地方公務員として生きるためには、住民からのバッシングと折り合いをつける必要があります。
食らうたびにストレス発散する、スルーする、貴重なご意見として受け入れる……
どんなやり方であれ自己流の対処方法を見つけておかないと、いずれやられてしまうでしょう。
僕はこれまでスルー派だったのですが、最近はバッシングの質も量もどんどんひどくなってきてスルーしきれなくなり、今年の5〜7月頃はけっこうダメージを蓄積してしまいました。どんなやり方であれ自己流の対処方法を見つけておかないと、いずれやられてしまうでしょう。
これをきっかけに、そもそもどうしてバッシングされるとダメージを受けストレスを感じるのか、細かく考えてみました。
以下、施策に対する真っ当なクレームから「税金で飯を食いやがって」みたいな難癖まで幅広く「行政バッシング」という言葉で括ります。
真に安心できる時間も場所もない
行政バッシングは遍在します。
いつどこで遭遇するか、全く予見できません。
つまり公務員は、24時間365日、どこにいようとも、自分たちの悪口を聞かされる可能性があります。
人間から隔絶された状況にでも隠れない限り、安心できる時間・場が持てないのです。
行政バッシングは、普遍的な話題として、すっかり定着しています。
行政に関心のある方は持論を以て真剣に叩きますし、無関心な方もマスコミ発言をそのまま繰り返すようにして気楽に叩きます。
もはや天気の話題に次いで無難な話題なんじゃないかと思うくらい。
いつどこかで見かけたのかは失念してしまったのですが、「もはや公務員は『パブリック・サーバント』ではなく『パブリック・エネミー(敵)』と化した」という記述がありました。
まさにこのとおりだと思います。
「私だけでなく住民が誰もがそう思っている」という苦情の常套句があります。自説に箔をつけるための簡便な方法であり、普段はスルーを決め込むところなのですが、今回の新型コロナウイルス感染症騒動はそう単純に処理できませんでした。苦情の件数も多いし、苦情主の属性も段違いに幅広いのです。老若男女あらゆる層から毎日毎日、何回も「私だけでなく住民誰もが公務員に対して怒っている」と聞かされたら、本当に住民全員が怒っているように思えてきて、次第にこの台詞が苦痛になりました。
批判的言説に対しては、「嫌なら見るな・聞くな・近づくな」が基本です。
しかし行政バッシングは、世間の至るところに溢れかえっているために、近づかないようにしても回避しきれません。
一般的ないじめだと、いじめが発生している場所(職場など)から離れることで、一旦は避難できます。
しかし行政バッシングの場合は、海外逃亡しない限り、安住の地はありません。
日本国内にいる限り、どこでも降りかかってきます。
日本国内にいる限り、どこでも降りかかってきます。
一発あたりの被害はいじめの比ではなく微弱なものですが、いつどこで遭遇するかわからないという行政バッシングの性質上、本当に安心できるシェルター的な避難場所が存在し得ないのです。
つまるところ、役所バッシングは、公務員の人生から「安心感」を根こそぎ奪うのです。
聞こえてくるバッシングの多くは、自分に向けられたものではありません。
発話者としては、近くに公務員がいるとは思いもしていないでしょうし、「公務員に聞かせてやりたい」とも思っていないでしょう。
つまるところ、役所バッシングは、公務員の人生から「安心感」を根こそぎ奪うのです。
聞こえてくるバッシングの多くは、自分に向けられたものではありません。
発話者としては、近くに公務員がいるとは思いもしていないでしょうし、「公務員に聞かせてやりたい」とも思っていないでしょう。
しかしそれでも、聞こえてしまった以上、いい気分にはならないものです。
「自分とは関係無い」と割り切れるだけの冷静さを身につけるしかないのでしょう。
「自分とは関係無い」と割り切れるだけの冷静さを身につけるしかないのでしょう。
人格否定までしちゃいます?
行政バッシングには、「公務員の人格批判」がつきものです。
公務員というステータスを理由に、相手の人間性を否定する形の罵倒です。
- 公務員は無能だ
- そもそも公務員しか職を選べなかった負け組だ
- なのに自分を有能だと勘違いしている、傲慢だ
- 人間性がおかしい、感情が無い
- 自分可愛さに溺れている自己中だ
などなど。パッと思いついた典型的なフレーズだけでもこのくらいあります。
人格だけならまだしも、外見や過去、家族までひっくるめてバカにされるケースも多いです。
ちなみに僕は顔面偏差値42くらいのブサメンなのですが、住民の方からこれまで何度も「公務員顔」と評されています。
こんなふうに、「公務員」という単語を侮蔑のニュアンスで使う方も大勢います。
こんなふうに、「公務員」という単語を侮蔑のニュアンスで使う方も大勢います。
「公務員はクズ」だと思うこと、そう発言すること自体は自由です。
ただ、罵倒されて喜べるほど僕は大人じゃありません。バカにされたら普通に腹が立ちます。
「堂々と他人をディスることが許容される」ことがハイクラスの常識らしい
それに何より、「『公務員を公共の場で堂々と罵倒すること』が平然とまかり通っている」という環境、「公務員=公共の場で堂々と罵倒してよい存在」という認識が世の中に浸透していることが、恐ろしくて仕方ありません。
こう思う根底には、「公共の場で堂々と罵倒してもよい存在がこの世の中には存在する」という意識、つまり特定のセクターへの差別や私刑が正当化されるという意識が存在するのでしょう。
「公務員はサンドバック」という例えがありますが、僕は秀逸な表現だと思っています。
サンドバックは殴られるために生まれた存在ではありますが、いくら殴ってもそう簡単には壊れません。
実際この例えのとおり、公務員は、人格や外見を多少否定されたところで、生活が即座に崩壊するわけではありません。少なくとも今のところはそれなりに待遇が保証されているからです。
しかし、もし今の公務員叩きのエネルギーが、別のセクターに向けられたら、いったいどうなるでしょうか?
