キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

2024年08月

今月は地方公務員関係の気になるニュースが多かったので、まとめて言及します。

本当にこんなに賃上げできるのか?(人事院勧告)



過去最大の引き上げ幅になるということで、とてもありがたいです。
ただ、賃上げの財源はどこの自治体も厳しいと思われ、人事当局はなんとか骨抜きにして人件費総額を抑えようと工夫するんじゃないかと思っています。

期末勤勉手当の支給月数はごまかせないとしても、昇給昇格ペースを遅らせたりすれば、月給引上げの影響は少しは誤魔化せるんじゃないかと。
そのため僕は、自分自身の収入増にはあまり関心がありません。期待もしていません。

それよりも、政治家やメディアが「公務員の賃上げ」をどのように取り扱うのか、気になっています。

日本を牛耳る高齢者世代にとって、公務員の賃上げほど無意味な施策はありません。
自分たちに恩恵が無いどころか、自分たちに割ける財源の縮小とほぼ同義だからです。まさに百害あって一利なし。
そのため、政治家やメディアは、「公務員の賃上げなど言語道断!」と一喝すれば、高齢者世代の人気を簡単に獲得できると思います。
支持者を一気に増やせるわけです。

一方で、「賃上げが必要」という風潮もかなり強いです。
いくら嫌われ者の公務員とはいえ、うかつに「賃上げ不要」と主張すれば、主に現役世代から叩かれかねません。

教職調整額の引上げも相まって、来年度は公務員人件費が爆増すると思われます。
そのため、例年以上にニュースバリューがあるので、いろんな人や組織が公務員人件費に言及してくるのではないでしょうか?
百家争鳴のごとく議論が盛り上がるのはないかと期待しています。

地域手当があるところはギスギスしてそう(他人事)

地域手当の率の見直しも興味深いです。
  • 北関東各県の12~16%エリアが結構下がってる
  • 一方で神奈川県が躍進していて、これまで0%だった自治体も12%の最低保証へ。藤沢市は12→16に上昇
  • 群馬県では、県庁所在地の前橋市3%に対し、ライバル高崎市が6%でダブルスコアをつけていたところ、今回の見直しでどちらも4%に揃う
特にこのあたりは、当事者の方々には悲喜こもごもありそうで、内心どのように思っているのか気になるところです。
田舎県庁職員的には、地域手当が出るだけで嫉妬してしまいます。


男性激減による女性割合増(国家一般職の合格人数)



国家一般職の合格者に占める女性の割合が過去最高を記録したとのこと。
ここ数年、地方公務員でも、合格者に占める女性割合が上昇してきており、「女性職員割合の増加」は公務職場に共通する現象なのだと思われます。

ただ、よく見ると、女性の合格者の頭数が増えているわけではなく、単に男性の合格者が減っているだけなんですよね……

記事では「女性にとって働きやすい職場環境作りが進んでいる影響」と分析されていますが、これはあくまでも「男性と比べて女性の減少幅がなぜ小さいか」を分析しているものです。
「公務の職場は、女性にとって働きやすい環境なんだ」と理解するのは非常に危険だと思います。

そもそもの大前提として、公務員試験の受験者は激減しています。
男女ともに敬遠されつつある中で、あくまでも相対的に、女性のほうが残っているというだけなんですよね……

辞めたくなる気持ちはよくわかる



自治労が調査した結果、能登半島地震で大きな被害を受けた5市町で、なんと6割の職員が発災後に「辞めたい」と思ったとのこと。
僕も対口支援で現地入りましたが、辞めたくなる気持ちはよくわかります……
セルフネグレクトのような投げやり状態になっている方が少なくありませんでした。

総務省「定員管理調査」によると、調査対象になった5市町の一般行政職員は1,049人(R5.4.1時点)。
ネットの反応を見ていると、「自治労の調査はサンプルがおかしいしバイアスかかりまくりだから意味が無い」という意見も多いようですが、このアンケートの回答者は211人なので、自治労実施のアンケートにしては結構回答率が高いのでは?と思います。

果たして県庁は大丈夫なのでしょうか……


ネットでバズってる地方公務員がカスハラを助長している?

