キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

2022年08月

去年頃から「EBPM」という言葉が流行っています。
内閣府のホームページによると、

EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)とは、政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすることです。

とのこと。
文面で見ると今更言うまでもなく当たり前のような気がします。

しかし実際のところ、少なくとも地方自治体レベルでは、「合理的根拠に基づく政策」は少ないと思います。
統計データのような合意的・客観的証拠に基づいて政策を組み立てている自治体は、それだけで超先進的といえるでしょう。


政策を決めるのは数字よりも感情

自治体の施策は、「総合的な判断」によって決まることが多いです。
定量的なデータのみならず、有力者や住民の声、世間の風潮、予算制約、首長の政策ポリシーなど、様々な要素をごちゃ混ぜにして結論を導きます。

中でも優先される要素が「人々の声」、つまるところ感情です。

どのような施策であれ、「住民の納得」という感情的了承を得なければ実行できませんし、たとえ定量的に効果が出ようとも、「住民の満足」という感情的成果を達成できなければ、失敗扱いされるからです。

定量的なデータは、決断に至るまでの過程よりも、決断を根拠づけるための材料として使われることが多いです。
意思決定の材料ではなく、意思決定を補強するための補助的な位置付けなのです。

民間企業であれば、「定量的に調査分析→意思決定」という流れをとるところ、役所では「感情に基づいて意思決定→問題ないか定量的に確認」という流れになりがちなのです。

あえて変な表現をすれば、感情ベースで決められた物事を「後付け」で定量的に理由づけているわけです。

「総合的な判断」は叩かれもすれどウケもいい

感情優先の「総合的な判断」は、不透明で少数独裁のよろしくない意思決定方法のように見えるかもしれません。
実際ここ最近、モリカケ桜みたいな事案が明るみになったりして、行政の「総合的な判断」プロセスへの批判が高まっています。
そのためEBPMと声高に表明し、信頼感回復を試みているのでしょう。

しかし、もし定量的根拠に基づいて施策を打ち出したとしたら、これはこれで住民やマスコミから猛烈な批判を浴びるでしょう。
「数字にばかり気を取られて現場を見ていない」とか「施策を利用する側の感情を配慮していない」とか。容易に想像できます。
特に「住民感情への配慮」を求める声は、合理的根拠へのニーズよりも、依然として強いと思います。

何より、定量的根拠がしっかり存在する施策は、あまり意外性がありません。
それゆえに堅実に効果が出るのでしょうが、意外性や新規性が無いと、住民やマスコミからの感情的承認を得られません。
意外性や新規性を帯び、住民やマスコミからウケる施策を作るには、定量的根拠ではなく少数派の感情をベースにするほうがやりやすいです。


加えて、世の中には定量的根拠が存在しない社会問題がたくさん存在します。
これまで調査していないから根拠がない問題もあれば、調査のしようがないために表面化しない問題もあるでしょう。

「定量的根拠が無いから」という理由でこれらの問題を無視することは、行政には許されません。(少なくとも建前上は)
定量的根拠が存在しなくとも、何らかの手を打たなければいけません。

ここでも重要になるのが「感情」です。
定量的根拠は一旦棚上げして、「困っている」という感情に基づいて意思決定することで、データに現れない施策ニーズを拾い上げられます。

地方公務員と統計スキルの何とも言えない関係

民間企業では、統計人材やデータサイエンティストのニーズがどんどん高まっているようです。
こういった方々は「定量的に正しい意思決定をするためのスキル」を持っているわけで、どんな分野でも通用する超汎用的な人材と言えるでしょう。

行政においても「定量的に正しい意思決定」は重要なはず……なのですが、感情に基づく「総合的な判断」プロセスがしっかり染み付いているため、活用の機会はごくごく限られています。
特に困窮者救済要素の強い部署ほど、「困っている」という感情が優先され、定量的な判断が許されない傾向にあるように思います。

たとえ地方公務員が統計学を修めて、頑張ってデータを集めて統計学的に正しく分析したところで、現状では施策には活かせません。
せいぜい議会答弁の一節、しかも野党からの更問い対策に使えるくらいでしょう。

