キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

2021年10月

「ここ数年で若手地方公務員の離職が増えている」という認識は、今やかなりの人が持っていると思います。
このブログでもたびたび触れてきました。

ただ、「若手地方公務員の離職者が増えている」というデータを見たことがある方は、意外と少ないのではないでしょうか?

若手キャリア官僚の離職であれば、人事院の発表などで定量的情報が公表されているところですが、地方公務員に関してはググってもヒットしません。
根拠不明の数字だったり、就活専門家の「推定値」だったり、僕みたいな個人ブロガーが独自手法で算出している数字ばかりです。

しかし実は、総務省ホームページの中で、ひっそりと公表されています。
ブログネタを探すため総務省ホームページを見ていたところ、偶然発見しました。

だいたい2%

若手地方公務員の離職率に言及しているのは、「ポスト・コロナ期の地方公務員のあり方に関する研究会」第2回の事務局資料です。





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この資料によると、20代以下の若手地方公務員(一般行政職)の離職率は上昇傾向にあり、平成27年度は1.5%だったのが、令和元年度には2.1%まで上昇しています。
民間企業よりはだいぶ低いとはいえ、伸び幅は大きく、1.5倍近くに上昇しています。

離職率の算出方法は他にも考えられますが、地方公務員制度を司っている総務省が公表資料で用いている指標ということで、この数字が非常に重要なのは確実でしょう。

もっと細かく算出してみた

先ほどの総務省資料では、ありがたいことに離職率の算出方法が詳細に説明されており、しかも元データはすべてインターネットで閲覧できます。
というわけで、元データを使って、もっと細かく算出してみました。

団体種類別・・・「町村」の離職率が際立って高い

スライド1
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まずは自治体の種類別に算出してみました。
平成30年度だけなぜか数字が合いませんが、他の年度はぴったり一致したので、算出方法は間違っていないはずです。

パーセンテージの数字が被っていて見づらい箇所があるので、詳しい数字は表のほうを見てください。

グラフを見てみると、いずれの年度でも政令指定都市の離職率は低め、町村が際立って高いです。
政令指定都市の離職率が低いのはなんとなくわかるのですが、町村は謎です。
しかも町村は離職率の伸び率も大きいです。一体何が起こっているのでしょうか……?


職員数・離職者数の推移・・・どっちも増えてる

スライド2
続いてはパーセンテージではなく絶対数(人数)を見ていきます。
まず、「20代以下」の若手地方公務員の数は、全国トータルで2万人近く増えています。
採用数が多かったためでしょう。

さらに、「20代以下」の若手地方公務員の退職者数も増えています。
こちらは1.5倍近くに増えています。

「ここ数年で若手地方公務員の離職が増えている」という印象は、離職率の増加というよりも、退職者の絶対数が増えているせいではないかと思います。


年代別離職者・・・20代以下が一番高いが、30代も上昇傾向

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退職者が増えているのは若手に限った話ではなく、もしかしたら全世代に共通する特徴かもしれません。
というわけで、他の年代とも比較してみました。

年代が上がるほど離職率は下がっていきます。
20代以下と比較して、30代は7割前後、40代は3割ほどまで落ち込みます。

離職率の推移を見ると、30代は20代同程度に上昇傾向、40代はほぼ変わらずという状況です。
30代に関しては、40代との差が広がっているとも言えるでしょう。それでも微々たる差ですが……



集計対象の職員の範囲は、それぞれの調査の報告書に詳しく書いてありますが、ざっくりいうと
    • 「職員数」「退職者数」ともに正規職員だけです(臨時職員は含まない)
    • 「職員数」「退職者数」ともに一般行政職だけです(技能労務職や専門職を含まない、土木農林技師は含む)
    • 「退職者数」には、外郭団体に出向する場合の形式的退職や、国から出向してきた人が国に戻る場合の退職は含みません
そのため、「公務員試験を経て採用された事務職」が「自発的に退職する」事例を、かなり正確に捉えていると思われます。



都道府県庁の離職率が低めで安心

ざっくりまとめると、
  • 若手地方公務員の年間離職率は2%強くらい、3年後離職率なら1-(0.98の3乗) で6%くらい
  • 若手地方公務員の人数がそもそも増えている
  • 退職者の実数も離職率も上昇傾向にある
この程度のことは確実に言えると思います。

