キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

2021年04月

自分が出世コース入りしているのかどうか、30歳を過ぎる頃になれば自然と分かってきます。
同期職員の間でも業務内容の差が広がり、忙しい職員と暇な職員にはっきり分かれるからです。

過去にも紹介したとおり、出世コースに入るか否かは20代のうちに確定すると僕は考えています。


役所の出世コースは明確で、「誰が出世コースに乗っているのか」は人事録を数年分見ればおおよそわかります。

出世競争最大の謎
であり役所人事の神秘は、その前段階である出世コース入りを賭けた2次選抜過程です。
誰が参戦しているのか傍目にはわかりませんし、戦っている当人すら自覚が無いかもしれません。

今回はこの「2次選抜」の真相に迫ってみます。
7割方妄想なので脱力して読んでください。

2次選抜過程=調整能力と激務耐性を試す

出世コースに乗るためには、少なくとも「事務処理能力」「調整能力」「激務耐性」の3つが欠かせません。
ここでいう「激務耐性」とは、忙しい時期でも仕事のパフォーマンスが落ちないという意味です。

このうち「事務処理能力」は、担当業務がどんなものであれ測定可能な指標です。
役所の仕事において、事務処理能力が求められないものはありません。

そのため、採用直後からの数年間にわたる1次選抜の過程では、主に「事務処理能力」を測定していると思われます。
「事務処理能力」が高いと評価された職員が、2次選抜に進みます。

2次選抜では、残る2要素である「調整能力」と「激務耐性」が主に測られます。
つまり、「調整能力」と「激務耐性」が試されるポストに配置されれば、自分が2次選抜にかけられていると判断できます。

20代後半の段階で、延々と事務作業が続くポストやほぼ定時で帰れるようなポストに配置されたとしたら、残念(幸運?)ながら2次選抜には進めなかったのだと思われます。

具体的な2次選抜ポストは自治体ごとにバラバラであり、人事録を読み込んで分析するしかありません。
しかし役所は役所であり、若手に任せても問題なくて「調整能力」と「激務耐性」をテストできるポスト、つまり2次選抜向けのポストは、ある程度は似通ってくると思います。

2次選抜ポストの典型例

予算担当

課の予算担当ポストや、部局の予算調整ポストは、言わずもがな庁内調整業務の要であり、来年度当初予算の編成時期(11月~2月)には激務を強いられます。

しかも部や課ごとに最低一人は配置されるポストであり、庁内全体で見れば相当な人数が存在します。
つまり、仕事の出来を比較でき、能力評価しやすいです。
「調整能力」「激務耐性」を測定するのにうってつけのポストと言えるでしょう。


前任者がもっと上位の職員だったポスト

これまで30代半ばの職員が担当していた業務の後任者として起用された場合も、2次選抜入りしている可能性が高いと思われます。

役所では基本的に、職位が上の職員ほど難しい仕事を割り当てられます。
歴代ずっと30代の職員が担当している業務は、若手職員では務まらない理由があるのです。
(例外もたくさんありますが……)

逆にいえば、これまで30代職員が担当してきた業務を難なくこなせる若手職員がいたとすれば、その若手職員は間違いなく優秀といえるでしょう。

ベテラン担当ポストにあえて若手を配置することで、その若手職員を試すのです。

部局長との接触機会が多いポスト

そもそも出世コース入りの可否を見極めているのは一体誰なのでしょうか?
職員の人事はもちろん人事課が決めているわけですが、いくら人事課といえども「調整能力」「激務耐性」のような抽象的な能力まで測定・把握できるとは思えません。

僕の見立てでは、出世コース入りの鍵を握っているのは部局長です。
部局長はいわば出世コースの大先輩であり、出世する職員に求められる資質を自らの経験をもって熟知しています。
人事課としても、部局長たちの意見を大いに参考しているのではないでしょうか?