特に、公務員よりも弱い存在に向けられたら。
結果は明らかです。悲劇しか起こり得ません。
叩く理由なんて、後付けでいくらでも整理できます。
「叩きたい」という感情がまず先行し、ついで「堂々と叩くことが許される」環境、「罵倒を正当化する理由・根拠」が成立するという順序です。
公務員を罵倒して悦に浸っている方々の多くは、今は公務員をターゲットにするもっともらしい理由があるから公務員を叩いているだけなのでは?
心の底から公務員が嫌いな方も結構いるでしょうが、とにかく誰かを攻撃したい、嗜虐欲を発散したいから、世間公認サンドバックである公務員を叩くという方も、相当数いるのでは?
公務員の人格否定をしている方々は、自分は公務員より優秀だと認識しているはずです。
その優秀な方々が、「公共の場で特定のセクター所属者の人格を否定すること」の危険性を理解していない、あるいは理解したうえで嗜虐性を満足させるために人格否定を繰り返している。
公務員罵倒ネタで盛り上がっている集団に出くわすたびに、このディストピア的な現実を思い知らされ恐怖を感じます。
コメント
コメント一覧 (9)
しかし、県庁だとそこまで攻撃してくる人があるのは特定の所部署のような気がしますが、どのような部署にいらっしゃるのでしょうか?
コロナ対策とか広報ですかね?
電話主からは頻繁に「検索したらおたくの電話番号がヒットした」と言われたものの、結局どういうワードで引っかかったのか、わからずじまいです……
うちの県庁の場合、4〜5月は全庁的に電話がパンク寸前で、僕の職場に限らず苦情まみれだったようです。
暴れたがりな県民性なんでしょうか……
私の働いている自治体とはだいぶ異なります。大変ですね…
苦情は当然ありますが、私は今までにほとんど受けたことがないです。内部管理系が多いからかもしれませんが。
お疲れさまです。
内部管理だと庁内各所からいろいろ文句を言われそうで、個人的には住民対応より大変だと思っています。
下半期も生き延びていきましょう!
今後は二度とこのような事態を招かぬよう、コメントの一言一句を吟味し、また投稿前に文面を再発防止に努めてまいります。
なお、山城守様から当記事に投稿いただいたコメントのうち、2022/12/05 20:50と2022/12/10 21:41に投稿いただいたものについては、職員の個人苗字が記載されておりましたので、管理者権限により一旦非公開とさせていただきました。
お怒りの理由は理解いたしますし共感できるものでありますが、いくら弊ブログのような場末媒体とはいえ、一担当レベルの職員の個人名を、本人の許可を得ず掲載しておくのは、当職が名誉毀損で攻撃されるリスクがございます。どうかご容赦ください。
山城守
2022/12/05 20:50
フォームへの返答が炎上して更に相手を怒らせるということもありますよね。
宇治市役所障害福祉課ホームページ( https://www.city.uji.kyoto.jp/soshiki/50/4488.html )の「<注意事項>使用できない写真」の件の上から4箇条目の「現在の容貌と著しく異なるもの。」の「容貌」が令和4年12月1日22時12分の時点では「要望」と誤記されており、これを指摘する文面の末尾に「そもそもこういったホームページへの掲載は複数の職員で回議し、全員が回議書に印鑑を捺して初めて掲載が為されるものと心得ます。そして、揃いも揃って誤植を見逃す等、通常の注意能力を以てすればあり得ないことです。
したがって、今般の誤植はあり得ない御役目怠慢です。今後はより一層気を引き締めて公務に当たって下さい。」とフォーム( https://www.city.uji.kyoto.jp/form/detail.php?sec_sec1=50&lif_id=35886&check )送信しました。
つまり、これは誤植を宇治市役所福祉こども部障害福祉課職員全員が誤植を見落としたままページを公開してしまったことにより発生した組織的過失であると指摘した訳です。
そうであれば、組織的過失の最大の責任は宇治市役所福祉子ども部障害福祉課を指揮する障害福祉課長にありますから、障害福祉課長が謝罪せねば収まりが付く道理がありません。
しかし、回答した者は一担当者(恐らく起案者)に過ぎぬ●●殿でした。これでは、更なる怒りを買っても止むを得ません。
山城守
2022/12/10 21:41
普通なら、「誤植の指摘誠にありがとうございます。この度は当庁のチェック体制が機能せず、誤植を看過し、かかる事態を招いてしまい、誠に申し訳ございません。今後は二度とこのようなことがないよう、宇治市役所福祉子ども部障害福祉課一同、より一層気を引き締めて公務に当たる所存ですので、今後も宇治市行政への御理解とご協力を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。」と記載し、苦情を入れた市民の指摘通りダブルチェックが機能しなかった組織の問題として捉えていることを意思表示するはずです。然るに実際の謝罪文は「ホームページの誤植についてご指摘いただきありがとうございます。
ご指摘の箇所につきましては訂正させていただきます。
今後このようなことがないよう、気を付けます。
また、修正の反映に時間がかかっており、申し訳ございません。
ご指摘ありがとうございました。
宇治市障害福祉課
担当:●●」という、一職員●●殿がミスをしたということで終わっており、私が指摘した決済時の複数の職員が誤植を見逃したことには一切触れておらず、これが私が宇治市役所福祉子ども部障害福祉課に対し怒っている理由です。