今の世の中、職業人生において、いずれは独立を考えている方は多いと思います。
このブログでも資格取得関係の記事がけっこう人気で、公務員の中にも資格を取って士業で独立を考えている方がそこそこいるのかな?と推測します。
まず数年間は公務員として働いて、開業資金を貯めつつ試験勉強して資格取得、あわよくば役所での勤務経験を強みに……というプランを思い描いている方もいるかもしれません。
こういうストーリーは不可能ではありません。実現している方もいます。
ただしなかなかの狭き門、険しい道のりだと思います。
士業で独立したいのであれば、別の方法も冷静に考えてみたほうが無難です。
独立開業までに必要になる
- 開業資金を貯める
- 資格取得
- 勤務経験
の3段階について、それぞれ考えていきます。
開業資金:かなり厳しい
若手公務員の給与は高くありません。
大卒1年目だと、時間外手当・地域手当抜きのベース月収(手取額)が、だいたい14万円くらいです。
定期昇給によって、そこから1年ごとに5千円くらい手取り額が増えていきます。
もし試験勉強のために予備校に通うのであれば、さらに厳しくなります。
ホワイト民間企業にある「資格取得補助」のような福利制度は、役所にはありません。
受験費用は全額給与から賄うしかありません。
独学にしろ予備校通いにしろ、
- 実家住まいで家賃がかからない
- マイカーを持たない
- 休日はずっと引きこもって勉強しているので交際費も服飾費もかからない
という苦学生活を送らない限り、開業に必要な資金は貯まらないでしょう。
それくらい若手の給与は少ないです。
節約のような貯蓄努力だけではどうしようもない次元だと思われるので、目標となる開業資金を貯めるには何歳まで働く必要があるのか、まず冷静に試算してみることをお勧めします。資格取得:特段有利ではない
仕事と試験勉強は完全に別物です。
役所の仕事が資格試験に役立つことは基本的にありません。
役所の仕事が資格試験に役立つことは基本的にありません。
資格試験で問われる法令(民法など)を仕事で紐解くことはよくありますが、資格試験に必要な知識とはずれていますし、試験並みの深さまで掘り下げることもありません。
業務外の時間に、しっかりと勉強時間を確保しなければいけません。
配属先次第で勤務環境が一変することに定評のある役所ですが、平日2時間くらいであれば、大抵の部署で勉強時間を確保できると思います。
しかし中には平日も休日も関係なく労働を強いられる職場もあります。
体感だと10分の1くらいの割合でしょうか。
こういう部署に配属されてしまったら、試験勉強どころではありません。
試験勉強をしているからといって、配属先は考慮されません。
むしろ「自分の裁量で使える時間が豊富」とみなされて、繁忙部署に放り込まれるかもしれません。
持病や親の介護など、自分の裁量ではどうしようもない事情で時間的制約を負っている人がたくさんいます。
こういう事情と比べれば、試験勉強は趣味に近いものです。人事課が配慮するとは思えません。
試験勉強を確保できる部署への配属を勝ち得たとしても、突発的に深夜残業や休日出勤を余儀なくされるケースは多々あります。
役所という立場上、住民や議員、マスコミを無視できません。正当な要請があれば、職員のプライベートは関係なく仕事をしなければいけません。
そのため、ダブルスクールに遅刻したり欠席したりは日常茶飯事でしょうし、模試すら受けられないこともあるでしょう。
つまるところ、「公務員だから試験勉強に有利」とは言えないと思います。
他の仕事と変わりありません。
勤務経験:あくまでも周辺知識
士業と役所の関わりは結構深く、どんな部署でもそれなりにお付き合いがあります。
日常的な書類のやり取りのみならず、役所主催の講演会の講師として登壇したり、外部専門家として意見を求められたり、仕事を外注されたり。
役所と敵対する仕事も多数あります。
いずれにしても、意思決定プロセスや現状認識、予算執行の考え方のような役所の内部事情を知っていれば、実務に役立つでしょう。
ただし、役所関係の知識は、本業の実務とは関係がありません。
役所絡みの仕事をするときにだけ役立つのであり、役所が関係しないときは活きません。
あくまでもプラスアルファの知識です。
「諦めたときの保証」という強みかつ弱み
働きながら士業独立を目指すのであれば、役所よりも、資格補助がしっかり出るホワイト民間企業で働くほうが無難です。
それか、都会限定ではありますが、大手士業事務所の正社員事務員になるのも良いでしょう。
役所で働くよりも、独立後の実務に直結する経験を得られると思います。
それか、都会限定ではありますが、大手士業事務所の正社員事務員になるのも良いでしょう。
役所で働くよりも、独立後の実務に直結する経験を得られると思います。
公務員ならではの強みは、独立を諦めたとしても、それなりの待遇が保証されているところです。
民間企業であれば、自分が資格勉強をしている間に、他の社員は別の方法で着々とスキルアップしていきます。
もし資格取得に失敗したら、試験勉強に費やした時間分だけ周囲と差が開いてしまいます。
この差に応じて、業務上の評価にも差が出て、ひいては待遇が悪化する危険があります。
役所であれば、民間企業とは異なり、干されたところで待遇に大差ありません。
それなりの給与が保証されています。
資格取得に失敗することがリスクにならないのです。
しかし逆に言えば、「失敗しても人生なんとかなる」という甘えの原因にもなり得ます。
資格補助が出るようなホワイト企業って、多分役所以上に居心地が良いと思います。
そんな環境を捨ててまで士業独立するなんて、自分からすれば勿体無いです。
「士業独立を断念する」誘引が、役所以上に強いともいえるでしょう。
挑戦に対するスタンスは人それぞれです。
ある程度の余裕がないと頑張れない(プレッシャーで潰れる)人もいれば、追い詰められていないと頑張れない(現状に甘えてしまう)人もいるでしょう。
前者であれば、ホワイト民間企業や役所で安定収入を得ながら試験勉強するほうが合っているでしょう。
後者なら、あえて正社員にならず、勉強に専念したほうがいいのかもしれません。
コメント
コメント一覧 (2)
税理士なんか特にそうかもしれませんが、そういったある種のしがらみというか、自分が活かせるネットワークがあるかどうか、特に郊外や田舎では最重要な気がします。
もし、東京ならば独立・起業する士業の方も多くいらっしゃいますが、その競争は激しく、事務所費は高く、サービスは低価格で勝負している方も多いです。
自分の相続の申告の際に、住んでいる地元(郊外)と東京都心部で、2つの税理士事務所に足を運び価格を合見積もりして比較しました。そうすると、都心は20万円、郊外70万円と、とんでもない価格差を提示されてしまい、「田舎で士業なんか頼むもんじゃない」と痛感した経験を持ちます。
ネットでも書類を送付したりしてできる時代、近いからとわざわざ郊外や田舎の税理士に仕事を頼む必要性は無いと確信にいたりました。
利用する側からすれば、相続みたいな単発で終わる案件であれば、安く済ませたいところです。
一方、士業を営む側からすれば、単発案件は稼ぎにくいので、顧問契約とかを結んで長期的な収益源を確保したほうがいいのかもしれません。
その場合は個性が大事になってきて、公務員経験も活かせる…のかもしれません。
(活かす途があってほしいです)