職場内回覧物の定番、時事通信社の「地方行政」。
僕はざっと目次を見て、興味のある記事だけ読んでいるのですが、先日の号に大変興味深い記事がありました。
【2024年08月01日 第11312号】掲載の「新時代を生き抜く公務員講座 (23)カスタマーハラスメント防止対策」という記事です


なんとなんと、「自治体職員の中に『カスハラ応援団』が存在する」とのこと。
詳しくはぜひ本文を読んでいただきたいのですが、「自治体職員がネット上で、国や自分が属していない自治体を一方的に批判する行為が、カスハラを助長している」という見解で、「単に私憤を表明しているだけなのに『自分は公務員である』という優位性を主張することで注目を浴びる行為」という何とも痛快な評価まで下しています。

X上に、こういう方いますよね……
己の知識と経験に基づいて持論を開陳するのは、確かに快感なので、やりたくなる気持ちはよくわかります。
ただ、怒りや批判で終わるのではなく、もっと生産的な形に落とし込めばいいのにと思います。

もしかしたら、本人としては「私憤」ではなく「義憤」だとか、怒っているわけではなく「正論」を説いているだけなんだと思っているかもしれません。
ただ、この思考回路こそハードクレーマーあるあるであり、全国の地方公務員を日々苦しめています。
地方公務員を苦しめる存在に、当の地方公務員が堕してしまう……これこそまさに「悪堕ち」だと思います。

僕は絶対に「カスハラ応援団」には堕ちないよう、気を付けていきます。

先日ツイッター上で、この4月に民間企業から市役所に転職してきた方が愚痴をツイートしていました。
彼いわく「役所のプロパー職員は民間経験者に期待しすぎ、なんでもかんでも聞いてくるな」というのです。

具体的にどのような事情があるのかはわかりませんが、採用されたばかりなのに教えを乞われる……というのは、確かに大変だろうと思います。
しかし一方で、民間経験者に頼りたくなるプロパー側の気持ちもよくわかります。

僕自身、文書管理規則や財務規則のような内部ルールに慣れさえすれば、民間経験者は新卒入庁職員とは比べ物にならないくらい優秀だと、心の底から思っています。

社会全体による強力な「刷り込み」

プロパー地方公務員が民間経験者に期待する理由はいたってシンプルです。
「民間人材とは比べ物にならないくらい、地方公務員は無能だ」と刷り込まれているからです。

「民間人材>地方公務員」という図式は、もはや社会の常識と化しつつあります。
テレビを見たり、ラジオを聞いたり、ちょっとSNSを開いたりすれば、いつでもどこでも「地方公務員は無能」という言説が目に入ってきます。

日本は「言論の自由」が一応保証されているので、何事に対しても幅広く意見を持てますし、主張することも許されています。
実際、マスメディアの論調に対してインターネット上で反対意見が噴出するなど、メディアの間で意見が割れることもしばしばあります。

そんな中、「民間人材と比べて地方公務員は無能」という言説は、あらゆるメディアで意見が一致している稀有な事例です。

加えて地方公務員は、日々、「お前たちは無能だ」と住民の皆様から教え込まれています。
民間人材と比較して地方公務員をこき下ろすのは、苦情の定番です。

  • 民間なら数秒でできることに、公務員は何年かかるんだ
  • 民間だったらお前はクビだ
みたいな抽象的な意見にとどまらず、
  • 一般的なビジネスマナーができていない
  • プレゼンが下手
  • 資料が汚い
など、ダメな点を具体的に指摘してくるパターンも多いです。

役所には日々たくさんの人が、それぞれ別々の思惑を抱えて苦情を申し立ててきます。
立場が異なれば苦情の内容も違ってくるもので、同じ日に正反対の内容の苦情を受けることもしばしばあります。
新型コロナウイルスのワクチン接種あたりが典型で、「強制的にワクチンを打たせて感染拡大を食い止めるべき」「ワクチン接種は毒液注射と同じ殺人行為」という両極端の主張を交互に聞かされる……なんてこともありました。

このように多様性に満ち満ちている苦情内容の中でも、苦情主の老若男女を問わず、社会的地位や所得に関係なく共通するのが、「地方公務員は無能」という点です。
苦情内容がどのようなものであれ、「地方公務員が無能だから問題が発生しているんだ、民間ならこんなお粗末な事態にはならない」という理屈づけは、万人に共通しているのです。