実をいうと、この数字を算出する過程はけっこうハラハラしました。
「もし都道府県の離職率が市町村よりも高かったら、都道府県がブラック職場という印象を与えてしまう……」という懸念があったためです。

しかし実際にやってみると、町村の離職率が飛び抜けて高いという結果になりました。
ひとまず安心……なのですが、こんなに差が出るとは思っておらず困惑しています。
町村部だと役所以上に高待遇の職場が少ないので、ずっと居着くものかとばかり(偏見)

ひょっとしたら、町村役場特有の事情というよりは、田舎から都会への若手労働力という一般的トレンドの影響が強いのかもしれません。
町村部は役所に限らず、どんな職業であっても若手離職率が高いとか……

首長選挙にしても議員選挙にしても、やるたびに投票率が下がってきている気がします。

以前の記事でも触れましたが、投票率が低下すればするほど、当選に必要な得票数(絶対数)が減少します。
必要な得票数が少なければ、特定の属性(居住地域、職業、年齢など)からの票さえしっかり抑えておけば、当選できてしまいます。
たとえ世間一般からの評判が芳しくなくても、コアな支持母体がいれば、そこからの票だけで勝てるのです。



こういう人が当選した場合、もちろん支持母体にメリットのある施策にばかり注力します。
投票率が急上昇しない限り、支持母体からの人気さえ保っておけば、次も安定して勝てるからです。

これは好ましい状況ではありません。住民の分断が深刻化してしまいます。
自治体職員という立場でいうと、理不尽なクレームの原因になります。
支持母体からはやたら高圧的に注文をつけられますし、支持母体以外からは「利権だ」「不公平だ」という苦情が相次ぎます。

こういう状況を避ける(というより現状がこんな感じなので、ここから改善していく)ためには、まずは投票率を上げて、「支持母体さえケアしていれば次の選挙も余裕で勝てるし」という舐めプ政治姿勢を改めてもらうのが、地味ですが手っ取り早いと思います。

自治体としても「投票率の低迷」を問題視しており、平時から色々な策を使って投票啓発を行なっています。
選挙期にはポスターを作ったりテレビ・ラジオCMを流したりして、投票を呼びかけます。

ただ冷静に考えてみると、こういう投票啓発、特に直前期の広報活動は、単に「投票率を高める」のみならず選挙結果そのものにも大いに影響を与えそうな気がしています。


文面以外にも副次的なメッセージがたくさん潜んでいる

「投票に行こう」というポスターが見た人が受け取るメッセージは、「投票に行こう」という表面的なものだけではありません。
認識できるもの/無意識下で機能するもの、ともに他にもたくさんの要素があります。

代表的なものは、「ハロー効果」「プライミング効果」のような心理学的影響でしょう。

こういった要素のせいで、投票啓発広報は、単に「投票に行く」という行動を誘発するのみならず、投票先の選択をも左右するかもしれないのです。

特に、ポスターやCMに芸能人を起用する場合は、かなり複雑に心理学的効果が機能すると思います。
芸能人本人のパーソナリティに加え、過去に演じた配役も少なからず影響してきそうだからです。

例えば、代表作が「半沢直樹」の俳優が「選挙に行こう」とガッツポーズを組んでいるポスターを見たら、現職よりも新人に投票したくなりませんか?
今回の選挙とドラマの内容とが自然とリンクして、「現体制は駄目」「確変を起こさねば」という気がしてきませんか?

しかも、投票啓発広報を見て投票に行くような層はもともと政治への関心が低く、確固たる政治思想を持っているわけでもなく、候補者のことをわざわざ調べもしないでしょう。
そのため、心理学的効果の影響を強く受けた状態で投票してしまいがちだと思われます。

国や自治体の選挙担当者も、余計なメッセージが混ざりこまないよう、広報内容には細心の注意を払っていると思います。
ただそれでも、無意識下で働く心理学的影響まで完全に除去するのは困難でしょう。
多かれ少なかれ、投票啓発広報の中身は、選挙結果に影響を及ぼしていると思います。

 

どういう層の投票行動を促すのか次第で結果が変わる

万人に刺さる広報は存在しません。
投票啓発広報も同様です。
使用媒体やメッセージ文言、紙面デザイン等の要素次第で、刺さる層が変わってきます。

言い方を変えると、投票啓発広告によって行動を変える人(もともと投票に行くつもりが無かったが、広告に触れて考えを改め投票することにした人)の属性は、けっこう偏ると思われます。

