キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

2021年02月

実は僕、これまでずっと携帯電話料金を親に払ってもらっていました。

少し言い訳をさせていただくと、僕は普通の田舎民よりも携帯電話を持つのが早く、小学校5年生の頃からずっと保有しています。
当時、中学受験のために塾通いを始めて、送迎のために持たされたのです。

僕の世代(アラサー)だと、高校入学のタイミングで初めて自分の携帯電話を買い与えられるのがスタンダードだったので、中学生の頃は優越感を覚えていたものです。

こういう経緯があるために、僕の回線は親の回線にぶら下がっていたようで、請求明細にもはっきり出てこず、誰がいつどうやって払っているのかよくわからない状態でした。

30代にもなって親に肩代わりしてもらうのはさすがにまずいと思い、契約を変更すべく、今更ながら格安SIMについて調べています。


今の時期、僕みたいに携帯電話のプランを見直している方がけっこういるのではないかと予想します。
4月からの新生活を控えて固定費を総ざらいしている方もいれば、大手キャリアがリリースしたセカンドプランを吟味している方もいるでしょう。

地方公務員ならではの事情を整理していきます。

音声通話とSMSは必須(もしかしたら掛け放題も)

これまでも散々触れているとおり、ごくごく一部の担当業務を除き、地方公務員には仕事用携帯電話が支給されません。
とはいえ今の世の中、携帯電話無しでは仕事が回らないので、私用携帯電話を仕事にも使わざるをえません。

使用頻度は担当業務によって様々でしょうが、一切使わないことは無いと思います。

仕事での主な用途は、出張時の通信手段です。
このため、地方公務員の携帯電話には、音声通話とSMSが欠かせません。

「LINEみたいなメッセージ&通話アプリで十分では?」と思う方もいるかもしれませんが、残念ながら足りません。
上司や部下のような役所内の人としか連絡しないのであればアプリで十分かもしれませんが、仕事では役所外の人とも連絡を取り合います。
例えば出張先での待合せだったり、急な遅刻連絡だったり……

そのため、音声通話やSMS機能を省いた「データSIM」は、地方公務員には適さないと思います。

加えて、担当業務によっては頻繁に音声通話するため、掛け放題プランが必要になるかもしれません。
その場合どう対応するか、あらかじめ考えておいたほうが無難でしょう。

通信量には余裕を持たせる

私用携帯電話は、インターネット閲覧端末としても使います。

役所のパソコンは、たいていセキュリティの都合上、閲覧できるホームページが制限されています。
変なページを見てウイルスに感染しないためであったり、仕事に関係ないページを閲覧してサボるのを防止するためなのでしょう。いたって合理的な理由です。

とはいえ仕事をしていると、制限されているホームページを閲覧しなければいけないケースがけっこう発生します。
例えば施策が炎上したとき。
炎上の経緯や燃え具合、匿名掲示板の書き込みやまとめサイトが参考になります。
しかし、こういうサイトはたいていブロックされていて、職場PCからは閲覧できません。 

情報セキュリティの担当課に相談すれば一時的にセキュリティを解除してくれるのかもしれませんが、炎上対応のような緊急事態では一刻を争います。相談している暇なんてありません。
こういう場合は私用の携帯電話から閲覧するしかありません。

加えて、最近はオンライン会議をする機会が急増していて、機材トラブルのため私用携帯を使わざるをえず通信量が爆増するリスクが顕在化してきました。

こういった事情のため、インターネット利用にも私用携帯電話を使います。
月の使用容量には余裕を持たせたほうがいいでしょう。



地方公務員にも仕事用携帯電話が支給されれば悩まずに済むのですが、支給されたらされたで電話番号がインターネット上で晒されて嫌がらせを食らうのが目に見ています。

私用携帯電話を使うこと自体は仕方ないとして、通話料や通信料に対する手当みたいなものがもらえたら最高なのですが……出張に自家用車を使うときみたいに。

世間から遅れること約1年、僕もNotionを使い始めました。

 
大変便利です。もっと早くから使っていればよかった……と悔やむばかりです。

Notionのようなクラウド上でのファイル管理サービスは、セキュリティの都合上、地方公務員稼業には向いていません。
内部資料をクラウドストレージに保存する行為は、あまりにもリスクが高すぎます。
わずかでも手違いがあってファイルが外部に流出してしまったらおしまいであり、かつ実際このような事案がたびたび発生しているので、厳に慎まなければいけません。

ただNotionは、「クラウドストレージにファイルをアップ」しなくても十分便利なツールです。
サービスの真価は発揮できていないのかもしれませんが、それでもかなり役立ちます。

(今更ながら)Notionとは?

