生成AIの進歩は本当に目覚ましいですね。
こういう感じのメールが最近本当に増えているんですよね……
やはり生成Aはすごいですね。NGワードがないかネガチェックするだけでそのまま使えそうです。
僕の勤務先県庁では長らく使用禁止令が敷かれていたのですが、ついに解禁されました。
生成AI活用に熱心なのは、若い職員よりも40代のおじさんたちです。
最近の中年職員は、部下の指導やマネジメント、上司への報告、他部局との調整といった本来の業務に加え、難しい仕事を自らこなす(パワハラ認定を恐れて……)ことも求められており、どんどん多忙化しています。
そんな切実な忙しさの中で、「少しでも楽になりたい」という思いがAI活用の原動力になっているのかもしれませんね……。
そんな切実な忙しさの中で、「少しでも楽になりたい」という思いがAI活用の原動力になっているのかもしれませんね……。
一方で、「生成AIのせいでむしろ仕事が増えた」という声も多々耳にします。
生成AIを使ったと思しき苦情メールが激増しているんですよね。
生成AIというツールのおかげで文章を書くことへのハードルが下がり、意見を発信する機会が担保されること自体は、良いことだと思います。
しかし意見を「受ける」側の自治体職員としては堪ったものではありません。
たった数分で1万文字以上の苦情メール――もはや「論文」と称しても差し支えないような超大作を簡単に作成してくれる生成AIは、自治体職員の新たなる脅威にほかなりません。
生成AI謹製メールボム
ここでいう「生成AIを使った苦情メール」の典型例は、以下のとおりです。
「窓口サービス」を題材に、ChatGPTに書いてもらいました。プロンプトを作文する時間を含め2分で完成しました。
~~~A市役所 御中私はA市民の一人として、市役所窓口を利用する中で感じた課題についてお伝えしたく、本メールをお送りいたしました。私自身、各種手続のために来庁した際、長時間の待ち時間を要したうえ、複数の窓口を回りながら同じ内容を何度も説明し、同様の情報を繰り返し記入しなければならない場面がありました。また、周囲を見渡しても、高齢者や子育て世帯の方々が手続方法に戸惑い、職員へ何度も質問されている様子が見受けられました。こうした状況は、私一人の感想ではなく、多くの市民が日常的に感じている不満ではないかと思います。実際、近隣自治体や先進自治体では、「書かない窓口」「待たない窓口」「行かない窓口」の実現に向けた取組が進められており、住民サービスの向上と職員負担の軽減を同時に実現している事例も少なくありません。一方で、現在のサービス水準が今後も継続した場合、高齢化の進展や行政需要の増加に伴い、市民の待ち時間や手続負担はさらに大きくなることが懸念されます。また、人手不足が深刻化する中で、職員の業務負担も一層増加し、結果として住民サービス全体の質の低下を招くおそれがあります。行政サービスは、市民が最も身近に接する行政そのものです。窓口での体験が市政全体への評価や信頼感に直結することを踏まえれば、窓口業務の改善は喫緊の課題であると考えます。つきましては、市民サービスの向上と行政運営の効率化の両立に向け、次のような取組について積極的な検討をお願い申し上げます。【提案事項】1 待ち時間の短縮・窓口の事前予約制度の導入・混雑状況のリアルタイム配信2 ワンストップ窓口の充実・転入、転出、出生、死亡等の手続を可能な限り一か所で完結できる体制の整備3 申請書類の簡素化・同じ内容を複数の申請書に記載する負担の軽減・既存情報の活用による記入項目の削減4 デジタル化の推進・オンライン申請の拡充・キャッシュレス決済の導入5 高齢者や障害のある方への配慮・分かりやすい案内表示・手続支援体制の充実6 庁内の情報連携強化・部署間での情報共有を進め、市民への重複した確認や提出書類を減らす取組7 バックオフィス業務の効率化・AIやRPA等を活用した定型業務の自動化8 業務プロセスの見直し・慣例的に続いている手続や事務の棚卸しと簡素化9 窓口サービスの品質向上・接遇研修の充実・利用者アンケートの実施10 継続的な改善の仕組みづくり・市民からの提案や意見を積極的に収集し、改善につなげる仕組みの構築市役所職員の皆様におかれましては、限られた人員や予算の中で多様な行政需要に対応されていることと存じます。一方で、生産年齢人口の縮小が続く中、行政リソースの有効活用は喫緊の課題であり、今回提案の課題は今後の行政改革に必須の事項であると考えており、至急ご検討いただくことはもとより、行政の透明性担保の観点から、検討結果を返信いただきますよう求めるものです。A市がより利用しやすく、親しみやすい市役所となることを期待しております。どうぞよろしくお願いいたします。~~~~~~