とはいえ部局長ともなると普段は個室で仕事しており、若手職員を観察する機会がなかなかありません。
そのため、特に注目されている職員は部局長の目に入るポストに配置され、日々評価されているのだと思います。
 
具体的にはこのあたりが典型でしょう。
  • 各課・各部局の予算担当(予算や議会のヒアリングで確実に接触する)
  • 各部局の総括担当課(部局長の秘書的な業務がある)
  • 部局長へのヒアリングを頻繁に行う事業の担当(ヒアリングが多い=目玉事業でもあり、激務かつ調整も多い)


本省出向はあくまで2次選抜の序章

国家本省への出向も2次選抜プロセスの一部だと思っています。
1次選抜で「事務処理能力あり」と認められた職員でなければ、出向しないでしょう。
 
ただし、本省出向そのものが2次選抜の結果を左右するとは思いません。
本省への出向中は、だれもその仕事ぶりを直接観察できず、「調整能力」も「激務耐性」も測定できないからです。

本省出向の目的は、1次選抜で「特に見込みあり」と認定された本命職員をさらに成長させることなのではと思っています。

2次選抜の本番は出向から帰ってきた後であり、本省出向を経験したから出世ルート当確とは限りません。
本省出向者はあくまでも1次選抜の成績が良かっただけで、2次選抜で巻き返される可能性は十分ありえます。

真相がわからないなら勝手に解釈してもいい

自分がどう評価されているかなんて、正直よくわかりません。
正解がわからないのであれば、自分に都合よく解釈してしまえばいいと思います。

仕事で成果を出したいのであれば、「自分は出世候補者だ、組織から見込まれているんだ」と勝手に思い込むのも大いにアリだと思います。
自然とやる気が溢れてきて、仕事が楽しくなるかもしれません。



去年いろいろあってペンディングになっていた公務員の定年延長関係の法案が、今の国会で再度提出されています。
地方公務員に関しては、「地方公務員法の一部を改正する法律案」の中で、国家公務員に準じて定年が延長される形になるようです。

定年が何歳になろうが、僕には直接関係ありません。
僕が定年退職するのはずっと先であり、今後もっと大きな改革がなされていくでしょう。
不利な方向に……

ただ、「61歳以上の職員が増える」という事象からは、ものすごく影響を受けると思っています。
マイナスの影響です。当たりのポストが奪われてしまいます。

単なる「後ろ倒し」ではない

まず定年延長の具体的な中身に触れておきます。
総務省ホームページに昨年度の資料が掲載されていて、これを見ればだいたい中身がわかります。
報道されている限りでは、施行日が一年遅れて「令和5年4月1日」になる以外は、ほとんど中身は変わっていないようです。
 
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役職定年制(管理監督職勤務上限年俸制)の導入

定年が61歳以上に延長されても、管理職手当がもらえるレベルの職位に就いていられるのは60歳までで、61歳以降は非管理職のポジションでないと原則働けないようです。

役所みたいなガチガチ年功序列な組織で単純に定年が延長されるだけだと、出世のペースがそのまま後ろ倒しになりかねません。
このような状況を未然に防止し、組織の新陳代謝を確保し「上が詰まる」状況を避けるための規定なのでしょう。

定年前再任用短時間勤務制の導入

61歳以降も役所で働きたいけど、フルタイム勤務は体力的に厳しい……という職員は、希望すれば65歳までは短時間勤務のポジションに就けるようです。

フルタイムではなくとも、年金支給開始まではちゃんと雇用を確保するという意味合いなのでしょう。

情報提供・意思確認制度の新設

事前にちゃんと情報提供しますよ、という規定です。
具体的な話をどこまでするのか(担当業務や待遇まで示すのか)気になるところです。

給与に関する措置

給料月額(俗にいう基本給)は、60歳までの額の7割まで落ちるようです。つまり3割減少します。
 60歳時点の給与月額がどんなものなのかは知りませんが、3割減は相当痛いと思います。

ちなみに僕の場合、今の給料月額が約25万円なので、3割減ったら17.5万円になります。
初任給と同じくらいの水準です。8年分の昇級が吹き飛ぶわけですね……

定年延長後の世界(想像)

現状でも「再任用」という仕組みがあり、定年退職した職員は「再任用職員」として65歳まで働けます。
定年退職した職員全員が再任用で働き続けるわけではなく、結構な割合がすっぱり役所と縁を切っています。

そのため、定年が65歳まで延長されたとしても、全員が定年まで勤め上げるとは思えません。
60歳段階でそれなりの割合が退職し、役所に残った職員も途中で辞めていき、65歳まで残る人数はあまり多くないでしょう。

つまり、現状の「再任用職員」が「61歳以上の正規職員」に置き換わり、今よりも人数が若干増える程度で、役所組織が激変するまでは至らないと思っています。

閑職ポストが奪われ、若手は全員激務に回される……?

