民間企業だと、「営業職」「経理職」「法務職」のように担当業務の種類ごとに社員を分類します。
対して地方公務員は、所属する部局ごとに分類するのが一般的です。
業務の種類では、「事務職」「技術職」のような採用区分よりも細かく分けることはほとんどありません。
役所では、事務職であれ技術職であれ、一人が何役も兼務しています。
そのため業務内容別に職員を括るのが困難です。
例えば今年度の僕の場合、経理(支払い事務)・法務・ホームページ管理・雑用担当を兼ねています。
それぞれの業務に費やす時間も労力も凡そ均等で、どれがメインとも割り切れません。
とはいえ、自分のポストがどういう種類の業務から成り立っているのか分析して客観的に眺めてみれば、新たな発見が得られのではないでしょうか?
とりあえず事務職の県庁職員バージョンの分類法を考えてみました。
県庁職員の5大業種
まず、県庁職員(事務職)の業務を、
- 内部調整
- 庶務・経理
- 法規・制度
- 住民対応
- 非法定事業
という5つの類型に整理します。
これらの項目は完全に僕のフィーリングです。もっと適切な分類方法もあるでしょうが、今回はこれで進めます。
先にも触れましたが、地方公務員は複数の担当業務を兼任している場合がほとんどです。
そのため、ある職員を5類型のうちのどれか1つに当てはめようとすると無理が生じ、正確な把握ができません。
そこで、業務全体に占める5要素それぞれの内訳(割合)という形式を用います。
10ポイントを各要素に配分して、「内部調整3、庶務・経理4、法規・制度3」のような形で、担当業務を定量的に表現します。
さらに配点をレーダーチャート化することで、業務の特徴が可視化されて、よりわかりやすくなります。
具体的な事例も掲載しておきます。
定量的に表現することで、これまでの担当業務の比較が容易になります。
例えば、楽しかった年度(または辛かった年度)の間に、共通する特徴を見つけられるかもしれません。
僕の場合、「非法定業務」がある年度は、残業が多かったものの楽しかったです。
一方、「内部調整」と「法規・制度」の両方にポイントが計上された年度は、いずれも非常に辛かった。
法令的に不可能な処理を別部署から無理強いされるケースが多発し、精神的に磨耗したせいだと思われます。
応用編 〜業務経歴の可視化〜
過去の担当業務のスコアを足し上げていけば、これまでの自分の経歴を可視化することも可能です。経験豊富な業務ほどスコアが高くなります。
地方公務員の業務経歴に触れる場合、たいていは所属していた部局を語ります。
ある部局の所属年数が長いことを以って「〇〇畑だ」と表現するのが、その典型です。
しかし地方公務員は部局をまたいで異動するのが普通であり、「〇〇畑」を自称できるほど特定部局に特化できるケースはむしろ稀です。
このために「自分には専門分野が無い」「公務員は専門性が身につかない」と嘆く人も多いです。
所属部署という要素を除外して、業務の種類という観点で経歴を見てみると、全く別の特徴が見えてきます。
役所がよく標榜している「ジェネラリスト育成」という題目では、5要素どれもを均等に経験させることを理想としていると想定されますが、実際は結構偏っていると思います。
この偏りから、自分のキャリアの特徴、つまり専門性が浮かんできます。
出世コースの謎が解ける?
業務経歴を定量化することで、出世コースへと選抜される職員の特徴を特定できるかもしれません。
試しに僕の同期職員のケースで算定してみました。比較対象として僕のケースも掲載しておきます。
出世コースに進んだ職員と僕とでは、チャートの形が明らかに異なります。
出世コースへと選抜された職員は、部局が変われども「内部調整」「非法定事業」スコアの高い業務を担当し続けていました。
俗にいう新規施策や目玉施策は、これらのスコアが高くなります。
こういった目立つ事業を担当しているうちに幹部の目に留まって、出世コースへと抜擢されるのでしょうか?