こういう感じのメールが最近本当に増えているんですよね……
回答が面倒な理由は、以下の2点に大別されます。
論点が多い
生成AIが特に得意とすることのひとつが、論点を網羅的に洗い出すことです。
「この件について考えられる問題点を挙げて」と指示すれば、次々とアイデアを出してくれますし、さらに「それぞれを細分化して」と続ければ、論点はいくらでも膨らんでいきます。
苦情メールにおいては、論点の数はそのまま「答えるべき質問の数」に直結します。
論点がひとつの担当部署で完結するならまだしも、複数部局にまたがることも少なくありません。
回答作成する以前に、各部局への照会・調整・割り振りの相談で時間が溶けていくんですよね。だいたい割り揉めしますし……。
一般論すぎて具体性に欠けるので答えづらい
もうひとつの悩みが、メールの内容が「正論ではあるけれど、一般論すぎる」という点です。
さすが生成AI、根本から間違ったことを書いてくることは滅多にありません。
とはいえ役所には、予算にも人員にも限界があります。
いかに正しい意見であっても、全肯定するわけにもいかず、かといって頭ごなしに否定するわけにもいきません。
結果として、「ご趣旨はよく理解できますが、現状~~という理由から実施が難しい状況です」といった、丁寧な説得文章を一から練り上げる必要が生じます。
これがなかなかに骨の折れる作業なのです。
AI vs AIの代理戦争も近いか
僕の勤務先自治体では、まだ「外に出す資料や文章」へのAI使用は認められていません。
そのため、生成AIを使ってメール返信案を作成することができないのですが……もしこちらもAIを使えるようになれば、劇的に負担が減ります。
AIで作られた苦情メールを、AIで処理する。ドローンによる代理戦争みたいですね。ただ電気を無駄遣いしているだけのような気がします。
ちなみに上記メールへの返信をClaudeに作ってもらったら、30秒で以下が完成しました。
~~~~~Subject: 窓口サービス改善に関するご提案へのご回答○○様この度は、A市の窓口サービスに関するご意見・ご提案をお寄せいただき、誠にありがとうございます。市民の皆様からいただくご意見は、市政運営を改善していくうえで大変貴重なものと受け止めております。ご提案いただきました10点につきまして、それぞれ以下のとおりご回答申し上げます。1 待ち時間の短縮(事前予約制度・混雑状況のリアルタイム配信)窓口の事前予約制度の導入および混雑状況のリアルタイム配信は、市民の利便性向上に資する有効な取組であると認識しております。一方で、予約システムの構築・運用に係るシステム費用の確保や、予約客と当日来庁者の双方に対応できる窓口体制の整備、さらに情報発信基盤の整備など、クリアすべき課題が複数存在いたします。現時点では直ちに実施することは難しい状況ですが、引き続き導入に向けた検討を進めてまいります。2 ワンストップ窓口の充実ライフイベントに係る手続を一か所で完結できる体制は、市民の皆様の手続負担を大幅に軽減できるものとして、大変有意義なご提案と考えます。しかしながら、その実現には関係部署間の業務フロー・権限・システムの抜本的な見直しが必要であり、組織体制の変更や職員配置・研修も伴うことから、短期間での実施は困難な状況です。先進自治体の事例も参考にしながら、段階的な整備の可能性を検討してまいります。3 申請書類の簡素化重複記入の解消や既存情報の活用による申請書類の簡素化は、市民・職員双方にとってメリットの大きい取組です。ただし、法令や国の制度に基づき書式・記載事項が定められているものも多く、本市単独では変更できない書類が少なくありません。また、システム改修を伴う項目については相応の費用と時間が必要となります。国の動向や他自治体の取組を注視しながら、実施可能な範囲から検討を進めてまいります。4 デジタル化の推進(オンライン申請・キャッシュレス決済)オンライン申請の拡充やキャッシュレス決済の導入は、利便性の向上と窓口の混雑緩和に有効であると認識しております。