ざっくりいうと、Notionはオンライン上でファイルを保存・管理できるサービスです。
ワード・エクセルファイルやPDF、画像、動画など幅広いファイル形式に対応しているうえ、ウェブページのコピーをファイルとして保存(クリップ)することも可能です。

さらに、保存したファイルを色々な方法で並べ替えたり抽出して表示できます。
エクセルみたいな一覧表や、インスタグラムみたいなサムネイル表示、カレンダーやガントチャートのような時系列表示など、並べ替え・抽出の目的に応じて様々な形式が利用できます。

要するに、ファイルの保存や管理に関してはわりとなんでもできるツールです。
「わりとなんでもできる」のが特徴です。これまで複数のウェブサービスで別々に行っていた作業を、Notionを使えば一元化できるのです。

今のところ日本語化はされていませんが、直感的に操作できるので全く問題ありません。

詳しい説明は省略します。
既に広く流布しているツールであり、大勢の方がわかりやすい解説をアップしているので、そちらを参照してください。検索すればたくさん出てきます。

ひたすらクリップ&タグ付け

僕のNotion利用法はいたって単純です。
担当業務に関係のあるウェブページをひたすらクリップしています。

僕はグーグルアラートを使って担当業務関係のニュースを日々収集しており、通知されたニュースのうち重要だと思ったもの(あとあと参照したくなりそうなもの)は、とりあえずクリップします。



他にも関係するニュース記事やレポート、他自治体のプレスリリースなどがあれば、随時クリップしていきます。

クリップした記事には、「トピック名」「地域名」「発信者名」「情報媒体の種類」などのタグをつけて、後から見返せるように整理しています。

「自分の担当業務に関係のあるウェブページを保存する」という作業自体は、地方公務員なら誰でも日々取り組んでいるでしょう。わざわざNotionを使わずとも可能です。
ただし、紙に印刷してファイリングしたり、ワードにコピペしたり……と、それなりに手間がかかっているのでは?

一方Notionを使えば、一瞬で終わります。
しかもタグのおかげで、あとあと参照するのも簡単です。

危機的事態だからこそ情報収集&整理

弊ブログでも何度か触れていますが、地方自治体はこれから当分の間、新型コロナウイルス感染症関係の訴訟に悩まされると思っています。
「行政の不手際のせいで新型コロナウイルス感染症が拡大した、だから感染症に起因する不利益の責任は行政にある」というロジックが定着してしまった以上、新型コロナウイルスのせいで不利益を被っていれば、誰もが原告となりえます。

休業補償や医療訴訟は確実として、そのほかにどういう切り口で提訴されるか、現時点では想像もつきません。
新型コロナウイルス感染症とは一切無縁だと断言できる業務はごくわずかでしょう。 
つまり役所は現在、自らが保有するあらゆる機能・あらゆる業務に対して、訴訟リスクを抱えている状態なのです。

訴訟にまで至らなくとも、大規模な抗議運動くらいは続々生じると思っています。
現時点では「密」を避けねばいけないという風潮があるため抗議運動は下火ですが、ワクチンが行き渡って感染リスクが減ってきた時点で、溜めに溜めた憤懣が一気に爆発して、デモ活動のような抗議運動が始まるのでは?と今から懸念しているところです。衆議院総選挙もありますし……

訴訟や抗議運動に対応するには、これらの芽を早々に察知し、Xデーまでに防衛体制を整えておかなければいけません。
こういった作業の基礎が情報収集と整理であり、Notionが役立ってくれるのです。

 