民間経験者に期待を寄せるのは職員だけではない

このように、地方公務員は日々、住民の生声に加えて、オールメディアで「民間人材と比べて地方公務員は無能」という主張に曝され続けているわけで、どれだけ自我を強く保とうとも「自分達は民間人材と比べて無能なのだ」と刷り込まれてしまいます。

そして、この刷り込みが、民間経験者への期待に直結しているのだと思います。
住民の声や世論をしっかり聞いている真面目な職員ほど、「自分たちは所詮無能だから何をやっても失敗ばかりだけど、優秀な民間経験者の力があればきっと何とかなるはずだ」と考えるのです。

民間経験者ご本人からすれば、「無茶を言うなよ……」と思うかもしれませんが、世間に流布している一般常識をもとに考えれば、このような判断に至るのが至って自然で、論理的にも正しいです。


さらに言えば、「民間経験者への猛烈な期待」は、プロパー職員のみならず住民も抱いています。

僕がかつて観光系部署にいたとき、よくやりとりをしていた地域振興団体があったのですが、そのコアメンバーの中に公務員嫌いの方がいて、何をするにも不審がられて調整に苦労しました。
しかし、僕が異動して、後任に民間経験者が着任した途端に、その人の態度が一気に軟化して、ものすごく協力的になったのです。

このような「民間経験者が担当した途端に住民との関係が円滑になる」エピソードは、後を絶ちません。

つまるところ、社会全体が、「地方公務員は無能だ」と認識している反動として、役所で働く民間人材に期待を抱いているのだと思います。
「プロパー職員が民間経験者に期待を寄せる」という現象は、単にその氷山の一角に過ぎないのです。


周囲からやたらと期待されてしまうのは、民間経験者の宿命なのだろうと思います。
当人としては、新人なのに頼られるのが居心地悪いのかもしれませんが……

プロパー職員の中には、民間人材に対する劣等感を拗らせている人もちらほらいます。
そういう人は、期待を通り越して嫌味を言ってきたり、さんざん持ち上げておきながら「期待外れだった」などと勝手に落胆してきたり、色々と面倒です。

こういう言動を取らないよう、プロパー職員側は常々注意しなければいけないと思います。

僕の勤務先県庁では、2年前くらいからチャットツールを導入しています。
導入当初はいろいろトラブルが相次いだらしい(僕は外部機関に出向していたので詳細知らない)のですが、今となっては無くてはならないコミュニケーションツールとして重宝されています。

従来ツールの間隙を埋めてくれる

これまでの役所内コミュニケーションツールには、電話メールがありましたが、どちらも問題を抱えていました。

電話は言わずもがな、相手の時間を奪ってしまうという問題があります。
緊急の場合には有効な手段ではありますが、些細な用件でも電話をかけると、相手に時間的・精神的な負担をかけてしまいますし、なかなか電話がつながらないせいで時間のロスが発生するとか、うっかり電話するのを忘れていて手遅れになるなどのトラブルも発生していました。

メールを使えば、相手の時間を奪わずに済むものの、今度はキャパシティの問題が生じます。
メールボックスの容量が小さくてすぐにパンクしたり、添付ファイルの上限が小さくてやりとりできるデータの容量に限度があったり……メールというツールそのものの問題ではありませんが、職員向けの設備投資に割ける予算がごくごく限られる地方自治体組織において、メールシステムのキャパシティ不足は如何ともしがたい問題です。

そこでチャットツールが登場し、電話とメールの利点を兼ね備えたコミュニケーションが実現しました。
チャットなら、リアルタイムで双方向のやりとりができ、相手に過度な時間的負担もかけません。
添付ファイル容量の大きさも随分改善されました。チャットシステム自体が目新しいサービスなので、デフォルトでキャパシティが大きいです。
内部のやりとりはチャット、外部とのやりとりはメール……という形で使い分けることで、メールボックスがパンクすることも減りました。

