場合にも、経営者としては公務員を遠ざけようとします。
かつて観光の仕事をしていた頃、地域の飲食店から「公務員に敷居を跨がせてしまったせいで『店の格が落ちた』と叱責され、常連さんが離れてしまう(だから行政のイベントには出店できない)」という懸念を何度も聞きました。
新規開拓には入念な事前調査が必要で、かなり面倒です。
しかもスキャンダルやトラブルの危険が伴います。
そのため、定番の店を使うほうが楽かつ安心なのです。
政治的事情からは結局逃れられない
役所側としてはなるべく政治からは遠ざかりたいところですが、相手はそんな呑気ではありません。
役所という金づるを自陣営に引き込むべく、9月頃から「この店を使ってくれ」「この旅行代理店を使ってくれ」という営業活動が始まります。
政治に屈するか否か、屈した場合どの政治家案件を採用するかは、管理職次第です。
今年は「飲み会」から強制的に距離を取らされたことで、「自分にとって飲み会とは何なのか?」と自省する良い機会になったと思います。
僕はコミュ障陰キャなので、飲み会は少ないほどありがたいです。正直今年は快適でした。
年齢的にそろそろ幹事を任される頃合いなので、当面自粛ムードが続いてくれないかなと期待もしています。無理な望みでしょうが……