一方で、マイナンバー制度との連携を含むシステム構築・改修費用、セキュリティ対策、情報弱者への対応など、導入に際して整備すべき要件が多岐にわたります。現在、国の自治体DX推進計画に沿った検討を行っておりますが、全面的な導入には一定の期間を要する見込みです。5 高齢者や障害のある方への配慮(案内表示・手続支援)誰もが利用しやすい窓口環境の整備は、行政サービスの基本として重要であると強く認識しております。案内表示の改善や手続支援体制の充実については、費用・人員の制約のなかで優先順位を踏まえながら取り組むべき課題と考えておりますが、庁舎設備の改修や専門的な支援人材の確保等が必要であり、直ちに全面的な対応を取ることは難しい状況です。現在実施可能な改善から着実に進めてまいります。6 庁内の情報連携強化部署間での情報共有により市民の提出書類や重複確認を減らす取組は、大変重要な課題と認識しております。実現には、個人情報保護の観点からの法的整理、庁内ネットワーク・システムの刷新、および関係部署間の業務調整が不可欠です。これらは中長期的な行政改革の一環として計画的に進めるべき内容であり、即時の全面実施は困難ですが、情報共有の範囲拡大について着実に取り組んでまいります。7 バックオフィス業務の効率化(AI・RPA等の活用)AIやRPAを活用した定型業務の自動化は、職員の業務負担軽減と行政サービスの質の維持に効果的な手段です。導入にあたっては、対象業務の選定・分析、システムの調達・構築、職員研修、セキュリティ確保など、準備に相応の時間と費用を要します。費用対効果を見極めながら、導入可能な業務から段階的に検討を進めてまいります。8 業務プロセスの見直し慣例的に継続してきた手続や事務の棚卸しと簡素化は、行政改革において本質的かつ重要な視点です。ただし、個別の業務に係る法令・条例・規則上の根拠の精査や、関係機関との調整が必要なものも含まれており、全体的な見直しには相当の時間を要します。業務改善の機運を高めながら、随時着手できるものから取り組んでまいります。9 窓口サービスの品質向上(接遇研修・利用者アンケート)接遇研修の充実および利用者アンケートの実施は、比較的取り組みやすい改善策として前向きに受け止めております。接遇研修については現在も一定の取組を実施しておりますが、内容の充実や受講機会の拡大については人員・予算の制約があります。利用者アンケートについては実施方法・分析体制の整備が必要であり、実施に向けた具体的な検討を進めてまいります。10 継続的な改善の仕組みづくり市民からの提案・意見を継続的に収集し、改善に活かす仕組みの構築は、開かれた市政の実現に向けて欠かせない取組と考えます。意見収集の方法・体制、いただいた意見の処理・回答プロセスの整備、および庁内での改善サイクルの定着には、組織的な体制づくりが必要です。現行の意見収集の仕組みを土台に、より実効性の高い体制へと改善を図ってまいります。以上、各提案へのご回答とさせていただきます。限られた人員・予算のなかで、ご提案いただいたすべての事項を速やかに実施することは現時点では難しい状況です。しかしながら、いただいたご意見は、今後の行政改革や予算編成を検討するうえで重要な参考にさせていただきます。A市がより利用しやすい市役所となれるよう、引き続き努力してまいります。この度は貴重なご意見をお寄せいただき、重ねて御礼申し上げます。A市役所 市民窓口担当~~~~~
やはり生成Aはすごいですね。NGワードがないかネガチェックするだけでそのまま使えそうです。
AIが作った苦情には温度感と臭いが欠けている
冒頭で「生成AIを使ったと思しき苦情メールが激増している」と書きましたが、この部分に違和感を持った方はいますか?
この記事を書きあげた後に、生成AIに「論理が飛躍している部分はないか」とネガチェックしてもらったところ、「メールの差出人がAIを使っているかどうかは検証しようがないので、このように断定するのはおかしい」と指摘されました。
でも、このブログの主要読者層であるアラフォー現役地方公務員の方々であれば、きっと違和感なく共感してもらえるのではないかと思っています。
長年苦情メールを見続けていると、なんとなくわかってきませんか?
AIには出せない「温かみ」とか「臭い」みたいなものが……
