キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

2021年09月

このブログでは、よく僕の経験談をネタにしています。
過去の担当業務の内容、上司や同僚や住民の発言、印象的な出来事、残業時間や休暇取得日数のような数字……等々、これまでの経験は貴重なブログの題材であり、ふわっとしたアイデアをわかりやすく説明するための素材でもあります。

ひょっとしたら読者の中には「どうしてそんなに細かく覚えていられるんだ?都合よく捏造しているのではないのか?」と疑っている方もいるかもしれせん。

実際のところ、捏造ではありません。
ちゃんと覚えている……というか記録しています。
 
入庁当時から簡単な業務日誌をつけているので、いつでも過去を振り返れるのです。

一日一行で十分

僕が日々書き溜めている業務日誌は、本当に単純な「一行日誌」です。
  • 日付
  • 出勤時刻
  • 退勤時刻
  • 実残業時間
  • 報告した残業時間
  • 本日の主な業務内容
  • 職場の雰囲気
  • その他コメント

こういった項目を横軸にセットしたエクセルファイルを作り、一日一行、毎日書いていきます。
イメージはこんな感じです。
業務日誌イメージ

民間企業だと、会社で決められた様式があり、個々人が業務日誌をつけるのが当たり前のところが多いでしょうが、地方公務員だと少数派だと思います。

僕がこの習慣を始めたのは、民間企業に就職した友人からの勧めがきっかけです。

彼が就職した会社は文字通りの大量採用・大量解雇方針で、新卒1年目社員にはとりあえず膨大な残業をさせて耐性を測るのが習わしでした。
彼曰く「1年間で西暦と同じ時間の残業をこなせればクリア(今年だと2021時間)」とのことで、「ハンター試験のほうがまだマシ」と愚痴っていました。

彼は早々に嫌気がさして退職しました。
さらには会社への個人的怨恨を晴らすため、労働基準監督署に訴え出ました。

その際に役立ったのが業務日誌です。
実際の残業時間と残業手当支給額との大幅な乖離、休暇取得を申し出ても平然と却下される現状などを証明する根拠として、業務日誌が活躍したのです。

この話を聞いた当時、僕自身も時間外勤務手当が全然支給されないことにまだ慣れておらず、少なからず職場に不満を抱いていました。
そこで、もしかしたらいずれ人事当局と戦う場面があるかもしれないと思い、その際の武器として使う目的で業務日誌を作り始めました。

「同じ一年を繰り返す」為の物差し

今のところ人事当局と戦う予定は皆目ありませんが、それでも業務日誌はすごく役に立っています。
ブログのため……は一旦置いといて、ちゃんと役所実務にも活きています。

地方公務員の仕事(特に本庁)は、議会や予算編成のような年中行事のウェイトが大きいです。
年中行事のスケジュールは毎年ほぼ同じで、年中行事への対応が必要な時期は他の業務にはなかなか時間が割けません。

 
そのため、年中行事以外の各担当者の個別業務は年中行事の合間にこなさざるを得ず、結果的に年中行事も個別業務も例年同じようなスケジュールで回すことになります。

そのため、昨年度のスケジュール感が分かれば、今年度の見通しがだいたい持てるのです。

具体的には
  • どの時期にどんな業務をやっていたのか
  • 業務の順序はどうなっていたのか
  • 時間がかかる業務はどれか
  • 繁忙期はいつなのか

こういったポイントが分かれば、大いに参考になります。
そのまま真似してもいいし、改善の余地を探すヒントにもなります。

一年分の業務日誌を作ってしまえば、二年目以降がかなり楽になります。
スケジュール感の把握に使えますし、業務の遺漏がないかを確認するチェックリストとしても使えます。

仕事熱心で優秀な方であれば、自ら担当した業務のスケジュール感くらいはきちんと記憶できていることでしょう。
しかし僕みたいな下位層は覚えていられません。記録しておかないと参照できないのです。

異動するときには、そのまま引き継ぎ資料としても使えます。
「報告した残業時間」のようなプライベート情報は消したほうが無難ですが、その他の項目は「日誌」以外の形態ではなかなか伝えにくい情報で、かつ後任者にとってもニーズのある情報だと思います。


ちなみに霞が関出向経験のある職員によると、本省勤務の職員はプロパーであれ出向者であれ業務日誌を作るのが一般的らしいです。
異動のスパンが短く、全国転勤が当たり前でなかなか前任者に質問しづらい環境なので、こういう日々の記録がものすごく重宝するとのことです。

「自分史」としての業務日誌

地方公務員のキャリアパスは「ジェネラリスト志向」と評されるもので、定期的な人事異動を通して色々な分野に広く浅く関わることになります。
「様々な業務を経験することで幅広い知見を習得する」ことが目的です。

