どんな部署にいようとも、住民やマスコミからの「公表資料の意味がわからない、わかりやすく説明してくれ」という質問は常につきまといます。
こういう質問を受けたとときは、まずは公表資料に書いてあることを朗読するところから始めて、質問者の出方を伺うのがセオリーです。
役所的には、公表資料以外の情報は一切明かしたくないのが本心です。
資料中の言葉も図表もレイアウトも、諸々の利害関係や政治的事情を織り込んで推敲を重ねた末の成果物であり、この資料が火種になってトラブルが生じないよう予防線を張り巡らせています。
役所の事情を知っている人は、公表資料の裏に隠された真相を読み解こうを試みます。
「わかりやすく説明してくれ」と要求して、職員にラフな言葉遣いでしゃべらせることで失言を引き出そうとする、悪意を持った手合いなんかは日常茶飯事です。
というわけでまずは朗読するのですが、すると面白いことに、書いてある文面を読み上げただけですんなり理解してくれる方がかなりいます。
どうやらまったく同じ内容であっても、視覚では理解できないけど、聴覚経由なら理解できるのです。
認知特性を紐解いてみる
「視覚優位」や「聴覚優位」という言葉を見聞きしたことのある方は、きっと多いと思います。
- 「視覚優位」…情報を「見て記憶する」のが得意
- 「言語優位」…情報を「読んで記憶する」のが得意
- 「聴覚優位」…情報を「聞いて記憶する」のが得意
資料を読んでも理解できないが、読み上げられれば(音声で説明されれば)理解できるという方は、きっと聴覚優位にあたるのでしょう。
ちなみに僕は言語優位にかなり偏っていて、聴覚の認知機能はひどく脆弱です。
例えば、相手から「〇〇県庁××課の△△です。~~さんいますか?」という電話を受けたとします。
よほど調子が良いときを除き、記憶できるのは「〇〇県庁」「~~さんいますか?」の2要素だけです。ほかの部分はすぐ抜け落ちます。
あとは歌詞やセリフを聞き取るのも苦手です。
真剣にアニメ考察するときは、まずセリフの文字起こしから始めます。そうしないと頭に留めておけないのです。
言語機能の牙城
3つの認知機能のうち、役所は完全に言語機能に支配されています。公務員の仕事では「言語機能」ばかり使い、言語機能の優劣が仕事の出来不出来、組織内での評価に直結します。
そもそも公務員試験という選抜プロセスも、言語優位者に有利なものです。
つまり、公務員には言語優位な人間が多く、入庁後もさらに言語優位方向へと磨かれていくと考えて良いでしょう。
つまり、公務員には言語優位な人間が多く、入庁後もさらに言語優位方向へと磨かれていくと考えて良いでしょう。
しかし、役所の外の世界は異なります。
言語優位者だけではなく、視覚優位・聴覚優位の方も大勢います。
最近は誰でも手軽に動画メディアを扱えるようになってきて、視覚優位・聴覚優位の方へも的確に情報を伝えられるよう日々進歩しているところです。
いまだに言語機能に頼り切りなのは、役所くらいなのかもしれません。
何よりまずは、役所は言語機能という認知の一機能に特化している異質な集団であるという自己認識を持つ必要があると思います。
「これくらい読めばわかるでしょw」みたいな高慢な態度は厳に慎むべきです。
「これくらい読めばわかるでしょw」みたいな高慢な態度は厳に慎むべきです。
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