キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

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2023年08月

どれだけ成果を上げようとも、どれだけしくじろうとも、待遇にはさほど反映されないのが地方公務員という仕事です。
より正確に言うと、業務実績に応じて人事評価が上がったり下がったりはするものの、人事評価と待遇があまり連動していません。せいぜいボーナス(勤勉手当)の支給額が数万円増減する程度です。
自分みたいな無能閑職にとっては非常にありがたい仕組みなのですが、優秀な職員の皆様はさぞかし憤っていることでしょう……
 
ただし、役所の中には、人事評価とは別に「評判」という評価軸も存在します。
大いに実害をもたらすのは「評判」の方です。
「評判」が低下すると、庁内の協力者が減ってしまって業務の手間が増えますし、職場でのストレスも激増します。


「人事評価」と「評判」を別物として考えたほうがすっきりする

我々は普段から、他の職員に対して評価を下しています。
  • 部下のみならず上司のフォローにも奔走している苦労人だ
  • 事務作業は得意だけどコミュニケーションが下手
  • 若いのにパワハラの気がある
  • いい歳して気配りが全然できていない……などなど。
こういう他者評価の集合体が「評判」です。
人事課が決めた基準に沿って行われる統制的な評価(=人事評価)とは全く別物の、自生的・民主的・多面的な職員評価といえるでしょう。

ここでいう「評判」は、あくまでも仕事面を評価しているもので、人間的な「好き/嫌い」とは関係ありません。
「業務能力の評価だって主観的な好き嫌いに影響されるだろ……」と思うかもしれませんが、実際我々は普段から
  • 仕事はできるけど嫌いな人
  • 仕事はできないけど人間的に好きで憎めない人
という評価を、他者に対して下しているはずです。
こういうカテゴリーが存在する以上、主観的な好みと業務能力をある程度分離して思考できていると考えて問題ないと思います。

評判は絶対評価ですが、人事評価は相対評価です。
そのため、評判と人事評価は相関していると思われますが、実態はよくわかりません。
(後述しますが、評判が良いほど、高い人事評価を獲得しやすいはずです)

評判が良いけど人事評価は高くない……という職員は少なくないでしょうし、反対に評判が悪いのに人事評価が高い職員も存在します。
「パワハラで後輩を潰しまくっているのに出世コースに突入する職員」なんかは、まさに「評判は悪いが人事評価は高い」というケースなのでしょう。

評判次第で役所生活が激変する

役所生活に影響してくるのは、人事評価よりも評判のほうです。

評判が良い職員には、役所組織が味方をしてくれます。
組織内の人望が厚く協力者がたくさんいますし、初対面の相手からも好意的に接してもらえます。

別部署の全然知らない人からいきなり電話がかかってきて、「資料ください」と依頼された場面を想像してみてください。
相手方の評判次第で、多少なりとも対応が変わるのではないでしょうか?

役所の仕事のほとんどは、一人では完結しません。他の職員とのコミュニケーションを伴います。
評判の良い職員は、組織内のコミュニケーションが円滑に進められますし、一度のコミュニケーションから得られるものも多いです。
ゆえに仕事を進めやすく、成果も出しやすいと言えるでしょう。
ひいては人事評価も高めやすいはずです。

何より、役所組織内に味方がたくさんいる、つまり職場の人間関係が良好であれば、仕事のストレスがかなり軽減されるはずです。
総務省資料によると、メンタルヘルス不調による休職に至った理由のうち最多なのが「職場の対人関係」です。
人間関係によるストレスの影響がいかに大きいかを物語っています。



何より評判は、部署異動してもリセットされません。
一度築きあげてしまえば、どこの部署に異動しようとも有用な資産になります。

逆に言えば、一度落ちた評判もずっと引き継がれていきます。
人事異動によって人間関係自体はリセットされようとも、評判が悪い職員は色眼鏡をかけた状態で見られてしまい、マイナスからのスタートになります。

果たして僕の評判はどこまで落ちるのか?

評判を高めるにはどうすればいいのか、いろいろ考えてみましたがよくわかりません。
生来のコミュニケーション能力によってほぼ決まるような気もしつつ、「口下手だけど評判の良い職員」も少なくないことを思うと、その他の要素も少なからずありそうです。

「人事評価は高くないが評判は悪くない」というポジションを確立できれば、役所生活はかなり楽になると思います。
評判のおかげで仕事しやすく、人事評価が高くないおかげでハードな部署には配属されません。
仕事がさほど忙しないおかげで精神的なゆとりを保てて、いつも朗らかでいられるので、「あの人はいつも接しやすいね」とさらに評判を高めていけます。

民間企業であれば、こういう社員は年齢問わずリストラの対象なのでしょう。
しかし役所はこういう職員を切れません。少なくとも勧奨退職年齢までは安泰です。
地方公務員の特権を活かせる生き方だと思います。

僕もこの路線を目指していたのですが、あまりに庶務の仕事が不出来すぎて、日々「評判」が落ちていくのを実感しています……
本当、僕に対する表情とか口調がどんどん冷たくなってきてるんですよ。
このままいけば、忘年会スルーしても全くお咎めねさそうです。