産業振興系の部署のような困窮者救済要素の薄い部署であれば、きちんと定量的データをもとに施策を進めているかもしれませんが、行政全体から見ればかなりの少数派です。


よりよい政策形成のために、統計的知識は間違いなく重要です。
ただし現時点では、実務ではなかなか活用する機会に恵まれないサブウェポンに過ぎません。
しかもサブウェポンの中でも更に使用頻度が低いほうです。

こういう事情があるために、このブログではあまり統計学を推していません。
(僕が数学苦手なのでよくわかっていないのも大きいですが……)
がっつり勉強したとしても、実践する機会が無いために、すぐ忘れてしまいそうです。


マスコミは意気揚々と「行政は統計を軽視している!」と叩いてきますが、もし本格的に統計的根拠ベースで施策を展開したら、今度は「データばかり見て『現実』を見ていない」とか言って叩いてくるに決まっています。
このような世論も、きちんとデータ分析して政策立案してる自治体が今後どんどん成果を上げてくれれば、きっと変わっていくはず。陰ながら応援しています。

地方公務員であれば、誰しも少なくとも一度は「公務員じゃなくて民間に行けばよかった」と嘆くものです。
他の職場が羨ましく思えてしまうのは、地方公務員に限らず、労働者全般に共通する本性だと思います。
ことわざにある通り、隣の芝は青く見えるものです。

ただ、地方公務員(特に新卒で役所に入った人)の場合は、「隣の芝は青い」効果のみならず、さらに特有の原因も上乗せされて、より一層「公務員はやめとくべきだった」という後悔を拗らせていると思っています。

この原因とは……就職前の自己分析不足です。
地方公務員の多くは、「働く」ということについて徹底的に考え抜くべき大学3年生の時期を試験勉強に費やしてしまうせいで、自分自身の「やりたい仕事」「歩みたい職業人生」を特定できないまま働き始めてしまうために、就職後にギャップに苦しみがちなのだと思っています。

受験勉強のせいで情報収集も自己分析もやってる暇がない

民間就活組と公務員試験組の、大学3年生の一年間のスケジュールを比較してみると、わかりやすいと思います。

民間就活組の場合、大学3年生の春頃からぼちぼち情報収集を開始して、夏〜秋にかけてインターンや説明会に参加、冬の後半頃から本格的に採用プロセスに臨み始める……という流れを辿ることになります。
同時に、自分の「職業選択の軸」や「職業的適性」を深掘りすること、いわゆる「自己分析」も行います。

いろんな業界・企業の情報を収集して比較検討(=業界・企業研究)しつつ、自分自身の希望や適性を見定める(=自己分析)……というプロセスを、1年間かけてじっくり進めるわけです。


他方、公務員試験組の場合は、大学3年生の春〜夏頃から公務員試験対策を始めます。
だいたいこの時期から大学主催の学内講座や予備校のコースが始まりますし、独学勢であっても「試験対策は1年前から」という目安で動く人が多数派のようです。

あとはひたすらずっと受験勉強優先の日々が続きます。
説明会やインターンに参加したり、受験候補自治体の情報収集したり、自己分析したりもするでしょうが、試験勉強の負担があるせいで民間就活組ほどには時間も労力も割けないでしょう。


民間企業を知らないのにどうして「公務員のほうがいい」と判断できるのか?

民間就活組と比べると、公務員受験組は、量的にも質的にも自己分析が不足しがちです。

量的は不足は、先述したとおり、受験勉強に時間と労力を奪われるせいです。
民間就活組が約1年かけてじっくり自己分析するところ、公務員試験組はエントリーシートを書く段階に至ってようやく自己分析に着手……なんて場合すらあるでしょう。

質的な不足は、情報収集の幅が狭いせいです
情報収集と自己分析は、別物ではなく一体的に進めるものです。
より正確にいうと、情報収集をしなければ、自己分析はうまくいかないと思います。

「自己分析」というと、ひたすら自分の過去や内面を掘り下げていくイメージがあるかもしれません。
ただし、就職活動における自己分析とはあくまで適職を見出すための分析です。
 
学生時代までの経験だけであっても「バリバリ稼ぎたい」「プライベートを優先したい」程度の大枠は特定できるかもしれませんが、具体的にどういう業界・職業に就くのがベストかを考えようとすると、どうしても材料が足りません。
世の中にはどういう仕事が存在するのか、つまりどういう選択肢が存在するのかをインプットしなければ、分析は行き詰まるでしょう。

