どこの自治体の職員採用パンフレットにも「現役職員へのインタビュー」が載っています。
内容は様々ですが、「仕事のやりがい」「一日のスケジュール」「プライベートの過ごし方」あたりはどの自治体でも共通していると思います。
パンフレットの読者である公務員志望者にとって、一番関心のある情報は「一日のスケジュール」ではないかと推測しています。
「仕事のやりがい」はあくまでも職員個人の主観的な感想で人それぞれですし、「プライベートの過ごし方」も同様です。
「一日のスケジュール」のみ客観的事実で、入庁後の自分を想像するヒントになります。
しかし残念なことに、パンフレットに載っている「一日のスケジュール」はほぼ嘘です。
少なくとも、定時出勤・定時退社していたら確実にフェイクです。
採用パンフレットに載るような花形部署が定時勤務できるわけがありません。
(退庁時刻が20:00を過ぎているようだったら信用できます)
そこで、リアルな実例として、閑職県庁職員である自分の一日を紹介します。
暇さ具合でいえば、フルタイム勤務の平職員の中でも上位10%に入る自信があります。
出勤〜定時まで
定時(9:00)の20分くらい前には出勤して、地方紙とネットニュースに目を通し- 自分の業務に関係あるニュース
- 職場内で話題になりそうなニュース
- 議員や公務員の不祥事(地方・国政問わず)
①②は入庁当時から続けているルーチンで、僕に限らずたいていの職員が実践しています。
③は今年に入ってから新たに加わった習慣です。
新型コロナウイルス感染症の流行以後、自分の担当業務に関係なく行政全般への苦情をぶつけられる状況であり、こういう情報を知らないと苦情主から「意識が低い」と更に叱責されるため、否応無くチェックしている状態です。
定時内
9:00 業務スタート
まずはメールチェックから始めます。だいたい夜のうちに5件くらいはメールが届いており、それらを読んでいきます。
自分の個人アドレスだけでなく、課の共有アドレスもチェックします。
「朝一のメールチェックはNG」と説くビジネス書もありますが、地方公務員の場合は始業時のメールチェックが不可欠です。
前日の定時後に発出→本日AM10:00期限の作業依頼のような急件がたびたびあり、こういう案件に限って重要だからです。
メールチェックの次は課全体のスケジュール確認です。
特に管理職の予定は必ず確認します。
地方公務員の仕事には、自分一人では完結せず、管理職の了承が必要なものがたくさんあります。
朝のうちに予定を確認しておかないと、「今日中にチェックしてもらいたいのに、午後から管理職が外出しててチェックしてもらえない、詰んだ」という事態に陥りかねません。
課全体の慌ただしさを把握しておくことも重要です。
もしかしたら急に応援を求められ、自分の作業ができなくなるかもしれないからです。
9:15 本日のタスクに着手
課全体のスケジュールを頭に入れた上で、本日のタスクを確認します。一日の大まかな流れを決めて、優先順位の高い順に取り掛かっていきます。
本日の場合、真っ先にこなすべき案件は、本日17:00締切の調査ものです。
しかも16:00から来客のアポがあるので、実質16:00までに回答しなければいけません。
定時内であれば、だいたい20分に1回くらいは電話がかかってきます。
よほどの急件を抱えていない限りは、作業の手を止めて電話に応じます。
メールも同様です。定期的にチェックします。
他の職員の書類決裁も、すぐに見て回すようにしています。
僕の手元に留めておくメリットが皆無だからです。
10:30 上司から急件
予定通り作業を進められる日なんて滅多にありません。毎日少なくとも3件くらいは突発案件が舞い込んできます。
本日の1件目は上司から資料作成依頼。議員からの問合せに答えるため、過去のデータをまとめてビジュアル化します。
管理職のチェック・修正指示を経て、資料を仕上げる頃には午前が終わっていました。
12:10〜13:00 昼休み
ちょっと遅れて昼休みに入ります。自席で昼食(仕出し弁当)をいただき、愛読しているブログ類をスマートフォンで読んでから、仮眠に入ります。
13:00 国からの通知文を読む
午前中の急件対応中、国から通知文が届いていました。突発案件2つ目です。どうやら僕の担当している制度の運用ルールが今後変わるようです。
幸いにも大した変更ではないので、特段上司には説明せず、通知文を課内供覧に回します。
13:30 作業再開
本日のタスクを再開します。順調にいけば定時内に終わりそう。14:00 他課から突発案件
本日3件目の突発案件。他課(A課)から、とある資料を至急提供するよう、電話で依頼されました。個人情報もりもりのデータのため、そもそも他課に提供していいものか僕単独では判断できません。
「課内で検討したい」と回答して一旦電話を切り、係長に相談。
係長的にはOKだが、念のため課長にも相談することになり、課長に諮るための簡単な打合せペーパーを作成。
14:30 課長にヒアリング
先の急件について課長の意向を伺います。課長的にもOKだが、どうしてA課が突然そんなデータを求め始めたのか、その背景を気にしている様子。
まともな職員ならA課から依頼があった時点で違和感を察して背景を尋ねておくべきところ、こういうところで気が利かないから僕は出世競争早々脱落なんだよなーと反省しつつ、ヒアリングから離席してA課担当に電話。
結果、「部長からオーダーされた」との一点張りで、明確な答えは貰えません。
明らかに怪しいので、A課に対しては「個人情報なので絶対に庁内限り、職員のみ閲覧可」という条件を強く念押しして情報提供することになりました。
こういう仕事が、公務員がよく言う「調整業務」の一例です。
15:30 作業再開
今日やるべき作業に三たび着手します。午前中に仕上がるはずだった17:00締切の調査ものすら、まだ出来ていません。
さすがに焦って作業します。
眼精疲労と空腹を感じ始める頃合いで、作業効率が落ちてきます。
16:00 打合せ
X市役所の担当者が来て、来年度からの新規事業について説明を受けます。財政的支援を求められますが、そんなものは無いと回答。
残業タイム
17:45 定時終了
あと少しで全タスクを終えられそうなので、そのまま残業に突入します。定時を過ぎると電話が減り、作業効率が上がります。
18:00 作業依頼メール
他課(B課)からの作業依頼メールが届きました。4件目の突発案件です。期限は明日AM10:00。作業量自体は大したことないものの、課長の確認が必要です。
本日中に仕上げて、明日の朝一番に課長に見てもらうことにします。
18:45 本日の作業終了
もともと予定していた本日のタスクを完了。B課から依頼された作業に移り、こちらも完了。
明日マストのタスクをメモして、机の上とデスクトップを整理して、さっさと退庁します。
普通はもっと忙しい
繰り返しになりますが、これはあくまでも閑職のケースです。90%のフルタイム勤務職員はこれより忙しいです。
忙しい部署だと突発案件がもっと増えるうえ、しかも締切の短い急件ばかりなので、一日中ずっと急かされているような状態になります。
公務員志望の方で、この一日を見て「思ったより忙しそう……」と思うなら、考え直したほうがいいかもしれません。
コメント
コメント一覧 (2)
無職以下
今の世の中、就業有無と人間の貴賤は全く相関しませんよね……