自治体の採用活動が本格化してくる頃合いです。
今年の情勢を見るに、自治体主催の個別説明会や大学主催の交流会のようなイベントごとは縮小されるかもしれません。
その分、インターネット経由で閲覧できる採用ホームページやパンフレットの重要性が増すでしょう。

採用情報に限った話ではありませんが、役所には独特の語彙体系があり、役所内でしか通用しない用語(サブロジ、問取りなど)もあれば、世間一般で広く使われている用語であっても役所特有の意味合いで用いられているケースも多々あります。
 

採用関係のような対外的に積極開示する情報の場合、役所内でしか使われない用語は念入りに除去(言い換え)します。
しかし、一般的に使われている単語までは気が回らず、特段補足することなくそのまま使われがちです。

対面での説明会であれば、その場で質問して深掘りできますが、インターネット上ではなかなか難しいです。
 
本稿では、自治体の採用パンフレットに頻出で、かつ一般的な用法通りに解釈したら誤解になりそうな単語について補足していきます。

企画:枠組み・計画づくり

企画業務はあくまでも大枠を決める段階を指します。
大枠を決めた後の段階、例えば「具体的な内容を詰める」「実際に運営する」段階は、企画業務には含まれません。
採用パンフレットには「●●の企画と実施を担当しました」みたいな文面がよく登場します。
「企画」と「実施」を併記する意味がよくわからないかもしれませんが、役所的には全くの別物です。


さらに、役所の担当職員が主役というケースはごく稀です。
政治家、経済界、地域住民といった利害関係者の意見を聞いて、大学教授のような有識者からの助言も受けつつ、落とし所を探るようなプロセスが採られるケースが多く、事務職員はあくまでも裏方に徹します。
担当職員の知見やアイデアが活かされるわけではありません。

もちろん、何事も裏方がいなければ回りません。目立ちはしないものの重要な仕事です。


支援:ルールに従ってカネとコネを提供する

事務職が担当する支援業務は、自ら所管している助成制度を使ってもらったり、別団体が運営している助成制度を紹介することを指します。
事務職員自らが専門家として知識やノウハウを提供するわけではありません。
行政という立場上、あくまでどの支援先に対しても原則公平に接しなければいけません。
そのため、支援先との距離感はあまり近くなく、俗にいう「伴走型支援」「プッシュ型支援」のようなスタイルではなく、基本的には受け身です。

事務職員の仕事は、助成制度の設計や運用です。
制度運用はルーチンワーク的なところもあり閑職枠でもありますが、制度設計は花形業務です。


会議:2種類ある

役所における会議業務は、個々のイベントとしての会議運営組織体としての会議運営という二つに大別されます。

前者の業務は資料づくり、会場設営、参加者の出欠管理あたりがメインで、後者は組織体の経理や文書管理がメインです。

いずれにしても社会的ステータスの高い方々を集める業務であり、揉め事が起きないよう気を遣います。
(下っ端だけの集いは「打合せ」「ミーティング」などと称し、「会議」とは呼びません)

PR:なんらかの情報を対外的に積極的に開示すること&開示される情報(コンテンツ)作成

PRという単語は辞書的な意味よりも幅広く使われています。

広報活動そのもののみならず、広報活動に使う冊子・動画制作や観光施設運営のような業務、つまり広報されるコンテンツの作成も、ざっくりPRの一言で片付けがちです。

しかも、こういうPR業務の実態は、役所ごとにバラバラです。
職員自らが手を動かしている自治体もあれば、民間企業に丸投げしている自治体もあります。
職員に裁量がありボトムアップで作り上げている自治体もあれば、広報やブランディングの専門家に順服して職員は単純作業するだけの自治体もあります。

つまり、PR業務という言葉だけでは「役所外部に情報開示するプロセスのどこかに何かしら関わっている」程度の情報量しか無いのです。
具体的な内容は読み取れません。詳しいことが知りたければ、担当職員に直接尋ねるしかないと思います。

調整:全て

PR以上に幅広く、無秩序に使われている単語が「調整」です。
具体的に説明すると長ったらしくなるものは全て「調整」の一言で済ませている、と理解して差し支えないと思います。

 