民間就活も公務員試験も、就職するためのプロセスという意味では同一であり、やるべき自己分析も同じです。
しっかり自己分析するためには、幅広い業界・職業情報が不可欠です。

特に公務員就職の場合、「どうして民間ではなく公務員なのか」を深掘りするためには、公務員の情報のみならず民間の情報も幅広く必要なはずです。
しかし実際のところ、ちゃんと民間企業の情報を収集して業界・企業分析を経たうえで公務員を選択する人は、ごくわずかだと思います。

自己分析が甘いまま地方公務員になっちゃうと……

つまるところ、地方公務員の多くは、学生時代に民間企業の情報収集を怠ったせいで、自己分析が浅いまま働き始めてしまうのです。
 
そして、地方公務員として働く中で遅ればせながら自己分析が深まっていき、「やりたい仕事」や「歩みたい職業人生」が明確化されていきます。
その結果、人によっては「民間のほうがよかった」と本気で後悔し始めるのです。

大学3年時の苦労が一生を救う?

公務員試験対策を始める大学3年生の大半は、しっかりと情報収集や自己分析を済ませたうえで公務員を選択しているわけではなく、「今のうちから勉強を始めないと間に合わないから」着手するのでしょう。
たとえこの時点で「絶対公務員になるぞ!」と固く決意していたとしても、情報収集がまだまだ足りていないと思います。

情報が足りない中で下した判断は、正しいとは限りません。
なので僕は、少なくとも大学3年生の冬頃までは、受験勉強と並行して民間企業についても幅広く情報収集することを強くお勧めします。

国家公務員か地方公務員か、特別区か政令市か、都庁か地元県庁か……みたいな官官比較だけでなく、ちゃんと民間企業も選択肢に含めて就職先を比較検討することで、自己分析が深まり、後悔の少ない決断ができるはずです。



今年4月に受験したITストラテジスト試験、合格していました。
元々は応用情報技術者試験を受けるつもりだったのですが、欲が出てしまい(もし落ちても秋に応用情報リベンジできるし……というバックアップもあり)、応用情報をすっ飛ばして高度試験に手を出してしまいました。


以下、地方公務員とは全く関係ない話なので、興味の無い方はブラウザバック(死語?)してください。

午前1:できれば免除

午前1は4択マークシート式で、同日開催の応用情報技術者試験の午前問題の一部がそのまま出題されます。
問題自体は応用情報技術者試験と同じ……ということは、応用情報技術者試験の対策をすればいいわけです。

しかしこれが非常に大変です。
出題範囲が広くて暗記事項が多く、計算問題もバラエティ豊富で、まともに対策しようとすればものすごく時間がかかります。
そのため、午前1試験は免除を狙うのが望ましいです。(免除の条件はIPAホームページを参照)




まともに午前1対策をするのであれば、応用情報技術者試験の参考書を参照しつつ過去問演習を繰り返すのがベストでしょう。

僕の場合、昨年の秋試験で応用情報技術者試験を受けるべく(試験日に急遽仕事が入り結局受験できず)昨年4月頃から地道に勉強していたおかげで、午前1を突破できました。

午前2:ひたすら過去問

午前2も4択マークシート式で、IPA試験の区分でいう「ストラテジ系」の知識が問われます。
出題範囲が狭いうえに過去問焼き直しも多いので、参考書を読みつつ過去問演習すれば、難なく突破できると思います。


午後1:ひたすら過去問

午後1は論述式で、ほぼ国語です。
そこそこ長い問題文があり、これを読んで20〜40字くらいで論述させる問が5つくらい用意されます。
(大学受験でいうと、全統記述模試みたいなイメージ)

ただ、大学受験の国語とは異なり、問題文全体を俯瞰して論述させるような設問は無く、問題文中の特定の一箇所にヒントが集中している設問ばかりです。
つまるところ、設問の出題意図を正しく理解し、問題文中からヒントを探り当てることができれば、容易に正答できます。
これはもう慣れるしかありません。


午後2:なるべくたくさんのパーツを準備しておく

午後1までは前哨戦のようなもので、本番は午後2の論文試験です。
2時間という試験時間の中で、少なくとも2,000字ほどの文章を書かなければいけません。
しかもテーマは毎回変わります。
さらには手書きです。ITとは……?