しかし、僕みたいな楽したいタイプにとっては、「61歳以上の正規職員」は脅威でしかありません。
彼ら彼女らは競合相手であり、わずかでも増えられたら困ります。

「61歳以上の正規職員」が就くポストは限られます。

残業上等の激務ポストや、主要施策担当、内部調整役のような重要ポジションには、まず充てがわれないでしょう。
体力的な懸念がありますし、若手職員の成長機会を奪ってしまいます。

となると、「61歳以上の正規職員」の職員が担当するのは、それほど忙しくないルーチンワーク中心の業務になると思われます。(現状の再任用職員も、たいていこのような仕事をしています。)

僕みたいな楽したいタイプは、こういうポスト(業務)を常に狙っています。 
しかし、「61歳以上の正規職員」が増えるほど、このポストを彼ら彼女らに当てなければいけなくなり、若手〜中堅職員の取り分は減って行きます。
美味しい(=暇な)ポストが「61歳以上の正規職員」に奪われて、はずれ(=忙しくてきつい)ポストを引くリスクが高まるわけです。まさに脅威というほかありません。 

さらに、こういうポストは、新規採用職員を置いたり、産休や病休明けの職員に「ならし運転」してもらったり……などなど、調整弁としても利用されています。
 
しかし、こうしたポストを「61歳以上の正規職員」に割り振ってしまうと、従来のように調整弁として使えなくなります。
 
つまり、「バリバリ働かせられない若手〜中堅」向けのポストを「61歳以上の職員」に明け渡してしまうことで、これまで配慮されていた方がいきなり実戦投入されてしまいかねなくなるのです。




僕の勤務自治体だけなのかもしれませんが、本庁課長以上に出世した職員は再任用を選択しません。
俗にいう「天下り」していくのか、別の働き口を見つけているのか、疲れ果てて完全リタイアしているのか……とにかく役所からは離れていきます。

そのため、「元上司が再任用職員になり部下として配属された」という複雑な関係が生じません。
再任用職員になる方は、たいてい部下を持つポジションを経験せずに定年まで勤め上げます。


定年が伸びて、「管理職経験者」も役所内に残るようになったら、「元上司が部下」みたいなややこしい関係が増えて、職場の雰囲気が変わるかもしれません。
人間的にも役所思考に染まった方が増えて、もっと堅苦しくなるのかも…… 

他のブログやSNSでは「再任用職員が仕事してない」みたいな愚痴も見かけますが、僕はそういう経験が一切無く、むしろ再任用の方に大変お世話になってきました。

このブログの中身も、再任用の方から聞いた話がかなり盛り込まれています。
特に苦情対応関係はほぼ受け売りみたいな状態です。




新規採用者数は減るのでは?

新規採用にも少なからず影響があるのではないかと思っています。
法案によると「2年に1歳ずつ」段階的に定年を伸ばしていくようですが、この延長期間中(10年間)は、2年に1回、定年退職者が発生しない年度があります。

この年度も通常通りに新規採用していたら、一時的に総職員数が増えてしまいます。
辞めないのに採用するからです。

公務員への風当たりが強い昨今、「公務員総数が増える」という事態を、世間が許すでしょうか?

「公務員が増えるのはけしからん!」という住民の怒声を予想して、あらかじめ採用数を減らすのが、自然な対応のような気がしてなりません。

定年延長に関して、公務員試験界隈の方が沈黙しているのが不思議でなりません。
「定年延長で採用減!公務員になるなら今しかない!」みたいな触れ込みで不安を煽って教材買わせたりスクール通わせたりできそうなのに……


いかなる社会問題であれとりあえず叩かれるのが役所の宿命です。
特に最近は、縁もゆかりもないはずの遠方在住の方から叩かれる機会も増えてきました。

中央メディアの報道姿勢が変わったのか、SNSが浸透したせいなのか……原因はよくわかりませんが、従来であれば知りようのなかった「自分とは無縁な社会問題」に触れる機会、そして「自分とは無縁」にもかかわらず激情に駆られて行動を起こす機会が爆増していると思われます。

役所を叩くこと自体は構いません。
ただ、「役所=諸悪の根源」と信じて疑わない姿勢は大変危ういと思います。
実際は「真の黒幕」が別にいて、役所をスケープゴートにして甘い汁を吸い、青筋を立て口角泡を飛ばす批判者のすぐ隣でほくそ笑んでいるかもしれないのです。

