キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

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2024年10月

結婚相談所での婚活を始めるにあたり、さすがに世間の動向を仕入れておかねば……と思い、今月から毎日ネットニュースをチェックするようになりました。

本当は芸能やスポーツ関係のニュースを見るべきなのでしょうが、どうしても興味が持てず、行政関係の炎上ニュースばかり見てしまいます……

行政機関のトップは政治家



今月に入って早々に、首相官邸の公式アカウントが炎上していました。
炎上の理由は投稿内容そのものではなく、言葉の使い方

赤ペン先生みたいな人が大挙して「敬語の使い方がおかしい」と非難しているのがどんどん拡散して、「そもそも首相は役所にとって上司にあたる人間で、上司に敬語を使うなんて民間ではあり得ない、やはり公務員には常識が欠如している」「将来性ゼロの公務員になるくらい時流が読めないんだから日本語も読めなくても当然」などなど、公務員叩きへと発展して行きました。

結局、首相官邸側が謝罪したうえで投稿を修正する……という形で収束したようです。

この炎上案件、僕は首相官邸職員に非は無いと思っています。

日本国憲法に「国民主権」が掲げられている以上、この国で一番偉いのは国民であり、国会議員は国民の代表者であり代弁者です。
ゆえに、公僕たる公務員が国会議員に対して敬意を表するのは当然です。
国会議員をぞんざいに扱うことは、つまり、国民をぞんざいに扱うのと同義であり、怒られて当然の蛮行です。

そして首相は、行政機関のトップであると同時に、国会議員でもあります。
つまり、公務員から見ると、「上司」であると同時に「国会議員」…という二重の性質を帯びているわけです。

「身内の上司に対して敬語を使わない」のは、役所においても常識です。
しかし、上司だからといって、最高権力者である国民様の代表たる「国会議員」を蔑ろにすることが許されるのか?というと……悩ましいところだと思います。

今回の炎上は、国会議員の地位低下が露見した案件なのだろうと思います。
「国会議員は主権者たる国民の代表だから、公僕たる公務員は無条件で敬意を表さなければいけない」という民主主義の原則が霞むほどに、国会議員に対するヘイトが高まっているのでしょう。


放火犯を救うための署名







公共施設に放火した職員に有罪判決が下ったとのこと。
僕と同世代で主査ということは、これまで心身を損なうことなく真っ当に勤務してきて、それなりに信頼されている職員なのだろうと思います。
そんな人が放火するまで追い込まれるということは、相当しんどかったのだろうと推察します。
この年齢であれば両親も存命でしょうし、妻子もいるかもしれませんし、本当に辛い……

しかも同僚から嘆願書が出ているとのこと。
364名分の署名があるとのことですが、調べたところ白山市役所の職員は全員で739人。
全職員のほぼ半数が署名に応じたことになります。

報道からではわからない、深淵な事情がありそうな気がします。


「業務の効率化」などと簡単に言ってくれますね




財政制度等審議会の分科会が、地方に対して徹底的な歳出削減を改めて求めたとのこと。
暇があったので報告書の全文も読みました。
  • これから生産年齢人口が減るから公務員数も減らすべき
  • だから地方はもっと業務を効率化する必要がある
  • 具体的には、ITを活用や公共施設の統廃合
という論調なのですが、大前提の「生産年齢人口が減るから公務員数も減らすべき」の部分から賛同できません。

行政サービスの多くは「弱者救済」の要素が強く、主な顧客は高齢者です。
これから少子高齢化・人口減少が進んでも、高齢者の減りは相対的に遅いです(だからこそ少子高齢化)。
ゆえに、「生産年齢人口が減るから公務員数を減らすべき」という行政サービス供給サイドを話をすると同時に、「生産年齢人口が減っても、求められる行政サービスの量は減らない」という需要サイドの分析も必要だと思います。

むしろ、「行政サービスの需要はこれからも高止まりするが、生産年齢人口が減るせいで供給が難しくなる」というのが正しい現状理解ではないでしょうか?

加えて、「ITの活用による業務効率化」にはお金がかかることに言及していないのも、ずるいと思います。
財務省的には、「人は減らせるけど、人件費以上にランニングコストがかかる」システムは、ありなのでしょうか……?

