キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

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2020年12月


去年の12月は「#忘年会スルー」というハッシュタグが流行り、ネット上では大喜利合戦が繰り広げられていました。
このハッシュタグとともに恨み節をこぼしていたアンチ忘年会派の方々にとって、今年の自粛ムードは如何なものなのでしょうか?
心から清々している人もいれば、なんだかんだ物足りない人もいるのでは?

僕の職場でも忘年会は勿論ありませんし、そもそも今年は一度もオフィシャルな飲み会がありませんでした。

ただ、新型コロナウイルス感染症が収まり次第、飲み会はすぐに復活すると思っています。
田舎だと役所はかなり巨大な組織であり、役所の飲み会は業界にとってそれなりに大きな収入源です。
そのため、役所が恒久的に飲み会を開かなくなれば、業界にとってかなりの痛手になります。
「役所が率先して地域経済を回すべき」のような論法を以て、議員などの有力者から圧力が加わり、飲み会を再開していくことになると予想しています。

飲み会の中でも忘年会は特に規模が大きく、参加するかどうかの判断も悩ましいところです。
そのため、コロナ収束後は再び「#忘年会スルー」が話題になると思います。

役所が忘年会を再開するのが果たしていつになるのか、今のところは見当がつきません。
忘れてしまう前に、役所の忘年会の特徴を記録しておきます。

年末年始とは限らない


役所の中には、年末こそ忙しい部署もあります。
例えば財政課。12月は来年度当初予算編成の真っ盛りで、年末年始含めて休んでいる暇はありません。
雪が降る地域であれば、除雪を担当する出先の建設事務所や、本庁の防災・危機管理担当部署も大忙しです。

これらの部署では、忙しくなる前の時期(10月頃)に、忘年会を済ませてしまいます。
理由は後述しますが、「やらない」という選択はほぼあり得ません。時期をずらして極力開催します。

「役所だ」とは名乗らない


予約する際には、決して公務員であることを明かしません。
架空の団体名を使うか、幹事の名前だけを伝えます。

宴席でのトラブルや、後々のクレームを予防するため、「公務員が飲み会を開いている」という事実を極力隠したいのです。
 
一部住民にとって、公務員の忘年会は不愉快極まりないものです。
彼ら彼女らにとって、公務員の飲み会は税金の無駄遣い、生活保護受給者がギャンブルするのと同じ扱いです。
「酒が飲めるくらい余裕があるなら給料下げて、その分税負担を軽減しろ」というロジックなのでしょう。

こういう方々に忘年会が見つかってしまうと、その場で悪態を吐かれたり、後日人事課にクレームが入ったりします。
せっかくの宴席が台無しですし、お店にも迷惑をかけてしまいます。


特に宿泊付きの場合、旅館の入り口に「〇〇役所△△課ご御一行」みたいな予約プレートが下げられてしまったら、確実にトラブルに発展します。
そのためよく「〇〇会」のような架空団体名を使います。
幹事のネーミングセンスが問われます。



僕自身、数年前の忘年会にて、おじさん集団に怒鳴り込まれたことがあります。
「役所の分際で飲んでるんじゃねえ!」と激昂するおじさん達を、同席していた別職員がうまくなだめてくれましたが、もし僕しかいなかったら暴力沙汰に発展していたかもしれません。普通に怖かった。

住民絡みの宴会トラブルは、市町村役場のほうが多いと聞きます。
特に選挙前後は感情的に刺々しくなりがちなので、仕事の話は徹底的に避けて身バレを防いでいるようです。


新規開拓には及び腰 


忘年会に限らず、役所の飲み会は、過去に使ったことのある店、いわば「安全な店」を使い続けます。
これまで利用したことのない店を使う場合には、その店の関係者を洗ったり「別の部署がその店で過去に飲み会を開いた事例」を探したりと、いろいろな下準備が必要です。


例えば最近オープンしたばかりの店舗であれば、店舗の公式サイトやSNSアカウントを遡って、オープン当時の画像を探して、開店祝いの胡蝶蘭や花輪の贈り主を調べます。
ここから関係者を洗い出していくのです。