ジェネラリスト志向そのものの是非は置いといて……この目的を達成するには、過去に経験した業務についてしっかり覚えていなければいけません。

業務日誌は、自分の地方公務員経験の蓄積を可視化したものです。
記憶だけでは保持しきれない知識やノウハウを保存できる媒体であり、ジェネラリストとして成長する助けになると思います。


さらに業務日誌は、過去の自分のスクリーンショットのようなものでもあるとも思っています。
過去の自分の感覚や感情といった主観的な部分が、業務日誌の中にはありありと残っています。

僕の場合だと3〜4年目の日誌が痛々しい感じになっており、恥ずかしくて人には見せられないポエムみたいなコメントが多数書かれています。
しかし当時は真剣でしたし、今でも日誌を読み返せば当時の感覚が蘇ってきます。

過去の感情は、なかなか記憶には留めておけないものです。
むしろ容易に上書きされてしまいます。

業務日誌の記述を通して、こういう若かりし頃の戸惑いや不安、驕りや勘違いのことを覚えていられれば、後輩や部下と接する際に役に立つのでは……とも思っているところです。



現役地方公務員の方は、たいてい「地方公務員の仕事はルーチンワークだ」と自ら評します。
特に元職の方は必ずそう言いますし、かつ地方公務員を辞めた理由の一つとして「ルーチンワークに耐えられなかった」と開陳している方も多いように思います。

一方、「地方公務員の仕事は標準化・マニュアル化されていなくて非効率」という声も絶えません。

ここで個人的に疑問なのが、「マニュアル化/標準化されていないルーチンワーク」というものは、そもそも存在するのか?という点です。

「ルーチンワーク」という言葉の定義は、
 


手順・手続きが決まりきった作業。日課。創意工夫の必要ない業務。




とのこと。

言葉の定義を見ても、ルーチンワークは「マニュアル等により手順が決められている結果、単調な作業になっている」仕事なのでは?と思われます。

「地方公務員の仕事はマニュアル化されていないけどルーチンワークだ」という一見矛盾する主張は、「ルーチン」の期間を考慮すると両立します。

1日〜1ヶ月くらいの短サイクルで「ルーチン」を捉えるならば、地方公務員の仕事はルーチンだとは思いません。
ただし、一年以上の長期サイクルで「ルーチン」を考えるなら、確実にルーチンワークだと言えるでしょう。

単調な日々が続くわけではない

地方公務員の仕事は、世間からは「単調なルーチンワークだ」という印象を強く持たれています。
 僕の場合、住民から「刺身にタンポポを乗せるほうが刺激的」だと言われたことがあります。
 

 
スーパーの元鮮魚担当だった方から以前聞いたのですが、刺身にタンポポを乗せる仕事は実際ルーチンワークではなく創造性の塊とのことです。
 
タンポポをいかにうまく乗せるかで見栄えが激変して売行きに直結しますし、乗せ方を工夫すれば原価を抑えられ(「つま」「バラン」を削減できる)利益率に直結するらしいです。
「単純作業の代表例扱いされてるのが納得いかない」と憤っていました。
 



もしかしたら地方公務員志望者からもそう思われているかもしれません。
単調作業でそこそこの給料がもらえる!と期待して試験勉強に励んでいたり……

地方公務員の仕事は単調だとは、僕は思いません。
 
地方公務員の仕事のかなりの部分を占める「内部調整業務」は、マニュアル化が困難なコミュニケーション中心の業務であり、場当たり的に「柔軟な」対応が求められます。

マニュアル化されていてフローが決まっている業務もたくさんあるものの、そういう業務であってもマニュアルではカバーしていないイレギュラーな事態が連日のように発生して、その都度「新しい対応」を迫られます。

もちろん役所内には、ルーチンワークと呼んで差し支えないような単調な業務もあります。
ただ最近は、こういう仕事は会計年度任用職員の方か再任用職員の方がこなしていて、正規職員は関わりません。

僕は以前から、簡単な「業務日誌」を認めているのですが、ネタに困ったことはこれまで一度たりともありません。
毎日何らかのハプニングが発生しています。非常事態が日常です。

1年間の流れはいつも同じ

一方、一年スパンで見ると、地方公務員の仕事は確実にルーチンワークと言えます。
 
全庁共通の年中行事(中でも議会と予算)が、仕事の大きな割合を占めているからです。

役所内にいる限り、どんな部署に配属されようとも、どんな役職に就こうとも、年中行事からは逃れられません。
毎年同じような時期に、準備開始〜しこしこ作業〜上司や財政課のヒアリング〜本番〜終了後の後始末〜というサイクルを回すことになります。