そして、どのような層の行動変容を起こすか、いわば「得票の発掘」を行うか次第で、選挙結果にも影響が及んでくると思っています。

例えばメインビジュアルにキッズモデルを起用したポスターだと、パパママには刺さりますが、僕みたいな独身者にはさほど効果は無いでしょう。
そのため、パパママの投票率は向上しても、独身者の投票率は変わりません。
独身者よりもパパママの得票率のほうが高くなれば、結果的に、子育て世帯にメリットのある施策(保育や教育の充実など)を訴える候補者が当選しやすくなるでしょう。


揉めないよう注意するくらいしか対策できないか?

つまるところ、投票啓発広告は
  • 広報そのものの見えざる影響
  • どういう層の投票を誘発するのか
という二つの面で、選挙結果を左右すると思われます。

「結果を左右」とまでは言えなくとも、選挙の争点を設定するくらいの影響は確実にあると思います。

自治体の投票啓発広告はあくまでも「投票率の改善」を目的としており、選挙結果に影響を及ぼしてしまうのは好ましくありません。
とはいえ一切影響を出さないことも不可能で、せいぜい後々問題にならないよう、公平中立な立場を保つよう注意するのが精一杯でしょう。

世の中には「選挙コンサルタント」なる職業があるらしいです。
今回僕が考えたようなことも含め、投票行動にまつわる様々な心理的要素を駆使して、クライアントを勝利に導くのでしょうか……?

役所は「調整」という言葉が大好きです。
地方公務員であればどんな業務を担当していようともほぼ毎日のように口にする単語ですし、部署名にもよく使われます。
地方公務員向けの啓発でも必ず登場します。

ただ、「調整」の定義は人それぞれです。
各自がそれぞれの定義に基づいて持論を展開しています。

このブログの開設以来、僕もずっと「調整とは何か?」を考え続けてきたところなのですが、最近になってようやく考えがまとまってきたので、ここで一旦紹介します。

調整業務.001

単なる「合意形成」でも「交渉」でもない

地方公務員の調整業務とは
  1. 自陣営にとって有利な結論(落とし所)を
  2. 「客観的妥当性」と「住民感情へのケア」を確保しつつ
  3. 関係者を納得させて実現させる業務
だと思っています。

民間企業にしろ役所にしろ、組織における調整業務とは、単に合意を取り付けるだけではありません。
 
自陣営にとってお得な結果でなければ(損しか生じないケースの場合は損失が最小化される結果でなければ)、たとえ関係者との同意が達成できたとしても、意味がありません。
取りうる選択肢の中でも最善のものを選び取ろうとする、わずかでも自陣営に有利な結論へと誘導しようとする意地汚さが、調整業務においては非常に重要です。

*****

ただし役所の場合は、成果がどんなものであれ、その根拠が「正しい」ものでなければいけません。

「関係者が全員納得しているから問題ないのでは?」という理屈は、役所の場合は認められません。
民主主義の仕組み上、直接的な関係者のみならず、世間一般を納得させなければいけないのです。

「世間一般の納得」というものがまた面倒で、単に論理的・倫理的に正しく、良い結果がもたらされるだけでは足りません。
さらに「感情的な納得」という要素が必須です。

このため、地方公務員の調整能力には、「客観的妥当性の確保」と「住民感情のケア」が欠かせません。
民間企業の調整業務とは一風異なる、役所ならではの要素と言えるでしょう。

*****

もちろん、調整を成功させるためには、関係者の同意が絶対に必要です。
同意を取り付けるための交渉こそ調整業務の本番であり勘所であるのは、役所でも民間企業でも変わらないでしょう。
ただし役所の場合は、本番に先立つ準備のほうも、相当に重要なのです。

調整業務の3段階

調整業務の大まかな流れは前述のとおりであり、3つの段階に分かれます。

自陣営にとって有利な「落とし所」を探る

まずは「落とし所」、つまり「実現可能な選択肢のうち最善のもの」を設定するところから始めます。
 
この過程を通して、
  • 今回の調整において絶対に譲れないポイント
  • 優先すべき要素
  • 時間や費用、ルールなど制約
などの「条件」を整理していきます。