僕の勤務先県庁には「主任」という職位があります。
ヒラの主事と係長の中間に位置する職位です。
試験は無く、だいたい30歳前後でみんな横並びで昇進します。

一般的に「主任」といえば、ヒラ係員たちをまとめる役割だったり、係員業務の中でも比較的ヘビーな仕事を任せられたりするポジションにあたると思われますが、僕の勤務先県庁ではヒラとほぼ同じ扱いです。
「主任しか就かない席」はほとんどありませんし、主任と主事が入れ替わる(主任の後任が主事だったり、主事の後任が主任だったり)ことも日常茶飯事です。

入庁以来いわば「名ばかり」の主任たちを眺めてきて、「主任って何のためにいるんだろう?」と常々思ってきました。
そして今、僕自身が主任になり数年が経ち、ようやく主任の役割が見えてきました。

主任の役割、それは「疑う」ことだと思います。
ヒラの主事と比べて役所生活が長くて仕事に慣れている分、心にゆとりが生まれているはずです。
そのゆとりを活かして、目の前の現実に疑問を呈するのです。

「後輩」を疑う

まず真っ先に疑うべき相手は、職場の後輩です。
後輩の仕事ぶりを常に疑いの目で眺めて、腑に落ちない点があればどんどん指摘していけばいいと思います。

ただし、あくまでも「口を出す」だけです。
後輩を疑うところまでは主任にも許されていますが、後輩が間違っていると結論づけたり、後輩の言動を抑止する権限は、主任にはありません。ここまでくると上司の権能です。

後輩に対して疑義を提示して、少し足踏みさせて考えを深めさせる。
こうすることで、後輩の仕事が少なからずブラッシュアップされて組織に迷惑かけずに済むでしょうし、(迷惑に思うかもしれませんが)後後輩自身の成長にもつながるでしょう。

「上司」を疑う

上司の役割はいろいろありますが、主要な役割として「判断を下す」ことが挙げられます。
判断を下す瞬間、上司は完全なる「正しい存在」でなければいけません。

入庁当時と比べると、主任になる頃には上司との心理的距離が随分近づいて、上司の気持ちがわかるようになってきているはずです。
「正しい判断を下さねば」というプレッシャーの重さにも、少なからず勘付いていることと思います。

上司が下した判断を部下がすんなり受け入れる場合、判断が正しいか否かの責任は、全面的に上司にあります。
一方、上司の判断に対して部下がやんわりと疑問を挟み、わずかでも議論をした瞬間、部下に対しても責任が共有されます。
正しいか否かの判断過程に、部下も関わることになるからです。

このようにして部下と責任を共有できることで、気分が楽になる上司も少なくないでしょう。
上司の心理的プレッシャーを緩和するのも、ヒラ主事と比べて上司との距離が近い主任の役割だと思います。

もちろん、部下からの異論を忌避するタイプや、自分一人で判断を下すことに快感を覚えるタイプの上司もいるので、相手を見ながら必要に応じてやればいいでしょう。

「組織」を疑う

次に疑うべき相手は組織です。
常々「おかしい」「間違ってる」と感じている事柄のみならず、これまで盲目的に信用してきたことも含めて、幅広に疑ってかかればいいと思います。

重要なのは、愚痴や批判に終始するのではなく、きちんと疑問を抱くことです。
何かが「嫌だ」とか「ダメだ」とか喚くだけではなく、「なぜそうなっているのか」を徹底的に問い詰めていくのです。

主任にもなると、役所在籍年数が長くなり、過去の因縁や陰の権力者といった裏要素が見えてくるものです。
主任には、既存のルールに違和感を覚えるだけのフレッシュさと、既存のルールの一層深掘りするための基礎知識が備わっています。
これらを両立できるのは主任のうちだけでしょう。
 
奇しくも今はDXの時代です。ルールを変えることのハードルが下がっています。
「組織を疑う」ことの価値も高まっているはずです。

「住民」を疑う

正直なところ、主事と主任の間には大して能力差は無いと思います。
職位の差よりも個人差のほうが顕著でしょう。
例えば、出世コース候補の3年目主事と、主任3年目の僕を比べれば、前者のほうが圧倒的に優秀です。

ヒラ主事と主任との間で差が開くスキル、つまり役所生活が長ければ長いほど身につくスキルといえば、住民対応くらいでしょう。
より正確に言えば、攻撃的な言動を浴びせられても一定の冷静さを保てる(むしろ罵倒されればされるほど冷静に思考を回せる)技能です。

単に苦境を申し立ててくるのみならず、執拗に役所組織や職員個人を攻撃してくる住民の方々には、何らかの目的があるものです。
一方的に怒鳴ったり机を叩いたり椅子を蹴ったりしてくる住民に対して、ヒラ主事であれば、その場を収束させるだけで精一杯かもしれません。
しかし主任であるからには、住民の主張を鵜呑みにせず(もちろん話は聞きつつ)、その背後にあるカネや権力構造を探るくらいの付加価値をつけたいところです。



現状に対する不平不満を垂れ流すだけなら、ヒラ主事はもちろんのこと、非常勤職員の方々や外注先・出入りの業者さんにだって可能です。
不平不満を単に発散させるのではなく抱えたままにして、「なぜ」という方向に思考を深めてこそ、主任なのだと思います。

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