しかも役所の場合、経験を積んで職位が上がるほど、仕事に占める年中行事の割合が大きくなります。
民間企業であれば、職位が上がるほど裁量が効き自由度が上がる、つまりルーチンから解放されていくところ、役所は逆に職位が上がるほどルーチンに縛られていくとも言えるでしょう。

僕はこの4月から外部団体に出向しており、そろそろ半年が経過します。
役所を離れて議会とも予算とも無縁の生活を経験したことで、地方公務員の仕事に占めるこれらのウェイトの大きさを痛感しているところです。

ルーチンワーク=悪、とは限らない

まとめると、地方公務員の仕事は
  • ルーチンのサイクルを短く捉えるならルーチンワークではない→「毎日同じ作業を繰り返す」わけではない
  • ルーチンのサイクルを長く捉えるならルーチンワークといえる→「同じような一年」をずっと繰り返す
と言えるでしょう。

インターネットで情報発信している方は皆さん仕事熱心で、ルーチンワークは悪であると断じています。
成長につながらないし、何よりつまらないからです。

ただ僕は、必ずしもルーチンワークは悪ではないと思います。
同じような日々が続くということは、予見可能性が高いということであり、安定的であるといえます。
このような仕事に魅力を感じる方も多いでしょう。
特に家庭を持つと、仕事においては、刺激的な日々よりも安定感を重視するようになると思います。

人生全体がルーチン化されていたら流石につまらない気がしますが、あくまでも人生の一部分にすぎない仕事だけに限っていうのであれば、善悪ではなく価値観の問題なのでしょう。
 

地方公務員=転職弱者という図式に関しては、もはや議論すら生じず、常識として定着しつつあります。

このブログでも「地方公務員経験を通じて確実に鍛えられる能力は『庁内調整能力』だけ」という趣旨の記事を書いています。

庁内調整能力以外も伸ばしたいのであれば、地腹を切って、プライベートの時間を割いて、自発的に努力するしかないと思います。

・・・というのが僕個人の感覚なのですが、転職市場における地方公務員経験の価値に関しては、実際のところ、僕含め正体不明の人間が書いたインターネット上の記事くらいしか情報源が無く、信憑性に欠けます。

ところが先日、地方公務員の転職市場における「強み」について真っ向から触れている本を発見しました。




本書は、定年を目前に控えた中高年地方公務員向けの就職指南本です。
定年退職後もなんらかの形で労働し続けることが求められる現在、安易に再任用を選ぶのではなく、民間企業への再就職という選択肢も含めて、定年退職後という「第二の人生」について考えることを推奨しています。

履歴書や面接で使える「アピールポイント」を検討していく中で、地方公務員ならではの「強み」として、6つの要素に触れています。(同書73ページより)

本書の題材は「中高年地方公務員の再就職」であり、よく話題に上る「若手地方公務員の転職」とは、共通点もあれば相違点もあると思います。

本書で取り上げられているそれぞれの要素について、僕のコメント入りで紹介していきます。

法令や通知に慣れている

まず最初に挙げられているのが、法令や通知のような行政発出文書に慣れている点です。
正確に理解できるかどうかは別にして、「我慢して読む」ことができる時点で、民間サラリーマンよりも優位に立てる、とのこと。

加えて、過去に行政文書を作っていた経験のおかげで、文中に使われている細かい単語や表現から、発出側が考える「ニュアンス」を読み取ることも可能です。

確かに強みだが「地方公務員ならでは」と言えるのか?

やたらとお硬い行政文書を読解する能力は、地方公務員の強みといえるでしょう。
(公務員試験を通して読解能力を測っているのかもしれません)

ただ、地方公務員と同レベルの学力水準(出身大学のレベルなど)の方であれば、公務員であれ民間勤務であれ自営業であれ、読解力には大差ないと思います。
というより、読解されていなかったら、制度が回りません。

転職でいえば、大卒者がほとんどいないような小規模組織であれば「強み」になるのでしょうが、大卒者が普通に入社してくる大企業であれば、足切り回避にはなれども加点要素にはならないと思います。


助成金、補助金等役所関係の手続きに慣れている 

ついで挙げられているのが、役所相手の手続きに慣れている点です。
これは僕も確実に地方公務員特有の強みだと思います。

民家企業にとって、役所関係の手続きは無駄でしかありません。
どれだけ頑張っても利益を生まないからです。
必要最小限の時間と労力しか投入したくありません。
そのため、手続きをサクッとこなせる人材は、それなりにニーズがあるといえるでしょう。

実際、私の知っている範囲でも、中小企業診断士と行政書士と社労士の資格を取得してから独立して、補助金に強いコンサルタントとしてバリバリ仕事をしている方がいます。


関係者との調整能力がある

地方公務員稼業では役所内外の関係者と常に調整が生じることから調整能力が培われる、という点も、強みとして挙げられています。

民間企業勤務でも同様の調整業務はつきものであり、「地方公務員だから調整能力が高い」とは必ずしもいえないでしょう。
しかし、地方公務員の場合は、民間企業と比べ、調整すべき相手の属性が幅広いと思います。
地域住民、PTA、NPO、慈善団体……のような、利益・損得だけが判断基準ではない相手との調整は、民間企業ではなかなか発生しないのでは?

