来年度の公務員試験に向けて動き出している方も、そろそろ増えてきている頃だと思います。

今年は新型コロナウイルス感染症のせいで人と人との接触を控える風潮が強いため、役所主催の説明会に参加したり、OB訪問したり、予備校仲間と歓談したり……という従来通りの情報収集方法が使えず、情報収集に苦労していることと思います。

代替手段として、インターネット経由の情報収集が重要になってきます。
役所の公式サイトは勿論、ブログやSNS、掲示板のような個人発の情報を参照する方もいるでしょう。

ただ、こういった個人発の情報は、鵜呑みにはできません。
発信元の偏りを認識し、解釈する必要があります。

インターネット上にいる公務員はマイノリティ

インターネット上で情報発信している公務員は、公務員の中でもレアな存在です。
 
総務省によると、地方公務員(一般行政職)は、全国で約92万人います。

一方、地方公務員を名乗るTwitterアカウント、しかも鍵垢ではなくオープンにツイートを発信しているアカウントは、地方公務員総数に対してどれくらいでしょうか?
多くて0.5%くらいでは?圧倒的少数です。

インターネット上で情報発信している公務員(元職含め)を、典型的な公務員だと思ってはいけません。
彼ら彼女らは少数派であり、こういう人間が職場にたくさんいるわけではありません。

加えて、インターネット上の公務員情報は「少数派職員フィルターを経由した情報」であり、必ずしも公務員の総意ではないことを認識したほうが安全です。

たとえば、公務員が書いたブログやSNS投稿を真に受けて
  • 公務員って陰気で愚痴っぽい人間ばかりだな
  • 組織に対する不満が常に充満しているんだな
などと理解するのは早計です。

大多数の公務員は、余暇時間までわざわざ仕事のことを考えません。
仕事はあくまでも生活要素の一部であり、家庭のような、より重要な生活要素を持っています。
たとえ職場で嫌なことがあっても、業務終了後にTwitterで愚痴ツイートを作文したりはしません。
むしろそんなこと(広義の仕事)に時間と労力を割くことのほうが勿体無く感じられます。


インターネット上で情報発信しているのは公務員の中でも圧倒的少数派であり、概して「余暇時間まで仕事のことを考えている真面目な人」、あるいは「暇人」なのだと思われます。

一般論は書きようがない

書き手の層の偏りという要素を除いても、そもそも一個人に普遍的真理を書くだけの知見はありません。
公務員の仕事は法令で定められている要素が大きく、他の職業よりも普遍的な部分が多いとは思います。
しかしそれでも、地域ごと・自治体ごとに、仕事内容も待遇も異なります。

インターネット上にある個人の投稿は、あくまでも書き手が経験した範囲での結論であり、局地的・部分的真理であることを認識する必要があります。

ブログにしてもSNSにしても、公務員関係の文章は「公務員は〜」「役所は〜」のように主語が大きくなりがちです。

主語の巨大化は、そもそもインターネット上の言論にありがちな傾向です。
公務員界隈の場合は更に、書き手側に「勤務先自治体の特定を避けたい」という心理があり、こういう「ぼかし表記」を使いたがるという特殊事情も加わります。
弊ブログもまさにこの呪縛に囚われています。

体感的に、一般論として書かれたインターネット上の言説のうち、僕も同じく一般論だと肯けるのは3割程度です。
5割は部分的真理としては賛同できるもの(自分の経験からもそう思うが一般論とまではいえない)、残り2割は賛同できません。

経験業務によっても変わってくる

さらに公務員は、たとえ同じ役所に同じ年次で入庁したとしても、配属先・異動ルート次第で経験する業務が全く異なります。
インプットが異なれば、醸成される価値観や思考回路も異なります。
つまり、同じ年次に採用された同じ自治体の職員であっても、過去に経験した業務次第で、考え方が大きく異なるのです。

弊ブログの過去記事を読んでいただいている方なら、住民との協力関係に対して僕が相当悲観的であることをご存知だと思います。
この思想はあくまでも、僕が住民と対立しがちな部署ばかり経験してきたから形成されたものであって、住民協働に前向きな職員はたくさんいます。

役所といえど徐々に変化している

インターネット上には古い情報も残っています。
時代遅れと揶揄されがちな役所ではありますが、それでも少しずつ変化しています。
 僕が入庁してからの約7年間でも随分変わりました。

たとえ自分の疑問に対してドンピシャで書かれている内容であっても、書かれた時点が古い情報は、鵜呑みしてはいけません。
特に更新が止まっているブログの場合、追記やリライトされている可能性がほぼゼロのため、一層注意が必要です。

「※個人の見解です」を脳内で補完する

個人発の公務員情報は、先述のとおり、普遍的真理ではなく局地的・部分的真理です。

  • どういう経歴・性質の人間が発している情報なのか
  • 書き手の属性からして、どういうバイアスがかかりうるのか
を意識して読み解いていくのが、無難な使い方だと思います。

弊ブログも同じです。本記事の内容全てがブーメランと化して脳天に突き刺さります。

極力バイアスを排しようと頑張っているつもりですが、一人きりで書いている以上、バイアスまみれになっていると思います。
独身アラサーオタク(出世コース脱落)という書き手像、役所内ヒエラルキー下位の人間が書いているという前提をお忘れなきよう……