ちゃんと実務経験のある方なら、経験のストックからふさわしい事例を持ってきて即興で書き上げられるのでしょう(そもそもITストラテジスト資格は、こういう人のスキルを証明するための資格なのでしょう)。

しかし、経験値の低い受験生の場合は、そもそも論文に使えるストックがありません。
わずかな経験を無理やり転用してみたり、ゼロからストーリーを捻ろうとすると、到底時間が足りません。

そのため、IT素人が論文試験を突破するには、論文に使えそうな事例を「架空の経験」としてあらかじめ複数捏造しておくしかありません。
そして、いろんな角度から「架空の経験」を描写した文章を準備、つまり論文のパーツをなるべくたくさん準備しておいて、試験本番では問題文に応じてパーツを組み合わせて論文を作っていく……という作戦しかないと思います。

あとはとにかく実際に書くしかありません。
試験本番では、問題文を見て「どのパーツを使うか」「各パーツをどう組み立ていくか」「問題文に合わせためにはどういうチューニングが必要か」を考え、その結果を文章に落とし込んでいく……というプロセスを踏みます。
これをひたすら練習するのです。

パーツの作り方

あらかじめパーツを準備しておいて、試験本番ではパーツを組み合わせて論文を作る……という方法自体は、目新しいものではありません。むしろオーソドックスな手法です。
他にもいくつか流派があるようですが、僕は「パーツ流」で突破したということを、まずお伝えします。
 
パーツの作り方はこんな感じです。

1 論文試験の雰囲気を知る

まずは参考書を読んで、論文試験の全体像を把握します。

2 「架空の経験」の題材を決める

「架空の経験」として取り上げる題材は何でもいいですが、複数個用意しておいたほうが無難です。一つだけだと、問題文と相性が悪かった場合に詰みます。


少なくとも
  • IT技術を使った新サービスで売上を伸ばした
  • IT技術を使って業務プロセスを省力化してコストカットした

汎用性が高いこの2つは、必須だと思います。

また、できれば自分と馴染みのある題材を選ぶほうが、パーツを作りやすいですし、試験本番で行き詰まったときのアドリブにも効かせやすい(即興でエピソードをでっち上げたり)です。

重要なのは、IT技術導入の成果を定量的に測定できること、そして投資効果を金額で評価できることです。
お金に繋がらない題材(利便性を高めるだけ等)は、論文化しにくいので、避けたほうがいいでしょう。

僕は3題材を準備しました。
いずれもマンション管理ネタで、「新サービスで売上増」「省人化によるコストカット」「データ収集&分析で満足度向上」の3つです。
マンション管理士と管理業務主任者資格を活かせたのは、これが初めてです。

試験本番では「新サービスで売上増」を使いました。 

3 パーツを作っていく

題材が決まったら、その題材をいろんな視点から描写して、100〜300字程度のパーツを作っていきます。

描写すべき視点は、参考書(後述)にひととおり書いてあります。
あとは過去問の問題文や論文集を読んで、足りないものを補っていけばいいでしょう。
僕の場合、1題材あたり、全パーツ合計で1.5万字ほど準備していました。

「パーツを作る」と言っても、必ずしもゼロから作文する必要はありません。
書籍や雑誌、インターネット記事から、使えそうな記述を「探して」「収集」するほうが、むしろ重要です。
未経験者なのに全部オリジナルで書き切ろうとしたら、かえって現実味がなくなりかねません。

4 パーツの中身を定量化する

ITストラテジストの論文試験では、「何事も定量的に表現したほうがいい」という通説があります。
(定量的に表現したほうが現実味があり、説得力が生まれるということなのでしょうか?)