さらに最近は、こういう集団がどんどん存在感を増してきているところであり、民間企業も無視できなくなると思います。


文章力がある

役所仕事では文章をよく書くので、文章力が備わっているという点も、強みとされています。

これは正直微妙なところだと思います。
確かに地方公務員は、普段から仕事で文章を書きますが、あくまでも我流で書き続けているだけです。
添削やフィードバックを受けられるわけではなく、上達するとは限りません。
「慣れている」のは確実ですが、「文章力がある」とまでは言えないと思います。

民間企業の場合、文章を書く専門のスタッフがいます。
きちんと基礎教育を受けた上で、日々フィードバックを受けながら成長を続けているような存在です。

こういう専門スタッフと比べると、地方公務員の文章能力は駄目駄目です。
少なくとも「強み」として堂々と語れるレベルには遠く及んでいないでしょう。


新しい職場への適応能力がある

民間企業と比べ地方公務員は異動回数が多く、しかも畑違いの分野を転々とするため、新しい職場への柔軟性・適応能力が備わっている、という点も挙げられています。

これも正直微妙なところだと思います。
役所は「頻繁に人が入れ替わる」という前提で成り立っている組織であり、経験の浅い職員でもそれなりに仕事を回せるよう、ある程度は業務がマニュアル化されています。

そのため、民間企業よりも「畑違いの異動」のハードルがかなり低く、役所の人事異動を乗り越えられたからといって、柔軟性があることの証左にはならないでしょう。


信用力がある

最後に、役所という「堅い職場」に長年勤務していたことから、ある程度は信用がおける人物だとみなしてもらえる、という点が挙げられています。

これはその通りだと思います。
人間的にも金銭的にも、それなりに信用してもらえることでしょう。

一朝一夕では何もに身につかない

6つの「強み」を見てきましたが、いずれにしてもすぐに身につくものではありません。
あくまで定年退職間際まで勤め上げたから身につく「強み」であって、30歳前後で転職しようとする際には到底使えないネタばかりだと思います。

やはり、若いうちに地方公務員から民間企業に転職したいのであれば、地方公務員経験を活かすという方向性は諦めて、それ以外の強みをアピールするしかないのでしょうか……?
「元地方公務員だから〜〜できます!」ではなく「元地方公務員だけど〜〜できます!」、地方公務員として働いていたというディスアドバンテージがありますが問題ありません!というふうに……


地方公務員志望者にとって、「自分が本当に地方公務員に向いているのかどうか」は、非常に気になるポイントでしょう。

地方公務員になるには、筆記試験対策のために、貴重な時間とお金を投じなければいけません。
そのため、「せっかく就職したのに向いていなくて退職した」あるいは「向いていなくて毎日苦痛」という事態を避けたく思うのは必然でしょう。
楽しく働きつづけられなければ、いわば「投資に失敗」なのです。

地方公務員は部署によって業務内容が異なり、求められる能力も適性も異なります。
ある部署には向いていなくとも、別の部署にはピッタリ嵌ることも多いです。
「あいつ観光課は適任だったけど環境課には向いていないよね」みたいな会話は日常茶飯事です。

とはいえ、どんな部署でも影響してくる「普遍的な適性」も、僕は存在すると思っています。
なるべく網羅的に紹介していきたいと思います。


重要度★★★:心労祟って辞めざるを得ないかも……

まずは、役所という職場環境に致命的に向いておらず、休職・離職のリスクが高いタイプから触れていきます。

「地方公務員はガツガツしておらず穏やか」という印象を持っている方も多いかもしれません。
実際、地方公務員には穏健な人が多いと思います。

しかし、「働いている職員が穏やか」だからと言って、「役所という職場も穏やか」とは限りません。

役所勤務では、公務員以外の方々とも多々接触します。
「役所稼業で接触する公務員以外の方々」は、むしろ過激派・激情派が多いです。

「のんびりして穏やか」な職場を期待して地方公務員になった方は、面食らうと思います。
そして、意外と激しい職場環境に順応できなければ、働き続けられないでしょう。


粗暴な言動が無理

役所は常に外部からの暴力に晒されています。
形式は様々です。
窓口で暴れたり、電話越しで脅迫してきたり、出張先でモノを投げつけられたり……事例を挙げだすとキリがありません。