あなたの不利益は誰かの利益、あなたの利益は誰かの不利益

そもそも、住民全員に害をなす社会問題はあまりありません。
多数派から問題視されている事象であっても、誰かがそこから恩恵を受けているものです。

年齢、居住地、職業、家族構成、社会的地位等々、個人を構成するステータス次第で、利害関係は大きく異なります。
そのため、全員が利益にあずかれる事象も無ければ、全員が不利益を被る事象もありません。

同様に、無駄な施策というものも滅多にありません。
目立たないかもしれませんが、誰かが得をしています。

あなたが「問題だ」「無駄だ」と感じたとしても、たまたま自分が恩恵を受けていないだけで、大抵の場合は誰かが救われているのです。

特定の事象を問題視して騒ぎ立てる行為は、方法を間違えれば、この事象から恩恵を受けている方々への迫害・脅迫になりかねません。
たとえ騒ぐ側に加害意図が無かったとしても、騒がれる側は防衛本能が働いてネガティブに捉えがちで、想像以上に傷ついています。

ある事象が社会問題として騒がれると、役所には「罪の告白」のような声も寄せられます。
「私はこの事象のおかげで生活できているのですが、これは犯罪なのでしょうか?」
「自分の存在そのものが否定されている気がして、眠れません」
「このままだと生きていられません、助けてください」
こういう切実な声を聞かされるより、罵倒されるほうがずっと楽です。

真に問題視すべき事象は、単に不利益が生じているだけではなく、
  • 利益よりも不利益のほうが圧倒的に大きい
  • 利益を得ている層があまりにも少ない、不利益を被っている層があまりに多い
  • 利益を獲得する(不利益を押しつける)に至るまでにプロセスに不正があった
こういう極端なケースです。
そしてこういうケースには、たびたび黒幕が潜んでいます。

探してみよう「真の黒幕」

いかなる社会問題であっても、行政は悪者扱いしやすいです。
  • 行政の縦割り構造
  • 意思決定の遅さ
  • 忖度の文化
  • 職員が無能
あたりの理由は汎用性が高く、どんな事象にも適用できます。
こういった理由を組み合わせてやれば、こじつけ感の無い理由が簡単に組み立てられます。 

実際、「行政に一切非が無い社会問題」はごく稀であり、理由は何であれ、行政に責任はあるでしょう。
しかし、「行政=諸悪の根源」であるケースもごく稀だと思います。

行政は執行機関であり、民主主義プロセスの結果なされた意思決定を淡々と実行する立場です。
役所(公務員)が自主的に物事を決めているわけではなく、民意に従って動きます。
社会問題への立場も、基本的には民意に従います。役所に意思はありません。
つまり、一見役所が悪者に見える社会問題であっても、意のままに「民意」を操縦して私腹を肥やす「真の黒幕」が存在するかもしれないのです。

先にも書きましたが、人によって利害関係は様々であり、行政に対する意見も異なります。
そのため、全員が共有できる「民意」というものは実現不可能なのでしょう。
とはいえ、なるべく多くの人が共有できる「民意」を作り上げべきであるところ、「真の黒幕」たちはあらゆるテクニックを駆使して、自らの利益に資するよう「民意」を整えます。


民意=多数派の意見、とは限りません。
とある集団内の有力者の意見をその集団の「民意」とみなすような慣例もありますし、「これが民意だ!」と大声で騒ぐ個人の意見をなし崩し的に受け入れてしまう場合もあります。
とにかく「民意」らしく仕立て上げる、客観的に「民意」のように見えることが重要です。
 

地方公務員稼業では、こういう「真の黒幕」にたびたび遭遇します。
まさに「世にも奇妙な物語」の世界です。
いくつか例示したいところなのですが、さすがに憚られます。

「真の黒幕」の正体は様々です。
有名な人もいれば、無名な人もいます。 
わかりやすい金の亡者もいれば、マジモノのサイコパスもいます。
 
彼ら彼女らが求める「利益」も様々です。
お金、地位、名誉、自尊心、他者の苦痛などなど……

「真の黒幕」というと大仰な話に見えるかもしれませんが、
  • 近隣自治体と比べて公立学校の冷房整備が遅れている
  • 新しくできた公共施設の形がいびつで使いにくい
  • 道路が補修されないまま放置されている
  • 転落事故が起きているのに手すりが設置されない
こういう身近な案件こそ「真の黒幕」がいたりするものです。
卑近で小さな案件ほど、ちょっと激しく動けば個人レベルでも「民意」を左右できて、甘い汁を吸えます。