ひととおりパーツが出来たら、定量的に表現できるものは定量化していきます。
特に、投資コストと投資効果(売上増やコストカット)は、きちんと積算根拠付きで用意しておく必要があります。
そのまま出題されることもありますし、いざという時の字数稼ぎにも使えます。

僕が使った参考書類

 
・ALL IN ONE パーフェクトマスター ITストラテジスト



試験全体の参考書です。
午前2はこれだけで十分だと思います。
全体像を掴むため、最初に読みました。


・応用情報技術者 合格教本


午前1対策用に使用しました。
一応通読しましたが、全く記憶には残っていません。
とにかく詳しいので参照用に最適です。


・ITストラテジスト午後2 最速の論文対策

僕が師事した「パーツ流」論文作成法のバイブル。
パーツとして準備しておくべき視点項目は、この本にひととおり書かれています。


・ITストラテジスト 合格論文の書き方・事例集


前半が論文執筆法、後半が参考論文集になっています。
前半パートは正直あまり体系化されておらず、論文素人がこの一冊だけ回しても書けるようにはならないと思われます。
ひととおりパーツを準備して、経験値を積んだ状態で読むほうが、糧になると思います。


・業種別審査事典

いろんな業種の概略が掲載されている事典です。
パーツ作りにものすごく使えます。
(僕が本番で書いた論文の3割くらいは、業種別審査事典の丸写しだったり……)
大きい図書館に行けば、だいたい置いてあると思います。


・新版ITコンサルティングの基本
・新版SEの基本
この1冊ですべてわかる 新版 ITコンサルティングの基本
克元 亮
日本実業出版社
2021-05-20


新版 SEの基本 この1冊ですべてわかる
山田隆太
日本実業出版社
2022-02-28


そもそもIT業界とはどんなものなのかを知るために一読。
パーツの内容を補強するのに使えました。


・バランス・スコアカードの使い方がよくわかる本



目標や成果を定量的に評価して、投資効果があることを証明する……という、どんな題材でも必要になり、かつ合否を分つ重要な要素(という噂)を、しっかり書くための参考書です。
ちゃんと効果のある数値目標の設定方法がわかります。


個人的な工夫

午後1の問題文を参考にする

午後1試験の問題文では、まずは現状分析から入り、IT導入のプロセスを解説して、上司や経営層へのプレゼン場面で締められるパターンが多いです。
これはまさに、典型的な午後2の論文と同じです。
午後1の問題文は、見方を変えると、午後2論文のサンプルとも言えます。

僕の場合、ITの導入も上司へのプレゼンも経験したことがなく、どういう手法や手順があるのかすらよくわからなかったので、午後1の問題文がものすごく参考になりました。
午後1の問題文の論理展開を、題材だけ置き換えて、そのままパーツとしてストック使わせてもらいました。

「午後1はどうせ国語問題だから対策するだけ無駄」という説もありますが、未経験者ほど、午後1の問題演習が午後2対策にも役立つと思います。

設問アで伏線を張って、設問イ・ウで回収する

僕はIT業界の実務経験が無い代わりに、文章を書く経験は比較的豊富なほうだと自負しています。
このブログを含め累計7年くらいブログを書き続けていますし、SS(5,000〜10,000字くらいの短編)作家歴はもっと長いです。

経験則として、文章に一貫性・納得感を持たせるには、うまく伏線回収するのが鍵です。
特に短編の場合は、冒頭の設定をきちんと消化することが重要です。
「あの要素、せっかく字数を割いて描写されていたのに、全然活かされなかったな」と思われると、文章自体がまとまっていないように感じられるものです。

ITストラテジスト試験の論文でも、冒頭に張った伏線をきちんと回収することを意識していました。
具体的には、設問イ・ウで取り上げる内容を、設問アでも「業界動向」や「自社の課題」として、軽く触れるように心がけました。

具体的にいうと、マンションの共用部分管理のIoT導入というネタの場合、設問イとウで「点検業務を省人化できコストカットできる」ことをメリットとしてアピールするのに先立ち、設問アで「技術者不足と人件費高騰のため点検費用が高騰しており利益率を圧迫している」という伏線を貼りました。

未経験チャレンジには時間がかかる

ITストラテジスト合格までの勉強時間は、累計で約140時間でした。
しっかり実務経験のある方は50時間くらいで合格できるらしいので、かなり余計に時間を要してしまいました。
「コスパがいい」とも評されているITストラテジストですが、未経験者の場合はそう甘くはないと認識しておいたほうが無難でしょう。

このうち論文対策に要したのは約50時間です。
30時間はパーツの準備、20時間は実際に手を動かして論文を書いていました。(本番までに6本書きました)