こういう粗暴な言動とは、どんな部署にいようとも遭遇します。
遭遇頻度は部署によってかなり異なるとはいえ、無縁な部署はありません。

たとえ役所外部とは一切関わりのない内部管理専門の部署であっても、「お前らが無駄な仕事を作るせいで現場の仕事が遅れるんだ、お前らは社会の癌だ!」みたいな罵倒が定期的に飛んできます。

実際に肉体的暴行を受けることまでは滅多にありませんが、
  • 怒鳴られる
  • 大きな物音を立てられる(机を叩く、椅子を蹴飛ばす等々)
  • モノを投げつけられる
  • 威圧的態度(机に足を乗せる、唾を吐く等々)
  • 暴行のポーズを見せられる(拳や杖を振り上げる、手指の関節をポキポキ鳴らされる、目の前で空き缶を握り潰す等々)
  • 睨まれる
  • 舌打ちされる
少なくともこのあたりの粗暴な言動とは、地方公務員として働く以上、新規採用時から退職するまで、ずーっと付き合わざるを得ません。



僕自身、就職前は「怖いなあ」と不安だったのですが、今のところはなんとかなっています。
役所には暴力対処のノウハウがきちんと蓄積されており、数をこなすうちにどんどん耐性が出来上がってきます。
暴力耐性という意味では、確実に成長できていると思います。



地方公務員として働き続けるには、暴力耐性は必須です。
普通に勤務していれば自然と身につきます。

ただ、物音にものすごく敏感だったり、暴力に対して強い忌避感がある方もいらっしゃると思います。
そういう方は確実に地方公務員に向いていません。
耐性が身につく前にトラウマを抱えてしまい、メンタルがもたないでしょう。
僕の勤務先県庁でも、これが原因で毎年1人は新人が辞めているようです。


感受性が強すぎる/共感しすぎる

行政サービスの主要顧客は「困っている人」「苦しんでいる人」です。
人生順調で健康でハッピーな方は、基本的に役所には用がありません。

この傾向は、部署を問わず共通します。
生活保護や国民健康保険のように「セーフティネット」として明確に位置付けられている行政サービスのみならず、産業振興や観光のような一見前向きな分野であっても、救済的要素の強い施策がたくさんあります。(制度融資あたりが典型でしょう)

そのため、地方公務員として働く中で出会う人は、何らかの苦悩を抱えている方が多いです。
彼ら/彼女らの苦悩を、施策を用いて解消することが、まさに地方公務員の仕事といえるでしょう。

他者の苦悩を解消するためには、まずその苦悩を知るところから始めます。
苦悩の原因となった哀しい過去、今まさに感じている負の激情、世の中の理不尽に対する怒りと嘆き……等々、たくさんの「暗い情報」をインプットしなければいけません。

というよりも、役所にいると「人々の苦悩」や「暗い情報」が自然と耳に入ってきます。

感受性が強く共感性の高い方は、日々舞い込んでくる「人々の苦悩」「暗い情報」を処理しきれない危険があります。
悲しいニュースを見聞きするたびに気が滅入ってしまうようなタイプの方は要注意です。
役所という職場は、その悲しいニュースを毎日無理やり聞かされるような環境です。

個々の案件に心を痛めていたら、どんな強者でも精神が保ちません。 
他者の苦悩に対して機敏すぎると、地方公務員は続けられないでしょう。


重要度★★:うまく仕事をこなせず辛いかも……

続いて、地方公務員の業務特性と能力的に合わないタイプに触れていきます。
「仕事ができない奴」との烙印を押され、肩身の狭い思いをしかねないタイプです。

文章を読むのが苦痛

公務員は毎日、大量の文章を読まなければいけません。
メール、法令、通知文、マニュアル、参考書籍、外部から提出された申請書などなど……文章の形式は色々、書き手も色々です。
読みやすい文章もあれば、小難しくてわかりにくい悪文もあります。

文章を読むのが苦痛であれば、地方公務員の仕事も苦痛そのものでしょう。
文章読解が苦手で時間がかかる方は、それだけ業務に時間がかかることになります。
文章が嫌いな方は、業務時間中ずっとストレスを感じるでしょう。
何より、文章の意味を理解できなければ、仕事が進みません。

地方公務員実務で触れる文章と比較すると、公務員試験の問題文のほうがはるかにわかりやすいです。
正解がひとつに定まるよう、細心の注意を払って作文されているからです。
「問題文を読むのが苦痛」と感じている方は、採用された後も苦労すると思います。


スケジュール管理(イレギュラー対処含む)が苦手

地方公務員の仕事の多くは、定量的な成果を求められません。
「やれば終わる」ものがほとんどです。
そのため、いかに「きちんとやる」か、無理なく無駄のない段取りを組むことが非常に重要です。