「あなたの仕事のやりがいは何ですか?」というクエスチョンは、どんな職業においてもインタビューの定番です。

「やりがい」はあくまでも主観的なものです。
たとえ同じ仕事であっても、自分と他者ではやりがいを感じるポイントが異なるかもしれませんし、同じポイントに対して正反対のやりがいを感じるかもしれません。
そのため「公務員のやりがいは●●だ」という一般論を示すことは不可能だと思います。

とはいえ、多数のケースを収集すれば、「公務員の中には●●をやりがいと感じる人が多い」という傾向を察する程度なら可能でしょう。
あくまでも一例、河原に無数に転がっている小石の一つくらいの感覚で拾い読みしてください。

公益に貢献できる

公務員稼業のやりがいといえば、真っ先に「公益に携われる」という一文が思い浮かびます。
ただ冷静に考えてみると、「公益に携われる」職業は公務員以外にもたくさんあります。
むしろ公益に資さない仕事のほうが圧倒的に少数派でしょう。

例えばデイトレーダーのような、一見すれば自分のお金のことしか考えていない人であっても、儲けた分だけ納税しています。
もし年収1億円だったら、ざっくり2000万円(20%)くらいを所得税として納めているはずで、僕なんかよりもはるかに公益に貢献していると言えます。

仕事のやりがいとして「公益への貢献」を挙げるなら、なるべく深掘りして具体的に表現する必要があると思います。
特に他の職業との違いを強調したいのなら尚更です。

僕の場合、公務員稼業は主に2つの意味で公益に資する仕事だと思っています。

相対的に困っている人へ→生活水準の底上げ

1つ目は生活水準の底上げです。
 
役所が提供する行政サービスによって恩恵を受けるのは、主に「相対的に弱い立場にいる方々」です。
勿論サービスそのものは住民全員に対して開かれてはいますが、強い立場にいる方々(高所得者など)は、行政サービスを使わずとも生活が成り立つので、必ずしも恩恵を受けているとは限りません。

教育あたりが典型でしょう。
お金のある方は公教育の世話になることなくずっと私立に通わせられますが、普通の方々は公教育を利用します。

電力や通信サービスであれば、立場の強弱に関係なく、使った分だけ支払いが生じます。
こちらは万人の公益に資するサービスです。
一方で行政サービスは、相対的に弱い立場にいる方々を特にケアするものです。
そのため「底上げ」という表現がしっくりくると思っています。

相対的に強い人へ→秩序の維持

2つ目は秩序の維持です。どちらかというとこっちが本命です。
行政がルールを運用したり、各種サービスを提供することによって、社会の秩序が保たれています。
(先述した「生活水準の底上げ」の結果でもあるでしょう)

社会の秩序が保たれていれば、身体的・精神的・財産的な安全が確保され、安心して生活を営めます。
この意味での恩恵は、住民誰もが享受しているはずです。
ネットニュースで「高所得者は行政サービスを受けられない、年収〇〇万円以上だと税金払い損」のような煽り記事がよく掲載されていますが、「秩序の維持」という観点ではむしろ高所得者ほどメリットが大きいと思います。

普段から「行政のおかげで秩序が保たれている」と意識している方はごく少数だと思います。
むしろ「そんなの当たり前だろ」と思う人が大多数でしょう。

ただ自分は、行政による秩序の維持をありがたく感じる人が全然いない現状を、むしろ嬉しく思います。
「当たり前」になっていることを「当たり前」のまま運用していく、これこそが秩序を維持する最大のポイントだと思います。


つまるところ、「生活水準の底上げ」と「秩序の維持」という2点で公益に貢献できるのが公務員であり、これらが僕にとっての「やりがい」です。


知的好奇心を満たせる

僕にとって役所稼業は、個人的な知的好奇心を満たすプロセスでもあります。

無秩序な部局横断的な人事異動のおかげで色々な分野の仕事を経験できるので、幅広い知識が身につく」という意味では断じてありません。

配属部署・担当業務に関係なく、地方公務員稼業を続けていればいつでもどこでも探求できるトピックが、僕は少なくとも2つあると考えています。

現状の不条理分析→真の黒幕は誰なのか? 