役所は日々、いろんな施策を実施していますが、堂々と「成功した」とアピールできる施策は多くありません。
マスコミからの取材や議会の質問で「施策の成果」を問われた際に、数字をいじくりまわしたり、それっぽい日本語表現を繕ったりして、半ば無理やりに答えを絞り出した経験のある人も多いと思います。

従前より、地方公務員を辞める人の多くは、「仕事にやりがいが無い」と語ってきました。
「やりがいが無い」と感じる理由の一つが、「成功体験を得られない」せいなのではないかと、僕は思っています。

特に若手職員は、SNSなどで同世代がどんどん成功を収めている姿が嫌でも目に入り、隣の芝が青く見えていくと同時に、自分の仕事に価値を見出せなくなっていくのでしょう。
「どれだけ頑張っても成果を出せないような仕事に従事するのは人生の無駄だし、自分のキャリアを閉ざすことになるのでは?」という危機感が、彼ら彼女らを転職活動に駆り立てているのではないかと思われるのです。

職員の自尊心維持のためにも、若手職員の離職防止のためにも、小さなことでもいいので成功体験を積ませることが大事なのだろうと思うのですが……役所の仕事は本当に成果を出しづらいです。

その理由の一つに、世の中の大きな流れ、いわゆる「メガトレンド」に逆らう仕事が多いことが挙げられると思います。

役所にとって「変化」≒「危機」

メガトレンドとは、辞書的には「時代の大きな流れ、趨勢」のことを指します。


本稿ではやや意味を限定して、「世代や地域にかかわらず、あらゆる人に影響を及ぼす、社会全体の大きな流れ」という意味で用います。
具体例を挙げると、少子化や地球温暖化、都市部への人口流出、デジタル化……などです。

こういったメガトレンドは、日常生活はもちろんのこと、仕事にも大きく影響します。
民間も役所も同様です。メガトレンドから逃れることはできません。

ただ、メガトレンドへの対応は、民間と行政では全く異なります。

民間企業は、メガトレンドをチャンスと捉えます。
メガトレンドにうまく乗っかって、自社の利益拡大を図ります。

一方、役所の場合、メガトレンドはピンチにほかなりません。
メガトレンドそのものを止めようとしたり、メガトレンドの影響を極小化しようと試みます。

パッと思いついた具体例をいくつか掲載します。
メガトレンド事例

だいたいのメガトレンドで、民間では「乗じる」、行政では「逆らう」スタンスを採っていると思います。
地球温暖化だけは例外で、民間も行政も「逆らう」方向です。


川下りと沢登り、大変なのはどっち?

メガトレンドに「乗じる」戦略と、メガトレンドに「逆らう」戦略。
成果が出やすいのは、もちろん前者です。
メガトレンドは、簡単には止められないからこそメガトレンドなのであり、戦略実行の難易度や費用対効果を合理的に考えると、メガトレンドには乗るしかありません。

メガトレンドに逆らう戦略を採る行政は、最初から「負け戦」に臨んでいるのだと言っても、過言ではないと思います。

もちろん、行政がメガトレンドに逆らう戦略を採るのには理由があります。
メガトレンドによって「困る人」がいるからです。

中長期的にはメガトレンドを受け入れたほうが皆幸せになれる可能性が極めて高い状況であれ、現下に困っている人がいるならメガトレンドに逆らわなければいけない……これが民主主義の宿命であり、民主主義的決定の実行者たる行政の役割です。

メガトレンドにより困る人は比較的高齢者が多いので、「メガトレンドに逆らう」という現状の行政の姿は、シルバー民主主義の産物ともいえるかもしれません。


登る澪筋は変われども、沢登りするスタンスには変わりない

メガトレンドの中身は刻一刻と変わっていきます。
しかし、「メガトレンドに逆らう」という行政の基本スタンスは、いつまでも変わらないと思います。
メガトレンドの影響を嫌う人、別の言い方をすると変化を拒み現状維持を望む人が、高齢者を中心に相当数存在するからです。

ゆえに行政は、新たなメガトレンドが登場するたびに、それをを否定し、無謀な抵抗を続けることになるでしょう。
このような行政のあり方を「頭が固い」「時代遅れ」などといって批判したり、嫌気がさして見限る(退職する)のは、それはそれで正しいと思います。

ただ、メガトレンドに逆らうことにも、間違いなくニーズが存在しています。
目に見える成果は挙げられないでしょうが、それでも少なくない住民のニーズを満たせているはず。
単なる一時凌ぎにすぎなくとも、現存するニーズを充足しているのであれば、これはこれで成果といえないでしょうか。
コストパフォーマンスは最悪だと思いますが、そもそも行政はコスパでは測れない(コスパ度外視で必要なサービスを提供する)セクションですし。

……我ながら暴論だとは思いますが、このような落とし所を見出すことで、僕は自分を納得させています。

僕はこれまで、県庁(本庁)にいながらも結構クレームの多い部署ばかり回ってきており、本当に申し訳なくて心苦しい案件から、呆れるばかりのいちゃもん案件まで、幅広に経験してきました。

その中でも特に印象に残っているキワモノ事例を紹介したいと思います。
一つでもクスリとしてもらえると嬉しいです。

胸糞悪い事例が知りたい方は、こちらの記事がおすすめです。


なめるなメスブタァッ

これは僕に対してではなく、後輩の女性職員が食らった暴言です。

40代半ばの酒臭いおじさんがいきなり執務室に入ってきて、一番入口近くに座っていた女性職員に話しかけてきたんですよね。
最初は公務員全般に関する一般的な愚痴を独り言のようにこぼしていたのですが、次第にどんどんボルテージが上がっていって、急にキレて発したのがこの言葉です。