ここでいう段取りとは、一日または一週間程度の短期間の予定管理から、数年単位のプロジェクト全体の舵取りまで、あらゆる時間的スケールを含みます。
長期間の段取りスキルが必要な職員はごく少数でしょうが、短期間の段取りは職員全員に求められます。

段取りが重要……とはいえ、地方公務員の仕事はいつも他律的です。
役所の内(上司や他部署)からも、役所の外(住民やマスコミ)からも、急な案件がどんどん降ってきます。

そのため、どれだけ完璧な段取りを組んだとしても、すぐに崩されます。
たった1日でさえ目論見通りには過ごせません。予定の7割も達成できれば良い方でしょう。
当初の段取りが崩れても、柔軟に動いてリカバリーしなければいけません。

つまるところ、地方公務員であるなら、どんな部署に配属されようとも
  • 締切日から逆算して仕事の段取りを組み
  • それに従って仕事を進めていきつつ
  • イレギュラーが発生して段取りが崩れても臨機応変にリカバリーして
  • 締切には必ず間に合わせる
こういう一連の流れが連日発生します。

この流れを苦手に感じるタイプ、例えば
  • 計画を立てるのが苦手で万事行き当たりばったりなタイプ
  • 計画が狂うのが苦手で慌ててしまうタイプ
こういった方は、毎日強いストレスを感じるでしょう。
周囲からも、たとえ仕事の成果のクオリティが高くても、「困った人」扱いされかねません。


「外界をシャットアウト」しないと作業できない

役所という職場は、集中しやすい環境からは程遠いです。

まず何より雑音だらけです。
電話は鳴り放題ですし、常時誰かの喋り声(ときには怒鳴り声)が聞こえてきます。

視界にも余計なものがたくさん映ります。
周囲には他の職員が大勢いてお互いに挙動が丸見えです。
職員以外のお客さんもいらっしゃいます。

このような環境下のため、多くの地方公務員は「集中」をそもそも諦めており、せいぜい50%くらいの集中力で仕事をこなせるように最適化されていると思います。
集中せずとも、「ながら作業」で大抵の仕事を回しているのです。

「物音や他人が気になると集中できず、集中しないと作業が手につかない」というタイプの方は、役所だとかなり苦労すると思います。

集中力全開でバリバリ仕事をしたいのであれば、そういう労働環境がきちんと整っている民間企業に進んだほうが幸せだと思います。
喫茶店や図書館でイヤホンをつけて公務員試験の勉強をしている若人を見かけるたび、お節介ながらも「イヤホン外してノイズの中で勉強したほうが実務でも役立つんだろうけどな……」と心配になります。

重要度★:楽しい役所生活を送れなさそう……

「地方公務員はつまらない人間ばかり」とか「つまらない人間しかいないから役所組織もつまらない」みたいな意見をよく見かけますが、僕を含めて「地方公務員の生き様」や「役所組織のメカニズム」を面白がっている人は結構います。

役所そのものを面白がれなければ、地方公務員生活の充実度はかなり下がってしまうと思います。

他人に興味がない

役所はそれなりに大所帯の組織です。
人間観察が趣味というタイプにとっては動物園のように楽しめるでしょう。
特に「出世レース観戦」「キーパーソン観察」は、個人的にものすごく面白いです。

役所は年功序列の組織で、よほどのことがない限り年齢横並びで昇進していくのですが、それでも出世レースは確実に存在しています。
同じ役職の中でも明確に序列があり、例えば同じ「主任」であっても、主要ポストの主任とどうでもいい主任は、職責の重さも庁内発言力も段違いです。

そして役所は、少数の「主要ポスト」職員がモーターとなり、他の大多数の職員を歯車として回しているような組織です。
主要ポストに誰が就くか次第で、業務量も判断内容も雰囲気も一変します。

つまるところ、他の職員に関心を持てば持つほど、役所組織全体の仕組みが見えてくるのです。


この項を読んで「悪趣味だなあ」とドン引きした方はおそらく正常です。
しかし地方公務員人生では、その正常さがかえって仇になります。

地方公務員には人間観察愛好家が多いです。
アンチ人間観察派だと周りの職員が気持ち悪くて仕方ないでしょうし、何より役所組織最大の娯楽を享受できないわけで、非常にもったいないと思います。

政治的駆け引きに興味がない

役所のトップである首長は、選挙で選ばれた存在であり、紛れもない政治家です。
そして地方公務員は首長の部下、つまるところ政治家の部下です。
否応無く政治の片棒を担がされます。

実際、地方公務員の仕事には政治的動向がガンガン絡んできます。
最も典型的なのは「議員から無理強い」でしょう。
ほかにも様々な形態があります。

政治的駆け引きへの対応はかなり面倒です。
しかし、そこで一手間かけて、これまでの経緯や関係者のプロフィールを調べてみると、政治的駆け引きは「ショー」へと一変します。