飲食店にしても宿泊施設にしても、政治色を帯びているケースが多々あります。
経営者が政治団体に所属していたり、組合がものすごく強かったり、大株主に議員がいたり、そもそも経営者が議員一族だったり……

政治色のある店舗を公務員が利用すると、「公務員がこの店舗を利用した」という事実を政治利用されかねません。
あとあと面倒な事案に発展しうるので、極力避けたいところです。

経営者がアンチ行政なために、公務員の入店を嫌がるケースもあります。
ただし前述のとおり、予約時点では「役所です」と名乗らないため、事前に弾くことができません。
そのため飲み会当日に初めて公務員を招き入れてしまったと判明するパターンが多いです。

常連客にアンチ行政な方がいる場合にも、経営者としては公務員を遠ざけようとします。
かつて観光の仕事をしていた頃、地域の飲食店から「公務員に敷居を跨がせてしまったせいで『店の格が落ちた』と叱責され、常連さんが離れてしまう(だから行政のイベントには出店できない)」という懸念を何度も聞きました。



新規開拓には入念な事前調査が必要で、かなり面倒です。
しかもスキャンダルやトラブルの危険が伴います。
そのため、定番の店を使うほうが楽かつ安心なのです。

政治的事情からは結局逃れられない


役所側としてはなるべく政治からは遠ざかりたいところですが、相手はそんな呑気ではありません。
役所という金づるを自陣営に引き込むべく、9月頃から「この店を使ってくれ」「この旅行代理店を使ってくれ」という営業活動が始まります。

政治に屈するか否か、屈した場合どの政治家案件を採用するかは、管理職次第です。





今年は「飲み会」から強制的に距離を取らされたことで、「自分にとって飲み会とは何なのか?」と自省する良い機会になったと思います。
僕はコミュ障陰キャなので、飲み会は少ないほどありがたいです。正直今年は快適でした。

年齢的にそろそろ幹事を任される頃合いなので、当面自粛ムードが続いてくれないかなと期待もしています。無理な望みでしょうが……



これまでのところ、今年の冬はそれほど冷え込まず過ごしやすい日が続いています。
公務員になってからは暖冬にありがたみを感じるようになりました。

冷房と同じく、役所は暖房が万全ではありません。さらに職員個人の防寒対策にも制約が課せられます。
外気が暖かいかどうかは文字通り死活問題なのです。

暖房は定時内のみ

役所の暖房はだいたい集中管理で、定時内しか稼働していません。
冷房と同様の運用です。

僕の勤務先の場合、庁舎管理担当部局から許可をもらえれば定時外や休祝日にも暖房を点けられるらしいのですが、許可が下りたという事例は聞いたことがありません。
ちなみに防災部局の宿直は許可されていませんでした。

それでも県庁は、市町村役場と比べれば相当暖かいほうだと思います。

市町村役場の多くは吹き抜け構造でワンフロアが広く、エントランスのある1階にもオフィススペースが広がっています。
1階には窓口業務担当課が並んでおり、エントランスとオフィススペースの間に壁はありません。
つまり、外気がオフィススペースに直接流れ込んでくるのです。

一方、県庁は縦に長い建物が多く、エントランスとオフィススペースのフロアが異なるため、外気が直接オフィススペースに流れ込んでくることは構造上ありません。
そのため市町村役場よりも暖房が効きやすいと思われます。

防寒装備は「スーツの下に着れるもの」限定

公務員の身なりは住民から厳しく監視されています。

窓口に来た方から「奥にいるあの職員、ネクタイの柄が派手すぎる。人事担当者から注意させろ」等と指摘されることは日常茶飯事ですし、定期的に庁舎内を巡回して職員に直接指導を始める方もいます。
時折、役所に書類を持ってきただけの民間企業の方が職員と勘違いされて「どうしてお前は徽章をつけていないのか」等と住民に糾弾されている場面に遭遇します。本当に気の毒です。
 