ご存じの方も多いと思いますが、これは『高校鉄拳伝タフ』という漫画に登場する有名なセリフです。
ネットミームとしてもよく使われるので、元ネタは知らないけどSNS上などで見かけたことはあるという方も多いでしょう。



漫画から引用したのか、たまたま一致したのか、おじさんの内心はわかりません。
ただ僕含め元ネタを知っている数人は、おじさんの叫びを聞いて吹き出してしまいました。

おじさんはその後も居座って「あばずれ」「ビッチ」「売女」などの汚い言葉を大声で連呼していたので、警備員さんを呼ばれ、連行されていきました。

被害を受けた女性職員は、傷ついたというよりはポカンとしていました。
どうやら「あばずれ」と「売女」の意味がわからなかったらしく、その後上司に対して「『ばいた』ってなんですか?ばい菌みたいな意味ですか?」と質問していました。


川崎ではその理屈は通用しません

川崎市在住の女性から宣告された一言。
僕の住む県内のとある市役所と、ふるさと納税の返礼品絡みで揉めたらしく、
  • 市役所の態度が悪いのは県庁の日頃の指導が足りないせいだ
  • 市役所が対応しないなら、県庁が責任を持って対応すべきだ
  • ゆえにあんたが川崎市の私の家まで来て謝罪しなさい
  • 返礼品を倍量持ってくれば損害賠償請求はしない
という無茶苦茶な理屈を振りかざしてきました。

当時僕が勤めていた部署は、ふるさと納税とは全然関係ありませんでした。
そもそもこんな無茶苦茶な要求に担当課なんて無いよなーと思いつつ、「市役所のことなら市町村課に電話してほしい」と伝えたら、「もう電話したけど対応してくれなかったから、あんたに電話してる」と逆ギレ。
それで「うちに言われてもできません」と返したところ、「できないとはなんだ、川崎ではその理屈は通用しません!」と金切り声を上げられました。

その後も30分くらい怒鳴られて、結局「あんたの県のアンテナショップに低評価レビュー書いてやる」と言われて電話を切られました。

この一件以来、「川崎市は魔境」だと思っています。

ちなみに、このときの経験をもとに書いたのが以下の記事です。



お前の息子、〇〇小に通ってるんだろ

コロナ禍真っ盛りの際、電話にて「うちは仕事が減ってボーナス出なかったのに、公務員はなんでボーナスが出るんだ、ふざけるな」といういちゃもんをつけてきた中年男性が発した一言です。

僕が電話に出る前に、県庁内の別部署にも同じいちゃもん電話をかけていたようで、そこで一方的に電話を切られたことに大層腹を立てており、序盤からひたすら大声で怒鳴り立ててきます。
発言も過激かつ具体的で、「県庁近くの〇〇交差点は薄暗いからちょうどいい」とか「県庁〇〇階のトイレは執務室から遠いから助けが来ない」とか、不気味な発言を繰り返してくるので、これはまずいやつかなと思い、先輩や上司をジェスチャーで呼び集めて6人くらいで聞いていました。

途中から僕個人を攻撃する流れになり、「お前が同和特権で採用されたことバラされたいのか?」とか「両親の職場にも電話してやる」などと詰め寄ってくる流れの中で、僕の息子のことに触れてきました。

この発言自体、普通に脅迫です。

そっくりそのままドラマに出てきそうなくらい教科書的な脅迫です。

ただ僕は独身で、当然ながら息子もいないんですよね……
ゆえに脅迫カウントとして処理できず、そのまま電話応対を続けざるを得ませんでした。
30分くらいずっと一方的になじられていました。

電話を終えた後、課長は「隠し子がいるのか?」と真顔で心配してくるわ、先輩は「息子って下ネタ的な意味なんじゃない?」と提唱してくるわ、他の先輩も流れに乗って「『息子が通う小学校』って高度な下ネタだな〜」と茶化してくるわ……職場は大爆笑に包まれました。 

当時は「なんだこの無責任な人たち!?」と驚いたのですが、今から思えば、疲弊した僕を元気づけようとしてくれたんだと思います。



これまでは、今回紹介したような論外なハードクレームであっても、「行政だから」という理由でなかなかお断りできるませんでした。
しかし最近は「カスハラ」という概念が浸透してきて、こういう手合いは早々にシャットダウンできるようになりつつあると思います。良い流れです。

とはいえ、たとえ短時間であっても、暴言を吐かれると心が傷つきます。
僕自身はそれなりに年次も上がってきて、あまり外線電話を取らなくなり、外部からの苦情を聞く機会も減ってきました。
その分、暴言を吐かれた後輩をケアするのが、僕の世代の役割なのかなと思っています。

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