役所が関わる分野は幅広く、持ち込まれる政治的案件数も多いです。
本来は役所は関係ないはずの、あくまでも民間人どうしの権力闘争ですら、様々な意図をもって役所を巻き込もうとしてきます。

だからこそ、政治的駆け引きを「ショー化」して見世物として楽しめるタイプは楽しいですし、単に「面倒だ」「薄汚い」と思うだけならストレスが絶えないでしょう。


重要度★:労働環境・働き方に不満を持ちそう……

役所の労働環境は、大卒者が就職するような民間中堅〜大手企業よりも劣ります。
働いているうちに慣れるものですが、中には許容できない人もいるでしょう。

バリバリ稼ぎたい

稼ぎたいのであれば民間企業に就職してください。
特に20代のうちは、バイトを詰め込んだほうが稼げると思います。



やりたい仕事がはっきりしている

これまでも散々言われているとおり、地方公務員の配属は完全に運です。
携わりたい分野があったとしても、その担当者になれる保証はどこにもありません。

加えて、もし念願叶ってやりたい仕事の担当者に着任できたとしても、自分の意向を実現できるとは限りません。

日本は民主主義国家であり、「何をどうすべきか」を決めるのは国民です。
国民が決めたことを粛々と実現するのが公務員の役割であり、公務員の意思によって「何をどうすべきか」を変えることはできません。

そのため、もし希望の仕事を担当できても、民主主義的決定の内容と自分の意向が一致しない場合は、むしろ「やりたくないこと」を強いられます。

例えば、「農産物のブランド化を進めたい、そのために研究開発を支援したい」という大望を抱いて地方公務員になり、幸運にも農業振興担当に着任した職員がいるとします。
一方、地元農家たちは「ブランド化しても競争激しいから、加工食品向けのノーブランド品目を大量生産していきたい、だから生産設備の補助が欲しい」という意見でまとまったとします。

この場合、優先されるのは地元農家の意見です。
職員は、「ブランド化」という自分の理想とは正反対の「大量生産」のために、仕事をしなければいけません。

地方公務員への就職には、「やりたい仕事に関われない」リスクのみならず、「やりたい路線とは真逆のことを強いられるかもしれない」リスクも存在するのです。

教育を受けたい

地方公務員には、体系だった教育を受ける機会が存在しません。
(税関係だけは例外で、中長期のがっつりした研修もあるみたいです)

とはいえ地方公務員は学ばなくてもなんとかなる仕事……というわけではなく、常に自学自習(自腹&業務時間外)が求められます。
  • 「何を学ぶか」という科目設定
  • 「何を使って学ぶか」という教材設定
  • 学びを継続するための自律心
こういった要素が求められます。

自学自習ではなく、しっかり教育を受けたいのであれば、大手の民間企業のほうが良いと思います。

残業は絶対したくない

「役所は9時5時、残業なし」という通説をいまだ信じている方はさすがにいないと思いますが、「残業が少ないから」という理由で地方公務員を志している人は少なからずいると思います。

地方公務員の残業事情は人それぞれです。
同じ課内でさえバラつきがあります。

「残業がほぼないポスト」もありますが、そこに座れるのは特殊な事情のある職員のみです。
乳幼児を抱えているとか、家族の介護とか、自身の健康の事情とか……
普通の職員が「残業のない部署に行きたいです」と主張したところで到底叶いっこありません。


一人で黙々と作業したい

「地方公務員といえば単純作業」というイメージを持っている方もいるかもしれません。
実際、書類の誤字を探したり、エクセルに延々と数字を入力したり……といった一人で行う単純作業も少なからずありますが、そういう仕事はどんどん外注したり非常勤職員にお願いするようになっています。

正規職員の仕事の多くは、なんらかのコミュニケーションです。
民間企業のように、高度な「トーク力」や「プレゼン力」が必要なわけではありませんが、少なくとも定時内は延々と他者とコミュニケーションを取り続ける必要があり、コミュニケーションが面倒だというタイプにとっては煩わしいことこの上ないでしょう。

「一人でコツコツ作業するのがメイン」という働き方を希望するのであれば、役所はおすすめできません。


今年の4月から念願叶って?、とある民間団体に団体に出向しています。
歴代の担当者の事例を踏まえると、出向期間は2年間。
すでに出向期間の20%を過ぎており今更感がありますが、抱負を書き残しておきます。
意識の高い順にお送りしていきます。