ひとつは現状の不条理分析です。

役所の仕事の多くは、現に発生している問題を解消しようとするもので、いわばマイナスをプラスに転じようとする試みです。
そのため、何事もまずはマイナスな事態が発生している現状の分析から始めます。

現状を深掘りしていくと、結構な頻度で既得権益を発見します。
大多数の目には「問題」として映る事態であっても、特定の個人・団体には「利益の源泉」として機能している。こういうケースが散見されるのです。
既得権益といえば金銭的なものがメジャーですが、権威・メンツも立派な既得権益です。

迷惑を被っている人が大勢いることを知っていながらも、私利私欲のために問題解決を意図的に妨害している「真の黒幕」も意外といらっしゃいます。

僕は心根が中二病なので、こういう「黒幕の構造」を探求していくのが楽しいのです。


普通の人のダークサイド分析→常人のキレポイントは?

もうひとつは普通の人のダークサイド分析です。

先にも触れましたが、行政サービスをありがたく思う人はごくごく少数です。
何をやっても感謝されず、むしろ不満や怒りをぶつけられてばかりです。

行政に対して敵意を向けてくる方のほとんどは、戦いの素人です。
戦闘が生活の糧というわけでなく、普段は平穏に暮らしています。
(もちろん戦闘のプロも少なからずいます。役所はじめいろんな相手に戦いを仕掛け、戦果をあげることで収入を得ている方々です。)

こういう方々にとって、敵意を顕にして怒声を上げ罵詈雑言を撒き散らす機会なんて、人生全体で見ても滅多に無いでしょう。

幸か不幸か、役所という場、公務員という相手は、こういうごく普通の方々が秘めたる敵意を発露させやすいシチュエーションだと思います。
つまり公務員は、「普通の人の心のダークサイド」という(ある意味貴重な)事例を垣間見れるのです。

人間の心理に興味のある僕としては、これもまた「やりがい」のひとつです。
……というふうに自分に言い聞かせることで、敵意を浴びるストレスを軽減しようと企てているところです。


やりがいとの付き合い方

僕はなぜか頻繁に異動していて、ほぼ毎年のように担当業務が変わっています。
そのため、どんな部署でも共通するような抽象的な「やりがい」しか思い当たりません。
特定の部局で長く勤め上げているような職員であれば、もっと具体的なやりがいがあるのかもしれません。

逆にいえば、公務員稼業全体に通用するような「やりがい」が見出せず、現在の担当業務と直結した個別具体的な「やりがい」しか見出せないのであれば、人事異動のたびに苦しむのかもしれません。
例えば「観光客の笑顔がやりがい」というだけでは、観光部局から異動した途端に振り出しに戻ってしまいます。

やりがいはあくまでも主観的なもので、口外するものでもありません。
正直、何を抱いていても構いません。
役所勤務の充実感を少しでも高めるための「おまじない」みたいなものでしょう。
自分の納得いくお題目を設定した者勝ちだと思います。 


弊ブログをご愛読いただいている方は薄々感づいているかもしれませんが、僕は自治体の広報業務に対してアンビバレントな感情を抱いています。
 
大事な業務であることは間違いないが、喫緊の課題解決にはならないし、住民の直接的便益(お金がもらえるとか、負担軽減になるとか)にも繋がらない。そのため優先順位はどうしても劣る。

要するに、役所としては注力したい分野だけど、住民は特段欲していない。
住民からすれば「無駄」に映りがちな事業。
こういう埋めがたいギャップのある業務だと思っていました。

しかし最近は考えを改めつつあります。
役所が自ら手がける広報業務に対し、住民側のニーズの高まりを感じます。
これまで行政関係の情報を住民に提供してきたマスコミが、その役割を果たさなくなってきたからです。

一次情報が伝わらない時勢柄

新型コロナウイルス感染症が流行し始めてからというもの、マスコミは行政サービスそのものはろくに紹介せず、行政サービスに対する批評ばかりを取り上げています。
一部のマスコミは以前からこういうスタンスを貫いていましたが、今となってはほぼ全てのマスコミがこんな感じです。

  • 新設された補助金の詳細は一切取り上げず、他自治体よりも給付額が少ないことだけ報じる
  • 新サービスが始まってから時間をおいて報じることで、出遅れ感を出す
  • 新サービスに対する関係者・有識者の見解だけを報じて、サービスの中身は取り上げない