パーツ流で論文対策する場合、実際に論文を書いてみて、試験本番で行う「パーツを組み合わせて論文を組み立て、ところどころ微修正して完成度を高める」というプロセスの練習が欠かせません。
論文を書いてみると、不足しているパーツにも気が付きます。
ある程度パーツが揃ってきたら、早い段階から論文を書く練習をしていけばいいと思います。
 

地方公務員という仕事は苦情から逃れられません。
僕はこれまでに複数の部署を経験してきましたが、どの部署でも業務とは関係ない公務員批判(無駄に給料が高い、人数減らせ、態度が悪い等)が過半数を占め、業務に関する苦情は半分未満にとどまります。
さらに業務関係の苦情でも、無理やり役所をこじつけているだけのイチャモンみたいな内容が多く、本当に役所に責任がある苦情は、全体の2割程度です。

業務と無関係な苦情を延々聞いていると、虚しくなってきます。
一個人の私的欲求解消のために地方公務員の時間が割かれているという意味で、間違いなく「税金の無駄」でもあります。
金額ベースで見れば、紙の無駄よりもよっぽど大きいと思います。

ただ、地方公務員に対しては誰でも気軽に不満をぶつけていいという風潮には、一定の意義もあると思っています。

地方公務員はどうして叩きやすいのか

地方公務員が悪感情の捌け口になっているのは、
  1. 「どれだけ罵詈雑言を浴びせようとも反論してこない」と思われている
  2. 「能力的に劣っている」と思われている
  3. 「悪事を働いている」と思われている
  4. 「税金で食わせてやっている」という負い目がある
  5. マスコミや偉い人が日々地方公務員を叩くことで「地方公務員は叩かれて然るべき」と正当化されている
  6. 電話一本でいつでもどこでもすぐに叩けるし、役所に行けば確実に叩ける
このあたりの理由が大きいと思います。
裏を返せば、このあたりの条件を満たせば、地方公務員でなくともサンドバッグ化しかねません。

2〜4を満たす層は地方公務員以外にも複数存在しますし、6は組織であれば大体当てはまります。

5を満たす層は、最近どんどん増えています。
インターネットの発展により、ヘイト系の主張が格段にやりやすくなったからです。
今やどのような層であれ、どこかの大学教授やメディア関係者、あるいはインフルエンサーから叩かれています。
誰かを叩きたいと思えば、ちょっと検索するだけで、叩くことを正当化する主張が見つかるでしょう。

地方公務員特有の事情は、今のところは1だけでしょうか。


サンドバッグ(=公務員)が無くなったらストリートファイトするでしょ? 

もし何らかの事情があって地方公務員を叩けなくなったら、日本全国津々浦々に充満している「地方公務員へのヘイト感情」は、どこに向かうでしょうか?
きっと先述した1〜6の条件のいくつかを満たす「叩きやすい層」に向けられるでしょう。

具体的には、子どもや高齢者、障害者、生活保護受給者、賎業扱いされている職の従事者あたりでしょうか。
いずれにしても、地方公務員よりも雇用や収入が不安定で、身体的にも強くはありません。
地方公務員よりも「打たれ弱い」といえると思います。
こういった方々が、今の地方公務員批判並みの頻度・強度で罵倒されたとしたら……悲劇的結末が待ち受けているでしょう。

というよりも、「大多数から見下されて公然と叩かれているのに雇用も収入も確保されている」という地方公務員の社会的地位が異質すぎるのでしょう。
僕自身、これまで何度も殺害予告されてきましたし、何度も「訴えてやる」と宣戦布告されてきましたが、それでも冷静でいられたのは、「どれだけボロクソに罵倒されたところで実害は無い」という安心感があったからです。
もちろんストレスは感じますが、それだけです。実害はありません。


地方公務員は圧倒的な「叩かれやすさ」を背負わされており、万人からヘイト感情を日々ぶつけられることを宿命づけられています。
この現状が地方公務員に多大なストレスをもたらし、職業満足度を損なっています。

ただ、見方を変えれば、地方公務員が悪感情の捌け口となることで、少なくない人々が救われているはずです。
「地方公務員は、大人しく叩かれることで、一定の役割を果たしている」
こう捉えることで、僕は苦情対応ストレスを和らげています。

前回の記事に続き、僕が転職フェアに参加した結果をお届けしていきます。
今回は市役所・町役場ブースの探訪記です。

僕が参加した転職フェアは他県で開催されたもので、出展していたのも他県自治体です。 
さすがに県内市町村の説明会に乗り込む度胸はありません…… 

 