このブログを読んでいる民間企業の方がどれだけいるかはわかりませんが、役所に来るときは社章なり名札なりを身につけたほうが安全だと思います。
何もつけていないと公務員と混同されて、住民から絡まれるかもしれません。


不用なトラブルを避けるべく、男性職員は基本的にスーツの上着を常時着用せざるを得ません。
建設土木系・農林系の部署であれば作業着でも許されますが、大半の部署はスーツしか選択肢がありません。

そのため防寒対策は、スーツの下に着込めるものに限定されます。
保温性のある高機能下着類や、薄手のニットものですね。


冬の市町村役場は本当に寒いです。
これまで何度も訪問してきましたが、コートが脱げません。
反対に市町村職員が冬の県庁に来ると、口を揃えて「暖かい」と感激されます。

公務員志望の方で、冷え性が深刻な方、冷やしてはいけない部位や臓器を抱えている方は、市町村役場よりも県庁のほうが無難かもしれません。

「地方自治体の出世コースといえば人事・財政・企画」という言説がインターネット上ではすっかり根付いています。
書き手によって順位付けは異なるものの、この3部局が突出している点ではだいたい共通しています。

これら3部局に配属されることが出世への近道、つまり出世コースであることは僕も完全に同意します。
ただし、配属後の業務の性質でみると、企画部局だけは毛色が違うと思います。

人事と財政は、仕事の中身がおおかた決まっています。
ものすごく重要かつ面倒だけど手順・作法が決まっている仕事を確実にこなすことが求められる、いわば急勾配で空気が薄いけど舗装された登山道で頂上を目指すようなものだと思います。

一方の企画部局は、どんな仕事が飛び込んでくるか、誰も予想できません。
未舗装かつ測量すらしていない斜面をひたすら手探りで登っていくようなものです。

俗にいう「長期構想」「基本計画」のような、全庁横断的(総合的)で長期的な計画のことを、本稿ではまとめてウィキペディアに倣い「総合計画」と表現します。

そもそも企画部局の仕事とは?

企画部局は、自治体によって名称がバラバラです。


都道府県だと、ここに掲載されている部局が「企画部局」にあたるものと思われます。
(山形県と新潟県は違うかな?)
「企画」「戦略」「総合」「政策」あたりの文言が特徴です。

自治体ごとに名称が異なるとおり、企画部局の所管業務は自治体ごとに異なります。
インターネット上では「企画部局=総合計画」というシンプルな整理をされている情報が目立ちますが、実際は他にもたくさんの業務を抱えています。

企画部局の業務をおおまかに分類すると、以下の3つに分類できます。
  1. 総合計画の策定、実績評価
  2. 全庁的な意見のとりまとめ
  3. 外部から突発的に降ってきた新規案件をとりあえず引き受ける

1は言わずもがな、企画部局の代表的業務です。
ただし、同じ総合戦略関係の業務でも、そのプロセスは自治体ごとにまちまちであり、特に企画部局が内容に口出しできるかどうかという点には注意が必要です。

強い企画部局であれば、実際に事業を行う課が作った原案にどんどん口を挟んで、目標値を上乗せしたり、事業期間を前倒したり、そもそもの目標を変えたり……等々、暴虐の限りを尽くします。まるで政治家です。

しかし弱い企画部局には、各課が提出してきた原案を日本語的に読みやすく整える程度の権限しかありません。


2の業務は、自治体としての総意をまとめるものです。
具体的には、首長どうしの懇談会や国会議員への要望が挙げられます。
こういった機会では、庁内各部局の案件をまとめてパッケージ化する必要があります。
業務プロセスは総合計画と似ていて、まずは各部局から原案を集め、それらを組み直し、縦割り感を消して統一感を持たせます。


3の業務は、事業内容がはっきりしなかったり、あまりに斬新な案件であったりするために、すぐには担当部局を決められない場合に、しぶしぶ企画部局が引き受けるものです。
最近だと中央省庁の地方移転やSDGsあたりでしょうか。