役所叩きで溜飲を下げる風潮が続く限り、「真の黒幕」達の利益は安泰であり、社会問題も改善されないでしょう。
逆にいえば、役所叩きは「目くらまし」であり、大々的に行政批判されている時期こそ「真の黒幕」が活発に動いているのかもしれません。


県庁における圧倒的出世コースといえば、財政課(予算編成担当)と人事課(人事異動担当)です。
異論を挟む余地がありません。いずれかに乗ってしまえば、部局長クラスが見えてきます。

問題(そして格好の話題)は、出世コース候補者がしのぎを削る選抜ポストと、惜しくも圧倒的出世コースから漏れてしまった職員がしのぎを削るそこそこ出世コースです。
こちらは自治体ごとに大きく異なるのでしょう。インターネット上の情報でも、書き手によって答えが異なります。

中でも評価が割れているのが「市町村課」です。
財政・人事に次いで出世に近いとの高評価を下す人もいれば、そもそも触れもしない人もいます。

僕は「選抜ポスト」「圧倒的出世コース」いずれでもないと考えています。

本稿を読む前に、この記事を読んだほうがわかりやすいかもしれません。


業務面:小難しい

市町村課の主な仕事は、総務省・財務省・内閣府と市町村の中継ぎです。
都道府県のホームページでは、市町村課の業務として「市町村行財政の指導」みたいなことが書かれていますが、都道府県が何らかの意図を持って指導するわけではありません。
あくまでも国家本省から通知された内容に従います。いわば現場監督です。

このほか、市町村そのものの存在に関わる手続き(自治体間の境界変更など)、一部事務組合のような広域行政に関する業務も、市町村課の役割です。
選挙管理委員会を兼ねている自治体も多いようです。

これらがコア業務であり、自治体によっては、ふるさと納税や移住促進あたりも所管しています。

あくまでも国家本省と市町村の中継役なのであって、県庁内各課と市町村の中継役ではないところが重要です。

市町村課という名前だけ見ると、県庁の事業課と市町村の橋渡し役を務めるかのように思えるかもしれませんが、市町村課は他課の業務には関与しません。 
ある意味、市町村課は、庁内では浮いた存在です。他課との関わりがほぼありません。

基礎能力の高い職員しか配置できない

市町村課の職員には、国が作った膨大なルールやマニュアルを解読して咀嚼する「理解力」、市町村からの質疑に応じる「記憶力」「解説力」が必要です。
いずれも公務員であれば必須の能力ではありますが、市町村課の場合は取り扱う分量が非常に多く、しかも小難しいものばかりなために、高い水準が求められます。

しかも、普段やりとりするのは、市町村の人事課や財政課という、市町村職員の中でも選りすぐりのエリートばかりです。
パッとしない職員は舐められて丸め込まれてしまい、指導監督役が務まりません。

こういった事情ため、もともと実績があって高く評価されている職員でないと、市町村課には配置しづらいのではないかと思います。

職員配置面:県庁職員以外がたくさんいる

市町村課には、たいてい市町村からの派遣職員がいます。
どういう基準で派遣職員を選んでいるのかは不明ですが、僕の勤務する県庁の市町村課には期待のホープが送られてくると言われています。

総務省からも、たびたび若手職員が派遣されてきます。
こちらも詳細は不明です。総合職だけなのか、一般職でも来られるのか……

市町村や国と人事交流している部署は他にもあります。
ただし、派遣職員の人数では、市町村課が圧倒的最多です。

コミュ力の高い職員しか配置できない

派遣職員のいる部署では、彼ら彼女らのマネジメント業務(業務配分、進捗管理、指導など)も、県庁生え抜き職員の仕事です。
しかも市町村課は派遣職員が多いため、年齢にかかわらず、ほぼ全員がマネジメント業務に携わることになるでしょう。

そのため、しっかりコミュニケーションが取れる職員でないと、市町村課の仕事は勤まりません。
自分の仕事だけに没頭するのではなく、常に周囲の職員の様子を見て、的確にサポートできるタイプでないといけません。