事例を収集していけば、役所の神秘「出世コースに選ばれるまでの過程」を検証できるかもしれません。
この方法の肝は、数多くある役所の仕事をいかに分類・集約するかだと思います。
僕は前掲のとおり5要素にまとめてみましたが、もっと良い方法があると思います。
まず、5要素のほかに「役所間調整」を別要素として設けるべきか否かで未だ迷っています。
特に県庁の場合、国や市町村とのやりとりが業務内に大きな割合を占めていますし、庁内調整とも住民対応とも異なる独特のコミュニケーション力を必要とする業務でもあるからです。
他にも
あたりは、現状認識している課題です。
試しに僕の同期職員のケースで算定してみました。比較対象として僕のケースも掲載しておきます。
出世コースに進んだ職員と僕とでは、チャートの形が明らかに異なります。
出世コースへと選抜された職員は、部局が変われども「内部調整」「非法定事業」スコアの高い業務を担当し続けていました。
俗にいう新規施策や目玉施策は、これらのスコアが高くなります。
こういった目立つ事業を担当しているうちに幹部の目に留まって、出世コースへと抜擢されるのでしょうか?
事例を収集していけば、役所の神秘「出世コースに選ばれるまでの過程」を検証できるかもしれません。
誰か改良してみて(他力本願)
この方法の肝は、数多くある役所の仕事をいかに分類・集約するかだと思います。僕は前掲のとおり5要素にまとめてみましたが、もっと良い方法があると思います。
まず、5要素のほかに「役所間調整」を別要素として設けるべきか否かで未だ迷っています。
特に県庁の場合、国や市町村とのやりとりが業務内に大きな割合を占めていますし、庁内調整とも住民対応とも異なる独特のコミュニケーション力を必要とする業務でもあるからです。
他にも
- 「定型作業」を別要素として設けるか
- 外部団体への出向をどうスコア化するか
- 係長級以上はこの5要素だと通用しなさそう(あくまで担当レベルの分析ツールにとどまる)
あたりは、現状認識している課題です。
コメント
コメント一覧 (4)
いつもブログを拝読させていただいています。
自分は広報→収税(出先)→イベント企画と異動してきました。
大した学歴はなく幹部とのコネクションもありません。庶務はほとんど経験しておらず、イベント企画では直属の上司と対立する場面もあって、出世は無縁と思っていたところ、人事課への内示が出てしまったところです。
そこで改めて本記事を読むと自身の経歴グラフが人事課のモデルケースと非常に似ており、分析の精度の高さに驚きました。
あくまで一例ですが分析に対する実例として報告させていただきます。
この理論は僕の完全オリジナルではなく、同期の東大卒職員が飲み会で披露していた持論を元ネタにしています。ひょっとしたら何か学術的な裏付けがあるのかもしれません。
私は、某中核市で税務→部局総務→人事(ヒラから係長)→商工(課長補佐)→人事(課長補佐)→危機管理(課長)て異動した者です。人事は2回配属、通算12年後在籍しました。
ながらく人事を担当し、役所ももう少し職員一人ひとりのキャリアデザインを示してあげないと、これからのリクルートが厳しいと感じています。
質問ですが、旧来のゼネラリスト育成も必要と思いながらその限界も感じます。職員数も限られる中で、どのような対策が考えられますでしょうか?
イメージ的には、
・観光でイベント担当→福祉で窓口担当→土木で庶務担当→企画で内部調整担当
みたいな、異動のたびに部局も担当業務も変わる現行スタイルから、
・観光でイベント担当→観光で庶務担当→土木で庶務担当→土木で許認可担当
みたいに、部局か担当業務は固定して、「ゼロからやり直し」ではなく「これまでの経験を活かせる」形にすればよいのではないか?と思っています。
(東京都庁はこんな感じで運用していると聞きます)
もう少し考えがまとまったら、別途記事にしようと思っています。