従来も、電話やメールの代わりに手書きメモでコミュニケーションをとる職員数が一定数いましたが、チャットはこれに近いと思います。

職員の意識改革

チャットシステム導入の副次的効果として、職員のコミュニケーションに対する意識の変革という効果もありました。

従来は、個人個人が使い慣れた方法でコミュニケーションをとる傾向がありました。
会議をたくさん開く人、とりあえず電話をかける人、メールを重んじる人などです。

僕自身、極力メールで万事こなそうとするタイプでした。
僕は忘れっぽいので何事も文章に残しておかないと不安になりますし、かつ庁内でも自分は比較的暇なほうなので、電話で相手の時間を奪いたくありません。
我ながらこの方法は悪くないと思っています。ちゃんと文章に残しておいたことで後々助かったことも多いですし、文句を言われたこともありません。

ただ、メールを作文する時間が長くなり過ぎて、効率が悪かったことを反省しています。
1通のメールに1時間以上かかることもザラでした。

僕はちゃんと目的を持って意識的にメールばかり使っていましたが、実際のところ、先述したような各コミュニケーション手段の一長一短を意識している職員は少数派だったと思います。
そんな中、チャットシステム導入は、各職員が「コミュニケーションとは何か」を立ち止まって考える良い機会となりました。
チャットという新しいツールを使う中で、従来のツールの特徴を見直すことになり、「電話は相手の時間を奪う」などの基本事項にようやく気付いてきたのです。

コミュニケーションツールごとの特徴に意識が向いた結果、コミュニケーションの目的や分量、関係者人数などの条件を踏まえ「どの手段を取るのが最も効率的なのか」を都度考える習慣が生まれつつあり、適切なコミュニケーション手段が選択されるようになってきています。

ネチケットの復活?

一方、チャットツールにまつわる問題というか課題も生じています。

まず、謎のチャットマナーを主張する職員の出現です。
出典不明のルールを持ち出してきて、「その使い方は失礼じゃないか」みたいな指摘をしてきます。

最近見かけたものは、以下のような感じです。
  • 体裁の指定(1行○文字まで、1投稿あたりの行数上限、句読点の打ち方)
  • 添付ファイルの種類に制限を設ける(PDFしか投稿してはいけない 等)
  • 未読時間の上限(○分以内に既読をつけるのが常識 等)
  • 目上の職員にチャットするときは事前に電話すべき

このようにネチネチ指摘してくる職員がいるので、特に若手を中心に安全策を取る人が増えています。
  • 「お世話になっております。○○課の△△です。」などの定型挨拶文から入る
  • 本文はガチガチに公文書ルールを遵守(送り仮名、1行の文字数など)
  • 締めにも「よろしくお願いします。」などの定型文を入れる

つまるところ、外部に送るようなメールと同じような作法で、文章を作文しています。
そのせいで本文よりも定型文のほうが長くなることもしばしばあり、せっかく即時性あって手軽なコミュニケーションがとれるというチャットの利点を損なっている気がしています。
(僕がこのような主張すること自体、「謎のチャットマナーを持ち出す」行為にほかならないわけですが……)

事実上の週7日勤務になるのか

もう一点、労務管理上の懸念も払拭しきれません。

月曜日に出勤すると、休日出勤していた職員からだいたい5~10件ほどチャットが入っています。
僕の勤務先県庁では今のところ、ライセンス数の都合上、一部の職員しか私用のスマートフォンにチャットシステムを入れておらず、「休日はチャットを確認できない」という前提があります。
そのため、チャットツール導入後にありがちな「休日にも仕事の指示が飛んでくる」という事態にはまだ陥っていません。

ただ、これから順次、全職員の私用スマートフォンにチャットシステムを入れられるようライセンスを追加調達する予定らしく、そうなれば、ひょっとしたら休日でも仕事を押し付けられるのではないかという懸念が生じてきます。

すでにチャットシステムを入れている職員に確認したところ、既に「月曜日でいいから対応してほしい」という指示がたびたびあるとのこと。

発信元としては休日出勤を強いる意図は全く無いのでしょうが、しかしこの場合でも、受信側としては、通知が届いた時点で中身を確認しなければいけません。
休日に対応しなければいけない急件なのか、週明けで十分な案件なのか、チャット本文を見ないと確認できないのです。

実際の作業までは求めなくとも、このような確認作業を強いている時点で、れっきとした「仕事の押し付け」ではなかろうか……と思ってしまいます。

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