派遣職員が多いということは、生え抜き県庁職員の割合が少ないということでもあります。
そのため、首長発の政治的案件のような派遣職員には任せられない突発的業務が発生したら、わずかな生え抜き職員で対応せざるを得ません。

つまるところ、職員配置面から考えても、それなりに評価の高い職員しか配置できないと思われます。

出世コースとは本質的に異なる

まとめると、市町村課には以下のような特徴があると思われます。
  • 業務内容・人員体制の特徴的に、それなりに高評価の職員でないと配置できない
  • 役所運営の根幹である行財税政と選挙の知識が身につく
  • 年齢に関係なくマネジメント業務を経験できる
これだけ見ると、有能な職員が配置され成長の機会も与えられている環境、つまり出世コースのように見えます。

しかし、正真正銘の出世コースである財政課や人事課と比べると、根本的な違いがあります。
市町村課では、出世に不可欠である「庁内調整能力」が身につきません。

市町村課の役割は、あくまでも国(総務省・内閣府)と市町村の仲介役であり、市町村課が何らかの意思決定を下すことは滅多にありません。
部局長や首長の判断を仰がなければいけない大仕事も比較的少ないでしょう。

加えて、市町村課の業務が庁内他課に影響を及ぼすことも少なく、ほとんどの業務が課内で完結するため、庁内での利害関係調整もありません。

これらの事情のために、市町村課では、庁内調整能力が求められる機会に乏しく、育まれることも無いと思われます。

本流出世コースである財政課や人事課では、庁内調整能力を徹底的に鍛えられます。
将来的に部局長として役所を回していく際に、この能力が必要不可欠だからです。
逆に言えば、庁内調整能力が身に付かない市町村課は、出世コースたり得ないのです。

結論:20代前半までに配属されたら期待大

新卒入庁で最初の配属先が市町村課だったり、1回目の人事異動で市町村課に配属された場合は、人事から期待されている可能性が高いです。

市町村課の業務を無難にこなせば、基礎能力は合格点です。
ただ、最重要評価項目である「庁内調整能力」は、まだ一切評価できていない状態です。 
次の人事異動で「選抜ポスト」、つまりは庁内調整能力を試される部署に配置されて、そこでも無難に仕事をこなせれば、晴れて出世コースに入れるでしょう。

20代後半以降に配属された場合は、少なくとも一軍メンバーからは脱落していると思います。
ただし、基礎能力が高く評価されていることは間違いありません。
そうでなければ、そもそも市町村課に配置されないでしょう。

とはいえインターネット上には「市町村課は出世コース!」と断言しているサイトも複数あるので、自治体によっては出世コースなのでしょう。人事録を遡ってみると面白そうです。 

ちなみに僕は市町村課にかなり興味があります。ブログネタの宝庫でしょう。
話し下手コミュ障なので絶対あり得ないでしょうが……

新型コロナウイルス感染症のせいで
  • 公務員は苦情対応から逃れられない
  • 役所という立場上、ハードな案件が集まってくる
ということを改めて理解しました。
 
言葉にするとたった2行なのですが、ここに込められた意味の奥深さは計り知れません。
僕も多分、まだ表層しか理解できていないと思います。

これまでは「人と人の接触を極力減らさなければいけない」というコンセンサスがあったため、役所に届く苦情の声もやや抑えられてきたのではないかと思っています。

ただし、これから本格化するワクチン接種では、どうしても人どうしが接触しなければいけません。
接種に来る方の中には、行政への怒りを煮えたぎらせている方も大勢いるでしょう。
こういう方々にとってワクチン接種は、行政に対して直接文句を言うまたとない機会です。

ワクチン接種に直接携わらない職員でも、これから苦情対応の機会が増えていくと予想します。
ワクチン接種が始まれば、去年の特別定額給付金のように、またマスコミによって自治体間比較が始まるでしょう。
もちろん「〇〇市は近隣より遅い」とか「□□町の接種会場は職員数が少なくて不親切だ」みたいな批判的ムードで。

マスコミにネタにされれば、それだけ世間の関心も高まり、苦情の量も増えます。
去年の春夏(全国的に緊急事態宣言が出ていた頃)も、毎日のように自治体の首長の発言が(半ば揚げ足取りのように)中央マスコミにネタにされていました。
そのせいか行政そのものに対しての反感が強まり、僕自身、連日苦情対応に追われました。