聞いてみたいこと

市役所・町役場ブースを訪問したのは、採用担当者から是非とも聞いてみたい事柄があったからです。

ひとつはアピールポイントです。
自治体の採用説明会や採用パンフレットでは、役所の仕事全体を幅広く取り上げるのではなく、前向きで華々しい仕事を「客寄せ」として紹介するのが通例です。
市町村の場合は、まちづくりや観光、移住定住あたりがよく取り上げられている印象です。

ただ新型コロナウイルス感染症のせいで、このあたりの「花形事業」は現在縮小中です。
そこで、代わりに何を取り上げるのか、気になっていました。

もうひとつは定年延長の影響です。
「定年退職者が減る分だけ採用者数も減るのでは?」という噂の真相を、無邪気に質問できる絶好のチャンスです。

加えて、参加者側からどのような質問が挙がるのかも興味がありました。
ブログのネタにできそうだからです。

捌き方に実力差あり

今回の転職フェアでは、全部で3自治体から説明を伺いました。
いずれのブースも大人気で、ほとんどの民間企業ブースよりも賑わっていました。
一番混んでいた自治体では、20人ほどの待ち行列ができていて、ブースにたどり着くまで小一時間かかりました。

ただ、待ち行列の捌き方には、明らかに自治体ごとに実力差が出ていました。
ひたすら待たせるだけで放置している自治体がある一方で、
  • 待っている人にQRコード付きのチラシを渡して「概要説明は動画でも見られますよ」と案内する
  • 待っている人に対して「質問あったら何なりとどうぞ」と個別に声かけ
など、待ち時間を無駄にさせない工夫をしている自治体もありました。
こういうところで印象が激変するんですよね。勉強になりました。


貴重なお話ありがとうございました

いずれの自治体も、15〜20分ほど採用パンフレットに沿って概要説明した後、質疑応答時間を設けていました。

SDGs激推し

概要説明では、いずれの自治体もSDGsへの取組みにかなり時間を割いていました。
役所自らがSDGsを実践するとか、市民にSDGs意識を浸透させる事業を展開しているとか……
「従来から存在する施策や制度を、SDGsの観点から捉え直して〜」という言い回しも、複数回聞こえてきました。
まちづくりや観光に代わる「花形事業」「客寄せ役」として、SDGsを位置付けているのかもしれません。

定年延長期間中の採用者数減は確実か

定年延長に関しては、いずれの自治体でも、概要説明では言及されませんでした。
そこで、こちらから質疑応答時間に「最近、公務員試験予備校の案内で『これから定年延長が始まると退職者数が減るから採用者数も減り、試験倍率が上がります!』という文句をよく見かけるのですが、実際のところどうなんですか?」と質問してみました。

その結果、いずれの自治体でも、「あくまでも担当の感覚ですが……」という前置きつきで、
  • 退職者数が減るのは確実で、その分だけ採用者数を減らさなければいけないのも確実
  • 退職者数が減るのは2年に一度だが、採用者数も2年に一度のペースで減らすとなると、職員の年齢構成が乱れるので、減少幅は年度間で均したいところ
  • 実際のところ、「フルタイム勤務の再任用職員」が「61歳以上の正規職員」に置き換わるだけなので、組織が急に高齢化することは多分ない

とのことでした。
 やはり、減少幅は未知数ではありますが、採用者数が減るのは間違いないと思われます。

やはり待遇が一番気になるのか

順番待ちをしている間は、ずっと他の参加者がどのような質問をしているのか、耳をそば立てていました。
聞こえてきた範囲では、待遇に関する質問が多かったです。
  • 有給の取りやすさ
  • 残業の有無
  • 休日出勤の有無
このあたりは誰もが尋ねていました。
そして「配属される部署によって様々です」と即答されていました。

全体的に質問をする人が少なく、質問するにしてもホームページを見ればわかるレベルのものばかりで、正直物足りなかったです。
やはり業務内容自体には全然関心がなく、「クビにならないし収入安定している」という理由だけで公務員を目指す方が多い、ということなのでしょうか……


機会があれば、都道府県庁の中途採用説明会にも乗り込んでみたいです。

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