一旦は企画部局が引き受けるものの、あくまでも暫定的な対応です。
いずれ別部局に引き継ぎます。
引き継いだ後もちゃんと業務を回るよう「先鞭をつける」「前例をつくる」のが企画部局の役目と表現しても差し支えないと思います。

2と3の役割は、自治体によっては企画部局以外(財政、秘書、総務あたり)が担っているかもしれません。

とにかく精神がすり減っていく

前述の1〜3のいずれにしても大変な仕事です。
業務量はそれほどではないかもしれませんが、精神的負担は非常に大きいです。

「ゼロから全て組み立てる」という公務員らしからぬ仕事

まず、企画部局の仕事にはルールもマニュアルもありません。
達成すべき目標も、目標に向かう作業工程も、作業に必要なツールも、すべて自ら準備しなければいけません。
上司や同僚に相談しても有益な答えは返ってこないでしょう。彼ら彼女らもわからないからです。

ゼロベースで仕事を組み立てていくのが好きな方もいるでしょうが、大抵の地方公務員にとっては苦行です。
過去の業務経験がほとんど活きず、ひたすらもがき続ける日々が続くでしょう。


「忖度に次ぐ忖度」に陥りがち

「ゼロから仕事を組み立てていく」とは言うものの、担当職員に決定権限があるわけではありません。
むしろ担当職員の裁量は小さく、首長はじめ幹部職員、議員、地域住民の声、経済界の有力者といった方々の意見を収集し、ちょうどよい「落とし所」を探るのが担当職員の役割でしょう。

偉い人たちが意思決定するための準備(資料作成、事例収集など)をして、決まったことを機械のように実行していくだけです。
職員自身の意に反する流れになろうとも、口を挟む権限は全くありません。
むしろ「自分の意思」なるものを極力排し、偉い人たちの意向が正確に実現されるよう心を砕くべきです。いわば高度な忖度です。

どんな部局であれ、地方公務員の仕事には「偉い人への忖度」が含まれるものですが、企画部局の仕事は特にこの要素が強いと思います。
忖度は巧拙はっきり分かれます。誰でもできるわけではありません。
苦手な人にとっては苦痛でしかありません。



他部署に仕事を押し付けざるを得ない

企画部局の仕事は役所全体に影響します。
他部局に仕事を振って、平常業務の手を止めて作業させるくらいは日常茶飯事で、時には過去の意思決定を撤回してもらうことすらあります。
他部局からするとたまったものではありません。いい迷惑です。

そのため、企画部局はよく他部局と揉めます。
人事や財政とは異なり、企画部局には権限がありません。
他部局からすると、企画部局に従うメリットも無ければ、従わない場合のデメリットもありません。
企画課側から何か指示したところで大人しく従ってくれるケースは稀で、たいていは自らの主張をぶつけ返してきます。

いかに他部局を従わせるか、企画部局の職員は日々頭を悩ませていることでしょう。
「最初から敵意全開の相手を説得する」という他部局とは比にならない高度な調整能力が求められますし、相当な精神的負担があることは想像に難くありません。

僕自身、企画部局からの作業依頼を素直に引き受けたせいで上司から怒られた経験があります。
「君がその作業に手をつけてしまったら、それが前例になって、議会の質問も住民訴訟も全部うちが引き受けなきゃなんないんだぞ?しかも企画部局案件だから人員も予算も増えないんだぞ!?」と。
完全に厄介者扱いです。

配属されてからが真の競争

企画部局の仕事は、頑張ってどうにかなるものではありません。明らかに向き不向きがあります。
他の出世コース(財政・人事)の仕事よりも体系化されておらず、きちんとこなせる職員は少ないでしょうし、年度による当たり外れも大きいでしょう。
そのため、人事や財政と比べ、適応できずに脱落する職員の割合が大きいと思われます。


その反面、企画部局でしっかり仕事をこなせれば、役所内でも希少な人材となり得るとも言えるでしょう。
企画部局で経験する「ゼロからの業務組立」「対外的な忖度」「高度な庁内調整」は、いずれも間違いなく役所運営に欠かせない要素であり、どんな部署でも、どんな地位まで上り詰めようとも活きてくると思います。

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