ワクチン接種が本格開始したら、このときと同じような状況が繰り返されるような気がしてなりません。

自分の担当業務で苦情を言われるのはまだしも、「そもそも公務員はさぁ……」とか「行政のあるべき姿は……」みたいな一般論で延々と叱責されると、結構堪えます。
あまりにもどうしようもありません。

来るべき日に備え、心の準備を考えてみました。

批判されているのは「自分」ではなく「組織」

苦情を申し立てる方は、わざわざ「公務員個人」と「組織」を区別したりはしません。
二人称でいえば「お前ら」「あんたたち」を使います。組織がおかしいとは言いません。

そのため、苦情主と対面していると、どんどん自分自身という個人がミスしたかのような感覚に陥ります。

しかし実際は、苦情を受けているのは役所という組織です。
今まさに苦情対応している公務員個人ではありません。

苦情申立人に流されて「自分が悪い」と少しでも思ってしまうと、ものすごく辛くなります。
これは本来、不必要な罪悪感です。

後述しますが、フロント対応職員の最重要任務は、「組織として意思決定するにあたり必要な情報を得る」といことです。
職員が罪悪感を感じるべきケースは、相手方の感情に流されて、意思決定に必要な情報を入手し損ねた場合です。

意思決定の結果、申立人の要望を断らざるを得ないケースもあります。
その時は「人でなし」だの「殺人鬼」だのと散々言われるでしょうが、職員個人に責任があるわけではありません。

苦情主の主張を断ることで、結果的に住民のためになるというケースも多々あります。
苦情主だけに特別に便益を与える、つまりゴネ得を認めるような事態になると、ほかの住民に不利益を被らせていることになりかねないのです。
あくまでも公務員は公僕です。目の前にいる苦情主の専属下僕ではありません。
 

苦情主からすると、職員個人の人格にダメージを与えて罪悪感を抱かせたほうが、苦情の通りがいいのでしょう。
僕の経験でも、玄人ほど、「組織も悪いがお前も悪い」と個人責任を問うてきたり、こちらの言動の機微を捉えて「今の発言は傲慢に過ぎる、侮辱だ」などと人格否定を繰り出してきます。

しかし流されてはいけません。苦情をぶつけられているのは、自分自身ではなく「組織」。
苦情に対面しているのも、自分の全人格ではなく、「地方公務員」という自分の一面にすぎません。
むしろ執拗に人格否定してくる場合は、相手の打算を疑うべきです。


「正確に聞き取る」という目的をしっかり持つ

苦情に対してどう応じるかを決断するのは、あくまでも責任者である管理職です。
苦情主と直接対面するフロント対応職員ではありません。

フロント対応職員に求められる役割は、相手方の主張と客観的事実を正確に聞き取ることです。
相手の感情をケアすることも勿論重要ですが、それよりも「組織が正確に意思決定するために必要な情報を収集すること」のほうがずっと重要です。

ただ延々と苦情を聞かされるよりも、「正確な情報収拾」という目的意識をもって聞いたほうが、相手の感情に過度に流されず、自分のペースを保てるでしょう。

苦情対応業務そのものの主観的価値を高める

苦情対応業務に価値を見出す方策も模索しています。
「クレームはニーズの宝庫」「改善へのヒント」みたいなキラキラした観点ではなく、あくまでも自分の精神を保護するための利己的な方法です。

今のところ、心理学(特に社会心理学)で提唱されている様々な概念を身を以て理解する機会だという路線を考えています。
知的好奇心が満たされるという無形の報酬があることで、苦情対応業務の負担感が幾分か和らぐことを期待します。

苦情対応は、人間のネガティブな感情・思考をぶつけられる仕事です。
しかも役所の場合は、老若男女問わず、社会的地位の高低や収入の多寡に関係なく、幅広い層がやってきます。
天然の観察フィールドとでも言うべき貴重な環境に身を置いているのです。

呼吸・姿勢を整える

あとはやはり呼吸と姿勢です。
特に呼吸をコントロールできれば、精神状態もコントロールできます。

「鬼滅の刃」のおかげで呼吸に関心を持つ人が増えていますが、一過性のブームで終わらせるのは勿体ないです。
初任者研修でしっかり教えてもいいとすら思っています。

 

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