地方公務員の仕事そのものを楽しんでいる人は、それほど多くないのかもしれません。

実際、達成感を味わったり(そもそも明確な「終わり」が無いので完了に立ち会えない)、誰かから感謝されたりといった典型的なカタルシスシーンにはなかなか巡り会えません。
 

しかし、役所という環境は、心がけ次第で面白おかしく感じられると思っています。
いくら閑職で連日定時ダッシュを決めたとしても、毎週40時間近く滞在しなければいけない場所です。
少しでも「楽しい」と思えたほうがハッピーな人生を送れると思います。


どんな部署に配属されようとも、誰でも手軽に実践できそうな「心がけ」を紹介します。

人に興味を持つ

世の中を動かしているのは人です。
しかもごく少数の有力者です。


  • いったい誰が有力者なのか
  • 有力者たちはそれぞれ何に関心があって何を考えているのか
  • 有力者どうしの関係はどうなっているのか

こういったことがわかれば、世の中の動きが違って見えてきます。
のめり込みすぎると陰謀論信者になってしまうのですが……

仕事中に個人名が聞こえてきたら、たとえ自分の担当業務とは関係なさそうな話題であっても、耳を澄ませて聞いてみてください。
役所内で話題になるということは、行政の意思決定に影響を及ぼすだけのパワーを持った有力者である可能性が高いです。
軽くググってみてプロフィールを調べ、もしSNSアカウントを持っていたらウォッチしてみましょう。
 

こうして情報を集めていくうちに、脳内に「有力者データベース」みたいなものが出来上がり、有力者を経由していろんな話題がリンクして楽しくなってきます。


役所であれば「本性」が見られるかも?

有力者にまつわる情報は、当人の統制下におかれています。
マスコミは勿論のこと、口コミ評判やSNS投稿のような「個人の声」にしか見えない媒体であっても同様です。
情報統制に長けているからこそ有力者として君臨できたのかもしれません。


そのため、いかなる媒体であっても、普通は有力者にとって都合の良い情報しか流れてきません。
ある事象の一面だけを切り取ったり、誇張したり、隠蔽したり、作り話を仕立て上げたり……形式はいろいろありますが、いずれにせよ事実をそのまま知ることは非常に困難です。


時にはネガティブな情報が流れてきますが、これは対立する有力者が放流したものでしょう。
これもまた事実そのものではありません。ネタにされている有力者当人を貶めるために、別の有力者がアレンジした情報です。


つまるところ、間接的な方法では有力者の本性を知りえません。
有力者の本性を知るには、直接本人と関わるしかないのです。


「有力者の本性を知る」という観点では、役所はなかなかの好立地です。
役所は究極の巻き込まれ体質です。 いろんな有力者が日々プレッシャーをかけてきます。
つまり、有力者と間近に接触でき、生々しい情報を得られるのです。


せっかく役所にいるのですから、このメリットを活かさない手はありません。




庁内の「有力者=キーパーソン」も面白い

役所の組織内も同様です。少数のキーパーソンが動かしています。
首長や部局長がキーパーソンなのは間違いないですが、部局によっては平職員もキーパーソンたりえます。


特に観光や産業振興のような自由度の高い部局だと「職位の低いキーパーソン」がけっこういるように思います。
こういう部局では、管理職は政治的調整に徹していて、施策の中身を詰めるのは係長や平職員というケースがよくあります。
こういう場合、施策の成否を分つキーパーソンは、係長や平職員です。


庁内のキーパーソンを特定し、彼ら彼女らのキャラクターがつかめれば、組織の動きが急にイキイキして見えてきます。
予算案や人事異動の背後にあるストーリーが見えてきて、エンターテイメントになります。


ものさし(基準)を持つ

たいていの人は数字が大好きです。
身長、体重、年収、結婚年齢、ランニングで走った距離……等々、日々いろいろな数字を使い、数字の大小多寡に一喜一憂します。


しかし、仕事中に数字を入力したり集計している最中にテンションが上がる地方公務員は、ごく少数だと思います。 

仕事でしか触れない分野の数字であったり、桁数が大きすぎたり小さすぎたりして実感が湧かないせいだと思います。
 

つまり、数字に対する親しみが足りないために、無機質に見えて面白くないのです。
逆に言えば、親しみを感じられるようになれば、きっと面白く見えてくるはずです。


数字に親近感を抱くための最も簡単な方法は、自分なりのものさし(基準)を持つことだと思います。
平均値や中央値、最頻値のような統計値でもいいですし、身近で具体的な実例を使ってもいいでしょう。
 


例えば人口だと、僕の場合、居住している県と切りのいい人口数の県内市町村をものさしとして使っています。


  • ▲町って本県X市の○倍も人口いるんだ、町なのに大都会じゃん
  • △県って本県の7割くらいしか人口いないのに東大合格者数は同じなのか

こういう理解ができるようになると、人口を見るのが楽しくなってきます。
フェルミ推定みたいな試算もできるようになり、実務にも役立つでしょう。
 




何事も第一印象は非常に重要です。
入庁直後に「役所つまらん」と思い込んでしまうと、楽しくする工夫すら意欲が湧いてこなくなり、ずっとつまらない地方公務員人生を送る羽目になりかねません。
 

「人」と「数字」は、どんな部署でも扱う要素です。
これらを面白コンテンツとして楽しめるようになれば、仕事も少しは楽しくなると思います。