行政が伝えたいのは、サービスの具体的な内容、利用方法、提供期間、対象者、利用条件……といったサービスそのものの情報です。
しかしマスコミは、サービスそのものの情報はばっさり割愛し、代わりにサービスに対する意見や考察ばかりを報じます。
つまるところ、行政が住民に伝えたい情報を、マスコミは伝えてくれないのです。


「せっかくサービスを準備したのに、マスコミがろくに取り上げないせいで、全然広まらない……むしろマスコミが叩くせいでサービス対象者が尻込みしてしまい利用されない……」
こういうジレンマをおそらく地方公務員の9割は感じているのでは?

このような報道スタイルを否定するつもりは毛頭ありません。
マスコミは営利企業=利益につながる行動を選択するのが当然であり、行政を叩けば利益が湧いてくるのであれば、そうするのが当然の選択です。
 
もし「行政を叩いておけば安定して儲かる」という図式が成立しているのであれば、むしろ僕自身投資したくなるくらい魅力を感じます。
行政という存在は当面無くなりません。 飯の種が尽きないのです。

ニーズとのギャップ

サービス自体は一切取り上げず批評ばかり報じるという報道スタンスは、行政にとっては非常に迷惑です。
余計な揉め事に煩わされますし、何よりせっかくサービスを整えても周知できず、住民に気づいてもらえません。


行政だけでなく住民も不利益を蒙ります。
自分にとって有益な行政サービスがリリースされているかもしれないのに、これを知る機会が不足しますし、取り上げられたとしても肝心の中身がわからないのです。

今更僕が取り上げるまでもなく、このような感覚は全国的に見られています。
つまり、行政サービスそのものの情報に対する住民側からのニーズが高まってきているのです。

住民が欲している情報=行政サービスそのものの情報を、民間企業(マスコミ)が提供していないという現状は、一種の「市場の失敗」なのかもしれません。
「市場の失敗」を補完するのは行政本来の役割です。

本記事の序盤で、広報業務は「大事な業務であることは間違いないが、喫緊の課題解決にはならないし、住民の直接的便益(お金がもらえるとか、負担軽減になるとか)にも繋がらない。そのため優先順位は劣る。」と書きましたが、
  • 住民からのニーズがある
  • 市場の失敗の補完である
となると前提が変わります。本腰を入れて取り組まなければいけません。

マスコミを使うか、内製化するか

広報を強化する方法は、大きく2つに分かれると思います。

ひとつはマスコミを利用する方法です。
マスコミにお金を払って広告枠を買い取り、広告として情報発信します。

もうひとつは自らメディアを運営し、マスコミを介さず直接住民にアプローチする方法です。
ホームページや広報誌のような従来媒体をさらに充実させたり、SNSで公式アカウントを運営したり、公共施設に掲出したり……
最近はデジタルな手法ばかり注目されがちですが、アナログな手法もまだまだ活用の余地があると思います。

どちらの路線をとるにしても相当なコストがかかります。
前者は言わずもがな広告掲出料が発生しますし、後者はメディア維持費・コンテンツ制作費のような経費面での負担のみならず、広報技能を持ったスタッフを確保しなければいけません。
さらに後者の路線を採ると、「民業圧迫だ」「戦前の大本営発表に回帰するのか」といった外部からの批判も避けられないでしょう。

結局は政治的判断であり、自治体職員に決定権限はありません。
もちろん個人的には圧倒的に後者推しです。

マスコミから学びたい


情報に対する印象は、「見せ方」次第で大きく変わります。
印象操作テクニックを駆使し、「受け手がどういう認識・感情を抱くのか」を予測しコントロールする技能においては、マスコミには誰も敵わないでしょう。素直に賞賛します。

「見せ方」においては、役所はとうていマスコミに勝てません。
そのため、住民の目に映る役所像、つまり役所の「見え方」は、完全にマスコミに掌握されています。


こんな状態でも従来はなんとかなってきたものの、最近は役所側・住民側ともに不利益が大きくなってきました。
今こそ反旗を翻すときなのかもしれません。

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