もちろん「落とし所」は、以降の調整プロセスの中でどんどん変わっていきます。
とはいえ最初に条件を整理して「最善手」が何なのかを把握しておかないと、調整過程全体の方向性が定まりません。

「客観的妥当性」と「住民感情へのケア」を満たす説明(根拠)を作る

「落とし所」の案が固まったら、次はこれを正当化するための説明(根拠)を作ります。
 
役所には「二枚舌」は許されません。
直接の交渉相手である関係者にも、無関係な世間一般に対しても、同一の説明を以って納得させなければいけません。
 
このような説明を準備するのは非常に大変で、考慮すべき要素がたくさんあるのですが、少なくともまずは論理的・倫理的に正しくなければいけません。
まず「正しい」ロジックを作ってから、案件ごとの個別性をふまえ、チューニングを加えていくことになるでしょう。

「正しい」説明ができたら、「感情面での適切さ」との両立を模索していきます。
いくら「正しい」説明であっても、感情的に許容できないサイコパスじみたものであれば、理解は得られません。

「論理的・倫理的な正しさ」と「感情面での適切さ」は、たいてい相反します。
バランスをうまく調節しなければいけません。

関係者と交渉して納得させる

調整≒交渉という理解をしている方も多いと思いますが、役所の調整業務に限っていえば、僕はむしろ交渉に臨むまでの準備段階(「落とし所」と「説明作り」)のほうが重要だし大変だと思っています。

とはいえ、関係者が納得してくれなければ調整は成立しないわけで、交渉段階が本番であることに変わりはありません。
 

あくまでも準備した「落とし所」と「説明」を極力そのまま相手に納得してもらうのが、交渉の最大の目的です。

交渉段階で頑張りすぎる(相手を納得させるためにアドリブ的に喋りすぎる等)と、事前に準備した説明内容から外れてしまい、後々に関係者から「説明が違う」「相手によって顔色を変えた、二枚舌だ」という攻撃を受けかねません。
このような批判は、民間企業であれば知らん顔できるのかもしれませんが、役所の場合は致命傷です。何としても避けなければいけません。
 


調整業務に必要な能力(調整能力)

上記の過程を達成するために必要な能力が、俗にいう「調整能力」です。
これを構成する要素として、「知識」「公務員的センス」「洞察力」「プレゼンスキル」があると僕は考えています。

調整案件に関する知識

知識は主に「落とし所を探る」段階で必要です。
 
調整案件に関する知識、例えば
  • これまでの経緯・背景
  • 他自治体の成功・失敗事例
  • 関係法規制などのルール
といった知識がなければ、そもそも「ベストな落とし所」を設定できませんし、「制約条件」を見落とす危険もあります。

公務員的なセンス

落とし所を探る際には、「自陣営にとって何が有利なのか?」という基準が必要です。
これには現時点での損得のみならず将来的な影響も考慮する必要があり、知識だけでは太刀打ちできません。

同様に、説明づくり段階には、「世間一般に通用する妥当性はどんなものか?」「世間一般が感情的に許容できるのはどこまでか?」という基準が必要です。
これも「世間一般」なる抽象的な存在を想定して考えなければならず、ロジカルシンキングが単に得意なだけでは上手くいかないと思います。

これらの能力は、地方公務員として働くうちに培われていくものだと思います。
「公務員的センス」というなんとも抽象的な名称を使わざるを得ず非常に心苦しいのですが、今のところこれ以上にしっくりくる言葉が思い浮かびません。

洞察力・プレゼンスキル

最後の二つは、まとめて「コミュニケーション能力」と称してもいいかもしれません。
 
いずれも主に最後の交渉段階で必要になるものですが、「洞察力」のほうは最初の「落とし所設定」でも重要です。
関係者の意向を最序盤に察することができれば、適切な制約条件を設定でき、より精度の高い「落とし所」が出来上がるでしょう。

プレゼンスキルは、わかりやすくて好感の持てる話し方や身振り手振り、相手の反応を伺いつつ話のペースを工夫する……といった一般的なものです。

奥深い「調整能力」

役所には「トークが上手いわけではないのに調整業務が得意」という方がたまにいます。
特に超有名大学出身の方に多いです。

こういう方は、きっと交渉の準備段階が完璧、つまり「落とし所」と「説明」が完璧なので、話術加算が無くとも関係者を納得させられるのだろうと思います。

「調整能力=交渉能力」という図式は、地方公務員界隈においては表面的すぎます。
地方公務員の調整能力はもっと複合的なもので、一朝一夕で身につくものでもなく、非公務員が即座に真似できるものでもないと思います。

