田舎だと県庁はかなり大きな(人数の多い)組織です。
しかも構成員(職員)は県内全域から集まってきます。
さらに学歴も高卒から院卒まで様々で、偏差値的に見てもばらつきがあります。
 
田舎社会の中では、ただ巨大なだけでなく、多様性に富んだ組織と言えるでしょう。
あくまでも田舎では、です。都会とは勝負になりません。

この県内限定の多様性とでもいうべき性質こそ、市役所にも国家本省にも無い、県庁組織特有の強みだと思っています。

出身高校ネットワーク

県庁組織の持つ多様性の中でも、職員の出身高校の多様性、つまり県内の主要な高校のOB・OGを一通り職員として抱えていることが、最大の強みだと思っています。
特に進学校だと、ほぼ全卒業年次を網羅しています。

このため、職員の出身高校つながりをたどっていけば、正規ルートでは近寄れない要人への接触を試みたり、特定個人の情報を裏から探ることが可能になるのです。
 

個人的経験 〜政治的クレーマーの対処〜

自分の経験を紹介します。

とある業務に携わっていたとき、ものすごく執拗なクレームを特定個人から受けたことがありました。
その人に実害があるわけではないのに、正義や人権を持ち出してきて、一般論で責め立ててきます。
趣味レベルとは到底思えない執念に加え、明らかにお金のかかった資料を準備して挑んでくるので、バックに誰かいることまでは推測できていましたが、実態は見えませんでした。

そこで雑談のふりをして、出身高校を聞き出しました。
外見から年齢を推測して、高校時代の同級生の可能性がある職員に片っ端から問合せたところ、あっさり同級生を発見。
その職員に深くヒアリングして、クレーム主がとある政治団体要人の高校時代からの友人であることを突き止めました。

結局のところ、そのクレーム主は政治団体の手先で、政治団体の名前を隠しつつ行政に圧力をかけるため、資金援助を受けて活動していたのです。

次の来訪時にさりげなく政治団体の名前を出したら、ぱったりと顔を出さなくなりました。

出身高校ネットワークを使わなかったら、もっと泥沼化していたと思います。
 

田舎ならでは?

こういうアプローチを「汚い」とか「ダサい」と思うなら、田舎役所勤務は苦痛かもしれません。

僕もそろそろ30歳。かつての同級生が家業を継いで社長になったり、市町村議会に出馬したりと、社会で活躍するようになってきました。
同時に、職場で「同級生の○○さんって知ってる?」という問合せを受ける機会が増えてきました。

顔が広い職員だと、僕なんかとは比べものにならないくらい、同種の問合せを受けているでしょう。
もしかしたら顔つなぎまで頼まれているかもしれません。

プライベートの人間関係を職場にかき乱される恐れも否定できません。
 
もちろん協力するかどうかは各自の自由です。強制ではありません。
ただ、そもそもこういう質問自体が苦痛という方もいるでしょう。

出身高校情報は非常に便利ですが、「使う」側であるだけでなく「使われる」立場でもあることを理解しておくべきでしょう。