できる限り全自動化

僕の担当業務は、基本的にパソコン作業ばかりです。
「vlookup関数の式をゼロから組み立てる」以上の難しい作業はありません。

ただしやたらと業務量が多く、閑散期でも40時間は残業せざるを得ません。
前任者いわく「繁忙期は100時間を余裕で超える」とか……

中でも特にエクセルファイルを合体させる(特定の行・列をコピペして集計する)作業が多く、エクセルファイルを探して開閉するだけで毎日1時間は使っていると思います。

正直、マクロを組めば一瞬で終わる気がするんですよね……

このほかにも、関数を工夫したりマクロを使ったりすれば効率化できる作業がたくさんある気がするので、いろいろ試していきたいと思っています。
役所に戻った後も役立ちそうですし。

「スピード感」の正体とメリデメを突き止める

よく言われるとおり、やはり役所と比べて民間団体は意思決定のスピードが段違いに早いです。
意思決定までのステップも少ないですし、意思決定の場(ヒアリングや会議)1回あたりの時間も短いです。

見方を変えると、意思決定に必要な下準備が役所と比べてずっと少ないとも言えるでしょう。
例えば、役所みたいに資料の余白を調整したり、空きスペースにフリー素材イラストを入れたりする必要はありません。
意思決定に必要な情報が過不足なく盛り込まれていれば十分です。

役所の重厚長大型意思決定プロセスに慣れ親しんだ僕にとっては、「えっこんな簡単に決まっちゃっていいの!?」と不安になってきます。
どこかに歪みが生じている気がしてならないのです。

よく「役所も民間企業並みに意思決定を速やかに行うべき」という主張がなされます。
実際、役所の意思決定プロセスは冗長で、効率化の余地がたくさんあると思います。
しかし「民間のやり方をそっくりそのまま役所が真似してもいいものか」と問われると、役所脳な僕にとっては「否」としか思えないのです。

カルチャーショックを味わいつつ、役所の意思決定効率化を阻む「特有の事情」みたいなものを見出していきたいです。

現代的な働き方を堪能する

以前も少し触れましたが、今は新型コロナウイルス感染症のせいで在宅勤務がメインです。
職場から貸与された在宅勤務用パソコンを使えば、インターネット経由で職場サーバーにアクセスできるようになっており、在宅でも職場とほぼ変わらない環境で仕事ができています。

それに何よりパソコンが高性能です。メモリが8GBもあるので全然フリーズしません。
(県庁ではメモリ2GBが標準でした……)

ほかにもいろいろなソフトやWebサービスを使わせてもらえており、正直、全地方公務員の中でも上位1%に入れるくらい先進的な環境で働いていると思います。

これまで時代遅れな環境下で働いてきた分、ここで労働環境のナウなトレンドに追いつきたいです。


ランチを楽しむ(いずれ)

これまで幾度となく取り上げてきていますが、地方公務員は落ち着いて昼食を楽しめない職業です。

ただ今は違います。
昼休みを妨害してくるノイズとは無縁であり、丸々1時間、きちんと昼休みを取れます。
しかも僕の職場は結構な都市部にあり、飲食店がたくさんあります。

つまり、退職しない限り不可能だと思っていた「外でランチ」が楽しめるのです。
この機会を逃すわけにはいきません。

もちろん今は新型コロナウイルスが猛威をふるっており、軽率な行動はできません。
(そもそも在宅勤務なので飲食店に行けません)
コロナが落ち着いたら、ガンガン外ランチに出かけていきたいです。

蓄財500万円

出向直前のとある日、人事課から直々に「時間外手当は遠慮せず満額申請してほしい」と言われました。
どうやら過去の担当者で出向中にメンタルに不調をきたしてしまった職員がいたようで、この出向ポストは「忙しくてストレスが多い」と見なされているようです。
つらいポストを命じる代わりに、せめて残業代で心を癒してほしい……という配慮なのでしょう。

今のペースだと、年間の総残業時間は800時間強になるはず。
先日投稿した年収モデルで計算してみると、年収550万円は堅いと思われます。
昨年と比べて100万円ほどの収入アップです。

年収増かつ、コロナのせいでろくに外出できず支出も減っているので、頑張れば年間250万円、2年間の出向期間トータルで500万円を目標に蓄財に励んでいきます。
高額ガジェットに散財したりしないよう注意しなければ……


「時間」を「残業代」に変換していきます

あくまで僕の想像ですが、メンタルを崩してしまった先達は「単純作業が延々と続く」ことに向いていなかったのではと思われます。
成長志向の強い方にとっては地獄でしょうし、ひたすら残業も多いのでプライベートも圧迫されます。

僕としてはむしろ、面倒な調整業務から解放されて、役所にいる頃よりもずっと気楽です。
しかも独身異常男性なので、労働時間が伸びたところで生活に支障は出ません。

何より残業代がモチベーションになります。
やりがい?成長?知りませんねぇ……

唯一の懸念は、100時間/月の残業に耐えられるかどうか。
ストレス自体はさほど無いにしても、睡眠時間を確保できなくなったとき、ちゃんと健康を保てるのか……ここだけが不安です。

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