僕と同じ年次に入庁した職員(いわゆる同期)の中には、東大・京大といった超高偏差値大卒業生が5人弱います。
(以下、入学偏差値の高い大学=上位大学、と表記します)

他愛ない雑談の中で、上位大学出身者には度々「○○大まで行ったのにどうして地方公務員になったの?」「せっかく○○大卒なのに地方公務員なんてもったいないよね~」という質問が投げかけられています。

個人的にこれはガチなタブー発言だと思っています。
上位大学出身者は、県庁が第一志望の就職先とは限りません。
国家総合職や民間大手企業、資格専門職(弁護士、公認会計士など)といった地方公務員よりも就職難易度の高い職にチャレンジしたものの敗退して、次善の策としてやむなく地方公務員になったのかもしれません。

そのため、自分自身が一番「どうして……」と思い悩んでいるかもしれませんし、本心では「もったいない」以上のドロドロした感情を抱いているかもしれません。
うかつに出身大学をネタにして軽口を叩いてしまうと、彼ら彼女らの心の傷を抉りかねないのです。

こうした発言には別の危険もあります。
「どうして?」「もったいないよね~」発言に対し、もし正直に「他が駄目だったから県庁に入った」と答えられてしまえば、県庁を第一志望に頑張ってきた多数派はプライドが引き裂かれてしまいます。
歓談の場が冷め切って、後にも尾を引く内部分裂が生じてしまいかねません。

僕の周囲にいる上位大学出身者は幸いにも人格者なので、同期どうしの宴席のような大勢が集まる場では「他が駄目だったから県庁に入った」とは決して言いません。
とはいえ面白い返しがあるわけでもなく、会話がストップして微妙な空気になります。

とはいえ「上位大学出身なのに地方公務員になるのはもったいない」と感じる気持ちはよくわかります。


地方公務員でなければ活かせるのに……

上位大学を卒業するメリットは、「○○大学卒」という肩書だけではありません。
人間関係、学識、習慣、思考方法、センス、振る舞い……等々、上位大学で学生生活を送り卒業しないと身につかないものがたくさんあると思います。

「○○大学卒」という肩書の価値は落ちてきているのかもしれませんが、こうした上位大学に身を置くこと
で得られる諸々の価値は、いまだ衰えていないでしょう。
 
  • 中位以下の大学だと何も見につかない
  • 中位以下の大学で身につくものは無価値or価値が低い
という意味ではありません。

価値の貴賤は置いといて、
  • 上位大学でないと身につかないものがある
  • それらが活きる場面は数多くある
というだけです。

しかし、地方公務員という仕事は、上位大学卒業者ならではの諸価値が活きにくい職業です。
学識や小難しい日本語の読解力は確実に役立ちますが、それ以外はなかなか日の目を浴びないでしょう。


特に田舎だと、せっかく築いた人間関係が全然活きません。
むしろ地元大卒業者の人間関係のほうがはるかに重宝されます。

極端な話、たとえ七大商社全てにコネクションがあろうとも、全然活きてきません。
それより地場スーパーとのコネクションのほうがずっと重要です。


僕が感じる「もったいない」ポイントはまさにここです。
地方公務員以外の仕事では大いに役立つはずの「上位大学卒業者ならではの諸価値」が、地方公務員になってしまったがために活かしきれないのです。

地方公務員稼業だけが人生ではない

とはいえ、あくまでも「これまで」活かせていなかっただけで、これからは活用のチャンスがあるのかもしれません。
それに何より、「上位大学卒業者ならではの諸価値」は、仕事だけでなくプライベートにも活きてくるものです。
 
仕事だけが人生ではありません。
「仕事で活きないから」という理由だけで一概に「もったいない」と決めつけるのは早計だと思います。
もったいないかどうかを決めるのは当人であり、まわりがとやかくコメントする案件ではないでしょう。