以前からずっと問題視されている「若年層の低投票率」。
若年層が投票に行かないせいで、高齢者向けの施策ばかり充実して、若年層が不当に虐げられている……というふうに、低投票率を世代間闘争の原因とみなす論調すらあります。

仮定の話として、もし若年層の投票率が向上して、若年層の政治力が高まったとしたら、果たしてどうなるのでしょうか?
僕個人的には、若年層全体が幸せになるとは到底思えません。
 
若年層の間でも「勝者」「敗者」がはっきり分かれて、かえって負担が重くなる人も少なくないと思います。

※本記事でいう「若年層」は、だいたい40歳未満をイメージしています。

「若年層内の闘争」という第二ラウンド

全員が得をする施策は存在しません。
年齢、性別、居住地、健康状態、就労の有無、就労形態、職種、収入の多寡、配偶者の有無、子の有無、両親の有無……などなど、個人を構成するあらゆる属性次第で、利害関係が変わってくるからです。
「好み」という主観的要素も大きいです。

とはいえ高齢者であれば、少なくとも「体力が衰えてくる」という万人共通の特徴があります。
そのため、医療負担の軽減やバリアフリーのような施策であれば、高齢者の大部分が得をします。

一方、「若年層」の属性は様々です。
少なくとも高齢者よりもずっと多様だと思います。
したがって、「若年層全員が得をする施策」というものは非常に作りづらいと言えるでしょう。

つまり、若年層の政治力が高まり、若年層向けの施策に充てられるリソースが増えたとしても、若年層全員が得をするとは限らないのです。

施策に費やせるリソースには限りがあります。
政治参加者は、自分(または自分の支持母体)が得をするような施策を実現させようと奔走します。
いわばリソースの奪い合いです。

現状は若年層vs高齢者という世代間でのリソースの奪い合いですが、もし若年層の政治参加が進めば、今度は若年層間での闘争が激化すると思います。
 
同じ若年層とはいえ利害関係が細かく分かれているために、自らの手にリソースを収め、自ら行使しなければ、恩恵にあずかれないからです。
他の人の勝利のおかげで自分も得をする……という「棚からぼたもち」的な展開を期待できないのです。


闘争が起きれば、勝者と敗者が生じます。
若年層の政治力向上の恩恵にあずかれるのは、結局のところ若年層の中でも「勝者」側だけなのです。


「負担の押し付け合い」という第三ラウンド

若年層は、行政サービスの受益者であると同時に、供給者(負担者)でもあります。
納税によってリソースを涵養しているのです。
他の世代と比べても、負担者としての役割が色濃いと思います。

たとえ若年層の政治力が強まったとしても、税の負担割合を抜本的に変えるのは困難です。
金融資産(預貯金含む)に対する資産課税を導入でもしない限り、若年層の負担で高齢者向け福祉サービスを提供、という構図は変わらないでしょう。
せいぜい高齢者特有の負担軽減措置をなくす程度が限界でしょうか?
 
どれだけ頑張っても、若年層は負担者という立場から逃れられません。

つまるところ、若年層内の政治的闘争は、「リソースの奪い合い」であると同時に「リソース負担の押し付け合い」でもあるのです。
もちろん勝者の負担は軽減され、その分の負担が敗者にしわ寄せされます。


勝者はわからないが敗者は決まってる

若年層が政治力を持ったところでリソースそのものが増えるわけではありません。
リソースを配分する過程に、「政治闘争に勝利した」若年層の意見が反映されるようになるだけです。
「政治闘争に敗北した」若年層の意見は採用されませんし、むしろ負担が増えるでしょう。

いずれにせよ、若年層の政治力が向上した結果、一部の若年層はかえって損をする……という皮肉な結果が待ち受けているように思えてなりません。

若年層内の政治的闘争が現実に勃発したら果たして誰が勝利するのか?実際に起こってみないとわかりません。

ただ、独身者が勝利する展開はまずないと思います。
少なくとも子持ち世帯には絶対勝てないでしょう。
もしかしたら、インターネット上でもたまに話題になる「独身税」が現実になるかもしれません。
俗にいうDINKSとかFIREも危うい気がします。


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