地方公務員の人事異動は本当にままならないもので、希望の担当業務に就けることは滅多にありません。
「やりたい仕事」に携われないまま年月を過ごすうち、いつしか「自分は何がやりたいのか」わからなくなっていくのが、大多数の地方公務員の宿命だと思います。
一方で、「やりたくない仕事」「興味の持てない仕事」だけは、なぜかはっきりしていくものです。
僕の周囲を見ても、35歳を過ぎて「こういう仕事がしたい」という明確な希望を持っている職員は、20人に1人程度しかいません。それだけ希望を持ち続けることは難しいのだと思います。
興味の持てない業務を担当することになった場合、「どうせ数年で異動するんだから、仕事は徹底的に手を抜いてプライベートを充実させるべき」というのが、賢い処世術として語られがちです。
ただ僕は、たとえ寸分の興味すら抱けない業務であっても、真面目に取り組んだほうが良いと思います。
のちのち「有識者」扱いされて困る羽目になる
役所内では、異動遍歴がやたらと重視されます。評価のシグナル(例:20代で財政課に抜擢された彼は同世代で一番優秀に違いない)として注目されるのみならず、実務能力とも直結しているものとして捉えられています。
言い換えると、一度ある部署に配属されると、その後はずっとその分野の「有識者」として扱われ、他の職員よりも高いレベルのアウトプットを求められるようになります。
たとえば、一度でも観光系の部署を経験すると、異動後もずっと「イベントのプロ」とみなされ、会場設営やスタッフの役割分担、広報や集客、アクシデント対応、事後の効果測定まで、何でも精通していて当然だと思われてしまうのです。
本当に「有識者」と呼べるレベルに達していれば、周囲の期待に応えることができてチヤホヤされますし、過去の苦労も報われて気持ちいいのですが……能力が伴っていない場合は一大事です。
自分自身よく分かっていないことについて周囲から頼りにされ、さらには責任まで負わされてしまうからです。
その結果、上司から厳しく叱責されたり、同僚との間に軋轢が生まれたりすることも少なくありません。人間関係がこじれてしまえば、仕事へのモチベーションもさらに下がってしまいかねません。
配属された部署の知識や技能をしっかり身につけておくことが、後々の自分を助けてくれます。
ゆえに、たとえ興味が持てない業務であっても、真面目に取り組んで、できる限り吸収しておくことをおすすめしたいのです。
後から興味が湧いてきて後悔するかも
今は興味が持てない業務であっても、あとになって急に興味が湧いてくることもあります。役所での実務を通してでないと知り得ない情報は、意外とたくさんあるものです。
特に、世間からは見えにくいダークな側面を知れるのは、役所ならではの経験だと思います。
僕の場合は、道路整備がまさにそうでした。
「田舎にもう新しい道路なんて必要ない」と長らく思っていたのですが、工事そのものが生み出す経済効果の生々しい実情を知ってから、考え方が変わりました。どこに、どれくらいの期間をかけて道路整備を行うかが、気になって仕方なくなったのです。
工法や材質をひとつ変えるだけで工事費が大きく変動し、参入できる業者の数も変わり、結果として受益者まで変わってきます。詳しく知れば知るほど奥深く、闇深く、そして面白い分野だと感じています。
事務職の地方公務員は、同じ担当業務にもう一度戻ることは滅多にありません。
そのため、「あのときもっと真剣に向き合っておけばよかった」と後悔しても、取り返しがつきません。
目の前の業務に真面目に取り組みことは、後悔の未然防止にもなるのです。
配属先で何らか身につけることが前提の給与制度
そもそも、地方公務員が年功序列で昇給していく背景には、「年次を重ねるごとに能力も高まっていく」という前提があります。つまり、配属された部署でそれぞれ知見を身につけていくことが給与制度の前提として想定されているわけです。
「興味が無いから」という理由で最低限の仕事しかせず、知識や技能を吸収しようとしないのであれば、給料は貰えたとしても、昇給にふさわしいとは言えないのかもしれません。
